池谷裕二、中村うさぎ著
新潮社
本書は、脳研究者の池谷裕二氏と中村うさぎさんの対談集である。
脳について、素人が専門家に色々と質問する・・・そんな構図を想像していたのだが、
いやぁ、素人というには中村うさぎさんはあまりに鋭く、知識も豊富で驚いた。
お二人は、最新の論文をもとに様々な事柄について語り合っていく。
「他人の失敗を喜ぶ」ことは醜いと言われるが、脳は喜ぶようにプログラムされている。
何かを暗記するときには、眺めて覚えるよりも確認テストを何度もした方が記憶の定着がいい。
精子には、味覚センサーや臭覚のアンテナがある。
言葉を話す鍵となる遺伝子「FOXP2」をネズミに組み込むと、鳴き方が変わった。・・・
話題が次から次へと目まぐるしく変わり、読者を飽きさせない。
中でも一番気になったのが、遺伝子の話題だった。
お二人が、99㌦で遺伝子検査を受けたのだ。
お二人の両親ののルーツ、髪の毛の特徴、耳アカのタイプから、ガン、心臓疾患、精神病などの病気になる可能性、アルコール・ニコチン・カフェイン・ヘロインの依存性までわかってしまうのだからちょっと怖い。
また、ヒトにも「浮気遺伝子」があり、それを持っている人は、離婚率が2倍以上も高いらしい。
ということは、浮気もその人のせいではなく、遺伝子のせいだという言い訳も成立するのだろうか。
将来、遺伝子で相性をマッチングする結婚相談所ができるかもしれない。
そうなった場合、浮気遺伝子を持たない男が人気になるのだろうか。
肥満遺伝子は有名だが、遺伝子検査で高脂肪食で太りやすいとか、食事制限によるダイエットは効果が弱いとかまで、分析できるそうだ。
ああ、私が太っているのもきっと遺伝子のせいなのだ。
せっかく痩せようと決意しているのに、いくら努力しても生まれつき太るようにプログラミングされているのなら、悪あがきはやめて好きなものを好きなだけ食べたほうがいいのだろうか。
効率よく痩せるために、遺伝子を調べてもらったほうがいいだろうか。
でも、悲しい結論を突きつけられたらショックだな。
う〜ん、悩ましい。
2013年6月4日火曜日
2013年4月23日火曜日
私説 ミジンコ大全
私説 ミジンコ大全
坂田明著
晶文社
ミジンコをなめんなよ。
ミジンコをなめんなよ。
いや別にミジンコをなめていたわけではないが、この本を読む前の私にそう言ってやりたい。
人間のゲノム23,000個に対して、ミジンコはあんな小さな体で31,000個もあるんだぞ。
メスのみの無性生殖で増えるってことは、自分のクローンを増やし続ける処女生殖…マリア様のようではないか。
ミジンコは、節足動物門であり立派な甲殻網なのだ。
著者のサックス奏者である坂田明氏は、広島大学水畜産学部を卒業し、音楽活動のかたわらミジンコの観察を続けている。
日本プランクトン学会から特別表彰を受けたこともあり、現在は東京薬科大学の客員教授という肩書きを持つ。
本書の構成は
・1997年に出版され現在は絶版になっている「ミジンコ道楽」(講談社刊)を改稿し収録。
・坂田氏自身が撮影した美しいミジンコの写真が収められた「ミジンコ図鑑」
・陸水生態学・海洋ミジンコ・分子生物学の研究者たちとの対談。
となっている。
それに加えて坂田氏自身がミジンコをイメージして作曲した8曲が収められた「HARPACTICOIDA」というCDまで付いている豪華版だ。
坂田氏は深夜に一人、ミジンコを顕微鏡で観察するのを楽しみにしているという。
ミジンコの出産の様子を観察しながら、ミジンコが息を止めると坂田氏も一緒になって息を止めて見守る。
ときには腹筋が痛くなることもあるそうだ。
まさに立ち会い出産、それもラマーズ法ではないか。
ミジンコ愛に溢れている本書ではあるが、坂田氏は「ミジンコの姿に癒されているが、僕の愛が彼らに通じているとは思わない。ペットにはなりえないし、愛情や信頼のやり取りもできない」とあくまでも「ミジンコの味方」という立場で冷静に観察している。
すごいと感動したのが、「休眠卵」。
生育環境が悪くなるとオスとメスが交尾して受精卵を生む。
それが殻に守られた休眠卵だ。
干上がった土の上でも海や湖沼の土の中でも生き続け、環境の好転により孵化する。
水鳥の足にくっついたり、風に飛ばされたりしてどこまでも生き抜くのだそうだ。
どこにでも飛んでくるというから、きっと知らず知らずのうちに私の口の中に入ってきたこともあるのだろう。
また、休眠卵はとても強く、ゴカイの糞の中に混じったものや、35年前の地層から出たゾウミジンコの休眠卵、400年前のケンミジンコの休眠卵が孵化しているという。
なんと強靭な生命力だろうか。
DNAの専門的な話など私には難しい箇所もあったが、素人でも充分楽しめるミジンコ入門書だった。
だいぶ前にTVで、坂田氏が自宅の庭にたくさんの水槽を置きミジンコについて熱く語っている番組を観たことがある。
彼は今日も一人、顕微鏡を覗きながらミジンコに癒されているのだろうか。
※付属のCDは、幻想的で雄大なメロディの中にもほんのりと哀愁を感じさせる素敵な曲だったが、
残念ながら私にはミジンコを連想することはできなかった。
坂田明著
晶文社
ミジンコをなめんなよ。
ミジンコをなめんなよ。
いや別にミジンコをなめていたわけではないが、この本を読む前の私にそう言ってやりたい。
人間のゲノム23,000個に対して、ミジンコはあんな小さな体で31,000個もあるんだぞ。
メスのみの無性生殖で増えるってことは、自分のクローンを増やし続ける処女生殖…マリア様のようではないか。
ミジンコは、節足動物門であり立派な甲殻網なのだ。
著者のサックス奏者である坂田明氏は、広島大学水畜産学部を卒業し、音楽活動のかたわらミジンコの観察を続けている。
日本プランクトン学会から特別表彰を受けたこともあり、現在は東京薬科大学の客員教授という肩書きを持つ。
本書の構成は
・1997年に出版され現在は絶版になっている「ミジンコ道楽」(講談社刊)を改稿し収録。
・坂田氏自身が撮影した美しいミジンコの写真が収められた「ミジンコ図鑑」
・陸水生態学・海洋ミジンコ・分子生物学の研究者たちとの対談。
となっている。
それに加えて坂田氏自身がミジンコをイメージして作曲した8曲が収められた「HARPACTICOIDA」というCDまで付いている豪華版だ。
坂田氏は深夜に一人、ミジンコを顕微鏡で観察するのを楽しみにしているという。
