湊かなえ著
文藝春秋
涙腺のネジを締め忘れたのか、泣けて仕方がなかった!今までとはひと味もふた味も違う、湊かなえさんの連作短編集。
物語の舞台は、瀬戸内海に浮かぶ小さな島、白綱島。
橋を渡ればすぐ本土に行けるというその島は、作者の湊かなえさんの故郷・因島をイメージしているのだろうか。
本書は、そんな小さな島で生まれ育った人物の複雑な心情を描いた連作短編集である。
「みかんの花」
駆け落ちしたまま25年間も音沙汰がなかったのに、有名作家として突然帰ってきた姉を迎える妹の複雑な心境。
「海の星」
父が失踪し、母子二人暮らしの苦しい頃になぜか助けてくれたおっさんがいた。20年経って明かされるその真相。
など、6編が収められている。
湊かなえさんといえば「告白」に代表されるような、何とも後味の悪い「イヤミス」の女王と言われている。
が、この本は後味も悪くなく、今までの湊さんの小説とはひと味もふた味も違っていた。
激しい起伏があるわけでもなく、静かにそして細やかにそれぞれの心情を綴っていく。
私の今の心理状態とピッタリ合っていたのか、途中からは涙腺のネジが緩みっぱなしになってしまった。
特に、「雲の糸」という話では、なぜか涙が溢れて仕方がなかった。
主人公はその島出身の男性有名歌手。
母が殺人犯であったため、子供の頃から辛い思いをしていた。
島を出たい一心で大阪に就職し、その後努力を重ねて現在の地位を得た彼は、島で行われるあるパーティーにゲストとして出席することになった。
殺人犯の息子として虐げられた過去がある彼は、帰りたくなかった故郷でたくさんのサインを書かされ、彼に辛く当たっていた人々に、さも自分のおかげで有名になったんだという態度を取られるのだ。
わかる、わかる!
うん、うん。有名になると突然親戚や友人が増えるんだよね。
みんななんて酷いんだ!
血のにじむような努力をして掴んだ今の地位なのに!
あれほど酷いことをしてきたくせに、スターになったとたん態度を変えるなんて!
私は有名人でもなくサインを頼まれたこともない無名の女だけど、
特に深刻な過去があるわけではない平凡な人生を歩んできたけれど、
なぜか大いに共感してしまい、悔しくて悲しく泣けてきたのだ。
なんの共通項もない読者の心を、ここまで揺さぶるとは!
島と決別する者。
家や墓を守るため島を出られない者。
都会に出たけれど、島に帰ってきた者。
それぞれの「望郷」が心にしみる一冊だった。
2013年11月1日金曜日
2013年1月25日金曜日
白ゆき姫殺人事件
白ゆき姫殺人事件
湊かなえ著
集英社
架空のSNSサイトと連動させた新しい試みの小説。
美人OLがメッタ刺しにされ燃やされるという事件が発生した。
被害者が「白ゆき」という洗顔石鹸が大ヒットした化粧品会社に勤めていたため、「白ゆき姫殺人事件」と話題になった。
フリーライターが関係者にインタビューをするという形式で始まるこの物語。
同僚やかつての同級生などが噂や憶測で次々と証言していく。
それぞれが、ツイッターのようなものでつぶやいていくうちに、一人の女が容疑者として浮上した。
果たしてその女が本当の犯人なのか・・・?
実験的な小説を次々と発表している湊かなえさん。
本作でも新たな手法に挑戦している。
「小説すばる」で人々の証言を連載し、WEB文芸の「レンザブロー」(集英社)では架空のSNSサイトの書込みや雑誌・新聞の記事を載せ、二つの異なる媒体を連動させることにより臨場感を演出していた。
本書はそれを一つにまとめたもので、巻末につぶやきや記事が資料として収録されている。
うっかり先に資料を読むとネタばれしてしまうので、いちいち該当箇所を探して読まねばならなかった。
章ごとに必要な資料を添付する形式にすればもっと読みやすくなるのではないだろうか。
内容的には湊さんらしい「善意と悪意の狭間」が描かれている。
憶測が噂になり、そのうち断定的に語られていく様子に怖さを感じた。
一つの出来事でも、人によって見方が違う。
一人の人間でも、人によって印象が違う。
その違いから噂がひとり歩きしていく過程が、現実味を帯びていてリアルな恐怖を感じるのだ。
もし私が週刊誌に載るような事件を起こしたら、周りの人達は「まさかあの人が」と言いながらも「そういえばこんなことがあった。今から思うと・・・」と証言するのだろうか。
ちょっと心配になってきた。
湊さんにはいつか実験的な手法でなく、正攻法の重厚な長編小説を書いてほしいなと願う。
湊かなえ著
集英社
架空のSNSサイトと連動させた新しい試みの小説。
美人OLがメッタ刺しにされ燃やされるという事件が発生した。
被害者が「白ゆき」という洗顔石鹸が大ヒットした化粧品会社に勤めていたため、「白ゆき姫殺人事件」と話題になった。
フリーライターが関係者にインタビューをするという形式で始まるこの物語。
同僚やかつての同級生などが噂や憶測で次々と証言していく。
それぞれが、ツイッターのようなものでつぶやいていくうちに、一人の女が容疑者として浮上した。
果たしてその女が本当の犯人なのか・・・?
