2012年12月31日月曜日

55歳からのハローライフ

55歳からのハローライフ
村上龍著
幻冬舎

人は、何か飲み物を、喜びとともに味わえるときには、心が落ちついているのだそうだ。



あっ、「13歳のハローワーク」の続編だ。
第二の人生を考えようってことだな。
老後はまだまだ先の話と思っていても、つい先日まで女子高生だった(つもり)なのにもうこんなおばさんになってしまったのだから、55歳なんてあっという間なのかもしれない。
これを機会に老後のことを考えてみよう。
と早とちりの私。
本書は「ハローワーク」ではなく「ハローライフ」で小説です。
お間違いのない様に。



離婚した女が結婚相手を見つけようと結婚相談所に登録する話「結婚相談所」
リストラされた男がホームレスになることを恐れている話「空飛ぶ夢をもう一度」
定年後妻とキャンピングカーで旅することを夢見ていた夫の話「キャンピングカー」
柴犬を可愛がる妻の話「ペットロス」
トラック運転手の恋心「トラベルヘルパー」
以上、普通の中高年が主人公の中編5編が収められている。

現役時代の自信から再就職をなめていたが現実は甘くないと認識させられる男、
妻も喜ぶと思い定年後の旅行を夢見ていたが、乗り気でない妻を見てうろたえ苛立つ夫・・・

シンプルな文章と抑えた表現から、リアリティが立ち上ってくるような話ばかりだった。
金銭的に余裕のある豊かな老後や夢物語のハッピーエンドではなく、誰にでも起こりうる現実が描かれている。
今まで読んだ村上龍氏の小説とはだいぶ違う雰囲気だった。

お金の話も具体的な金額が出てくるのでより現実味があり、怖くなったり哀しくなったり、
ふと涙がこぼれたり。
しかし、めでたしめでたしとはならないが、現実を知りそれを受け入れ再出発しようとする主人公たちに共感でき、読後感はいい。

ああ、これは中高年への応援メッセージだ。
ずっと走り続けてきた彼らが、ふと立ち止まり周りを見回すと、体の不調、お金、人間関係と思うようにいかない問題が立ちふさがる。
その辛い現実を受け入れたとき、彼らの「ライフ」が始まる。
そんな彼らに同年代の著者がエールを送っているようだ。

本書では、アールグレイ、おいしい水、コーヒーなど、主人公が好きな飲み物を飲みながら心の均衡を保つ場面が登場する。
私も美味しいコーヒーを飲みながら、これからの人生を考えてみたいと思えるようないい本だった。

2012年12月28日金曜日

行かずに死ねるか!―世界9万5000km自転車ひとり旅

行かずに死ねるか!―世界9万5000km自転車ひとり旅
石田ゆうすけ著
幻冬舎

一生の思い出に残るような宝を世界中を巡って探してみたい。汗かいて自分の足で探したほうが宝に出合えた時の喜びも大きい。(本書より抜粋)



「世界9万5000㎞自転車ひとり旅」シリーズの第3弾「洗面器でヤギごはん」 を読んで一気に著者の魅力に取りつかれ、シリーズの第1弾である本書を手にとった。

食に視点を置いた「洗面器で・・」と同じ旅ではあるが、違うエピソード満載で楽しめる。

出発直前に持病が再発するという危機を乗り越えて、著者は当初3年半の予定だった旅をスタートする。
愛車である赤い自転車に荷物を満載し、重さでグラグラしコントロールがきかないハンドルを握り、どこまでも走り続ける。
本書は旅行エッセイだが、次第に身も心もたくましくなっていく著者の成長記でもある。

前回も思ったのだが、文章がとても読みやすく表現が豊かなので、すぐに惹きつけられる。

走行距離 9万4494㎞
訪問国数 87ヵ国
パンク  184回

本書で、世の中には「チャリダー」(Wikipedia )がたくさんいて、多くの人が自転車で旅していることを知った。
著者も、行く先々でチャリダー仲間と出会い、そして別れる。
偶然何度も出会う仲間もできた。

マサイ族の青年に短距離走の勝負を挑んだり、フンコロガシが自分の排泄物を転がすのを観察したりと、観光ツアーでは味わえない、貴重な体験をしながらひたすら走る。

イランのモスクで英語の辞書片手に村人たちが「We Love You」と言ってくれたとき、
一度も笑わなかった少女が、最後に満面の笑みで両手を大きく振ってくれたとき、
私まで胸にこみ上げてくるものがあった。
またしても、通りすがりの日本人の旅行者に優しい手を差し伸べてくれた世界中の皆さん、ありがとう~!と叫び出したくなる。(著者とはなんの関わりもないのだが。)

汗と涙とホコリにまみれながら、自分の目で世界を見て、色々な背景を持つ人と関わり、苦しい体験、悲しい出来事も経験する。
この旅行によって、著者はどれだけ成長したのだろう。

誰もができるわけではない、世界一周自転車の旅。
だからこそ、これからも著者には色々発信し続けて欲しいと願う。

2012年12月26日水曜日

暗くなるまで贋作を

暗くなるまで贋作を
ヘイリー・リンド著
岩田佳代子訳
創元推理文庫

芸術が幻影にすぎないなら、何ゆえ贋作は悪しきことなのだ?                                    ―――「世界的贋作師による一家言」より





私はアニー・キンケイド、32歳独身。
世界的贋作師の祖父に鍛えられた絵画の腕を武器に、日々画家兼疑似塗装師として奮闘しているけど、なかなか請求書の山は減ってくれない。
今日も、絵の具だらけの服にボサボサの髪を適当にまとめて絵筆でとめている。
だって、今朝も時間がなかったから。
今は、墓地に隣接する納骨堂の壁画を修理しているの。
そんなある日、納骨堂にラファエロの真作があると打ち明けられた。
贋作撲滅師の捜査の手がおじちゃんに迫っているから私が阻止しないといけないし、墓場泥棒には遭遇するし、その上死体まで発見してしまう!
一体どうなっているの?
私は普通に暮らしているつもりなのに・・・
「贋作と共に去りぬ」 「贋作に明日はない」 に次ぐ贋作シリーズの第3弾。

久しぶりにアニーに再会して、ちょっとは落ち着いたかと思えば、全然成長してないんだからと思わず苦笑してしまう。
今回も相変わらず無鉄砲で、ドタバタ慌ただしく嵐のように走り回っていた。
そこがアニーの魅力でもあるのだけど。
あっ、でも携帯を充電するようになったのは成長かもしれない。

長身で高級スーツを身にまとう堅物お金持ちの大家さん・フランク。
正体不明の遊び人風でセクシーな元美術品泥棒・マイケル。
アニーを取り巻くイケメン2人との恋の行方も目が離せない。

本作でフランクの意外な過去が明らかになったり、仕事面で急展開を迎えたりと、
これからどうなるのかやはり次作が気になってしまう。

またまた絶叫マシーンに乗せられ、キャーキャー悲鳴を上げている間に終わってしまったようだった。
今度こそ落ち着こうよ、アニー。

2012年12月23日日曜日

江戸の下半身事情

江戸の下半身事情
永井義男著
祥伝社



江戸時代にはどんな「事情」があったのだろうか?
 
 


本書は、「江戸期の春本はかなり目を通してきた」という著者が、江戸の「事情」についてわかりやすく解説している本である。

お金持ちにしろ貧乏人にしろ木造家屋に住み、部屋の境界は障子や襖・薄い木の壁なのだから、
ちょっとした音は筒抜け。
岡場所や女郎屋では割床(相部屋)が普通。
長屋では横に家族が寝ている。
そんな「事情」では、羞恥心などとは言っていられず、割り切るしかなかったのだろう。

江戸の人々は今と比べて、よく言えば寛容でおおらか、悪く言えば野放図で罪悪感がなかったという。
「女郎買いは男の甲斐性」
「元遊女の女は自分が遊女であったことを隠したりしない」
「葬式のあとに男が精進落としと称して女郎屋に繰り込むのは普通のこと」
というのだから、やはり現代とは少し感覚が違うようだ。

「女郎買いするならまだしも、素人の女に手を出すのは性悪だよ」
・・・現代でも素人と不倫するよりは、玄人さんと遊んだほうがましなのだろうか。
「娼家が幹線道路沿いで堂々と営業し、それなりの身分の男が白昼堂々と出入りしている奔放さ」
・・・今も大通り沿いに派手な看板を見かけるし、それなりの身分の方が白昼堂々と遊んでいそう。
現代とも共通する点もありそうだ。

江戸時代も現代も取り巻く環境は違えど、まぁ結局は男と女の関係はたいして変わらないのではないだろうか。

その他
・俳人小林一茶が52歳で初めて妻を迎え、日記に回数(連夜複数回!)を几帳面に記録していた。
・陰間はズズズとすするような所作をしては魅力が薄れるから、とろろ汁や蕎麦の類を客の前で食べてはいけない。
など、本書でも知らなくても困らないトリビアを教えてもらったが、こういった知識がいつか役に立つ時が来るのだろうか。

2012年12月21日金曜日

タライのうた―ネパール・タルー族の村めぐり

タライのうた―ネパール・タルー族の村めぐり
秋田吉祥著
東研出版

「急ぐと失敗してたどり着けないかも知れないが、ゆっくり行けば必ずたどり着く」
(ネパールの格言)



書影

 

音楽活動をしていた著者は、「のんびり人生を見直してみたい」と友人から紹介されたネパールを訪れ、惹かれていく。
その後、ネパール人と結婚し、絵師を集めカトマンズにマンダラ工房を開く。
ある日、見慣れぬ民族衣装を着た素朴な姉妹と出会う。
それがタライに住むタルー族(
Wikipedia )との出会いだった。

本書は、そんなタルー族に魅せられてタライに何度も足を運ぶことになった著者が見た、タルー族の温かい生活が描かれている。

ネパールとインドの国境に位置するタライ。
そこは、池や田んぼにたくさん魚が泳ぎ、米の栽培が盛んな豊かな土地であった。
著者は、姉妹の帰郷について行き、タルー族の人々、そして「タルーアート」の美しさの虜になる。

タルー族の女性が家の土壁などに描く、動物や植物が単純化されたカラフルでファンタジックな絵「タルーアート」。
温かみがあり、見るものの心を和ませるような優しい絵である。

彼女たちは、小さい頃から絵を描いていたのではなく、絵の経験がないまま結婚したあと、いきなり素敵な絵を描きだすのだという。
試しに姉妹に鉛筆でヒンズー教の神の絵を写させてみると、ほとんど経験がないにもかかわらず簡単にリアルに写してしまったという。
芸術系の才能は幼い頃から鍛錬しないと開花しないと思い込んでいた私には驚きの記述だった。
生まれた時から周りに絵が溢れ、描く姿を見て育ったからだろうか。

タルー族はどの人も大食漢で、子供も女性も男性の著者よりずっと量を食べるのだという。
菜穀物中心の大量の食事と労働のせいか、彼らの便は硬すぎず柔らかすぎず、健康的な良い色で臭くないという。
これは
「大便通」 に載っていた理想的な便ではないか。

また、働き者のタルー族はきれい好きでもあり、行き届いた清掃のためか著者は村でダニやノミ・南京虫に悩まされたことはないという。

優しい彼らは欲がなく向上心もあまりないためか、給料全部をお土産に使ってしまうということもあったが、読み進めるうちに著者がタルー族に魅せられたわけがよくわかる。

本書の発刊から何年も経っているので、著者はきっと今頃もっとタルー族と深く交流しているのではないか、そう思うとその後のタルー族との交流をぜひ続編として知らせて欲しいと願う。




2012年12月18日火曜日

大便通 知っているようで知らない大腸・便・腸内細菌

大便通 知っているようで知らない大腸・便・腸内細菌
辯野義己著
幻冬舎

バナナ3本分。毎日いい「お便り」届いていますか?



40年もの間、世界各地から6000人超の大便を集め、大便とニラメッコを続けてきた、
その名も辯野義己(べんのよしみ)先生。(本名)
本書は、そんな辯野先生が教えてくれる、大便通になるための楽しい入門書である。

・大便は水分が80%、残り20%の固形成分のうち、1/3が食べカス、1/3が剥がれた腸粘膜、そして残り1/3が腸内細菌。
・日本人ひとりが人生80年間に排泄する大便の量は平均8.8t。
・古代中国や朝鮮半島では、大便をなめてその味で健康状態を判断する「嘗便」(しょうふん)と呼ばれる文化があり、親の健康管理のために子供が大便をなめるのが親孝行。
といったトリビアの他、腸内細菌研究の最前線がわかりやすく解説されている。

先生は9.11の当日、360人分の大便を機内に持ち込もうとして空港でひと悶着起こしたり、研究中にうっかり大便の希釈液を口に入れてしまったり、苦労しながら私たちの健康のために日々努力してくれているのである。
40日間朝はハム・ソーセージ、昼夜はステーキのみを食べ続け、最後はニオイのきつい黒いコールタール状のアルカリ性の便になるという「世にも奇妙な人体実験」 までやってのけるのだからすごい。

大便は、自らの健康状態を知らせてくれる体からの「お便り」だという。
理想は、
硬さ:歯磨き粉~バナナ位
色:黄色がかった褐色。
匂い:やや酸っぱい感じの発酵臭。(腐敗臭でない)
量:20cmくらいのバナナ2~3本分。

「不便」で「腸高齢化社会」になった現代、そんな理想的な「お便り」を毎日受け取ることはなかなか難しい。

大腸は多くの病気と関係している。
腸の老化が外見にも影響を与える。
腸内細菌が肥満にも影響する。

そんな事を聞くと、臭いだの汚いだの言っていられない。
まずは体内からの「お便り」をじっくり読んでみよう。

2012年12月16日日曜日

少年

少年
ロアルド・ダール著
永井淳訳
早川書房

予想のつかない、ワクワクする物語を書いたロアルド・ダール。
彼はどんな少年時代を送ったのだろうか。



『チョコレート工場の秘密』『マチルダはちいさな大天才』 『こちらゆかいな窓ふき会社』など、ワクワクするような児童文学や短編を発表したロアルド・ダール。

ノルウェー人の両親のもと南ウェールズで生まれ、6人兄弟(異母兄弟含む)の賑やかな家庭で育つ。
父親が船舶雑貨業で成功したため裕福な暮らしをしていた。
ダールがまだ3歳の時に姉と父を立て続けに亡くす。
7歳で男子校に入学し、9歳で寄宿舎に入る。
12歳でパブリックスクール入学。
18歳でシェルに就職。

本書は、そんなロアルド・ダール(1916-1990)の少年時代を中心に書かれた自伝である。

9歳の時いつも寄っていた駄菓子屋のいやなばあさんに仕返ししようと、ネズミの死骸をお菓子の瓶に入れたり、いけ好かない姉の婚約者がいつも吸っているパイプにヤギの糞を詰めたりと、今では考えられないイタズラをする。

学校にはイヤな先生がたくさんいて、何かと鞭打ちの刑にされてしまう。
学校には手ごわい上級生がいて、こき使われ、理不尽な仕打ちを受ける。
まるで、ダールの物語に出てくるような世界だ。

それでもこまめに母親に手紙を書き(全て残っているそう!)、毎年家族で楽しい旅行に行くという家族愛に恵まれすくすくと育ったダール。
やっぱりお菓子が好きだったんだなと思うエピソードもたくさんあり、少年時代の辛い体験、楽しい経験が作品につながっていくのだなと感じた。

そんなダールも学校での作文の成績は散々だった。
「論旨支離滅裂・語彙拙劣」
「級で最低の生徒」
「発想にみるべきものなし」
酷評した当時の先生方は、ダールの何を見ていたのだろうか、その後有名になってどう思ったのだろうか。

写真や当時出した手紙・イラストがたくさん掲載されていて、文章も読みやすく飽きさせない、さすがサービス精神旺盛なダールらしい、素敵な伝記だった。
青年期について書かれた「単独飛行」もぜひ読みたいと思う。

以下興味深かった箇所
・1934年当時、無帽・傘なしのサラリーマンなどいなかった。傘なしだと裸で外を歩くような気がした。
・卒業後、大学に行かずに遠く離れた素晴らしい土地へ行かせてくれる会社で働きたいとシェルに応募した。その後ライオンやキリンに会えると喜んで東アフリカに赴任した。


図書館で借りた表紙

2012年12月13日木曜日

洗面器でヤギごはん

洗面器でヤギごはん
石田ゆうすけ著
幻冬舎文庫

7年半かけて自転車で世界一周した著者は何を食べてきたのか。感動の旅行記。



1995年に日本を発ち、7年半かけて自転車で北米→南米→欧州→アフリカ→アジアを周り、87ヵ国を訪れ、2002年に帰国。
本書は、そんな著者が食べてきた食べ物の話を中心に書かれた旅行記である。
㊟2006年に実業之日本社から刊行されたものに20話足して、大幅加筆訂正の上、幻冬舎文庫より刊行された。