ミジンコの出産の様子を観察しながら、ミジンコが息を止めると坂田氏も一緒になって息を止めて見守る。
ときには腹筋が痛くなることもあるそうだ。
まさに立ち会い出産、それもラマーズ法ではないか。
ミジンコ愛に溢れている本書ではあるが、坂田氏は「ミジンコの姿に癒されているが、僕の愛が彼らに通じているとは思わない。ペットにはなりえないし、愛情や信頼のやり取りもできない」とあくまでも「ミジンコの味方」という立場で冷静に観察している。
すごいと感動したのが、「休眠卵」。
生育環境が悪くなるとオスとメスが交尾して受精卵を生む。
それが殻に守られた休眠卵だ。
干上がった土の上でも海や湖沼の土の中でも生き続け、環境の好転により孵化する。
水鳥の足にくっついたり、風に飛ばされたりしてどこまでも生き抜くのだそうだ。
どこにでも飛んでくるというから、きっと知らず知らずのうちに私の口の中に入ってきたこともあるのだろう。
また、休眠卵はとても強く、ゴカイの糞の中に混じったものや、35年前の地層から出たゾウミジンコの休眠卵、400年前のケンミジンコの休眠卵が孵化しているという。
なんと強靭な生命力だろうか。
DNAの専門的な話など私には難しい箇所もあったが、素人でも充分楽しめるミジンコ入門書だった。
だいぶ前にTVで、坂田氏が自宅の庭にたくさんの水槽を置きミジンコについて熱く語っている番組を観たことがある。
彼は今日も一人、顕微鏡を覗きながらミジンコに癒されているのだろうか。
※付属のCDは、幻想的で雄大なメロディの中にもほんのりと哀愁を感じさせる素敵な曲だったが、
残念ながら私にはミジンコを連想することはできなかった。
2012年12月2日日曜日
興奮する匂い 食欲をそそる匂い ~遺伝子が解き明かす匂いの最前線
興奮する匂い 食欲をそそる匂い ~遺伝子が解き明かす匂いの最前線
新村芳人著
技術評論社
まだまだ解明されていないことがたくさんある「匂い」。そんな匂いを科学する入門書。
録画して毎週楽しみに見ている「探偵ナイトスクープ」。
先日、「オナラのニオイが好きな女性」が、複数の男性のオナラをホースで直接嗅いで喜ぶという衝撃の内容が放送された。
人の好みは多種多様だと理解していても、仰天した。
ヒトゲノムが解読されて嗅覚研究が大きく前進したとはいえ、匂いについてはまだまだ解明されていないことがたくさんあるのだという。
本書は、そんな「匂い」を科学的に解説した入門書である。
匂いの嗜好性は、後天的な学習によって形成されると考えられている。
その匂いを体験した環境に左右されるのである。
2歳児くらいまではまだ匂いに対して良い悪いという概念が存在していないという。
それならきっと「探偵ナイトスクープ」の女性は、幼少期にオナラと素敵な体験を結びつけているから「好みの香り」だと刷り込まれているのだろう。
その他
・調香師が、望みの香りを持つ分子を得るためには試行錯誤によるしかない。
・嗅盲--特定の匂いを嗅ぐことができない人がいる。(ということは自分では気付かなくても部分的に嗅盲の人がたくさんいるのではないか。)
・糞の悪臭の主成分・スカトールは、低濃度の場合花の香りがして香水にも利用されている。
・精子にも嗅覚受容体が機能しており、卵子のスズランのような香りにおびき寄せられて受精する。
・イヌは鼻がよいと言われるが、獲物である動物の匂いには敏感だが、それ以外の例えば植物の匂いに関してはそうでもない。
・様々な生物がフェロモンを利用してコミニュケーションを行っている。
と興味深い話がたくさん掲載されていて読み応えがある。
また、匂いとは直接関係ないが、機能を失ってしまった「偽遺伝子」の塩基配列には「終止コドン」が含まれているのですぐわかるという話は、素人ながらへぇ〜へぇ〜唸りながら興味深く読んだ。
※ここだけの話、「入門書」のようにわかりやすいとは言っても、化学式が出てくると途端に睡魔に襲われるという危機を乗り越えて読了した。
新村芳人著
技術評論社
まだまだ解明されていないことがたくさんある「匂い」。そんな匂いを科学する入門書。
録画して毎週楽しみに見ている「探偵ナイトスクープ」。
先日、「オナラのニオイが好きな女性」が、複数の男性のオナラをホースで直接嗅いで喜ぶという衝撃の内容が放送された。
人の好みは多種多様だと理解していても、仰天した。
ヒトゲノムが解読されて嗅覚研究が大きく前進したとはいえ、匂いについてはまだまだ解明されていないことがたくさんあるのだという。
本書は、そんな「匂い」を科学的に解説した入門書である。
匂いの嗜好性は、後天的な学習によって形成されると考えられている。
その匂いを体験した環境に左右されるのである。
2歳児くらいまではまだ匂いに対して良い悪いという概念が存在していないという。
それならきっと「探偵ナイトスクープ」の女性は、幼少期にオナラと素敵な体験を結びつけているから「好みの香り」だと刷り込まれているのだろう。
その他
・調香師が、望みの香りを持つ分子を得るためには試行錯誤によるしかない。
・嗅盲--特定の匂いを嗅ぐことができない人がいる。(ということは自分では気付かなくても部分的に嗅盲の人がたくさんいるのではないか。)
・糞の悪臭の主成分・スカトールは、低濃度の場合花の香りがして香水にも利用されている。
・精子にも嗅覚受容体が機能しており、卵子のスズランのような香りにおびき寄せられて受精する。
・イヌは鼻がよいと言われるが、獲物である動物の匂いには敏感だが、それ以外の例えば植物の匂いに関してはそうでもない。
・様々な生物がフェロモンを利用してコミニュケーションを行っている。
と興味深い話がたくさん掲載されていて読み応えがある。
また、匂いとは直接関係ないが、機能を失ってしまった「偽遺伝子」の塩基配列には「終止コドン」が含まれているのですぐわかるという話は、素人ながらへぇ〜へぇ〜唸りながら興味深く読んだ。
※ここだけの話、「入門書」のようにわかりやすいとは言っても、化学式が出てくると途端に睡魔に襲われるという危機を乗り越えて読了した。
2012年10月6日土曜日
世にも奇妙な人体実験の歴史
世にも奇妙な人体実験の歴史
トレヴァー・ノートン著
赤根洋子訳
文藝春秋
人間は誰でも好奇心旺盛だが、中でも科学者の好奇心の強さといったら・・・偉大なる科学者たち、万歳!