実験的な小説を次々と発表している湊かなえさん。
本作でも新たな手法に挑戦している。
「小説すばる」で人々の証言を連載し、WEB文芸の「レンザブロー」(集英社)では架空のSNSサイトの書込みや雑誌・新聞の記事を載せ、二つの異なる媒体を連動させることにより臨場感を演出していた。
本書はそれを一つにまとめたもので、巻末につぶやきや記事が資料として収録されている。
うっかり先に資料を読むとネタばれしてしまうので、いちいち該当箇所を探して読まねばならなかった。
章ごとに必要な資料を添付する形式にすればもっと読みやすくなるのではないだろうか。
内容的には湊さんらしい「善意と悪意の狭間」が描かれている。
憶測が噂になり、そのうち断定的に語られていく様子に怖さを感じた。
自分の記憶で作られる過去と、他人の記憶で作られる過去。
一つの出来事でも、人によって見方が違う。
一人の人間でも、人によって印象が違う。
その違いから噂がひとり歩きしていく過程が、現実味を帯びていてリアルな恐怖を感じるのだ。
もし私が週刊誌に載るような事件を起こしたら、周りの人達は「まさかあの人が」と言いながらも「そういえばこんなことがあった。今から思うと・・・」と証言するのだろうか。
ちょっと心配になってきた。
湊さんにはいつか実験的な手法でなく、正攻法の重厚な長編小説を書いてほしいなと願う。
2012年2月14日火曜日
境遇
境遇
湊 かなえ著
双葉社
「告白」の湊かなえさんが、ドラマのために書き下ろした本。児童養護施設出身の二人が巻き込まれる事件・・・それぞれの運命は?
児童養護施設から、親切な養親に引き取られ、今は県会議員の夫と5歳の息子とともに
幸せな家庭を築いている陽子。
施設で育ち、新聞記者となり頑張っている天涯孤独の晴美。
親に捨てられたという共通点がある36歳の二人は、読み聞かせのボランティアがきっかけで知り合い、
親友となる。
陽子は、晴美の話をヒントに絵本を出版し賞を取ったことで注目される。
夫の選挙も近いある日、一人息子が誘拐され、「真実を公表しろ」という脅迫状が届く。
はたして犯人は・・・
晴美と陽子それぞれの視点から交互に話は進んでいく。
この本は、2011年12月に放送された、朝日放送創立60周年記念スペシャルドラマ「湊かなえミステリー『境遇』」のために書き下ろした作品である。(陽子役に松雪康子、晴美役にりょう)
著者は、インタビューで「人と人との繋がり」と「人生は自分で作っていけるものだ」をテーマにしていると語っている。
また、通常版と絵本付特別版の2種類あり、特別版には作中に出てきた「あおぞらリボン」の絵本が付いている。
「告白」で衝撃のデビューを飾った湊さんの小説ということで、先入観なしで読もうとしても、
読む前から期待してしまう。
ところが、ボリューム的にも、内容的にもさらっと読めてしまって少し肩すかし感があった。
つまらないわけではない。私には犯人はわからなかったので(考えなかったともいえる)驚いた。
飽きることなく一気に読めた。
ただ、大きな衝撃もなく、心に響く物もなかったのである。
きっと、湊さんは優しい方なのだろうと思う。
ドラマ化を見据えて、締め切りを考え、こういう作品になったのだろう。
小説はもともとフィクションなので、矛盾点や都合のよすぎる展開があるが、
それを作者の筆力で補い、読者を夢中にさせ矛盾点を気にならなくさせるものだと思う。
そして、湊さんにはその力があると思うが、話が短すぎてそれを生かしきれてないのではないか。
これを長編にしたらきっと読者を引きずり込むような作品になったのではないか。
(単なる一読者なのに、僭越なことを申し上げてすみません。)
そうはいっても、湊さんの作品はこれからもきっと読むだろう。
湊 かなえ著
双葉社
「告白」の湊かなえさんが、ドラマのために書き下ろした本。児童養護施設出身の二人が巻き込まれる事件・・・それぞれの運命は?