読み始めて文章の上手さと表現力の豊かさに、すぐに引き込まれた。

氷点下でのサイクリングなど想定していなかったのに、記録的な寒波に見舞われマイナス13℃の中を走る。
人気のない砂漠で銃口を突きつけられ、自転車以外全て盗られてしまう。
そして幾度となくお腹を壊しながら、著者はくじける事なく赤い自転車でひたすら走り続けるのである。

暴力的な甘さの極彩色のケーキを無理やり食べ、
親切にしてくれた人が作ってくれた堆肥のニオイのスープを前に途方に暮れる。
かき氷の蜜を求めてカップに蜂が黒く群がっているのに慄き、
美味しいパンの中に埋もれていた大量の蟻を見て錯乱状態に陥る。
ポーランドでご飯の上に生クリームとイチゴジャムと砂糖が大量にかかっている「ライス」を頼んでしまい、玉砕する。
シリアでは招待された家庭のどこでも、歯槽膿漏のおじさんの歯垢をかき集めて熟成させたようなヤギの乳のヨーグルトを出され、口の中で小爆発を起こす。

世界には想像を超えた食べ物がたくさんあるんだなぁと改めて思う。

冗談半分で泊めてと言ったらOKしてくれたペルーの軍事施設。
地雷で指を3本失ったカンボジア人にフランスで夕飯をご馳走になり、
怖いと怯えていたクルド人に泊めてもらう。
「日本ではみんなに良くしてもらったから」と食事代を取らないイラン人。

著者とはなんの関わりもないのだが、「見知らぬ日本人にこんなに親切にしてくれてありがとう!」と何度も叫びたくなった。
著者の暑さ寒さ・辛さ喜び・そして感動は、実際に体験しないとわからないかもしれないが、何度も胸が熱くなり、鼻がツーンとしてしまった。
観光地ばかり巡る旅行者には味わえない、人と人との触れ合いがギュッと詰まった一冊だった。

たまたま面白そうな題名に惹かれて手にとったのだが、本書は「世界9万5000㎞自転車ひとり旅シリーズ」第3弾だという。
第1弾「行かずに死ねるか!」第2弾「いちばん危険なトイレといちばんの星空」もぜひ読みたいと思う。

※参考:著者のブログ
※美味しい食べ物ももちろんたくさん載っていた。以下本書からの抜粋
(ブルーベリー)野生の鋭い酸味と甘みが口の中で弾け、澄んだ体に嬉々として染みわたっていった。
(濃い褐色のパン)噛んでいると遠くの方から穀物のほのかな甘みがじわじわとやってくるのだった。
(ピザ)森の奥へ、さらに奥へと、精霊に導かれ、次第に思考力を失い、指についた油も気にせず無我夢中で頬張っている自分がいたのだ。
(石斑魚)言葉も出なかった。磁気のように光る白い身は、噛むとアサリの身に似たむっちりした歯ごたえがあった。一片の淀みもない、清水のように澄み切った味だ。だが、噛んでいると深いコクと甘みが滲み出してくる。

2012年12月11日火曜日

金魚のお使い

金魚のお使い
与謝野晶子著
和泉書院

与謝野晶子の童話集。母の愛にあふれた21編。
書影



与謝野晶子が子育てをしていた当時の子供向けの話には
・仇討ちや金銭に関したことが混じっている
・言葉遣いが野卑
・あまりに教訓がかっている
ものばかりなため、自分の子供たちに自分で作って聞かせたのが童話創作の始まりだという。

その後「少女の友」などの雑誌に次々と子供向けの話を発表していく。
本書は、明治43年に出版された「おとぎばなし少年少女」に収録された話を中心に21編が収められた与謝野晶子の童話集である。
(現代かなづかいに改め、不適切な表現を修正しているとの注意書きがあった。)

金魚が電車に乗っておつかいに行く表題作の「金魚のお使い」、誰もが逃げ出す泣き声の女の子が登場する「女の大将」など、楽しい子供向けの話が掲載されている。

私が一番気に入ったのは、「黄色い土瓶」という物語。
土瓶に目を書くという「おいた」をすると、土瓶は「目が開いた」と大喜びする。
小躍りするたびにお湯をこぼしてしまう土瓶。
お父さんに足を描いてもらうと、お辞儀してお礼を言う。
下を向いてどぶどぶお湯をこぼす土瓶。
そんな土瓶がお使いを頼まれて・・・
と読みながらワクワクするような話だった。

「母さんも言って下すったものですから」など言葉遣いがとても丁寧で、竹久夢二始め当時の挿絵も掲載されていて、明治~大正の雰囲気をたっぷり味わえる。
教訓がかっているのが嫌だと言いつつも、時々教育的指導が透けて見えるところに、子沢山であった与謝野晶子の母心が伺える。

襦袢、帳面、天長節など今ではあまり使われない言葉が出てくるので子供が一人で読むには難しいかもしれない。
「巴旦杏」(はたんきゃう・スモモの一種)や「髷のてがら」(丸髷の根元に飾る布切れ)は私もわからなかった。
しかし、内容的には大人も楽しめる童話集である。

※先日「与謝野晶子が当時爆発的に流行っていたパラフィン注射式の隆鼻術を受けた」と週刊誌で読んだ。本当だろうか。

2012年12月9日日曜日

絵画の住人

絵画の住人
秋目人著
アスキーメディアワークス

絵の中の人が喋るとしたら何を語るのだろうか?絵の中に描かれた食べ物は美味しいのだろうか?




 


主人公の 諫早佑真 はある事情から高校を中退して上京し、「職なし、彼女なし、住処なし」となってしまった。
そんな時、絵の中の人物が動き回る様子を見ることができるばかりか、会話までできるという「素質」を見込まれて、画廊で働かないかとスカウトされた。
絵の知識なんか全くないにもかかわらず。
そこは画廊といっても、有名絵画の複製ばかりを展示してある不思議な画廊だった・・・


セザンヌの「リンゴとオレンジ」に描かれたリンゴは最高においしい、
ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」に描かれている白身魚も美味、だという。
名画に書かれた食べ物にも、味の美味い不味いがあるらしい。

「真珠の首飾りの少女」は几帳面でソファが壁に対して平行になっていないと気になってしまう。
「最後の晩餐」のユダは最後まで迷っていた。

「ひまわり」は気分によって色を変える。

名画の複製版画の中でも、命を吹き込まれている絵ばかり展示してある画廊。
本書は、そんな画廊で働き始めた主人公と、「絵画の住人」たちが織り成すファンタジーチックなミステリーである。

絵を見ながら「中に描かれている人や物がこちらの世界に出てきたら?」、または「絵の世界に入り込んだら?」と考えたことある方は多いだろう。
そんな「もし」が、この物語の中で繰り広げられる。

絵画が意思表示し、時には強硬な主張をして主人公を困らす。
楽しいことばかりではないけれど、最後はうまくまとまってホッとする。

あまり話題になっていないようだが、読みやすくなかなか面白かった。
続編も出して欲しいなと願う。

私の前にも「絵画の住人」が出てきたら歓迎するんだけどな。

2012年12月7日金曜日

忘れられた日本人

忘れられた日本人
宮本常一著
岩波文庫

私たちは日本人の心を忘れてしまったのだろうか?辺境の村を歩いて生活の話を聞いた著者の代表作。この本を読んで「豊かさ」とは何かを考える。



本書は、著者が昭和14~25年頃にかけて各地を歩き、古文書をあたり、村の古老たちから聞いた生活の話をまとめたものである。

隣が何をしているかわかるすぎるくらい狭い村社会で、仲良く暮らしていくため、寄合い制度が生まれた。
年齢別グループに分かれ、取り決め・話し合い・情報交換などをしていたという。
ときに悪口大会になって日頃のうっぷんをはらすが、その場かぎりで、あとは何事もなかったように暮らす・・・なんと合理的な方法だろうと感心する。

一日中よく働き勤勉な一方、歌を歌いながら仕事をするなどストレス解消法も様々だ。
その中でも性に関して
 ・歌の掛け合いで、男女が体を賭けて争う。
 ・盆踊りの歌に性に関する歌詞が多い。
 ・夜這いは女の方もおおらかに受け入れ、親もあまり仲良すぎる時に咳払いをする程度だった。

との記述があり、『盆踊り 乱交の民俗学』にも書かれていたが、改めて性のおおらかさには驚かされる。

その他、昔の道具や食べ物など生活の様子が語られていてとても興味深い。
我が子を人に預ける「貰い子」をする母の気持ちに胸が熱くなり、「歳をとっても働いておらんと気がおさまらん」という老人の言葉に己の怠惰を恥じる。
特に「土佐源氏」という章で、80歳の盲目乞食が語る女性遍歴は「おじいちゃ~ん、もっとお話聞かせて~」と言いたくなるような、小説のような面白い話だった。

借りた本だが、これはぜひ購入したい。
そして、手元に置いて何度も読み返したい、私にとって大切な一冊となった。



※大学の図書館で借りたのだが、茶色に変色して表紙もなくボロボロだった。
おまけに懐かしの返却期限票まで付いていて、読み続けられていることになんだか嬉しくなった。

2012年12月4日火曜日

天使と悪魔  上・中・下

天使と悪魔
ダン・ブラウン著
角川書店

それは地球を救うのか?それとも破滅させるのか?その人は天使なのか悪魔なのか?ダイ・ハードばりに不死身の主人公が一気に駆け抜けていく物語。



通常とは逆の電荷を帯びた粒子からなる「反物質」。
人類最強のエネルギー源でもあるが、非常に不安定で危険を伴う。
そんな「反物質」を初めて作り出した科学者が殺され、スイスにある優秀な頭脳集団、欧州原子核研究機構・セルンの実験室からサンプルが盗まれた。
科学者の胸には「イルミナティ」の紋章が焼印されていた。
イルミナティ---世界史上最も隠密な秘密結社であり、科学的真実の探求に生涯を捧げた人々の集まり。
そしてそれは、ずっと昔に消滅したと考えられていた「神の敵」と恐れられていた強力な悪魔集団だった。
セルンの所長に呼び出されたハーバード大学の宗教象徴学教授 ロバート・ラングドン が、謎に迫る。

この「天使と悪魔」を始め「ダ・ヴィンチ・コード」「ロスト・シンボル」のロバート・ラングドン・シリーズは長い間積んでいた。映画も見ていない。
あまりに有名な作品のため読んだ気になっていたのもあるが、歴史や美術・物理に関する知識が必要なのではないかと二の足を踏んでいたのだ。

高校時代に「物理」とは少し仲良くしたあと、やっぱりあなたのことは理解できないとこっちからフッてやった身。
世界史や美術は近寄りもしなかった関係。
そんな私でも読めるだろうかと不安を抱えながら、積ん読消化のため読み始めた。

読み始めると、そんな不安はすぐに飛んでしまった。
どんどんストーリーにのめり込んでいく。
そして、ダイ・ハードばりに不死身の主人公が一気に駆け抜けていくので、こちらも必死で追いかけるうちに、あっという間に読み終えてしまった。

こんな目にあってどうして助かるんだろう?と疑問に感じても、どんどん進んでいくストーリーに目が離せないのでゆっくり考えている暇などない。
どこからどこまでが事実なのか、どこからフィクションなのか、それも全くわからないが、ときに本を逆さまにしながら何とか食らいついてゴールまでたどり着いた。
久しぶりにハラハラドキドキと、読み終わった達成感を堪能した一冊だった。

読み終わった今、「ああ、ハリウッド映画的だな、エンターテインメント作品というのはこういう物語のことを言うんだな」と思う。
知識のある人もない人もそれなりに楽しめる娯楽小説で、話題になり映画化もされたことに納得する。

次は「ダビンチコード」だ。
でも、連続でこういった本を読むのには体力が必要そう。
少し休憩を入れてから取り組もう。

2012年12月3日月曜日

クリスマスツリー


円錐状の物に、一つ一つもみの葉やバラ、飾りをつけていきました。

2012年12月2日日曜日

興奮する匂い 食欲をそそる匂い ~遺伝子が解き明かす匂いの最前線

興奮する匂い 食欲をそそる匂い ~遺伝子が解き明かす匂いの最前線
新村芳人著
技術評論社

まだまだ解明されていないことがたくさんある「匂い」。そんな匂いを科学する入門書。



録画して毎週楽しみに見ている「探偵ナイトスクープ」。
先日、「オナラのニオイが好きな女性」が、複数の男性のオナラをホースで直接嗅いで喜ぶという衝撃の内容が放送された。
人の好みは多種多様だと理解していても、仰天した。

ヒトゲノムが解読されて嗅覚研究が大きく前進したとはいえ、匂いについてはまだまだ解明されていないことがたくさんあるのだという。
本書は、そんな「匂い」を科学的に解説した入門書である。

匂いの嗜好性は、後天的な学習によって形成されると考えられている。
その匂いを体験した環境に左右されるのである。
2歳児くらいまではまだ匂いに対して良い悪いという概念が存在していないという。
それならきっと「探偵ナイトスクープ」の女性は、幼少期にオナラと素敵な体験を結びつけているから「好みの香り」だと刷り込まれているのだろう。

その他
・調香師が、望みの香りを持つ分子を得るためには試行錯誤によるしかない。
・嗅盲--特定の匂いを嗅ぐことができない人がいる。(ということは自分では気付かなくても部分的に嗅盲の人がたくさんいるのではないか。)
・糞の悪臭の主成分・スカトールは、低濃度の場合花の香りがして香水にも利用されている。
・精子にも嗅覚受容体が機能しており、卵子のスズランのような香りにおびき寄せられて受精する。
・イヌは鼻がよいと言われるが、獲物である動物の匂いには敏感だが、それ以外の例えば植物の匂いに関してはそうでもない。
・様々な生物がフェロモンを利用してコミニュケーションを行っている。
と興味深い話がたくさん掲載されていて読み応えがある。

また、匂いとは直接関係ないが、機能を失ってしまった「偽遺伝子」の塩基配列には「終止コドン」が含まれているのですぐわかるという話は、素人ながらへぇ〜へぇ〜唸りながら興味深く読んだ。

※ここだけの話、「入門書」のようにわかりやすいとは言っても、化学式が出てくると途端に睡魔に襲われるという危機を乗り越えて読了した。

2012年11月29日木曜日

静おばあちゃんにおまかせ

静おばあちゃんにおまかせ
中山七里著
文藝春秋

隠していてもおばあちゃんには全部お見通しよ。



警視庁捜査一課の 葛城刑事 は、およそ警察官らしからぬ風貌と物腰で、唯一の取り柄が聞き上手。
あるきっかけで知り合った女子大生 に、事件の謎を相談して解決してもらう。
・・・と見せかけて、 は家に帰り 静おばあちゃん に謎を解いてもらっていた。
静おばあちゃん は大正生まれで、日本で20人目の女性裁判官だった・・・
本書は、そんな静おばあちゃんが活躍する5話が収録された連作短編集である。

お嬢様刑事が執事に謎を解いてもらう「謎解きはディナーのあとで」を彷彿させるが、事件はそれよりずっと大きい。
ヤクザと警察の癒着、カルト宗教の教祖の死亡、国賓である某国大統領の暗殺と社会的にも重い内容で、「おまかせ」なんて気軽にいえるような事件じゃない。

そんな物語を恋愛問題や、おばあちゃんの孫に対するお小言など軽妙な会話で和らげている。
軽いタッチで読みやすいのだが、おばあちゃんのセリフは本質をついていてドキッとする。
宗教や社会問題、法律、過去の事件についての話はこちらも神妙に傾聴してしまうほどだ。

今まで中山七里さんの小説は、音楽を題材としたミステリーしか読んでいなかったが、こういうタッチの小説もいいなぁと思った。

でも、大統領の暗殺事件の解決を警察が民間人である女子大生に頼むって!
それにはちょとびっくりした。

2012年11月27日火曜日

こちらゆかいな窓ふき会社

こちらゆかいな窓ふき会社
ロアルド・ダール著
評論社

ワクワクがたくさん詰まった宝箱のような一冊。




 


ビリーの家の近くに3階建てのボロボロの空き家があった。
ある日、売りに出されたと思ったら、家の改装が始まった。
そして「はしご不要窓ふき会社!」という文字が。
なんとそこは、キリン・ペリカン・サルが始めた窓ふき会社だった!
ロアルド・ダールの楽しい児童書。

空き家の改装中、便器から風呂桶・家具・ミシンとありとあらゆる物が窓から放り出され、挙句の果ては階段や床板まで飛び出してくる。
不法投棄・環境破壊という言葉が頭をかすめるが、驚いている間もなくキリン・ペリカン・サルが登場する。

えー!えー!の連続ですぐにお話に引き込まれてしまう。
子供じゃなくても目をキラキラさせながら本をめくることだろう。

公爵から、宮殿よりも大きい豪邸の677枚ある窓を綺麗にするよう頼まれるが、
「上二つの階は届かないだろうから、やらなくていい。」って言われたって、
キリンの首にも、ペリカンのクチバシにも秘密があるんだから、簡単にきれいにしてしまう。

「チョコレート工場の秘密」のワンカのお菓子も出てくるし、
こうなったらいいなと頭の中で空想していた、夢の世界が実現する。
登場人物たちが飛び上がって喜ぶと、こちらまで嬉しくなる。

短いお話ながら、楽しい冒険をさせてくれる。
子供だけに独占させるのは勿体無い、ワクワクがいっぱい詰まった宝箱のような一冊だ。

2012年11月25日日曜日

回廊封鎖

回廊封鎖
佐々木譲著
集英社

サラ金に追い詰められて人生が破綻した者たちが、経営破綻した消費者金融の従業員たちに報復!長編警察小説。



貸金業対策法が改正され、大量の過払い利息返還訴訟を受けて6年前に破綻した消費者金融・紅鶴
かつて 紅鶴 に勤めていた者たちが次々と殺害された。
警視庁捜査一課の警部補・久保田紅鶴 の過去を調べる。
社長一族は蓄財と資産隠しのためにいくつもの子会社を設立させていた。
その中でも何千億もの金が香港に住む長男の 紅林伸夫 に流れていた。
経営破綻とはつまり偽装解散であった。
そんな中、愛人と噂される香港女優の映画祭参加のため 紅林伸夫 も久しぶりに帰国することになった。
一方、かつての顧客・追い詰められて人生が破綻した者たちが集まって私的報復を考えていた。
果たして 紅林伸夫 の運命は・・・?