本書は、科学者たちが過去に行なってきた数々の人体実験を集めた、科学者たちの血と汗と涙の物語である。
病気の治療だけでなく、麻酔や薬、食べ物、寄生虫、病原菌、電磁波とX線、ビタミン、爆弾、毒ガス、潜水艦、サメ、深海、成層圏と超音速・・・と様々な分野の実験が多数掲載されている。
人類や科学の発展のために実験は不可欠である。
それはわかる。
わかるのだが、なにもそこまで自分の体を痛めつけなくてもと、科学者たちの好奇心の強さに驚く。
孤児院の孤児や囚人、また「人類の苦しみを救うための実験なのだから自分たちも苦しむべき」というボランティアを実験台にした事例も多数紹介されているが、自分自身の体を実験台にする科学者たちもたくさんいたのだ。
放射線学者ジョージ・ストーヴァーは、自分の体を使い6年にわたってラジウムの人体への影響を調べ、数度の切断手術と100回以上の皮膚移植手術を余儀なくされたが、「有用な事実が明らかになるなら、それと引き換えに科学者が死んだり手足を失ったりすることなど大したことではない。」と語る。
他にも
・アルファベット順に薬を試してみようとして、トリカブト(aconitum)とヒ素(arsenic)でつまずきハズ油(croton oil)という下剤でギブアップした薬剤師。
・動物園の死骸を片っ端から試食する。
・マラリア原虫を持った蚊がいるかごに自分の腕をくくりつけ、3000回も刺されて予防接種の有効性を調べる。
・黄熱病の患者の唾液、血液、黒い吐瀉物を飲んだアメリカの医学生。
などなど、次から次へと強者科学者が登場する。
高所恐怖症の私は、飛行実験や潜水実験の部分を読んでいるだけで、絶叫マシーンに乗っているような恐怖を感じた。
よくやるなぁと思いながら読んでいると、自然に眉間に皺が寄ってくる。
しかし、勇気を出して動物やキノコを最初に食べた人がいてくれたからこそ、今私たちは美味しく食べ物を食べることができるのだし、誰かが過去に薬や医療行為を試してくれたからこそ、医学が発展してきたのだ。
そう思うと彼らに感謝すべきなのだろう。
(人道的な問題はあるのだが)
登場する科学者一人ひとりに深い人生があるのだろうが本書はそこにはあまり触れず、次から次へと実験が紹介される。
私の頭の中も、
すごい!
でも、怖い!
でも、偉い!
でも、なぜそこまでやるのか理解できない!
と、どう捉えていいのかよくわからなくなってきた。
最後に、大阪大学医学部教授の解説があり、それを読んで何とか少し落ち着いた。
はぁ、科学者の好奇心ってすごい!
※本書に、「食品加工のプロセスから昆虫を完全に締め出すことは不可能だから、我々はみんな年に
約1㌔もの昆虫を食べている」との記述があった。著者はイギリス在住なのだが、日本でもそうなのだろうか?
トレヴァー・ノートン著
赤根洋子訳
文藝春秋
人間は誰でも好奇心旺盛だが、中でも科学者の好奇心の強さといったら・・・偉大なる科学者たち、万歳!
本書は、科学者たちが過去に行なってきた数々の人体実験を集めた、科学者たちの血と汗と涙の物語である。
病気の治療だけでなく、麻酔や薬、食べ物、寄生虫、病原菌、電磁波とX線、ビタミン、爆弾、毒ガス、潜水艦、サメ、深海、成層圏と超音速・・・と様々な分野の実験が多数掲載されている。
人類や科学の発展のために実験は不可欠である。
それはわかる。
わかるのだが、なにもそこまで自分の体を痛めつけなくてもと、科学者たちの好奇心の強さに驚く。
孤児院の孤児や囚人、また「人類の苦しみを救うための実験なのだから自分たちも苦しむべき」というボランティアを実験台にした事例も多数紹介されているが、自分自身の体を実験台にする科学者たちもたくさんいたのだ。
放射線学者ジョージ・ストーヴァーは、自分の体を使い6年にわたってラジウムの人体への影響を調べ、数度の切断手術と100回以上の皮膚移植手術を余儀なくされたが、「有用な事実が明らかになるなら、それと引き換えに科学者が死んだり手足を失ったりすることなど大したことではない。」と語る。
他にも
・アルファベット順に薬を試してみようとして、トリカブト(aconitum)とヒ素(arsenic)でつまずきハズ油(croton oil)という下剤でギブアップした薬剤師。
・動物園の死骸を片っ端から試食する。
・マラリア原虫を持った蚊がいるかごに自分の腕をくくりつけ、3000回も刺されて予防接種の有効性を調べる。
・黄熱病の患者の唾液、血液、黒い吐瀉物を飲んだアメリカの医学生。
などなど、次から次へと強者科学者が登場する。
高所恐怖症の私は、飛行実験や潜水実験の部分を読んでいるだけで、絶叫マシーンに乗っているような恐怖を感じた。
よくやるなぁと思いながら読んでいると、自然に眉間に皺が寄ってくる。
しかし、勇気を出して動物やキノコを最初に食べた人がいてくれたからこそ、今私たちは美味しく食べ物を食べることができるのだし、誰かが過去に薬や医療行為を試してくれたからこそ、医学が発展してきたのだ。
そう思うと彼らに感謝すべきなのだろう。
(人道的な問題はあるのだが)
登場する科学者一人ひとりに深い人生があるのだろうが本書はそこにはあまり触れず、次から次へと実験が紹介される。
私の頭の中も、
すごい!