児童養護施設から、親切な養親に引き取られ、今は県会議員の夫と5歳の息子とともに
幸せな家庭を築いている陽子。
施設で育ち、新聞記者となり頑張っている天涯孤独の晴美。
親に捨てられたという共通点がある36歳の二人は、読み聞かせのボランティアがきっかけで知り合い、
親友となる。
陽子は、晴美の話をヒントに絵本を出版し賞を取ったことで注目される。
夫の選挙も近いある日、一人息子が誘拐され、「真実を公表しろ」という脅迫状が届く。
はたして犯人は・・・
晴美と陽子それぞれの視点から交互に話は進んでいく。
この本は、2011年12月に放送された、朝日放送創立60周年記念スペシャルドラマ「湊かなえミステリー『境遇』」のために書き下ろした作品である。(陽子役に松雪康子、晴美役にりょう)
著者は、インタビューで「人と人との繋がり」と「人生は自分で作っていけるものだ」をテーマにしていると語っている。
また、通常版と絵本付特別版の2種類あり、特別版には作中に出てきた「あおぞらリボン」の絵本が付いている。
「告白」で衝撃のデビューを飾った湊さんの小説ということで、先入観なしで読もうとしても、
読む前から期待してしまう。
ところが、ボリューム的にも、内容的にもさらっと読めてしまって少し肩すかし感があった。
つまらないわけではない。私には犯人はわからなかったので(考えなかったともいえる)驚いた。
飽きることなく一気に読めた。
ただ、大きな衝撃もなく、心に響く物もなかったのである。
きっと、湊さんは優しい方なのだろうと思う。
ドラマ化を見据えて、締め切りを考え、こういう作品になったのだろう。
小説はもともとフィクションなので、矛盾点や都合のよすぎる展開があるが、
それを作者の筆力で補い、読者を夢中にさせ矛盾点を気にならなくさせるものだと思う。
そして、湊さんにはその力があると思うが、話が短すぎてそれを生かしきれてないのではないか。
これを長編にしたらきっと読者を引きずり込むような作品になったのではないか。
(単なる一読者なのに、僭越なことを申し上げてすみません。)
そうはいっても、湊さんの作品はこれからもきっと読むだろう。
2011年8月31日水曜日
往復書簡
湊 かなえ著
幻冬舎
手紙のやり取りのみからなる短編3つ。夢中になって一気に読みました。短編なのにちゃんと話がおさまっている。好きな作家です。
「告白」の著者の短編。
高校時代の友人の結婚式を機に、友人たちとの手紙のやり取りで5年前の「事件」の真相に迫る「10年後の卒業文集」
小学校の担任の先生と教え子の「事故」についての先生と教え子のやり取りの「20年後の宿題」
国際ボランティアで海外に行った恋人とのやり取りで、かつての「事故」を考え直す「15年後の補習」 の3編。
短編というと、どうしても終わり方が中途半端と思っていたが、 夢中にさせるストーリで、一気に読めました。
「手紙」のやり取りとはいえ、語り口調で、最初はよくわからないがどんどん真相に迫るという 「告白」と同じパターン。
有吉佐和子の「悪女について」も思い出しました。(高校時代大好きで何度も読んだ本です)
こういう形式の本が私は好きなんだなぁ。と改めて思いました。
いつもは、こんなの偶然すぎるとか、心の中で突っ込みながら読んでしまうのに、 この本は、そんなことすら思わず最後までどっぷり本の世界に浸れました。
だからと言って、冷静に考えると突っ込むところがないわけじゃないんだけど。
結末が、やりきれないまま終わるのが得意な著者ではあるけれど、最後はちゃんと まとめてくれていた。
1話目の女友達とのビミョーな関係はさすがと思った。
2011年6月23日木曜日
花の鎖
湊 かなえ著
文藝春秋
3人の女性の話が並行して順番に語られていく。
祖母と二人暮らしの梨花。
祖母は癌で入院、勤め先は破たん、手術費用に困り、お金を借りようとする。
伯父の建設会社で働いていて、お見合いで意中の相手和弥と結婚したが、なかなか子供ができない美雪。
公民館で水彩画を教えながら、和菓子やでアルバイトしているミスアカシアの紗月。
接点があるのか?
アカシア商店街を中心として最初は3人にどう接点があるのかわからなかった。
だんだんわかってくるけれど、えっとこの人はこの人のあれだから、ということは・・・とこんがらがってしまう。
でも、最後はきちんと収めてくれる。
少し重たいけれど、3人の「愛」が「青春」がぎゅっとつまってせつない。
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