借りた者、貸した者。
返せない者、追い立てる者。
消費者金融により人生が破綻してしまったのは、借りた者だけではない。
貸した側もまた人生を狂わされる。
法的には何のお咎めもなく平然と暮らしている経営者の一族に、私的制裁を。
本書は武富士事件を彷彿させる、そんな警察長編小説だ。

個人的には、お金を借りると早く返さなくちゃと精神的に追い詰められる感じがするので、借金はしない。
そのため、理由があったとしてもお金を借りて返せなくなり、貸した人に復讐を企む人々には共感できなかった。
しかし、過酷な取立て、蓄財や資産隠し、偽造解散をし、莫大な資産を保有している者にはもっと肩入れできない。

それでも彼らの復讐計画はどうなるのかと気になり、ページをめくる手が止まらなかった。
特に後半部分は、緊迫の連続でハラハラさせられる。
そして、想像できなかった意外な展開へ・・・

はぁ、やっぱり借金はしない方がいいな。

※「警官の血」のような重厚さがあったらもっとよかったなと思う。

2012年11月22日木曜日

心を上手に透視する方法

心を上手に透視する方法
トルステン・ハーフェナー著
サンマーク出版

人の心を透視したらどうなるだろうか?




他人の心を本当に全て透視できたら・・・
愛を語り合う恋人たちは、みんな喧嘩別れしてしまうだろう。
いつもニコニコしている好感度の高い人が、実は腹黒な極悪人間だとわかり、人間不信に陥るだろう。
そう考えると、心を透視したらなんだか精神的に疲れ果ててしまいそうだ。

ただ、メンタリストDaiGoのように、読心術を使い人を楽しませたり、人間関係を円滑にするために活用するにはいいなぁと思った。(参考:DaiGoの著書『人の心を自由に操る技術』

本書は、ドイツ人の著者が行っている読心術の解説書である。

ちょっとした仕草や目の動きで相手の感情を読む。
自分の言葉や仕草で相手を誘導する。

人間観察をして練習すれば誰でもできるのだという。
ビジネスにも私生活にも生かせそうな方法だ。

○表情が感情や筋肉に影響を及ぼす・・・だったら、無理やりでも笑って暮らすのが良さそう。
○避けたほうがいい言葉・・・「本来は」など避けたほうがいい言葉を具体的に説明してくれるので納得した。
○誰かを腹立だしく思うときに、気分を良くする方法・・・α波が出ている状態で、相手をギャフンと言わせる場面を想像する。
など、すぐにでも実行できそうな情報が満載だった。

私が一番役立つと思ったのが、「生活を変えなくても思い込みで減量できる方法」。
ホテルの掃除係に、「客室を掃除するだけで運動効果があり痩せる」と伝えると、全員が生活を変えず自然に減量できたという。
「暗示は意識的であれ、無意識であれ、暗示を受け入れてその効力を信じた時にだけ効果がある」のだそうだ。
前に読んだ『超常現象の科学』 には、「本や映画にのめり込みやすい人は暗示にかかりやすい。」と書いてあった。
ならば信じてやってみよう!
自己暗示ダイエット---「私は痩せる!」と自分に暗示をかけ続けるのだ。

でも本音は自分でするより、著者のようなイケメンに痩せると暗示をかけて欲しいな。

↓イケメンの著者

2012年11月20日火曜日

世界珍本読本―キテレツ洋書ブックガイド

世界珍本読本―キテレツ洋書ブックガイド
どどいつ文庫著
社会評論社

珍本・奇本の書籍案内。どんな本にも驚かない、動じない強い精神力が養えそうな一冊。



本書は、世界の珍本奇本ばかりを集めている書店 「どどいつ文庫」が集めた衝撃の本の数々を紹介する書籍案内である。

冒頭から、「放置自転車写真集」「放置ショッピングカート写真集」など、延々とどうでもいいような、それでいて目の前にあったら好奇心からちょっと覗いてみたいような珍本が続々登場する。

その他、
「アメリカのゴキブリ」・・・たくさんのゴキブリが花に集まり、まるで花びらのように見える写真など、ゴキブリをひたすら激写した写真集。

「野外で放尿する自分の写真集」・・・女性カメラマンが大自然の中のみならず、大都会やパーティー会場・トラックの屋根などあらゆる場所で、自身の体から放出されるしずくを撮影した写真集。

「ラブドールと同居している人のお宅訪問」・・・何人ものお人形さんに囲まれた中年女性や、お人形さんと家族全員で団欒する家庭の様子が掲載されている。

そんな珍本が1ページにつき1冊紹介してあり、カテゴリー別に200冊も続く。
目がチカチカするどどいつ文庫のHPと同じように、目が白黒したり、見開いたり、眉間に皺が寄ったりしてしまう。

ところが読み進めると、免疫ができたのか慣れてきたのか、バカバカしいと思いながらも「この本読んでみたいな」と思い始めるから不思議だ。

観光地ワースト80が載っている「世界最悪旅行ガイドブック」なんて、そんな観光地には行きたくないが、どこがワーストなのか確かめてみたい。
高いお金出して購入したいとは思わないが。

本を出版するには手間もお金もかかる。
珍本をそうまでして出版する方々は、お金に余裕があるのだろうか?
採算が取れると踏んだのだろうか?
それとも、どうしても多くの人に見てもらいたかったのか?

この本を読んだら、もうたいていのヘンな本には驚かないだろう。
珍本の中に登場する人、それを出版する人、その本を購入する人、コレクションする人、そしてこの「珍本読本」を読む人、世の中には本当に色々な人がいると痛感した一冊だった。

2012年11月18日日曜日

マチルダはちいさな大天才

マチルダはちいさな大天才
ロアルド・ダール著
宮下嶺夫著
評論社

とにかく面白い。子供にかえって楽しみたい一冊。




マチルダは、3歳になる前に字が読めるようになり、4歳で村の図書館に一人で通うようになる。
子供向けの本を全部読んでしまうと、巨匠たちの文学作品を読みあさるほどの天才少女だ。
詐欺まがいの中古車販売業を営んでいる父と、ビンゴゲームに夢中で家にいない母は、マチルダに何の興味も示さない。
そんなマチルダは、5歳になり小学校へ入学した。
校長は暴君的モンスターの馬鹿でかい女だった。
女の子が自分の嫌いなお下げの髪型をしていたからという理由だけで、その子のお下げを掴んで振り回し、運動場のフェンスの向こうまで放り投げたり、尖ったガラスのかけらや釘が飛び出している狭い戸棚にお仕置きと称して閉じ込めたり、やりたい放題で誰も注意することができなかった。
しかし、担任教師のミス・ハニーは若い優しい先生で、マチルダの天才ぶりを見抜くと何とかこの子の才能を伸ばそうと努力してくれた。
不遇の天才少女が成長していく物語。

とにかくマチルダが愛らしくて、かわいい。
子供だからやられっぱなしというわけではなく、両親や校長に仕返ししようと企む。
小さいながらも早熟で聡明な女の子が、自力で困難に立ち向かっていくのだから、応援したくなるのは当然だ。

大人が読んだら、「児童虐待」「可哀想な少女」という言葉が頭をよぎるだろう。
しかし、子供はそう思わないらしい。
両親から不当な扱いを受け、仕返しをするマチルダに喝采を浴びせたり、
怖い校長をなんとかギャフンと言わせたいと考えたり、大人が思う以上にマチルダも読者の子供も強い。

極端すぎるほどのキャラクターたち、テンポよく進むストーリー、読者を引き込む魅力はさすがロアルド・ダールだなと思う。

この本を読むのに、教育的観点、大人の上から目線の解説、そんなものはいらない。
子供と同じように物語に入り込み、楽しみたい一冊である。

↓ こちらの表紙もあるようです。


2012年11月15日木曜日

自由でいるための仕事術

自由でいるための仕事術
森永博志著
本の雑誌社

好きなことを仕事にし、自由に生きる・・・そんな素敵な男性たちが登場する一冊。



本書は、楽器製作者・ステンドグラス製作者・バーガーマン(ハンバーガー料理人)など、12人の男性の働き方・生き方について著者がインタビューした一冊である。
三浦しをんさんの「ふむふむ―おしえて、お仕事!」は、好きな事を仕事にしている16人の女性たちが掲載されていたが、こちらは男性たちがときに熱く仕事について語っている。

祖父の代からの立川印刷所を引き継ぎ、地元・立川の写真集に衝撃を受けたことから、地元に根付いた写真集やフリーペーパーを発行している印刷所経営者。

人と付き合わず、一日中作業場で一人ミシンを踏みながらひたすらパッチワークに没頭しているパッチワーク職人。

宮大工の棟梁として寺社などの建築を請負いながら、スケートボードの製作販売もしている方は、木に触れるのが何より好きだという。

100年前のアメリカに魅せられて、当時の広告の絵や文字の雰囲気で看板を制作しているNUTSさんは、趣味でもやっぱり100年前のNYの店の看板を制作している。

など、どなたも紆余曲折しながら好きな事を見つけ、努力を重ねてきた。
回り道をしながらも今の仕事に就いた彼らは、その回り道も「無駄ではなかった」「今につながる」のだという。

「いいものを作りたい」
「人に喜んでもらいたい」
「本当の仕事は学校じゃ習えないものだ」

そうつぶやく彼ら。
自由に生き、自分の仕事に本気で夢中になっているやんちゃな少年のような彼ら。
そんな彼らはとても魅力的でカッコいい。(写真は掲載されていないが)

しかし、好きな事を仕事にできたらいいなとは憧れるが、現実的には生活していくだけのお金を稼ぐのは難しい。

私の好きなことといったら、ダンス・読書・食べること。
ダンスはレッスンについていくのが精一杯。
読書は読みたいものを気ままに読んでいる。
食べることは好きだが、繊細な味の違いなんてわからない。
残念ながら、そのどれもが仕事には結びつきそうにないなぁ。

2012年11月13日火曜日

真珠 (NHK美の壼)

真珠 (NHK美の壼)
NHK「美の壺」制作班編
NHK出版

様々な暮らしのシーンで優しい輝きを放ち、女性たちに愛されてきた真珠。そんな真珠の鑑賞マニュアル。



NHKで放送されている美術番組「美の壺」。
私はその存在すら知らなかったのだが、長寿番組らしい。
暮らしの中に隠れた様々な美を紹介する「美術鑑賞マニュアル」のような番組だという。
書籍もシリーズ化され、多数出版されている。
本書は、その中でも真珠の歴史や構造を美しい写真とともに解説した、真珠入門書のような一冊である。

ダイヤモンドの華やかなまばゆい輝きも私たちを魅了するが、真珠の清楚な美しさにも惹かれるのではないだろうか。
ピチピチの10代から歳を重ねた奥深い方まで幅広い年代に愛され、冠婚葬祭のみならず日常にも華を添える真珠は、私たち謙虚な日本人に一番合う宝石ではないだろうか。

真珠は
構造的には玉ねぎのようにたくさんの「真珠層」からできている。
層の厚みは0.5mm~1mm程度。
それが約2500枚も重なってあのような輝きを放つ。
また、環境を整え大切に育てても、満足のいく真珠を得る確率はわずか5%程度。

そう考えると、一層真珠が神秘的な輝きを放っているように見えてくる。

真珠は偶然貝の体内で作られた「球状の貝殻」だから、どんな貝でもその貝殻に応じた「珠」を作り出すのだそうだ。
だが貝を開いた時に、自然にできた真珠が見つかる可能性は万に一つもないという。
それでも、お馴染みのアサリやシジミ・ハマグリを食べた際、もしかしたら真珠が入っているかもと考えるとワクワクする。

もうすぐクリスマス。
愛妻家の皆様は奥様に、独身の方は好きな女性に真珠をプレゼントしてみてはいかがでしょう?
私は・・・写真を眺めてうっとりするだけで我慢しよう。

※他にも、陶磁器・和菓子・花火・染物・文房具など興味深いラインナップがあるこのシリーズ、追いかけてみたくなった。

2012年11月9日金曜日

盗まれた顔

盗まれた顔
羽田圭介著
幻冬舎

「一度覚えた顔は、忘れられない」デジタル時代にアナログ的手法は通用するのか?見当たり捜査にスポットを当てた警察小説。



見当たり捜査---指名手配犯の顔写真を見て記憶にとどめ、街中で見つける捜査。
警視庁捜査共助課の班長である 白戸 ・39歳は、そんな見当たり捜査を専門に行っている。
新宿で見つけた男は捕まえたとき「はめられたんだ」と叫ぶが、捕まえて引き渡すまでが 白戸 の仕事である。
ある日、人の顔を見るのが仕事のはずが、いつの間にか自分が見張られる立場になっていることに気づいた。
それには、中国マフィアや公安も関係しているのか・・・?
見当たり捜査にスポットを当てた警察小説。

顔のパーツの配置・目玉・耳。
その3つは歳をとっても整形しても変えられないため、見当たり捜査ではそこをポイントとして見るのだという。

主人公の 白戸 は、3000人もの顔を記憶している。
暇さえあれば手配写真を見て、脳に焼き付けているのだ。
Nシステムや防犯カメラが世の中を見張るデジタルの時代に、アナログ的手法を用いて犯人を追い詰める。
ある意味単純な仕事であるが、集中力や精神力が必要な職人のような専門性があり興味深い。

一日中街中を歩き回り、いつ現れるかわからない手配犯を探す。
ひと月に1人捕まえられればいい方だ。
無逮捕期間が長くなり、精神的にまいってしまう様子が丁寧に描かれている。

見当たり捜査という設定、アナログとデジタルの対比、先が読めない意外な展開はとても面白いと思ったのだが、前半部分に起伏のないストーリーが続き飽きてしまった。
わざわざここまで長くする必然性がわからなかった。(原稿用紙643枚分)

また、私の読解力のなさから、一読しただけでは理解できず、何度も読み直した箇所がいくつもあった。
特に最後は、どういう意図でこういった終わり方をしたのか、何回読んでも理解できなかった。

警察小説は勧善懲悪の、最後はスッキリ落とし前をつけてくれる方が好みである。
あれもこれも意欲的に盛り込むのではなく、単純でいて奥深い物語が読みたい。
しかしこの設定は面白いので、佐々木譲氏や今野敏氏に見当たり捜査を題材にした警察小説を書いてほしいなと思った。