でも、怖い!
でも、偉い!
でも、なぜそこまでやるのか理解できない!
と、どう捉えていいのかよくわからなくなってきた。
最後に、大阪大学医学部教授の解説があり、それを読んで何とか少し落ち着いた。
はぁ、科学者の好奇心ってすごい!
※本書に、「食品加工のプロセスから昆虫を完全に締め出すことは不可能だから、我々はみんな年に
約1㌔もの昆虫を食べている」との記述があった。著者はイギリス在住なのだが、日本でもそうなのだろうか?
2012年8月31日金曜日
宇宙へ「出張」してきます ―古川聡のISS勤務167日―
宇宙へ「出張」してきます ―古川聡のISS勤務167日―
古川聡・林公代・毎日新聞科学環境部著
毎日新聞社
「宇宙に持って行きたくないものは、喧嘩と争いごと」という古川さんの宇宙への出張ドキュメント。
本書は、国際宇宙ステーションに長期滞在した宇宙飛行士・古川さんの生い立ちから宇宙滞在記、帰国後の生活まで書かれているドキュメントである。
宇宙へ出張して帰ってきた古川さんと、それを取材してきた記者たちの視点から複合的に書かれている。
やんちゃ坊主だったという古川さん。
掃除の時間にふざけていて校舎の二階の窓から落ちたり、「仮面ライダー」を真似しながら両手放しで自転車をこいで電柱に激突したなど、腕白ぶリが伺えるエピソードが書かれていた。
そして、大学生の時に「風雲!たけし城」に出演し、ビートたけしを笑わせたシーンが全国放送されたという輝かしい?過去をお持ちだという。
そういうイメージはなかったので意外に感じた。
しかし、高3まで野球部で汗を流しながらも、栄光学園から東大理Ⅲに現役合格するとはさすがである。
また、怒った様子を見たことがないと友人たちが口を揃えるほど穏やかな性格だそうで、「宇宙飛行士選抜試験」に書かれていたように、究極の「人間力」を試される試験に受かるべくして受かったのだなぁと納得する。
地球に戻って、
首を支える筋肉がプルプル震える、
重心がどこにあるかわからない、
自分の体でないみたい、
歩き方も忘れている・・・
宇宙から帰還すると筋肉が弱ったり骨量が減ったりして大変だという話は聞くが、ご本人から具体的なわかりやすい表現で説明されると、改めてその大変さに驚く。
その他、訓練や滞在期間中の様子も、ユーモアを交えながらわかりやすく説明してくれるので、宇宙に詳しくない私でも楽しく読める本だった。
肉体へのダメージや、1%という決して低くない事故率を考えると、人類の憧れを背負っている宇宙飛行士はやはり死と隣り合わせの危険な職業なのだと思う。
仕事仲間ももちろんだが、古川さんの学生時代の友人、ご両親、そして奥様やお子さんたちもまた宇宙飛行士という職業を支えているのだなぁと、本書を読みながら感動した。
これからのご活躍も期待したい。
※宇宙からの帰還が最大の見所ということで、本書は帰還シーンから時系列を遡って書かれているのだが、少し読みにくさを感じて残念に思った。
古川聡・林公代・毎日新聞科学環境部著
毎日新聞社
「宇宙に持って行きたくないものは、喧嘩と争いごと」という古川さんの宇宙への出張ドキュメント。
本書は、国際宇宙ステーションに長期滞在した宇宙飛行士・古川さんの生い立ちから宇宙滞在記、帰国後の生活まで書かれているドキュメントである。
宇宙へ出張して帰ってきた古川さんと、それを取材してきた記者たちの視点から複合的に書かれている。
やんちゃ坊主だったという古川さん。
掃除の時間にふざけていて校舎の二階の窓から落ちたり、「仮面ライダー」を真似しながら両手放しで自転車をこいで電柱に激突したなど、腕白ぶリが伺えるエピソードが書かれていた。
そして、大学生の時に「風雲!たけし城」に出演し、ビートたけしを笑わせたシーンが全国放送されたという輝かしい?過去をお持ちだという。
そういうイメージはなかったので意外に感じた。
しかし、高3まで野球部で汗を流しながらも、栄光学園から東大理Ⅲに現役合格するとはさすがである。
また、怒った様子を見たことがないと友人たちが口を揃えるほど穏やかな性格だそうで、「宇宙飛行士選抜試験」に書かれていたように、究極の「人間力」を試される試験に受かるべくして受かったのだなぁと納得する。
地球に戻って、
首を支える筋肉がプルプル震える、
重心がどこにあるかわからない、
自分の体でないみたい、
歩き方も忘れている・・・
宇宙から帰還すると筋肉が弱ったり骨量が減ったりして大変だという話は聞くが、ご本人から具体的なわかりやすい表現で説明されると、改めてその大変さに驚く。
その他、訓練や滞在期間中の様子も、ユーモアを交えながらわかりやすく説明してくれるので、宇宙に詳しくない私でも楽しく読める本だった。
肉体へのダメージや、1%という決して低くない事故率を考えると、人類の憧れを背負っている宇宙飛行士はやはり死と隣り合わせの危険な職業なのだと思う。
仕事仲間ももちろんだが、古川さんの学生時代の友人、ご両親、そして奥様やお子さんたちもまた宇宙飛行士という職業を支えているのだなぁと、本書を読みながら感動した。
これからのご活躍も期待したい。
※宇宙からの帰還が最大の見所ということで、本書は帰還シーンから時系列を遡って書かれているのだが、少し読みにくさを感じて残念に思った。
2012年7月1日日曜日
オカルト 現れるモノ、隠れるモノ、見たいモノ
森達也著
角川書店
半信半疑であるオカルトの世界に飛び込み、超能力、霊視体験、オーラなどに斬り込んでいくドキュメント。
オカルトとは、ラテン語の過去分詞である「occulere」・隠されたものからきている。
誰が隠したのか、隠したものは何なのか?