自分の読解力不足を痛感した一冊だったので、ぜひ他の方の感想をお聞きしたいと思う。

2012年11月6日火曜日

パーネ・アモーレ―イタリア語通訳奮闘記

パーネ・アモーレ―イタリア語通訳奮闘記
田丸公美子著
文藝春秋

下ネタを連発するから通称「シモネッタ」。そんなイタリア語通訳の第一人者である著者の楽しいエッセイ。



広島生まれの著者は、6歳のときに金髪碧眼の美青年からアイスをもらい、
「英語を勉強していつかあんな王子様と直接話したい」と思う。
ノートルダム清心学園に進学し、アメリカ人シスターから徹底的に英会話を叩き込まれる。
地中海文明に憧れ、東京外語大イタリア語科に進学。
1年生の時、36名のイタリア人を12日間引率するツアーガイドを引き受ける。
本書は、その後イタリア語通訳の第一人者となり、下ネタを連発することから「シモネッタ」(故米原万里さん命名)と名付けられた著者の楽しいエッセイである。

最近は男性があまり積極的に女性にアプローチをしなくなったというイタリア人男性や、大物イタリア人とのエピソードなど、陽気なイタリア人について楽しく描かれている。

また、通訳業界の裏話も興味深い。
英語ではMr./Ms.で済む敬称が、イタリア語では大学の卒業学部・資格や叙勲などで変わる複雑さ、男性名詞・女性名詞・・・ああ、こんな難しい言語をイタリアに住んだことがない著者が操るとはすごい。

一つの言葉でも、話し手・聞き手・状況によって、瞬時に尚且つ的確に訳さなくてはならない通訳の仕事に必要なのは
まず、一般常識を含めた日本語の知識。
そして、外国語能力。
その次に、即座に嘘をつく能力を含めた「想像力」だという。
そんな本音を言っちゃっていいのだろうか?(笑)

一番気になったのが、「嘘つきは通訳の始まり」「嘘ばかりついていると通訳くらいにしかなれない」と言って育てた息子さん。
家でステーキを「円高還元!」と言っていたら、保育園の給食で大きめの肉が出たとき「円高還元」と言ったり、転んだ際涙を堪えて「自業自得」とつぶやいたりと、先生方を楽しませたという。

中学1年の保護者会で他のお母さんに
「うちの息子がお宅の雄太君に巨乳のヌード写真集を見せていただいたとか・・・」と言われ、
「うちの子に限って・・・だって巨乳は嫌いだ、手に入る小ぶりサイズが好きだっていつも言っているんですのよ。」と返すシモネッタ。
そして帰宅して息子に
「ヌード写真集を友だちに見せるくらいなら、まずパパに見せてあげなさい。」
その話を聞いた米原万里さんは「まあ、ただでお見せしたんですの?と言うべきよ。」
他の通訳仲間は「あら、いつ私のヌード写真集を持ち出したのかしら、恥ずかしいわって言えばよかったのに。」
息子は「だから通訳の母親なんて欲しくないんだ。最低だ。」

そんな息子さんはどんな大人になるのだろうと思ったら、
東大在学中に最年少で旧司法試験に合格と、人並み以上に立派になられていた。

田丸公美子さんの本は初めて読んだのだが、この楽しさのはクセになりそうだ。

2012年11月4日日曜日

貴婦人Aの蘇生

貴婦人Aの蘇生
小川洋子著
朝日新聞社

哀しくも温かい物語。


新郎は母の兄である伯父さん、51歳。
新婦は亡命ロシア人である青い瞳のユーリ伯母さん、69歳。
結婚後、伯父さんの趣味である剥製だらけの洋館で仲良く暮らしていたが、伯父さんが心筋梗塞で死亡した。
21歳の大学生である私が、伯母さんと洋館で暮らすことになった。
伯母さんは、ロシア最後の皇帝ニコライ二世の四女アナスタシア皇女であるという噂がたつ。
果たして、二人の暮らしはうまくいくのか、また伯母さんは本当に皇帝の娘なのか。


独特のキャラクターが登場する小川洋子さんの小説の中でも、特に個性的な人物がたくさん登場する。
亡くなった伯父さんは、把握しきれないほどの剥製を家中に置いていた。
伯母さんは、その剥製に震える手でお世辞にも綺麗とは言えない刺繍をする。

そして、主人公の恋人は強迫性障害を患っていて、ドアの前でグルグルと8回転し、扉の四隅を親指で押さえつけ、めいっぱいジャンプするという奇妙な儀式をしないと入ることができない。
途中でわずかなズレでもあると最初からやり直すほど徹底している。

一見突飛でユーモラスな設定に思えるが、小川洋子さんの柔らかい文章に包まれ、物語は静かに進行する。
場所や設定も曖昧なのだが、妙なリアリティがあり、心の中にすっと溶け込んできた。
噛み合わない登場人物たちがいつしか一つにまとまって、素敵な物語を織り成していく。
そして、いつのまにか登場人物たちを愛おしく感じていた。

哀れみを感じ、温かい気持ちにもなる。
おかしくもあり、せつなくもなる。
そんな心に残る物語だった。


※個人的には、こちら↓の単行本の表紙の方がふんわりしたやさしい雰囲気が出ているように思う。

2012年11月1日木曜日

家守綺譚

家守綺譚
梨木香歩著
新潮社

秋の夜長にぴったりの物語。



売れない作家、綿貫征四郎 は、亡くなった親友 高堂 の父親から、
隠居するので実家の守をしてくれないかと頼まれる。
渡りに船の話に飛びついて、その家に住むことにした。
庭の手入れはご随意にと言われたので、全く手をかけない。
「私の本分は物書きだから」と非常勤講師の職も「辞めてやった」。
そんな 征四郎 が四季折々の自然と共に暮らす様子が描かれている。


冒頭から、亡くなった親友の 高堂 が屏風の中から現れる。
そんな出来事に遭遇したら悲鳴を上げて逃げ惑うような気がするが、
そんなこともせず「どうした高堂。会いに来てくれたんだな。」と受け入れる 征四郎
庭のサルスベリに惚れられて「木に惚れられたのは初めてだ」という。

そんな超常現象ともいうべき出来事を、すんなり受け入れる征四郎の姿を読んでいると、
読み手の私も疑問を持たずにクスクス笑いながら読み始めた。

そこで、「どうして死んだ人間が屏風から出てくるのか?」「なぜ木が人に惚れるのだろう?」と頭が??でいっぱいになる方にはこの物語は受け入れにくいだろうと思う。


夏目漱石を思い出すような文章で、美しい日本語の中に紅葉・啓蟄、など日本の四季が織り込まれている。
読んでいると清々しい空気の中、澄んだ池のほとりを散歩しているような気分になった。

主人公のどこかトボけた様なおかしさ、その中にある暖かさも魅力的である。
まるで、大人のための童話集のようだ。


静かに進みながらクスクス笑いが混じっているような物語、秋の夜長に読むにはぴったりの本だった。

2012年10月30日火曜日

うちのご飯の60年―祖母・母・娘の食卓

 うちのご飯の60年―祖母・母・娘の食卓
阿古真理著
筑摩書房

祖母から母、娘へとつながる食の歴史。




本書は、祖母、母、娘(著者)が、作り食べてきたリアルな家庭の食卓を再現し、多数の資料を添えて食べることの歴史を考えていくノンフィクションである。

明治36年生まれ。
広島の林業で栄えた村で暮らした祖母の時代。
コメや野菜を田畑で育て、庭に実がなる木を植え、山で山菜やきのこを採る。
食べ物はほとんど自分たちの手でまかない、
かまどで保存食を作り、年中行事の際はごちそうを用意する。
家事を主婦一人でこなしきれないため、娘たちに手伝わせながら家事を教え込んだ。

昭和14年生まれ。
農村で育ち、都会に出た母の時代。
時間に余裕がある専業主婦で、子供の頃の記憶をもとに和食を作り、
雑誌や本・料理番組で洋食や中華を覚え、バラエティ豊かな食卓を整えてきた。
食材はスーパーで買ってきて、キッチンに家電製品を並べる。
子供たちが嫌がるので和食メニューからは遠ざかり、洋食を食卓に出す。
添加物や農薬が気になり、食の安全に敏感になった。

昭和43年生まれの娘の時代。
子供向け番組でスナック菓子のCMが流れ、お菓子の情報をすり込まれた。
母が夕食を作る間、テレビに夢中になり料理のつくり方をほとんど覚えなかった。
居酒屋で様々な料理を知る。
仕事を持ち、料理をする時間が少なくなり、外食や中食が増える。
レトルトや冷凍の技術が発達する。

こうして家庭の食事を時系列に見ていくと、法律改正や技術革新などの転機により人々の食生活が少しずつ変わっていくことがよくわかる。
かつては多くの人が自給自足に近い生活をしていたが、今は生産者の顔が見えない物を食べている。
口にする物の安全性を、知らない人に任せることで自分たちの食生活が成り立っているということだ。
便利な反面、危うさも孕んでいることに不安を感じる。

また、現代人はサバイバル能力が低いことも痛感した。
私自身は、釣り堀以外で釣りも、山菜採りもしたことがない。
無人島に漂着したり山で遭難したら、まず生きていけないだろう。

そして、私はまさに「娘の時代」にどんぴしゃり。
あまり母の手伝いもせず、本を見て料理を覚えた。
梅干し、まんじゅう、おはぎ、赤飯・・・いまだに母が作ったものをもらうだけだ。
せっかく教えてもらえる立場なのに勿体無い。

痩せたいと言いながらもお菓子を貪り食べている私は、まず反省からはじめよう。

2012年10月27日土曜日

ずっとお城で暮らしてる

ずっとお城で暮らしてる
シャーリー・ジャクスン著
市田泉訳
創元推理文庫

広大な屋敷で暮らす姉妹と伯父。人と関わらないようにしていた彼らのもとに、従兄がやってきて平穏が崩れていく・・・




ブラックウッド家 では、6年前にヒ素により4人が毒殺されるという事件が起こった。
生き残った主人公の メリキャット、姉、伯父の3人は立派な邸宅で身を隠すように暮らしている。
メリキャット は仕方なく週2回村へ買い物に出るが、人々の悪意ある視線が辛い。
事件の犯人扱いされその後釈放された姉は、料理や庭の手入れを担当しているが、他人が怖くて屋敷から一歩も出ない。
伯父は、姉の世話を受けながら過去の事件を回想する日々を送っている。
そんな ブラックウッド家 に従兄のチャールズがやってきた。
それをきっかけに、今までの危ういバランスが崩れ少しずつ何かが変わっていく・・・


メリキャット の一人称で描かれているこの作品。
掃除の様子、ペットとの散歩、料理の詳細・・・18歳の少女の口から日常が細かく語られる。
「接写」がずっと続いている感じで、なかなか全体像がつかめない。
そのため、村人がなぜ一家に悪意を持つのか、果たして本当に悪意を持っているのか、また姉始めほかの登場人物が何を考えているのか、メリキャット の語りだけでは判断がつかない。

あまりメリハリのない文章、さりげない会話の中に隠された衝撃、そして真相が明らかになると、周りが見えていなかった分、驚きも大きくなるのだ。
そこが、本書の最大の魅力に感じる。

読んでいると、村の人々からひどい扱いを受ける少女がだんだん可哀想になってくる。
過去に辛い体験をし、見守る保護者もなく嫌がらせを受けながら3人で孤独に生きてきたら、奇妙なおまじないをしたり庭に物を埋めたりと、頑なで変わった少女になっても仕方ないなとだんだん肩入れしていく。

巻末に桜庭一樹さんの解説で「ミステリー」「恐怖小説」と書かれているのだが、そうは思えなかった。
恐怖はあまり感じず、私には不思議な吸引力のある、可哀想な物語のように思えた。

2012年10月25日木曜日

秋期限定栗きんとん事件  上・下

秋期限定栗きんとん事件  上・下
米澤穂信著
東京創元社

「小市民」を目指す高校生、小鳩くんと小佐内さん。果たして平穏無事に暮らせるのか?「春期」「夏期」に次ぐ第3弾。








(上下巻合わせて)

高校生の 小鳩くん小佐内さん
二人はよくつるんでいるが、付き合っているわけではない。
互いに助け合っているだけだ。
小鳩くん は、生まれつき余計なことに口を挟んでしまう性格のため、トラブルを引き起こしてしまう。
小佐内さん は、小柄で大人しそうな見かけと裏腹に「復讐」を愛し「狼」のような性格である。
その内面を隠すべく、二人はお互いに助け合いながら「小市民」として目立たぬように平穏に暮らすことを目標にしているのだが・・・
『春期限定いちごタルト事件』『夏期限定トロピカルパフェ事件』に次ぐ「小市民シリーズ」第3弾。

二人の高校入学から始まったこのシリーズ。
本書は、高校2年の2学期から高校3年の秋までの一年間が描かれている。
年頃の男女だから、「どうせ付き合い始めるんでしょ」という予想を裏切って、助け合いをやめたばかりか、お互い違う相手と付き合い始める。
それぞれデートを重ね、なかなか充実しているではないか!

しかものんきに恋愛している彼らを横目に、新たに登場した新聞部の 瓜野くん が、「放火事件」を追い始めた。
おいおい、二人が主人公のはずなのに。
事件が起きて二人が解決しないとダメじゃないの?
と、読者に衝撃を与え、話は一気に進む。
そして緊迫の下巻、予想外のラストへ・・・

今回スイーツの出番は少なかったが、巻を追うごとに面白くなってきた。
特に下巻は一気読み必須の、ハラハラドキドキで夢中になった。

二人の卒業まであと半年。
「冬期」がこれほど待ち遠しいとは「春期」を読んだときには思わなかったなぁ。

  ~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*

シリーズ物は、1、2巻くらいまでは普通に楽しんで読んでいるのが、3巻くらいになると急に面白さが増し、のめり込んでしまう。
このシリーズもそうだし、「みをつくし」や「ビブリア古書堂」もそうだ。

読んでいるうちに愛着がわくからだろうか。
作者が慣れて来て、筆がのるのだろうか。
売れてきて、いい編集者がつくからだろうか。

どちらにしろ、1巻で合わないとやめてしまうのは勿体無いような気がしてきた。

2012年10月23日火曜日

あのころのデパート

あのころのデパート
長野まゆみ著
新潮社

庶民が手の届く範囲でささやかな贅沢と非日常を味わうことができた場所、デパート。「あのころ」が懐かしい方も、「あのころ」を知らない方も。



「日曜日に家族揃ってデパートへ行き、大食堂でお子様ランチを食べる」
懐かしそうにそんな思い出を語る方を見聞きするが、残念ながら私にはそういう思い出がない。
大家族でもあり、土日も関係ない家庭だったので、一家揃って出掛ける事などなかった。
また、徒歩圏内にいくつかデパートがあったため、必要なものを買ったらすぐに帰宅していたのだ。
その頃にも大食堂はあったのだろうか?

それでもたった一度だけ、電車に乗って行った都心のデパートで鉛筆を買ってもらったことは、嬉しくて今でも覚えている。
なんの変哲もないありふれたものだったのだろうが。

行動範囲が広がって、初めて日本橋の三越や高島屋、銀座和光に行った時はその重厚さに圧倒され、緊張していることがバレないようにドキドキしていた。
あの頃は若かったな。

誰でも持っているデパートの思い出・・・
本書は、母娘共にデパート勤務の経験がある著者の、デパートにまつわる思い出や裏話がギュッとつまった一冊である。

簡単な歴史から始まって、手品のような見事なラッピング、店員さんが持つ透明バックの秘密、かつていた書家や筆耕さん、店内アナウンス、お辞儀、休憩時間、一日の仕事の流れなど、働いていた人でないとわからない裏情報が面白い。

・かつてはハンカチの類までほとんどガラスケースに展示されていた……それじゃあ気軽に手に取ることができないではないか!
・自社の包装紙は看板を貶すことになるので決して捨ててはいけない……そういえば、おばあちゃんが包装紙を大切にとっていたなぁ。
・「お手提げ袋にお入れしましょうか」など「お」や「ご」をむやみやたらにつけたデパート用語……今でもあまり変わりないかも。
・セロテープが高級品で、毎朝うどん粉を練ってホルマリンを入れて自家製糊を作っていた……怖っ!

そういった話が続々と出てきて、知らない世界をのぞき見する楽しさが味わえ、デパートの思い出に浸れる、そんな本だった。

著者の長野さんは1959年生まれというから、同年代で都心に住んでいた方なら尚更懐かしいのではないだろうか。
しかし、年代が違っても土地勘がなくても、へぇ〜ボタンを連打したくなるような話がいっぱいの一冊だった。


※著者は自分にも他人にも厳しい方なのか、厳しいことをたくさん書かれていてズボラな私は反省しまくりだった。
もう少し表現が柔らかいといいのになと思った。

2012年10月21日日曜日

パラダイス・ロスト

パラダイス・ロスト
柳広司著
角川書店

ジョーカー・ゲーム、ダブル・ジョーカーに次ぐ第3弾。鮮やかに人を欺く・・・そんなスパイたちが活躍する短編集。



昭和12年、「魔王」の名で恐れられる結城中佐 によって、日本帝国陸軍内部に秘密裏に設立されたスパイ養成組織、通称「D機関」
軍の組織でありながら、士官学校出の軍人ではなく一流大学を卒業した優秀な者たちに諜報員教育を行い、任務を遂行させる・・・

本書は、そんなスパイたちの暗躍を描いた短編集「D機関シリーズ」の第3弾である。

彼らの卓越した能力が魅力的なこのシリーズ。
「建物に入ってから試験会場までの歩数、階段の数を答えよ」
「鏡に映した文章を数秒間見て、完全に復唱せよ」
そんな試験を突破した優秀な者が、語学や知識、肉体、精神力を鍛え上げ、一流のスパイになっていく。

「そんな優秀な人いないだろっ!いや、もしかしたらいるかもしれない」と思いながら読み進める。
ハラハラドキドキしつつも、実は心の奥底で「優秀な彼らが失敗することはない」と確信もしている。
「殺さない・死なない」を信条としているので、殺人もほとんどない。
そんな安心感も魅力の一つだ。

そうは言いつつも、いったいこの話のどこに「D機関」が絡むのだろうと疑問に思っていると、そうきたか!と驚いたり、意外などんでん返しがあったりと、短編ミステリーとしてもとても楽しめる小説である。

とにかく彼らの活躍が、惚れ惚れするくらい見事でカッコいい。
本名始め私生活や私情を明かさず、自分を隠し「偽の人物」になりきるスパイたち。
昭和初期という設定だが、ちゃぶ台やお茶漬け、ステテコ・・・そんな昭和の匂いがする小道具は出てこない。
あくまでもクールに任務を遂行する。
お近づきになりたいとは全く思わないが、彼らはとても魅力的だ。

存在すら秘密であるはずの「D機関」の詳しい試験内容が、なぜか各国の人々の噂にのぼり大勢が知っている・・・それはおかしいのでは?と思うのだが、スパイたちにのぼせている私は気付かないフリをする。

このシリーズの大ファンとしては、謎に包まれた彼らは永遠にミステリアスなままでいて欲しい。
そして、いつまでもスパイ活動をしていて欲しい、そう願わずにいられない。

2012年10月18日木曜日

文庫 江戸っ子芸者一代記

文庫 江戸っ子芸者一代記
中村喜春著
草思社文庫

大正2年生まれの江戸っ子芸者。旺盛な好奇心で英語をマスターし、たくさんの要人に愛された著者の自叙伝。



著者の 中村喜春(きはる)さん(1913-2004)は、祖父が病院長という比較的裕福な家庭で育つ。
小さい頃から花柳界に憧れ、「どうしても芸者になりたい」と言い続けた末、自前(借金なし)で新橋の芸者になる。
外国人のお客様が増え、「伝統芸能を英語で説明したい」一心で専門学校に通い英語をマスターする。
朝は6時半起床で英語の学校、午後は長唄の稽古に通い、その後支度をして6時にはお座敷に出るという毎日を過ごし、英語が話せる芸者として有名になっていく。
本書は、そんな 喜春さん の生い立ちから外交官の夫と結婚しインド滞在までを綴った自叙伝である。

その当時新橋だけでも、12歳くらいから60歳くらいまで1200人の芸者がいたという。
芸者はいつも美しく、世間の苦労を知らない優雅な顔をしていることが理想。
そのため、お客様の前で物を食べない、自分から呑みたいような態度をとらない、芸者同士が私語を交わさないなど、ホステスさんとは違う独特の厳しいルールで教育される。

その上、床の間の掛け軸、花器、蒔絵のお椀始め食器類など、一流のものに囲まれ自然に目が肥えていく。
また、文士、皇族、財界人、政治家、海外の要人と毎日交流しているのだから、芸者達も洗練されていくのだろう。
「花嫁学校に通うより3ヶ月芸者に出るほうがプラス」という著者の言葉になるほどと思い、芸者出身の妻を持つ有名人が多いことも納得する。

喜春さん は、お客様と一流ホテルなどあちこちに出掛け、当時の一般女性とは到底比較にならない行動範囲・知識・人脈と、持ち前の好奇心で様々なことをどんどん吸収していく。

・警察に呼び出されあらぬ疑いをかけられた時、当時の米内首相と有田外相と知り合いだったため「首相官邸と外務省に電話を掛けさせて」と言ったら、警官の態度がころっと変わった話。

・英国の貴族についた尊大な通訳が、あまりに無知なため我慢ならず啖呵を切った話。

読んでいて、一本筋が通り惚れ惚れするような思い切りのよさ・行動力に、「きっぷがいい」「姉御」という言葉がピッタリの 喜春さん に惹かれてしまう。
「どこまでも喜春姐さんについて行きます」と言いたくなるような方だ。

興味深い当時の風習や、耳慣れない業界用語も満載で、いつまでもお話を伺っていたいと思える一冊だった。

戦後編、アメリカ編など続編が出ているようなのでぜひ読んでみたい。

※本書は1983年に刊行されたものの文庫化です。

2012年10月16日火曜日

心がぽかぽかするニュース HAPPY NEWS 2011

 心がぽかぽかするニュース HAPPY NEWS 2011
日本新聞協会編
文藝春秋

「ぽかぽか」しませんか?HAPPYになるニュースだけを読みたい!そんな願いを叶えた一冊。



日本新聞協会が2004年度から始めた、新聞を読んでHAPPYな気持ちになった記事とその理由を募集する「HAPPY NEWSキャンペーン」
本書は、その応募作となった新聞記事と応募者のコメントが収録されている。

政治、経済、事件・・・新聞を眺めても暗いニュースばかりで気が滅入る。
しかし、山中教授のノーベル賞受賞は本当に「HAPPY NEWS」だった。
そんな嬉しいニュースを読むと、ノーベル賞受賞にはなんの貢献もしていないが、嬉しくて心が「ぽかぽか」する。

もっと「ぽかぽか」したい!と思い、この本を読み始めた。

思わず笑ってしまったのが、「オサムさんの妻、おめでた」(夕刊三重 2011.11.12)
農作業中の男性が腰掛け、隣に座る妻がお茶を勧めているように見えるリアルな「夫婦かかし」のオサムさん夫妻。
24時間花畑を監視するという過酷な仕事にもかかわらず、妻が妊娠したという。
推定50~60歳の夫婦が、高齢出産に挑む!
昨年末に無事「2歳の女児」を出産したそうで、よかったよかった。
参考:日本新聞協会ホームページ掲載の記事

しかし、2011年度の新聞から選ばれたその他の記事は、「なでしこジャパンの活躍」「医療の発展」「海外のほのぼのニュース」などもあるのだが、やはり震災関連の記事が中心だった。

・津波で家を流されたが夢は流されずに、定時制高校を卒業し大学進学を決めた67歳の女性。
・被災地で復興の手伝いをする神戸市職員に、手作りのご飯を作り続けた「おせっかい婆さん」
など、人の温かみを感じる「いい話」なのだが、その奥にある震災の傷跡がどうしても目に浮かび、涙が止まらなくなってしまった。

「ぽかぽか」するつもりが、他の温かい記事を読んでも涙腺がゆるくなってしまったのか、涙が溢れてくる。
私にとっては、「じんじん」くるニュースだった。
それでも、読み終わると勇気をもらったようで「頑張ろう」という気になる。

新聞を読むときに「HAPPY NEWS」を探す楽しみも増えた。
毎年出版されている本書。
来年度版にも、たくさんの「HAPPY NEWS」が載っていますようにと願う。

2012年10月14日日曜日

珈琲店タレーランの事件簿 また会えたなら、あなたの淹れた珈琲を

珈琲店タレーランの事件簿 また会えたなら、あなたの淹れた珈琲を
岡崎琢磨著
宝島社

良いコーヒーとは、悪魔のように黒く、地獄のように熱く、天使のように純粋で、そして恋のように甘い。━━━シャルル=モーリス・ド・タレーラン=ペリゴール




古都・京都。
街並みの背後にひっそり佇む「純喫茶タレーラン」
こじんまりした木造平屋の、隠れ家的喫茶店。
ある日、主人公のアオヤマさんは、そこで理想のコーヒーに出会った。
バリスタは美星という若い女性であった。
美星はおいしいコーヒーを淹れながら、身近に起こる謎めいた事件を見事に解き明かしていく・・・
そんな連作短編集。


私は毎日コーヒーを飲むが味にはこだわらない、というか味がわからない。
豆の違いも全くわからないし、家で一人で飲むときはインスタントで十分だ。
それでもやっぱり読書のお供にコーヒーが欲しくなるし、レストランでは食後にコーヒーを注文する。

コーヒーは好きだがなんの知識も持たない私に、コーヒーの魅力をたっぷり教えてくれるのがこの「珈琲店タレーランの事件簿」だ。

可愛らしい表紙から、気軽に楽しめるラノベのような本だと思って読み始めると驚く。

内容的には、日常の謎解きであり殺人事件も起こらない。
だが、主人公もバリスタ・美星も20代前半という設定のわりに、言葉遣いや言い回しに軽々しさがなく、推理場面も頭を使う。
えっ!と驚くどんでん返しの連続も含めて、なかなか本格的だ。
なぜか親父ギャグを連発するバリスタ・美星も、過去に色々あったせいか男に都合のいい可愛い女というわけでもない。
全編を通して、コーヒーの香りが立ち上る落ち着いた雰囲気のミステリーだ。

読んでいる時も読み終わったあとも、やっぱり美味しいコーヒーを飲みたくなる一冊であった。

2012年10月13日土曜日

テルマエ・ロマエV

テルマエ・ロマエV
ヤマザキマリ著
エンターブレイン


それでもやっぱりルシウスはかっこいい。



テルマエ・ロマエⅠ~Ⅳを一気読みして、ルシウスの魅力にはまってしまった。
映画も見に行き、古代ローマ人として違和感のない阿部ちゃんの演技を楽しんだ。

Ⅴ巻が出たと聞いたら、嫌が応でも期待が高まるではないか。
ワクワクしながら読んだのだが・・・

古代ローマと平たい顔族の国・現代日本を行ったり来たりする読み切りで始まったこのシリーズだが、いつの間にかルシウスは平たい顔族の営む温泉旅館に長期滞在している。
本書でルシウスは、恋をしたり乱暴者と対立したりと活躍するのだが、お風呂の話からだんだん離れてきた。

Ⅴ巻を読んでわかった。
このシリーズは、今までにない斬新な設定が最大の魅力なんだなと。
生真面目なルシウスが、驚いたり感動したりするシーンが面白かったのだ。
そういうシーンが減ると面白みも減ってしまう。
連載を続ける以上、新鮮味がなくなるのは仕方のないことなのかもしれない。

それでもやっぱり、どんな時も眉間に皺を忘れないルシウスは、相変わらずかっこいい。
合間に挿入されるエッセイも、楽しめる。
生真面目なルシウスの恋の行方も気になるので、続きも読みたい。

だけど、私には一気読みの方が性に合うようだ。
次は連載が終わり、完結したら大人買いしようと思う。  

2012年10月10日水曜日

神去なあなあ日常

神去なあなあ日常
三浦しをん著
徳間書店

林業見習いの青年が見た、山の四季折々。ゆったりした時間が流れている村の暮らしに癒される一冊。



高校を卒業したら「フリーターにでもなろう」と気楽に考えていた 平野勇気 18歳。
母親と先生の策略で、生まれ育った横浜を離れ三重県の山奥「神去(かむさり)村」へ行くことになってしまった。
本書は、そこで林業見習いとして働き始めた 勇気 の成長物語である。

「これは主人公が成長していく職業小説だ」
「三浦しをんさんの小説なら安心できる」
そう思いながらこの本を購入し、ストレスが溜まった時に読もう、ヘビーな本を読んだ後に読もう・・・気づいたら積ん読本の山に紛れ込んでいた。

引っ張り出して読んでみると、思っていた通りの成長物語で意外性はない。
それでもやっぱり面白い。
登場人物は魅力的だし、林業のトリビアも興味深い。
クスクス笑え、感動して泣ける小説。
さすがしをんさんだなぁ、と改めて思う。

自然豊かな村の様子、最初は「ウザイ」けれど仲良くなれば温かい村の人々、そして信仰の対象である神秘的な山。
読んでいくうちに、都会とは違うゆったりとした時間が流れている神去村の暮らしに癒されていく。
また、お祭りの部分は男たちの気迫が充満し、ハラハラドキドキしながらも神聖な気持ちになる。

主人公の少年は頼り無さ過ぎるが、山を自由に駆け回る村の男たちが逞しく魅力的に描かれている。
そしてそれを見守る女たちはもっと強い。

影響されやすい私が、もし男子中学生だったらこの本を読んで「オレは山の男になる!」と林業を目指したかもしれない。
もし女子中学生だったら、「こんなかっこいい男たちを守る強い妻になりたい!」と願うだろう。
人生甘くない、厳しい面も沢山あると知ってしまった私は、ちょっと歳をとりすぎてしまった。

本棚に戻し、安心したい時にまた再読しよう、神去村の人々はきっといつまでも変わらぬ温かい気持ちで待っていてくれるだろうから。


※様々な職業にスポットを当てた三浦しをんさんの小説は、読みやすい文章で中学生くらいの子供たちにぜひ勧めたいような内容だ。
しかし、いたいけな少年少女たちに読ませたくない表現がいつも出てくるのが残念に思う。
本書でも、何も主人公の下半身を疼かせなくても、「やりたい」と叫ばせなくても若者の恋心は十分表現できると思う。
世間には有害な描写や映像が溢れているので、中学生達はこれくらいなんとも思わないかもしれない。
(自分のことは棚に置き)それでも気になる私は、考え方が固すぎるのだろうか。

2012年10月6日土曜日

世にも奇妙な人体実験の歴史

世にも奇妙な人体実験の歴史
トレヴァー・ノートン著
赤根洋子訳
文藝春秋

人間は誰でも好奇心旺盛だが、中でも科学者の好奇心の強さといったら・・・偉大なる科学者たち、万歳!



本書は、科学者たちが過去に行なってきた数々の人体実験を集めた、科学者たちの血と汗と涙の物語である。
病気の治療だけでなく、麻酔や薬、食べ物、寄生虫、病原菌、電磁波とX線、ビタミン、爆弾、毒ガス、潜水艦、サメ、深海、成層圏と超音速・・・と様々な分野の実験が多数掲載されている。

人類や科学の発展のために実験は不可欠である。
それはわかる。
わかるのだが、なにもそこまで自分の体を痛めつけなくてもと、科学者たちの好奇心の強さに驚く。

孤児院の孤児や囚人、また「人類の苦しみを救うための実験なのだから自分たちも苦しむべき」というボランティアを実験台にした事例も多数紹介されているが、自分自身の体を実験台にする科学者たちもたくさんいたのだ。

放射線学者ジョージ・ストーヴァーは、自分の体を使い6年にわたってラジウムの人体への影響を調べ、数度の切断手術と100回以上の皮膚移植手術を余儀なくされたが、「有用な事実が明らかになるなら、それと引き換えに科学者が死んだり手足を失ったりすることなど大したことではない。」と語る。

他にも
・アルファベット順に薬を試してみようとして、トリカブト(aconitum)とヒ素(arsenic)でつまずきハズ油(croton oil)という下剤でギブアップした薬剤師。
・動物園の死骸を片っ端から試食する。
・マラリア原虫を持った蚊がいるかごに自分の腕をくくりつけ、3000回も刺されて予防接種の有効性を調べる。
・黄熱病の患者の唾液、血液、黒い吐瀉物を飲んだアメリカの医学生。
などなど、次から次へと強者科学者が登場する。

高所恐怖症の私は、飛行実験や潜水実験の部分を読んでいるだけで、絶叫マシーンに乗っているような恐怖を感じた。

よくやるなぁと思いながら読んでいると、自然に眉間に皺が寄ってくる。
しかし、勇気を出して動物やキノコを最初に食べた人がいてくれたからこそ、今私たちは美味しく食べ物を食べることができるのだし、誰かが過去に薬や医療行為を試してくれたからこそ、医学が発展してきたのだ。
そう思うと彼らに感謝すべきなのだろう。
(人道的な問題はあるのだが)

登場する科学者一人ひとりに深い人生があるのだろうが本書はそこにはあまり触れず、次から次へと実験が紹介される。
私の頭の中も、
すごい!
でも、怖い!
でも、偉い!
でも、なぜそこまでやるのか理解できない!
と、どう捉えていいのかよくわからなくなってきた。

最後に、大阪大学医学部教授の解説があり、それを読んで何とか少し落ち着いた。
はぁ、科学者の好奇心ってすごい!