この本は、あり得ないと否定しつつもなぜか惹かれてしまうオカルト分野のあれこれについて、著者が取材したドキュメントである。
子供の頃から心霊現象や未知の生物を扱ったTV番組が好きだったという著者。
世の中に出るオカルト現象のほとんどには否定的であるが、たまに「どうしても説明できない現象が時折ある」と感じている。
だからこそ、曖昧なままではなく、否定でも肯定でもどちらかに結論を出したいと、様々な人物に会い、検証していく。
恐山のイタコに当たり障りのない事を言われ、毎日決まった時間に自動ドアが開く現象を目撃する。
人の心を読み取るという 荒川静 に霊視してもらい、ダウジング(棒や振り子などの器具を用いて水脈や鉱脈を探り当てる方法)の第一人者と実験をする。
「ほとんどが嘘だという事はもうわかっています。でも全てが嘘とも言い切れない。だから研究するんです。」という科学者と何にでも効くという「太古の水」を恐る恐る飲んでみる。
そして、清田少年、秋山眞人など、様々な有名無名の人に取材をし、結論が出ないまま堂々巡りの罠にはまっていくのだ。
先日読んだ「超常現象の科学」という本の中では、超常現象は、思い込みや錯覚であり、いまだかつて科学的に証明されたものはないと言いきっていた。
メンタリストDaiGoの「人の心を自由に操る技術」では、これは超能力ではなく、人の心理や錯覚を操る技術だと言いながら、付属のDVDで魔法使いのようにスプーンを曲げていた。
私は、そんな不思議な現象に遭遇したこともないし、肯定的な考えも持っていない。
でも、この世のどこかに科学では証明できない不思議な現象もあるのでは?あったら面白いな、とも思っている。
超常現象に興味はあるけれど、普段の生活に忙しいし、読みたい本もいっぱいある。
TVで不思議な事を見たら、その場ではへぇ~と思っても、すぐに忘れてしまう。
真剣に思い悩んだり、検証すべく立ち上がったりはしていない。
あるかもしれないし、ないかもしれない、そんな神秘的なベールに包まれているから面白いのかもしれない。
2012年6月20日水曜日
ピアニストの脳を科学する 超絶技巧のメカニズム
ピアニストの脳を科学する 超絶技巧のメカニズム
古屋晋一著
春秋社
著者は、「どう身体を使えば手を傷めずに幸せにピアノを弾けるのか」を科学的に研究している。
3歳から小6になるまでピアノを習っていた。
しかし、決して謙遜ではなく今は「ネコふんじゃった」しか弾けない。
そんな私は、大学でピアノを教えている友人によく疑問をぶつけている。
「コンクールに出場する人はみんな上手で素人には差がないように思えるけど、どう順位をつけるの?」
「どこをどう見たら初見(初めて目にする楽譜を見ながら演奏すること)であんなに上手に弾けるの?」
「どうして聞いたことあるだけの曲を楽譜なしで弾けるの?」
聞かれた友人は答えに窮していたが、別の友人に「脳が違うんだから、理解できるわけないよ」と一刀両断にされてしまった。
そんな私の疑問に答えてくれそうな題名に惹かれて読んでみた。
やはり、ピアニストとそうでない人の決定的な違いは「脳」にあるという。
私たちが話すために声を出す時、口の動きや舌の動きを詳細にイメージしなくても、「どんな言葉を話したいか」イメージするだけで口が自然と動き、声になる。
そして、環境によりボリュームを自然に調節する。
それと同じように、ピアニストはイメージした音を手指や腕の動きに自動的に変換する特殊な働きが、脳と身体に備わっているのだという。
つまり、「話すように弾いている」のだ。
ピアニストは
記憶力がいい。
外国語をマスターするのが早い。
声で感情の変化を聴きとる能力に優れている・・・。
痩せていて美しい、というのは私の個人的な見解だが、無芸大食なだけの私は、落ち込んでしまう。
いや、別にピアニストを必要以上に美化している本ではなく、私が勝手に卑屈になっているだけであるが。
プロの演奏家は1秒間に10回以上打鍵できるって、まさしく超人技ではないか。
高橋名人と連打対決をしていただきたい。
やはりそれには、幼少期からのたゆまぬ努力が必要なのである。
ピアニストといえども、演奏技術を維持するためには一日当たり平均3時間45分以上の練習が必要なのだという。
練習により彼らは手指だけでなく、脳をも鍛えているのだ。
この本は、目を引きがちな「超絶技巧」だけでなく、「感動」についても分析している。
人を感動させる演奏とはなんだろうか?