※本書に、「食品加工のプロセスから昆虫を完全に締め出すことは不可能だから、我々はみんな年に
約1㌔もの昆虫を食べている」との記述があった。著者はイギリス在住なのだが、日本でもそうなのだろうか?

2012年10月2日火曜日

西の魔女が死んだ

西の魔女が死んだ
梨木香歩著
新潮社

おばあちゃんと過ごした日々を忘れない。
 
 


かつて同居していたおばあちゃんと、色々な話をした。
一緒にカレーを作ったこともあった。
母と違っておばあちゃんは怒らなかった。
図に乗って色々頼んで、おばあちゃんを困らせても怒らなかった。
そんなおばあちゃんを思い出す本だった。


おばあちゃんが死んだ。
「西の魔女」と呼んでいる英国人のおばあちゃんだ。
まい は、中学入学後登校拒否になった時期に、おばあちゃんと過ごしたひとときを思い出す。

あらすじを簡単に書くとたったこれだけで終わってしまう。
でも、この本の中には、まいとおばあちゃんとの思い出がぎゅっと詰まっている。

おばあちゃんと、パンを並べて材料をポンポン置いていきサンドイッチを作ったこと。
鍋をかき混ぜてジャムを作ったこと。
シーツを足で踏みながら洗濯したこと、洗濯物をキチンと畳んだこと。・・・

そんな自然の中の日常の風景・二人で過ごした様子を読んでいると、どんどん想像が膨らんでいく。
草の香りが漂ってきて、おばあちゃんちの外壁はペンキがところどころ剥げていて、窓は木枠で開けるときにガタッと音がする・・・
私の頭の中でおばあちゃんの家や庭がくっきり浮かんでくるのだ。
そして、まるで自分が まい であるかのように思えてきた。
まい は13歳の女の子なのに!

積ん読の山に埋もれていたこの本を引っ張り出して読んだのだが、なぜもっと早くに読まなかったのだろうか。
私にとっては、これから何度も読み返したい大切な一冊になった。

ヘンな本ばかり読んでスレた女になってしまったと感じていた自分が、こんなに感動できたことに驚いた。
自分にもまだこんな感情があったんだと嬉しくもなった。
私も西の魔女に魔法をかけてもらったのかもしれない。

2012年9月30日日曜日

夏期限定トロピカルパフェ事件

夏期限定トロピカルパフェ事件
米澤穂信著
創元推理文庫

「小市民」シリーズ第2弾。ミステリー色が強くなり、ふたりの関係も変化してきて・・・目が離せない青春ミステリー。



「春期限定いちごタルト事件」 に次ぐ第2弾。
登場人物は、高校生の小鳩くんと小佐内さん。
小鳩くんは、生まれつき余計なことに口を挟んでしまう性格のため、トラブルを引き起こしてしまう。
小佐内さんは、小柄で大人しそうな見かけと裏腹に「復讐」を愛し「狼」のような性格である。
その内面を隠すべく、二人はお互いに助け合いながら「小市民」として目立たぬように平穏に暮らすことを目標にしている・・・のだが、事件が彼らをほっといてはくれないのだ。
いや、もしかして彼らが事件を起こしているのか?

第1弾では、ポシェットの紛失などちょっとした謎を解いていた二人だが、この第2弾では大きな事件に遭遇する。
大変な状況になっても、推理できることが嬉しくてちょっぴり高揚してしまう小鳩くん。
そして、謎だらけだった小佐内さんの正体もだんだん明らかになっていく。
第1弾より、ぐっとミステリー色が強くなり、変わらず楽しく読める割には内容が本格的になってきた。

ふたりの関係はこれからどうなっていくのか?
最後が気になる終わり方なのでやっぱり次も読みたくなってしまう。

また小佐内さんは大の甘いもの好きで、要所要所にスイーツが出てくるのも楽しい。
今回は「小佐内スイーツセレクション・夏」を二人で食べ歩く。
中でも本書に登場するケーキ「シャルロット」。
泡がさらりと溶けていくような軽やかな口当たりに、見え隠れする程度のほのかな甘味。スポンジ生地の内側は、クリームチーズ風味のババロアだった。そのチーズの味わいは自己主張が強くなく、その穏やかな味わいをしみじみと楽しんでいると内側に隠されたマーマレードのようなソースが不意に味を引き締めてくれる。
読んでいるだけでうっとりしてしまう。食べてみたいなぁ。

※台風の中出かけた先で「ミスドの半額セール」に遭遇しました。激しい雨風の中、行列を作る人々を見て、「よく並ぶなぁ」と思いながらも最後尾に並んで買ってしまった私。
美味しいものが出てくる本は、「年中無休でダイエット中」の身にとってやっぱり危険だなと思いました。  

2012年9月29日土曜日

春期限定いちごタルト事件

春期限定いちごタルト事件
米澤穂信著
創元推理文庫

事件、男子高校生と女子高生、スイーツ、そして青春!



小鳩くんと小佐内さんは、同じ高校に通う高校1年生。
二人は慎ましい「小市民」を目指し、目立たないように日々暮らしている。
・・・つもりなのだが、二人の周りではちょっとした事件が頻発してしまう。

事件といってもポシェットが無くなったとか、試験中にドリンクのビンが割れたとか、身近な謎ばかりで気軽に読めるのが嬉しい。

「小市民」を目指しているならば、謎になぞ立ち向かわなければいいのに、なぜか巻き込まれてしまい謎を推理してしまうのである。

二人がなぜ「小市民」を目指しているのか。
中学時代のある出来事がきっかけらしいとほのめかすだけで、この巻では明かされていない。
また、小鳩くんと小佐内さんは、恋愛関係ではなくお互い助け合う約束をしているだけなのだが、そこは若い男と女なのだから、恋愛に発展していく・・・かもしれない。

事件は解決するが、そんな二人の過去と未来が気になるまま終わってしまうので、気になって次も読みたくなってしまう。

小山内さんは大の甘いもの好きで、特にストレスが溜まるとケーキバイキングに行って食べまくったりと、要所要所でスイーツが出てくるのもポイントだ。
遠い青春時代を思い出しながら、気軽に楽しめる一冊だった。

2012年9月27日木曜日

~遊郭経営10年、現在、スカウトマンの告白~ 飛田で生きる

~遊郭経営10年、現在、スカウトマンの告白~ 飛田で生きる
杉坂圭介著
徳間書店

 経営者として10年、その後スカウトマンとして飛田で働いている著者の体験記。



「飛田で店持ったら稼げるで」
31歳の時リストラにあいファミレスでバイトをしていた著者に、先輩がそう声をかけた。
それをきっかけに、飛田新地の料亭経営者となる。
10年間経営した後、「トラブル対応に疲れ果てて」店を知人に譲り、現在は女の子のスカウトマンとして働いている。
本書は、経営者として体験した飛田内部の様子を綴った著者のドキュメントである。

「さいごの色街 飛田」 では女性フリーライターが外部から取材をしていたが、こちらは男性経営者として内部から発信している。
そのため警察署への申請、1200万円かかった店の開店資金、月々かかる経費、女の子の確保や管理の難しさなど、著者の経験が詳しく書かれている。

具体的なサービスの内容も書かれているのだが、15分コース(1万1千円)の場合、おばちゃんにお金を渡すところからストップウォッチがスタートする。
お菓子と飲み物とおしぼりを渡し、少し言葉を交わしトイレで洗浄する。
その後部屋に戻りサービスする。
帰り支度を考慮すると実質7分程度なのだという。

女の子にとってはヘルスやソープと違い、見知らぬ男と長時間過ごさなくて済むので断然楽なのだというが、そんな短時間に大金をつぎ込んで何が楽しいのだろうか。
私には申し訳ないが、男たちの行動が理解できない。

表に出せない内容は書いていないのだろうが、なかなか知りえない情報を内部から発信したという意味では貴重な本だと思う。
しかし、経営者やスカウトマンとして女の子を自分の儲けの道具と見ている点が、個人的に好感が持てない。(経営しているのだから、当たり前のことなのだが)

料亭を譲った経緯もよくわからない。
「疲れた」というが、儲かっていたなら続けていただろうと思う。
開業資金の内訳は細かく書かれていたのに、いくらで譲ったのかなど詳しい経緯は全く書かれていない。

女の子をスカウトして20万円。
その子が働き続ける限り、その子の売上の5%貰える。
多い日で10万円稼げる。
というので、スカウト業の方が遊べるし儲かるのだろうか。

なんにせよ、飛田に興味がある男性向けの本だなと感じた。

2012年9月25日火曜日

かき氷屋 埜庵の12カ月

かき氷屋 埜庵の12カ月
石附浩太郎著
主婦の友社

冬でも美味しく食べられるかき氷。頭がキンとならないかき氷。そんなかき氷専門店を開いている著者の12ヶ月。



大学卒業後、普通のサラリーマンとして働いていた著者は、たまたま立ち寄った長瀞で食べたかき氷に「脳天からカチ割られるほど」の衝撃を受けた。
36歳で会社を辞め、調理学校へ通ったり飲食店でのアルバイトをしながら、38歳の時ついに鎌倉に「埜庵」をオープンする。
その後鵠沼海岸に移転し、「かき氷専門店」として営業を続けている。
この「かき氷屋 埜庵の12カ月」は、そんな著者のかき氷に対するこだわりと情熱がグッと詰まった良書である。

一年中かき氷?
凍えるように寒い日にもかき氷?
屋台でなく店を構えて、しかもかき氷の専門店?
900円もするかき氷?
そんな疑問も本書を読むと納得するのである。

スタッフは、卒業以外で自分からやめた人もやめてもらった人もいないという。
これだけで、お店の温かい雰囲気や店主のお人柄がわかるのではないだろうか。

当初はかき氷だけでやっていくのは難しいと考え、ランチメニューにも力を入れていたが、かき氷のオーダーが一杯もないことに気づき、「かき氷以外のことはやめよう」と覚悟を決める。
(現在は夏の繁忙期以外に「きちんと手をかけて作った料理をお出ししている。」)

生産者の顔が見えるこだわりの果物を使い、時々現場を見に行くという著者。
冬でもおいしく食べてもらうためにシロップの粘度を上げたりと、様々な工夫を凝らしお客様のためにかき氷に情熱を注ぐ著者の姿勢に感動する。

特にこだわっているのが日光で丁寧に育てられた天然氷。
冷凍庫は通常-20℃だが、天然氷の質感が変わってしまうため設定温度-5℃の専用倉庫で保管し、削る際に-2℃に温度を上げてから削るのだという。

氷の中にゼリー寄せにしたぶどうやいちごを入れたり、塩コショウをかける「キャラメルミルク」など他では食べられないメニューが並ぶ。
美味しそうな写真がたくさん掲載されているので、目でも楽しめる一冊である。

そんな中で私が一番食べてみたいと思ったのが、「お米のアングレース」
粥状に炊いたお米に卵と牛乳を加えたカスタードソースのようなものを氷にかけ、イチゴをトッピングし、別添えの苺ソースをかけて食べるというものだ。

我が家からはとても遠いのだが、ぜひ足を伸ばしてそのかき氷を食べてみたいと思った。

埜庵のホームページを覗いてみたのだが、あまり力をいれていないのか、本書の写真に比べてイマイチなのが残念である。

2012年9月24日月曜日

AKB48白熱論争

AKB48白熱論争
小林よしのり
中森明夫
宇野常寛
濱野智史著
幻冬舎新書

単に可愛いから好き♥なのではなく、応援したくなるアイドル。このシステムを作り上げた秋元康氏が一番すごい。



小林よしのり・・・1953年生まれ。漫画家。
中森明夫・・・1960年生まれ。ライター。
宇野常寛・・・1978年生まれ。文化評論家。
濱野智史・・・1980年生まれ。社会学者・批評家。
以上4人の「大の大人」がAKBに「マジ」で「ガチ」ではまり、今年の総選挙と「さしこHKT島流し問題」について熱く語りあった対談集。

いやぁ、熱い。
これだけの論客たちが、社会・マルクス・カント・世界平和などを引き合いに出しながら熱く語り合うテーマが「女の子集団」なのだからすごい。

彼らが「公開処刑」と呼ぶ総選挙は、単に「推しメン」に投票するのではないらしい。
○○は選抜入りするだろうから、頑張っているけどなかなか報われない××に入れよう・・・
など、同情や作戦で投票するのだという。

また、「AKBを離れたら独り立ちするのは難しい」などと冷静に分析もしている。

そして、AKBは既存のアイドルとは次元が違い、Jリーグ・プロ野球と並ぶ娯楽に匹敵するのだという。
言い得て妙だな、さすがだなと思う。

一方で
「CDを買うのはお布施だと思えばいい。」
「『Beginner』を聞いたときは、感動で震えた。」
「みおりんは妖精なんだよ。」
あれだけ冷静に分析しつつも、推しメンについては熱くなってしまう姿が笑ってしまう。


この本を読んで、私なりに「人はなぜAKBを推すのか」を考えてみた。

・テレビや雑誌などのマスメディア情報だけでは本当のAKBを理解できない。
・これだけ売れていても彼女たちは基本的に、「体験型アイドル」「ファン参加型アイドル」である。
舞台と観客との距離が異常に近い劇場に足を運びその場の空気を体験したり、握手会で実際に目を合わせ触れ合うなど直に接触して初めて彼女たちの面白さが味わえる。
・昔のアイドルと違い、ブログ始め様々な媒体によって丸裸にされ、等身大の女の子の姿を見る。(とファンは信じている)、
・懸命に踊る姿、選挙やじゃんけん大会で競い合う姿を見て、好きという感情だけでなく「応援」したくなる、支えてあげたくなる。
・自分で育てているという思いを持てる。

でも、結局は「男はかわいいお姉ちゃんが好き」で、「秋元康は類まれなる才能で巨大集金システムを作り上げたんだ、すごいなぁ」と思うのだが。

2012年9月22日土曜日

証拠調査士は見た! ~すぐ隣にいる悪辣非道な面々

証拠調査士は見た! ~すぐ隣にいる悪辣非道な面々
平塚俊樹著
宝島社

私には関係ないと言い切れないトラブルの数々。





「証拠調査士」とはあまり聞かない職業だが、海外ではメジャーなのだという。
警察は事件の証拠がないと動けない。
弁護士は法律のアドバイスをするのみで、証拠を集めない。
探偵は証拠集めもするが、裁判では採用できない証拠も多い。

そのため
証拠調査士は単に頼まれた証拠を集めるのではなく、依頼主が裁判や揉め事の交渉でうまくいくような集め方をします。証拠を集めて弁護士や警察などを動かし、トラブルを解決に導くのです。

本書は、証拠調査士・危機管理専門コンサルタントである著者が、トラブルの実例と対処法を解説している本である。

・会社を経営している資産家の夫とその妻を狙う「別れさせ屋」の悪徳弁護士。
「地球上で一番悪いのは、ヤクザでも詐欺師でもない。間違いなく悪徳弁護士である。」と著者は言い切る。

資産がなくてもうかうかしていられない。
・巨額横領事件の犯人が勝手に作った、身に覚えのない借金を返済する羽目になった男性。
・マンションの欠陥を指摘した人に、次々襲いかかる大手企業の嫌がらせ。
・やめさせたい社員を、会社とグルで排除する産業医。
特にオリンパスの内部告発者に対する産業医の対応は、笑ってしまうほど悪質だ。

もっと身近なところでは、「一流デパートで傷モノを売られた」「母が宗教団体に貯金を騙し取られた」「ネットで購入した商品が届かない」「海外から見に覚えのない多額の請求が」・・・
いつ誰が巻き込まれてもおかしくないようなトラブルに背筋が凍る。

著者は、「犯罪者は弱者を狙うため、狙われないように強くなりましょう」とアドバイスする。
女性には女性の、背が低い人には低いなりの、各人に合致した強さを身につけることが必要だという。
そして一番重要なのは「人と人とのつながり」と聞いて、怖い話ばかりの中その言葉になんだか少しホッとした。

※事件の性質上、一部を除き匿名で書かれているのは仕方がないだろうが、「ある企業で」「ある男性が」「詳細は明かせないが」と延々と言われると、眉に唾したくなってしまうのが残念である。

2012年9月19日水曜日

学校制服の文化史:日本近代における女子生徒服装の変遷

学校制服の文化史:日本近代における女子生徒服装の変遷
難波知子著
創元社

明治から昭和初期までの女子制服の移り変わりを丁寧に解説した本。



本書は、日本服飾史・服飾文化論を研究している著者が、博士学位論文を加筆修正して研修者向けに出版したものである。
今まで服飾史では、服装の変遷の過程を述べるため、なぜ制服が必要になり成立したのか指摘していない。
また、教育史では制服が及ぼす統制・管理について研究がされてきたが、制服をめぐる生徒や保護者の受容の問題についてはあまり検討されなかった。
そこで著者はそれらを踏まえ、歴史的観点から制服の成り立ち・普及・背景を、具体的な事例に基づいて検証していく。

と、研究者らしく大変真面目に制服についての歴史を語ってくれているのだが、ぶっちゃけて言えば次のとおりである。

鹿鳴館時代の和装⇒洋装⇒和装の混迷期を経て、1900年頃から・・・

女学生:
皇室や華族の方がはく憧れの袴を、私なんかが履いていいのかなって初めは戸惑ったけど、履いてみるとめっちゃ楽チン♪
動くとき、裾の乱れや生足チラリに気をつけなくてもいいから動きやすいし。
帯も結ばなくていいなんて忙しい朝には助かるぅ~。
ついでに髪型も袴に合わせて変えちゃえ。
鬢付け油ベトベトで横に張り出した結髪って乱れたら直してもらうの大変なのよね。
だから体育の時間なんて、手を上げると髪の乱れに気を遣いあまり動けなかったけど、袴に束髪や下ろし髪ならダンスだってテニスだってしたくなっちゃう♡

学校:
金持ちの生徒はどんどん派手になるし、貧乏な生徒は劣等感に苛まれるしって、困っていたところに全員同じ袴を履かせるようになってよかった。
子供をたくさん産める健康な女にするには体育の授業も必要だが、着物じゃ動けないって悩みもこれで解決だ。
でも、最近学生ではないのに「なんちゃって制服」を着て「堕落女学生」とスキャンダル記事が世間を騒がせたな。
うちの学校の評判まで落とされたらたまらない。
そうだ、バックルに校章をつけたバンドをさせて、差別化を図ればいいんだ。
それに袴の長さを勝手に変えておしゃれしているつもりの奴もいるが、見苦しい。
長さや着こなしの規定も作っちゃおう。
リーゼントのように庇髪を大きくしすぎている奴もいる。
これも取り締まらなきゃ。
西洋人にもこれで野蛮とは言わせないぞ。代替テキスト

↓庇髪がエスカレートしてしまった

















その後政府も、女学生には和服と洋服のどちらがいいのか、または折衝案の改良服かと右往左往する。
そして第一次世界大戦での欧米女性の活躍、関東大震災の際着物のため避難に支障をきたした、などから時流は一気に洋服へと向かっていく。

教育関係者:
やっぱり動きやすさから見たら洋服が一番だろう。
パンツは必ずはかせなきゃならないな。
でも、いきなり洋服着なさいっていってもコーディネートすら知らない彼女たちはトンでもない格好するから、こっちでこれ着なさいって決めたほうが楽だな。
だけど、そんなことしたら服装を自分で決める能力が養われないんじゃないか?
じゃあ、セーラー服、ジャンパースカートなどいくつか提案して、この中から選びなさいっていう方法がいいかもしれない。

生徒:
ジャンパースカートになったのは嬉しいけど、やっぱりセーラー服が着たい♡
襞も増やして上着の丈を短くして、スカートは長くして、自分で改造しちゃおうっと♪

という感じで、大人の女性の私服も混迷期なため、政府も学校側も試行錯誤していく様子がよくわかる。
興味深くいい本なのだが、もっと読みやすい例えばコミック「制服はじめて物語」のようなものがあるといいなと思う。

私個人としてはずっとブレザーの制服だったため、セーラー服に今でも憧れを抱いている。

2012年9月18日火曜日

65歳。職業AV男優

65歳。職業AV男優
山田裕二著
宝島社新書

1947年生まれ、65歳の著者が語った男優生活




毛皮屋を営んでいた著者は、売れ行きが鈍ったことから52歳で廃業する。
ローンもなく子供も手を離れたため生活の心配がない著者が、次に選んだ職業は、エキストラの仕事だった。
当初は通行人や再現ドラマのおじいちゃん役をしていたが、その後AVのエキストラの仕事が増えていった。
そして、「やっぱり女優さんと絡みたい」と思い、関係者に頼んで出演させてもらう。
そこから著者の男優としての歴史が始まったのだ。

本書は、そんな著者の体験談、女優さんの紹介、健康の秘訣、藤元ジョージ監督による現場の舞台裏などが書かれている。

作品の設定は定番の他、要介護者とケアワーカー、嫁と舅、老人好きのJKに逆ナンされる・・・などだという。
読みながら、『珍日本超老伝』 の中にも80歳過ぎて頑張っていた方が出てきたことを思い出した。
溜池ゴロー氏の本 でも熟女が人気と書かれていたが、現在この業界は中高年市場に活気があるため、出演者の年齢層も幅広くなり、高齢の男優も増え、50代の女性でも女優としてのニーズがあるのだという。

10代の頃は、男はみんな男優に憧れているのだろうと考えていた。
画面に映ってない場所にはスタッフがたくさんいて、皆が見守る中あられもない姿を晒す、販売・レンタルされたら大勢に見られてしまう・・・少し大人になれば、そんな大変な仕事なんだなと気づいた。
著者も「度胸と開き直りができないと務まりません。」と言っている。

ギャラは、女優が10万~200万円位/本もらえるのに対して、汁男優は2000~5000円/発、
男優は3~5万円/日の肉体労働。
女優さんが大柄な方、月経中の方、腋臭の方の場合は、大変。
など、知らなくても困らないトリビアがたくさん書かれていた。

そして、無類の女好きだと公言し、出会い系サイトで相手を見つけ、今も4、5人の彼女がいるという著者は、意外にも「家庭第一」なのだという。
う~ん、奥様すごい。

中高年の男性がこの本を読んで、「よし、俺も見習って頑張ろう」と元気になるのか、それとも「やっぱり俺はダメだな」と劣等感に苛まれ自信喪失してしまうのか、どちらにしろ危険をはらんでいるので気をつけたほうが良さそうな一冊である。

2012年9月17日月曜日

罪の余白

罪の余白
芦沢央著
角川書店

「自己愛」と「親子愛」の闘いの物語。大切な人を失った時、あなたならどうしますか?




大学で動物行動心理学を教えている 安藤 は、妻を8年前に亡くし、高校生の娘・加奈 と二人で暮らしていた。
大切な 加奈 が、高校のベランダから墜落死する。
自殺と思い嘆き悲しむ 安藤 のもとに、クラスメートを名乗る少女が現れる。
加奈 のパソコンに残された日記を読んだ 安藤 は、娘の悩みを知る。
そこから 安藤 の闘いが始まった---。
第3回野性時代フロンティア文学賞受賞作。


女子高生のヒエラルキーがリアルに書かれていて怖い。
私の高校時代にもなんとなくクラスでの「立ち位置」が決まっていたが、現役女子校生に話を聞くと今はもっとすごいらしい。
最近も「いじめ事件」が問題になっていることもあり、あり得るなというか、あるあると思ってしまう現実感が怖いのである。
そして、PCに残された日記の内容がわかった時、読んでいる私も緊張が高まり、一気にスリリングな展開へ向かっていく。
題材的に、悲しく辛い内容なのだが、最後に一筋の光が見え、少しは救われた気がした。

美しいが、無表情でまるで精巧なロボットのように見える安藤の同僚・早苗が、脇役ながら興味深く描かれていた。
人の感情を読み取ることができないため対人関係が苦手なのだが、嘘や社交辞令が言えず不器用で正直なところが好感が持てる。

そして、気になったのが作中に出てくる「ベタ」(闘魚)
ストーリーとは直接関係ないのだが、効果的な演出となっている。

この著者はこれがデビュー作だという。 体言止めの乱用で、一部脚本のト書きのように感じるところが残念なのだが、力のある方だなぁと思った。 これからの活躍を期待したい。

2012年9月15日土曜日

贖罪の奏鳴曲

贖罪の奏鳴曲
中山七里著
講談社

音楽ミステリーだけじゃない。法廷事件物もすごかった。



過去に殺人を犯し、医療少年院に入っていた弁護士・御子柴。
依頼人に法外な請求をするなど評判はよくない。
そんな彼が国選弁護人として、小さな製材所の事件を担当することになる。
元社長の父親が事故で脳挫傷を負い、入院中に人工呼吸器が止まり死亡した。
保険金目当てではないかと、母親が疑われた事件だ。
果たして弁護士の御子柴は・・・?

ゆすりで生計を立てているフリーライターの死体を、御子柴弁護士が遺棄するという驚きのシーンから始まるこの物語。
過去に罪を犯した御子柴弁護士は、果たして生まれ変わったのか、それとも悪人のままなのか・・・?『刑務所で死ぬということ』を読んだばかりの私には、とても興味深いテーマだった。
「心にナイフをしのばせて」や「少年Aこの子を産んで・・・」 の事件を彷彿させるような、「贖罪」について考えさせられる内容なのだ。

著者の作品は過去に「さよならドビュッシー」「おやすみラフマニノフ」の2作を読んだのみだった。
その2作で演奏者たちを題材にしたミステリーの音楽シーンに魅せられていたが、法廷事件ものの本作も大変読み応えがあり面白かった。

特に、中盤辺りに書かれていたた圧巻のピアノ演奏描写からは、ラストまで一気読み。
そして、どんでん返しの連続で最後には驚きの結末が待っていた。

視点が御子柴弁護士サイドと警察サイドの交互に置かれ、過去やいくつかの事件が重なり、様々な要素が入り組んだエンターテインメント作品となっていて、読み応えのある作品だった。

著者の本をもっと読みたくなってしまう一冊だった。

2012年9月13日木曜日

刑務所で死ぬということ

刑務所で死ぬということ
美達大和著
中央公論新社

服役中の無期懲役囚が語った塀の中。




これは、2件の殺人を犯し「LB級刑務所」で服役中の無期懲役囚である著者が、塀の中の面々や過密化する刑務所内の様子を語った本である。

※「LB級刑務所」とは、刑期10年以上かつ犯罪傾向の進んだ者のみが収容される刑務所。
 年3万人前後の受刑者の中の約3%が長期刑受刑者。

ほとんどの方は、刑務所それも「LB刑務所」とは縁のない暮らしをしているため、懲役囚たちが何を考え、どう暮らしているのか知る機会はない。
そういう意味で、内部から発信する著者の言葉は貴重である。

漠然と、厳しい生活・辛い毎日、そして事件の反省と被害者への贖罪の日々を過ごしているのではないかと考えていると、本書を読んで愕然とする。

心から被害者・遺族のことを考えている無期囚に会ったことがない。
自らが長い服役をすることになった理由を、亡くなった被害者のせいにしている。
3食付いて娯楽まである今の刑務所は最高。
老囚にとっては話し相手のいる福祉施設。
反省するといっても「指紋を残したことがまずかった」「下調べをちゃんとすべきだった」と犯行の杜撰さを反省する懲役囚たち。・・・

著者自身も、現在月に70~250冊の本を読んでいるという、本好きにはある意味羨ましい生活をしている。
「少しも辛いところではありません」と言い切る著者の言葉にやりきれなさを感じる。
著者の意見のみで、刑務所の内情を決め付けるわけにはいかないが、再犯率の高さを考えればある程度真実なのだろうと思う。

二度と入りたくないと思わせるのが矯正施設の役割なのではないか。
隔離するだけで、罰として十分なのだろうか。
加害者の人権も大切だが、被害者感情は置き去りにされていないだろうか。

現実的には、年老いた懲役囚たちを改心させるのはとても難しいことのように思える。
だからこそ将来の犯罪者を少しでも減らすために、子供の教育それも落ちこぼれの救済や居場所の確保が必要ではないだろうか。

※純粋に受刑者にかかる費用・行刑費は、昭和58年まで刑務作業等により約100%賄っていたが、それ以降は足りていない。
人件費・施設費は税金が使われている。

2012年9月12日水曜日

一流の人に学ぶ自分の磨き方

一流の人に学ぶ自分の磨き方
スティーブ・シーボルト著
弓場隆訳
かんき出版

自分らしく好きなように生きたいな♪



「全米屈指の超人気セミナー講師が伝授する12の成長法則」「一流の人と二流の人の差は紙一重だ」「10万部突破」そんな広告を目にする本書。

「はじめに」で著者は、普通の知能と才能の持ち主でも一流のレベルに達することができると断言している。
そして本書では、理論ではなく実用的な思考・習慣・哲学を紹介している。
著者は、読者に「自分はどちらに入るか」考えてもらい、成功を後押しするためにこの本を書いたそうだ。

一流の人はこう、二流の人はこう、と様々な方のお言葉を引用しながら最後にこうしようと提案している。
例えば一流の人は「勝つことを期待している」、二流の人は「ネガティブな期待を抱く」、提案「ポジティブな期待を抱いて、セルフトークとイメージトレーニングに励もう」・・・
こういった項目が130以上並んでいる。

著者によると「一流の人は努力することを楽しもうと考える」
「二流の人は努力せずに楽をしようと考える」
のだそうだ。

いつも楽して痩せることばかり考えている私は二流以下だ。
一流になるのは大変だなぁ、私は別に二流いやそれ以下でもいいやと思う。
今までどおり自分の好きなことをしながら、自分らしく楽しく生きていきたい。
(だから痩せないのだろう。)

一流を目指す志の高い努力家の皆さん、こんな私でごめんなさい。

2012年9月11日火曜日

ハーバード白熱日本史教室

ハーバード白熱日本史教室
北川智子著
新潮新書

ハーバード大学で日本史を教え、学生から高評価を受けている著者。彼女はどのようにして今の地位を築いたのだろうか。



1980年生まれの著者は、九州の高校を卒業後、カナダの大学で数学と生命科学を専攻した。
そこで、日本史の教授のアシスタントをしたことから、ハーバードの短期講座「ザ・サムライ」を受講し、サムライのかっこよさを強調する講義に違和感を覚える。
そして「日本はサムライが全てなのか、なぜ女が出てこないのか」と疑問に思い、プリンストン大学の博士課程で日本史を専攻する。
歴史の博士号は通常取得に5年以上かかるところ、3年で取得したという。
その後、この若さでハーバード大学で教えることとなった。

本書には、著者が日本史を教えるまでの経緯や、ハーバードの「先生の通知表」、実際の授業内容などが書かれている。

履修者1年目16人、2年目104人、3年目251人という驚異的な伸びを示す著者の日本史講座。
学生のように見られる小柄な若い女性が、周到な準備をし、絵を描かせたり、盆踊りを踊ったり、ラジオ番組や映像を作らせweb上に公開するといった授業で、学生たちから圧倒的な支持を受ける。
そして、「先生の通知表」で高評価を受け、「ベストドレッサー賞」や「思い出に残る教授賞」も受賞するのだ。

この本を読んだ知人が、「自慢ばかりで鼻に付く」と言っていたのだが、私はそうは思わない。
自己主張しなければ生きていけない海外で、日本人がここまで高評価を受けるのは、オリンピックで金メダルを取ったように喜ばしいことに思えるのだ。
女性・若い・アジア人種・英語が母国語ではないといったハンデがあるにもかかわらず、日本人が天下のハーバードで高評価を受けるのは、手放しで嬉しい。

そして、やがて世界を背負って立つ若者たちが日本史を勉強することによって、日本や日本人に少しでも興味を持つことは、将来の日本にとっても良い影響があると思う。

こんな誇れる日本人がもっと増えたらいいなと願いながら、著者のさらなるご活躍をお祈りしたい。

※余談だが、ハーバード大学の、講座ごとに学部生18人あたり1人のアシスタントがつくなど、優秀な学生をより優秀に育て上げるシステムにも驚く。
「これは新しい!面白そうだ!その挑戦受けてたとう!」という彼らの好奇心をくすぐるようなカリキュラムが人気だという。
楽勝科目ばかりを選んで履修していた自分がとても恥ずかしい。

2012年9月9日日曜日

傍聞き

傍聞き
長岡弘樹著
双葉文庫

「人を助ける」のが使命----そんな職業の主人公たちが登場する読み応えのある短編集。



本書には、更生施設の施設長、消防署員、刑事、救急隊員をそれぞれ主人公にした短編が4つ収録されている。

それらの職業は共通して、「人を助ける」という難しい使命を負っている。
彼らが苦悩しながらも、懸命に使命を全うしようとする姿に心を打たれるミステリーである。

特に表題にもなっている「傍聞き」は、シングルマザーである主人公の刑事が、子育てやお礼参りに悩む心情が細やかに書かれていて、日本推理作家協会賞短編部門を受賞したのもうなずける秀作だった。

読み応えのある作品だなと思いながら読み進めたら、3作目で「ん?」とデジャブを感じた。
この物語確かに読んだことある、やりきれない結末を覚えている・・・?