音楽のルールにのっとった範囲での表現の微細な彩「ゆらぎ」のみが、聴き手の心を揺さぶるのだ。
そして、音楽を深く知れば知るほど、音楽から得られる感動が増えるという。
演奏はできないけど、深く理解することもできないけど、私なりに聴くことはできる。
じっくり音楽を聴いてみたくなる本であった。
参考:「熊蜂の飛行」演奏動画
古屋晋一著
春秋社
著者は、「どう身体を使えば手を傷めずに幸せにピアノを弾けるのか」を科学的に研究している。
3歳から小6になるまでピアノを習っていた。
しかし、決して謙遜ではなく今は「ネコふんじゃった」しか弾けない。
そんな私は、大学でピアノを教えている友人によく疑問をぶつけている。
「コンクールに出場する人はみんな上手で素人には差がないように思えるけど、どう順位をつけるの?」
「どこをどう見たら初見(初めて目にする楽譜を見ながら演奏すること)であんなに上手に弾けるの?」
「どうして聞いたことあるだけの曲を楽譜なしで弾けるの?」
聞かれた友人は答えに窮していたが、別の友人に「脳が違うんだから、理解できるわけないよ」と一刀両断にされてしまった。
そんな私の疑問に答えてくれそうな題名に惹かれて読んでみた。
やはり、ピアニストとそうでない人の決定的な違いは「脳」にあるという。
私たちが話すために声を出す時、口の動きや舌の動きを詳細にイメージしなくても、「どんな言葉を話したいか」イメージするだけで口が自然と動き、声になる。
そして、環境によりボリュームを自然に調節する。
それと同じように、ピアニストはイメージした音を手指や腕の動きに自動的に変換する特殊な働きが、脳と身体に備わっているのだという。
つまり、「話すように弾いている」のだ。
ピアニストは
記憶力がいい。
外国語をマスターするのが早い。
声で感情の変化を聴きとる能力に優れている・・・。
痩せていて美しい、というのは私の個人的な見解だが、無芸大食なだけの私は、落ち込んでしまう。
いや、別にピアニストを必要以上に美化している本ではなく、私が勝手に卑屈になっているだけであるが。
プロの演奏家は1秒間に10回以上打鍵できるって、まさしく超人技ではないか。
高橋名人と連打対決をしていただきたい。
やはりそれには、幼少期からのたゆまぬ努力が必要なのである。
ピアニストといえども、演奏技術を維持するためには一日当たり平均3時間45分以上の練習が必要なのだという。
練習により彼らは手指だけでなく、脳をも鍛えているのだ。
この本は、目を引きがちな「超絶技巧」だけでなく、「感動」についても分析している。
人を感動させる演奏とはなんだろうか?
音楽のルールにのっとった範囲での表現の微細な彩「ゆらぎ」のみが、聴き手の心を揺さぶるのだ。
そして、音楽を深く知れば知るほど、音楽から得られる感動が増えるという。
演奏はできないけど、深く理解することもできないけど、私なりに聴くことはできる。
じっくり音楽を聴いてみたくなる本であった。
参考:「熊蜂の飛行」演奏動画
凄いなぁ度:★★★★★
読みやすい度:★★★
真似できない度:★★★★★
2012年6月11日月曜日
超常現象の科学 なぜ人は幽霊が見えるのか
超常現象の科学 なぜ人は幽霊が見えるのか
リチャード・ワイズマン著
木村博江訳
怪しげな預言者、占い師、超能力者の方々、ご注意ください。
見破られてますよ!!
著者は1966年生まれ、心理学の教授。
幼い頃から手品に夢中になり、マジシャンでもある著者。
超常現象に懐疑的で興味も抱かなかったが、「なぜ人は幽霊を見たと思いこむのか」という人の心理面に惹かれていく。
そして、超常現象の真偽を問うのではなく、
「人々の思い込みと体験の裏にある、奥が深くて魅力的な心理の働きに焦点を絞ればいいのだ。」
と考え、研究していく。
超常現象---霊視・念力・幽霊・予知夢・テレパシーなど、これらの不思議な現象は実在するのだろうか?
この難問に、著者は科学と心理学を武器に挑む。
そして、
占い師のあいまいな表現や相手を観察する方法を暴露し、化けの皮を剥ぐ。
幽体離脱の方法を伝授してくれ、
超能力者の「人の脳を欺く」トリックを見破り、
霊媒師のからくりを明らかにする。
私たちは、夢で見たことが翌日に現実になった時、すぐに予知能力だと思いたがる。
夢に見たことが 現実に起きなかった体験 は全て忘れて。
それが「思い込み」である。
「思い込み」や「錯覚」を超常現象と信じてしまうのである。
こんなに暴露されてしまったら、怪しげな方々の商売あがったりでは・・・?
とはならないのが、人間の面白さなのかもしれない。
科学技術が発達した21世紀になっても、超常現象は人々を惹きつけてやまないのだから。
ただ、著者は、超常現象を頭ごなしに否定したり、ばかにしているわけではない。
脳は間違った判断をするし、人は都合のいいように解釈するのだと言っているのである。
個人的には超常現象を見たことなければ、占いもうれしい事以外は信じない。
でも、どこかこの世の中には不思議な現象があってもおかしくないな、
マジシャンの中に一人ぐらい魔法使いがいても楽しいんじゃないか、とも思う。
この本の中に、「本や映画にのめり込みやすい人は暗示にかかりやすい。」 と書かれている。
本にすぐのめり込む私は、暗示にかかりやすいのかもしれない。
それならそこを逆手にとって、「あなたは痩せる」「美しくなる」と自分に暗示をかけてみたらどうだろう。
うれしい超常現象が起きたらいいなぁ。
リチャード・ワイズマン著
木村博江訳
怪しげな預言者、占い師、超能力者の方々、ご注意ください。
見破られてますよ!!
著者は1966年生まれ、心理学の教授。
幼い頃から手品に夢中になり、マジシャンでもある著者。
超常現象に懐疑的で興味も抱かなかったが、「なぜ人は幽霊を見たと思いこむのか」という人の心理面に惹かれていく。
そして、超常現象の真偽を問うのではなく、
「人々の思い込みと体験の裏にある、奥が深くて魅力的な心理の働きに焦点を絞ればいいのだ。」
と考え、研究していく。
超常現象---霊視・念力・幽霊・予知夢・テレパシーなど、これらの不思議な現象は実在するのだろうか?
この難問に、著者は科学と心理学を武器に挑む。
そして、
占い師のあいまいな表現や相手を観察する方法を暴露し、化けの皮を剥ぐ。
幽体離脱の方法を伝授してくれ、
超能力者の「人の脳を欺く」トリックを見破り、
霊媒師のからくりを明らかにする。
私たちは、夢で見たことが翌日に現実になった時、すぐに予知能力だと思いたがる。
夢に見たことが 現実に起きなかった体験 は全て忘れて。
それが「思い込み」である。
「思い込み」や「錯覚」を超常現象と信じてしまうのである。
こんなに暴露されてしまったら、怪しげな方々の商売あがったりでは・・・?