そう、かつて図書館で借りて読んでいたのだった。
それを書店に行った時にすっかり忘れて、購入してしまった。

よかった、私が忘れっぽい性格で。
二度も楽しめたのだから。
しかも1、2作目は読んでいる最中も全く思い出せず、初めての作品として読めたのだから。

こういうことはよくある、いやよくあった。
片っ端からどんどん読んでいると何を読んだか忘れてしまうのだ。
だから、読んだ本を記録する為に書評を書き始めた。
読み終わり考えながら書くという行為によって、脳に定着することを願って。

しかし、たまにはすっかり忘れて再読し、新鮮に感動するのもいいなと感じた。

2012年9月8日土曜日

ビブリア古書堂の事件手帖3 ~栞子さんと消えない絆~

ビブリア古書堂の事件手帖3 ~栞子さんと消えない絆~
三上延著
アスキーメディアワークス

ひねくれ者でごめんなさい。



北鎌倉にひっそり佇む古本屋「ビブリア古書堂」。
就職浪人の俺・大輔はここでアルバイトをしている。
店主の栞子さんは、極度の人見知り&内気だが、本に関する知識は膨大で、
本にまつわる謎ならたちまち解いてしまう。そして何より美人・・・

大人気のこのシリーズ。
1巻目は、気になってはいたが食わず嫌いでなかなか手を出せなかった。
しかし、読み始めたらすぐに夢中になった。
気軽に読めて本好きなら気になる古本屋を題材にしたミステリー、そんなあるようでなかったジャンルというのも目新しく面白かった。

2巻目も楽しく読めたのだが、男目線すぎる栞子さんの設定に少し興ざめした。
美しいが自分ではその美しさに気づかない、おとなしい女。
そんな主人公・栞子さんは男が萌える女なのか、理想の女なのか。
しかしなぜ、巨乳である必要があるのか。

そんな事を思いながら、3巻目を読んだ。

今までより萌え描写が少なくなり、ミステリーの要素が濃くなっていた。
栞子さんはもう立派な探偵だ。
古書に関するトリビアも出てくるし、感動的なシーンもいくつかありジーンとくる。
いつの間にか夢中になり、このシリーズの大ファンになっていた。
今までは少し冷めた目で見ていたのに。

ラノベを敬遠されている方でも、この3巻なら満足するのではないだろうか。

ただ、私は栞子さんには萌えない。
女はおとなしそうに見えたって、従順なわけじゃない。
実はああ見えて裏では・・・と想像しながら読むのも楽しいかもしれない。

大輔だって、好みじゃない。
「もっとガツガツ行かなきゃ」と尻を叩きたくなる。
やっぱり男は肉食系でなくっちゃと私は思うのだ。

ひねくれ者でごめんなさい
でもこんな私でも、4巻目の発売を心待ちにしているファンの一人なのだ。

2012年9月5日水曜日

女中がいた昭和

女中がいた昭和
小泉和子編
河出書房新社

メイドもいいけど女中もね♪



女中さん、メイドさん、お手伝いさん、家政婦・・・
メイド服のフリフリ可愛いのもいいが、女中さんの着物に白い前掛けという抑圧されたような美しさも憧れる。
家政婦というと、TVの影響で覗き見とか無表情の怖いイメージが浮かんでしまう。
今はお手伝いさんという言い方が一般的だろうか。

その中でも絶滅したであろう女中さんについて書かれたこの本を読んでみた。

大正~昭和初期は、衣食住が洋風に変わる過渡期に当たる。
衣は着物だけでなく洋服の洗濯・アイロンがけをしなくてはならず、食も器や調理器具の種類が増え、住環境も洋間に絨毯・カーテンを設置するなど、和洋二重生活により生活が煩雑化していく。
その頃の家事は、技術を必要とし神経や気を使うという、過酷な時代だったのだ。

そのため、戦前までは負担の大きい主婦を補佐するため、特に裕福ではない家庭でも女中がいることは珍しいことではなかったという。
本書は、主婦一人ではこなしきれないほど複雑繁多だった家事を補うため雇われた女中について、仕事内容・環境など様々な角度から複数の専門家が解説した生活史である。

女中の仕事のやり方や心構えを説いたマニュアル本「女中訓」は、雇い主が女中に読ませたり、主婦が女中の指導や自分の家事マニュアルとして読まれていたという。
その中には、掃除や炊事を始め家事全般のやり方が細かく書かれていて、お客様への応対は丁寧に、衛生や看護の知識も必要、雇い主には忠実で、暮らし方は都会流でも田舎気質を忘れずに・・・ってそこまで要求するのかと驚く。

雇う側も雇われる側も、どんな人に当たるかは運も大きいなと思う。
家族のように温かく迎えてくれるご家庭なのか、ヒステリックにこき使われるのか。
女中の方も、よく気がつく働き者もいれば、盗み癖・怠け癖のある人もいただろう。

この時代は女中さんに限らず誰もがそうだったのだろうが、休みもほとんどなく朝から晩まで働いて大変だったのだなぁと思う。
しかも女中さんは雇い主と同居しているため、肉体的だけでなく精神的にも休まる暇がなかっただろう。

そんなプライバシーもない、同居しているのに家族ではない存在の女性--女中さん。
昭和30年代に急速に減っていったという。

女中さんという響きに惹かれる私には、とても魅力的な一冊だった。

メイド喫茶もいいけれど、本書を監修されている小泉和子さんが館長をされているという昭和のくらし博物館 、いつか行ってみたい。

英雄はそこにいる

英雄はそこにいる
島田雅彦著
集英社

その男は稀代の犯罪者なのか?それとも英雄なのか?手に汗握るハリウッド映画のような一冊。




シャーマンの末裔であるナルヒコは、修行を重ねた特殊能力により、未来を予知したり死者と会話することが出来る。
警視庁で迷宮入り事件の再捜査を専門にしている穴見警部は、そんなナルヒコに「捜査に協力して欲しい」と頼む。
重要未解決事件の中でも手掛かりの少ない、互いに無関係に見えた五つの事件は、特殊な遺伝子D4を持つ男が絡んでいる事がわかった。
そしてその背後には世界経済評議会・通称「ブラックハウス」という組織が見え隠れする。
果たして、D4はブラックハウスの手下なのか?それとも・・・?

本書は、ナルコシリーズ第1弾『カオスの娘 シャーマン探偵ナルコ』に次ぐ第2弾らしい。
「現代に甦るヘラクレス神話」でもあるという。

前作も未読で、そんな知識もなく読み始めたのだが、十分楽しめる内容だった。
「シャーマン」とか、「特殊能力」とかそういう話が進んでいくのだろうと思いながら読んだが、ストーリーはどんどん広がって予想外の方向に向かっていく。

政治・経済・宗教・オカルトと様々な要素が絡まった壮大なストーリーで、誰が味方で誰が敵なのか分からないまま、手に汗握る展開が続く。
スピード感もあり、まるでハリウッド映画を見ているようであった。

正直、心の琴線に触れるとか感動するような類の話ではない。
特殊な遺伝子の話も唐突感があり、最後まで読んでもなぜ特殊な遺伝子でなくてはいけないのかわからないままだ。

ただ、読んでいる最中は物語に夢中になれ、他の事を考えなくて済むような、そして読み終わっても後を引かない一冊であった。
私はたいへん面白く読めたのだが、好き嫌いがはっきりする本だろうなと思う。

2012年9月4日火曜日

イラン人は面白すぎる!

イラン人は面白すぎる!
エマミ・シュン・サラミ著
光文社新書

イラン生まれの著者が、悪いイメージを払拭すべく、イスラム教やイランとイラン人について楽しく語った一冊。



アジアで暮らし始めた当初、イスラム教徒との付き合いは難しいと感じていた。
子供にぬいぐるみをプレゼントしようとして、これは偶像崇拝禁止に抵触するのだろうかと悩んだ。
豚肉を調理したことのある調理器具で調理したものは、たとえ豚肉が入っていなくても食べられないと言われ、家に招待しても飲み物だけにとどめた。
ただ、もっと仲良くなればプレゼントは何がいい?と聞けばいいのだし、食事はお言葉に甘えて相手の家でご馳走になったり、イスラム教徒用のレストランに行けばいいと気楽に考えられるようになった。

付き合いのあったイスラム教徒は皆さんとてもいい人だったのだが、イスラムというとどうしても「原理主義者」「過激派」といった悪いイメージ浮かんでしまう。
日本人イコールオウム真理教と思われてしまうのと同じなのだが。

本書は、吉本興業所属の漫才コンビ「デスペラード」として活躍するイラン生まれの著者が、そんな悪いイメージを払拭すべく、イスラム教やイランとイラン人について、楽しく語った本である。

わかりやすい説明の中に、時折ネタなのかと思えるような話が出てくる。

・月収30万円以上のカリスマ物乞いがいる。
・「勉強したから100点取れると思ったのに、半分アラーが持ち去ったから50点になった」という子供のように、アラーを言い訳に使いまくる。
・断食中はイランで放送されていた「アンパンマン」の顔にモザイクがかかっていた。
・王族のクラスメイトが登校するとき、フタコブラクダに乗ってやってきたらみんな羨ましがった。
・「中国人は白黒のサッカーボールを見るとパンダを思い出すから、蹴るなんて行為はできないはず」という様な毒のある記事が毎日のように新聞に載っている。

などなど、芸人だけあって「ほんまかいな」と思うのだが、読み進めるうちにイランに対するイメージが変わってくる。

楽しい話ばかりではなく、イランの抱えているマイナス面も書かれている。
階級社会で貧富の差が激しい、レイプの被害女性が姦通罪で死刑判決を受けた・・・
厳しい現実も、祖国を離れ日本で暮らしている著者は冷静に分析している。

特にカダフィについてや「なぜ中東に他国の意思が介在しなくてはいけないのか?」という意見は、日本の報道ばかり耳に入れていた身にとって、目を覚ましてくれるような話だった。

イランとイラクを混同したり、スンニ派とシーア派の違いがよくわからないような方でも(私のことだ!)入門書として楽しく読める本である。

2012年9月2日日曜日

よしながふみ対談集 あのひととここだけのおしゃべり

よしながふみ対談集 あのひととここだけのおしゃべり
よしながふみ著
太田出版

なぜ私はBLに萌えないのだろうか?





BLには全く興味がない。
腐女子に関する本「腐女子化する世界―東池袋のオタク女子たち」を読んでも、彼女たちのことは理解できなかった。

いい男大好きの私にしたら、ただでさえ競争率の高い男を他の女だけでなく男とも張り合わなくてはならない世界は、想像しただけで辛いではないか。
でも、BLのどこに萌えるのか、なぜBLにハマるのかということには興味を持っていた。
そこで、本書を読んでみることにした。

本書は よしながふみ さんが、萩尾望都 さん 三浦しをん さんなど6人の漫画家・作家と、漫画について熱く語りあった対談集である。
会話文なので読みやすいだろうと読み始めたのだが、私にとっては学術書並みに難しかった。
知らない漫画があまりに多すぎて、注釈を読んだり検索しながら読み進めなければならなかったのだ。

小学生の時は「なかよし・りぼん・ちゃお」その後「花とゆめ・別マ」「mimi」そして少年誌・青年誌とそれなりに読んできたつもりだったのだが、漫画好きな方からしたら、もう私なんて何も知らない赤子の様な存在なのだと気づいた。

そして、この本で色々学習させていただいた。
ゲイものとBLは違う。
同性愛の行為があるからといってBLとは限らない。
上司と部下など、シュチュエーションが大事なので、最初にプロフィールをきちんと説明する。
一棒一穴主義の純愛や、恋愛に対しては純情で仕事に対しては一生懸命、などが好まれる。
読者はそれぞれ萌えポイントが違うが、「切なさ」が重要。
男は女に憧れないが、女は男に憧れるのでBLが好まれるのではないか。
男の人に対して、自分がタチになれるという少女漫画では味わえない楽しみがある。
BL好きは、紡木たく「ホットロード」が好きではない・・・

などなど、へぇ~ボタンを連打しながら読んだのだ。

そして、私がBLに萌えない最大の理由は「BLの文法を理解していないから」だとこの本を読んでわかった。
少女漫画には少女漫画の、少年誌には少年誌の、細かく言えば少年ジャンプには少年ジャンプの、ローカルルール・お約束があり、それを理解していないと読んでも本質がわからないのだという。
つまり、私が読んできた漫画はBLにつながる系譜ではなかったので、BLの文法が理解できていないため、読んでも本当の面白さを理解できないから興味を持てないということだ。

確かに、兄の影響で読んでいた少年漫画がおもしろくて、「マカロニほうれん荘」「1・2の三四郎」が好きだったし、初めて書いたファンレターは 柳沢みきおさん だった。
そのほかはギャグやスポ根ものが好きだった。
「ホットロード」を好きになれなかったところは一緒なのだが。
大人になってからは、「龍-RON-」「JIN-仁-」のような本を好んで読んだ。
そういうジャンルばかり読んでいたから、BLが理解できないのは当たり前なのだ。

何事も練習やトレーニングが必要なように、BLを楽しむためにはBLにつながる系譜の漫画を読んで練習を積む必要があったのだ。
自然とBLの文法を理解できるように。

他にも、
想像の世界の恋愛よりも、目の前のリアル恋愛の方が楽しかったし、奥深い「フランス映画」より何も考えないで楽しめる「ハリウッド映画」が好きとか、そういう趣味や性格の違いもあるのだろう。


【この本を読んでの私なりの結論】
私はBLを読み解くための知識を有していないためBLに萌えることができない。  

2012年8月31日金曜日

宇宙へ「出張」してきます ―古川聡のISS勤務167日―

宇宙へ「出張」してきます ―古川聡のISS勤務167日―
古川聡・林公代・毎日新聞科学環境部著
毎日新聞社

「宇宙に持って行きたくないものは、喧嘩と争いごと」という古川さんの宇宙への出張ドキュメント。



本書は、国際宇宙ステーションに長期滞在した宇宙飛行士・古川さんの生い立ちから宇宙滞在記、帰国後の生活まで書かれているドキュメントである。
宇宙へ出張して帰ってきた古川さんと、それを取材してきた記者たちの視点から複合的に書かれている。

やんちゃ坊主だったという古川さん。
掃除の時間にふざけていて校舎の二階の窓から落ちたり、「仮面ライダー」を真似しながら両手放しで自転車をこいで電柱に激突したなど、腕白ぶリが伺えるエピソードが書かれていた。
そして、大学生の時に「風雲!たけし城」に出演し、ビートたけしを笑わせたシーンが全国放送されたという輝かしい?過去をお持ちだという。
そういうイメージはなかったので意外に感じた。
しかし、高3まで野球部で汗を流しながらも、栄光学園から東大理Ⅲに現役合格するとはさすがである。

また、怒った様子を見たことがないと友人たちが口を揃えるほど穏やかな性格だそうで、「宇宙飛行士選抜試験」に書かれていたように、究極の「人間力」を試される試験に受かるべくして受かったのだなぁと納得する。

地球に戻って、
首を支える筋肉がプルプル震える、
重心がどこにあるかわからない、
自分の体でないみたい、
歩き方も忘れている・・・
宇宙から帰還すると筋肉が弱ったり骨量が減ったりして大変だという話は聞くが、ご本人から具体的なわかりやすい表現で説明されると、改めてその大変さに驚く。

その他、訓練や滞在期間中の様子も、ユーモアを交えながらわかりやすく説明してくれるので、宇宙に詳しくない私でも楽しく読める本だった。

肉体へのダメージや、1%という決して低くない事故率を考えると、人類の憧れを背負っている宇宙飛行士はやはり死と隣り合わせの危険な職業なのだと思う。

仕事仲間ももちろんだが、古川さんの学生時代の友人、ご両親、そして奥様やお子さんたちもまた宇宙飛行士という職業を支えているのだなぁと、本書を読みながら感動した。
これからのご活躍も期待したい。


※宇宙からの帰還が最大の見所ということで、本書は帰還シーンから時系列を遡って書かれているのだが、少し読みにくさを感じて残念に思った。