とはならないのが、人間の面白さなのかもしれない。
科学技術が発達した21世紀になっても、超常現象は人々を惹きつけてやまないのだから。
ただ、著者は、超常現象を頭ごなしに否定したり、ばかにしているわけではない。
脳は間違った判断をするし、人は都合のいいように解釈するのだと言っているのである。
個人的には超常現象を見たことなければ、占いもうれしい事以外は信じない。
でも、どこかこの世の中には不思議な現象があってもおかしくないな、
マジシャンの中に一人ぐらい魔法使いがいても楽しいんじゃないか、とも思う。
この本の中に、「本や映画にのめり込みやすい人は暗示にかかりやすい。」 と書かれている。
本にすぐのめり込む私は、暗示にかかりやすいのかもしれない。
それならそこを逆手にとって、「あなたは痩せる」「美しくなる」と自分に暗示をかけてみたらどうだろう。
うれしい超常現象が起きたらいいなぁ。
2012年4月21日土曜日
カエルの声はなぜ青いのか?共感覚が教えてくれること
カエルの声はなぜ青いのか?共感覚が教えてくれること
ジェイミー・ウォード著
長尾力訳
青土社
一冊で共感覚がわかる、お得な入門書。共感覚のことがわかりやすく書いてあるのだが、やっぱり体験してみないとわからない!
著者は共感覚の世界的研究者の一人。
共感覚とは、一つの感覚が別の感覚を、本人の意思に関係なく喚起することをいう。
例えば、ニオイを嗅ぐと形が見える・音を聴くと色が見えるなどである。『共感覚者の驚くべき日常―形を味わう人、色を聴く人』を読んで、そんな不思議な共感覚に興味をもった。
「一冊で共感覚がわかる、お得な入門書」(訳者あとがき)と謳ってあるように、共感覚の研究史から、現在わかっている事柄まで、専門的分野に踏み込みながらもわかりやすく書かれていた。
共感覚とは少数の人に見られる生物学的基盤を持ったリアルな現象である。しかし、共感覚は、治療が必要な病気でもなければ、人の同情を必要とする境遇でもない。記憶力がよいという特性を持ち、多くの芸術家たちは、共感覚を生み出そうと必死になっているほどである。
この本にもいくつか事例が載っていた。
例えば、文字や数字を見ると同時に色を読みこんでしまうタイプの共感覚者ザンナ。
Ⅳという数字を見ると、4は緑に見え、Iは黒でVは茶に見えるため、複数の色が同時に見えてしまう。
言葉を考えたり聞いたりすると、味を感じる共感覚者のジェイムズ。
イチゴを食べると同時に、コンデンスミルクの味を強烈に感じるという「quiet」という言葉を使うという実験をした。すると、「イチゴとクリームが絶妙にミックスした最高の味になった」という。
この本は共感覚の本質に迫るべく、科学的データ、共感覚者の肉声と共に解説してくれている良書である。
しかし、味やにおいを言葉だけで説明するのが難しいように、本を読んでも共感覚の世界は体験しないとわからない。
残念ながら共感覚者ではない私にはカエルの声はケロケロとしか聞こえないのである。
ジェイミー・ウォード著
長尾力訳
青土社
一冊で共感覚がわかる、お得な入門書。共感覚のことがわかりやすく書いてあるのだが、やっぱり体験してみないとわからない!
著者は共感覚の世界的研究者の一人。
共感覚とは、一つの感覚が別の感覚を、本人の意思に関係なく喚起することをいう。
例えば、ニオイを嗅ぐと形が見える・音を聴くと色が見えるなどである。『共感覚者の驚くべき日常―形を味わう人、色を聴く人』を読んで、そんな不思議な共感覚に興味をもった。
「一冊で共感覚がわかる、お得な入門書」(訳者あとがき)と謳ってあるように、共感覚の研究史から、現在わかっている事柄まで、専門的分野に踏み込みながらもわかりやすく書かれていた。
共感覚とは少数の人に見られる生物学的基盤を持ったリアルな現象である。しかし、共感覚は、治療が必要な病気でもなければ、人の同情を必要とする境遇でもない。記憶力がよいという特性を持ち、多くの芸術家たちは、共感覚を生み出そうと必死になっているほどである。
この本にもいくつか事例が載っていた。
例えば、文字や数字を見ると同時に色を読みこんでしまうタイプの共感覚者ザンナ。
Ⅳという数字を見ると、4は緑に見え、Iは黒でVは茶に見えるため、複数の色が同時に見えてしまう。
言葉を考えたり聞いたりすると、味を感じる共感覚者のジェイムズ。
イチゴを食べると同時に、コンデンスミルクの味を強烈に感じるという「quiet」という言葉を使うという実験をした。すると、「イチゴとクリームが絶妙にミックスした最高の味になった」という。
この本は共感覚の本質に迫るべく、科学的データ、共感覚者の肉声と共に解説してくれている良書である。
しかし、味やにおいを言葉だけで説明するのが難しいように、本を読んでも共感覚の世界は体験しないとわからない。
残念ながら共感覚者ではない私にはカエルの声はケロケロとしか聞こえないのである。
2012年4月4日水曜日
バカな研究を嗤うな 寄生虫博士の90%おかしな人生力
バカな研究を嗤うな 寄生虫博士の90%おかしな人生力
藤田紘一郎著
技術評論社
「寄生虫博士」として有名な著者の半生を振り返った一代記。世界中からウンコを集め、お腹にサナダムシを飼い、変わり者扱いされてもひるまない強さの源とは?
(著者に倣ってウンコと呼ばせていただきます。)
1933年生まれの医学博士である著者が半生を振り返った本。
「笑うカイチュウ」などのちょっと変わった著作がある著者。
世界70ヶ国、総数10万個のウンコを集め、衛生第一の医学界で寄生虫のよさを訴える。
変わり者扱いされても仕方がないのかもしれない。
でも、著者は怯まず、人とは少しずれた道を邁進するのである。
その強さ・原動力はどこから来るのだろうか。
終戦前に満州から、発熱・栄養失調になりながら命からがら帰国し、東京大空襲に遭遇。
父親が結核療養所の副所長であったことから、療養所内の宿舎に住み、いじめにあう。
家族の愛にも恵まれず、お手伝いさんから性的いたずらを受ける。
そんな過酷な経験を経た著者だからなのかもしれない。
フィラリア研究の教授とトイレで会い、熱帯病の調査を頼まれたのがウンのつき。
整形外科医を目指していた著者の運命が、大きく変わった瞬間でもあった。
インドネシアに滞在し、ウンコがプカプカ浮いている川で体を洗い、遊び、洗濯をしても感染症やアトピーになりにくい人々を目にして、キレイ・キタナイとは何だろうかと衝撃を受ける。
そんな著者の半生が語られている良書であった。
興味深い研究内容も書かれていた。
例えば、戦前の日本人のウンコは1日350~400gであったが、今では150~200gに減少している。
そして、食物繊維の摂取量が多い国ほど、自殺率が低いという。
血液型により性格や免疫力に違いが出るという考察も、面白いと感じた。
それにしても、花粉症も治り、ダイエットもできて、なおかつ心が穏やかになるというサナダムシ。
ザリガニやミミズをペットにするのもいいけれど、おなかの中にサナダムシも飼ってみたいなぁ。
藤田紘一郎著
技術評論社
「寄生虫博士」として有名な著者の半生を振り返った一代記。世界中からウンコを集め、お腹にサナダムシを飼い、変わり者扱いされてもひるまない強さの源とは?
(著者に倣ってウンコと呼ばせていただきます。)
1933年生まれの医学博士である著者が半生を振り返った本。
「笑うカイチュウ」などのちょっと変わった著作がある著者。
世界70ヶ国、総数10万個のウンコを集め、衛生第一の医学界で寄生虫のよさを訴える。
変わり者扱いされても仕方がないのかもしれない。
でも、著者は怯まず、人とは少しずれた道を邁進するのである。
その強さ・原動力はどこから来るのだろうか。
終戦前に満州から、発熱・栄養失調になりながら命からがら帰国し、東京大空襲に遭遇。
父親が結核療養所の副所長であったことから、療養所内の宿舎に住み、いじめにあう。
家族の愛にも恵まれず、お手伝いさんから性的いたずらを受ける。
そんな過酷な経験を経た著者だからなのかもしれない。
フィラリア研究の教授とトイレで会い、熱帯病の調査を頼まれたのがウンのつき。
整形外科医を目指していた著者の運命が、大きく変わった瞬間でもあった。
インドネシアに滞在し、ウンコがプカプカ浮いている川で体を洗い、遊び、洗濯をしても感染症やアトピーになりにくい人々を目にして、キレイ・キタナイとは何だろうかと衝撃を受ける。
そんな著者の半生が語られている良書であった。
興味深い研究内容も書かれていた。
例えば、戦前の日本人のウンコは1日350~400gであったが、今では150~200gに減少している。
そして、食物繊維の摂取量が多い国ほど、自殺率が低いという。
血液型により性格や免疫力に違いが出るという考察も、面白いと感じた。
それにしても、花粉症も治り、ダイエットもできて、なおかつ心が穏やかになるというサナダムシ。
ザリガニやミミズをペットにするのもいいけれど、おなかの中にサナダムシも飼ってみたいなぁ。
2012年2月10日金曜日
私を宇宙に連れてって 無重力生活への挑戦
私を宇宙に連れてって 無重力生活への挑戦
メアリー・ローチ著
池田真紀子著
アメリカ人女性サイエンスライターが好奇心の赴くまま「地球に居ながら宇宙を体験」した本。普段の報道では触れないような内容が盛り沢山で楽しく読める。
口が堅いことで有名な宇宙開発研究機関の扉をこじ開けて、なかなか知ることができない宇宙研究や訓練について楽しく突撃取材している本。
著者は、アメリカ人女性ジャーナリストで、本書を含め何冊も全米ベストセラー入りしている。
最初の章で、JAXAの宇宙飛行士選抜試験に密着取材していた。
これは前に読んだ『宇宙飛行士選抜試験』 を違う方向から見たものだと思い、興味深く読んだ。
今まで、宇宙酔い・排泄などマイナスイメージにつながるようなことはあまり報道されてこなかった。
NASA等もそういったことは隠ぺいしている。
なぜなら、ただでさえ不足がちな予算をさらに削られることへの恐怖からだ。
NASAの「宇宙飛行士責任規定」には、「不品行との印象を与えないよう努力すること」と書いてあるという。
暴露本を出したり、「オムツ事件」を起こした人もいたなぁと思いながら読み進める。
また、向井万起男さんの著書で、宇宙飛行士の訓練の細かさ・マニュアルの分厚さなどが載っていて
命にかかわるから大変なんだなぁと思っていた。
なぜそこまで細かくこだわるのかということがこの本を読むとよくわかる。
塵一つでも命取りになる宇宙。宇宙酔いになり吐いてしまったら、空気がないため吐瀉物が流れず呼吸を止めてしまうこともあるという。
それだけではない。尿や便だって、排泄に失敗して部屋を漂いはじめたら・・・笑いごとではない。
私が一番面白いと感じたのは、「寝たきり実験」---ベッドで寝てるだけでNASAから給料をもらう方法---であった。
1日24時間3か月間、シャワーを浴びるときも、食事・トイレも上半身を起こすことは許されない、
過酷なんだか、楽ちんなんだかわからない実験。
報酬は、3食付きで3カ月17000ドル!
無重力空間に長く滞在し、骨や筋肉が衰えるのと同じような環境を作り、その身体的変化を理解し、防ぐ最良の方法を探ることを目的としているという。
また、日本女子大学が開発した光触媒を使った「宇宙下着」を若田光一さんが28日間穿き続けても不快感はなかった、という話も誇らしく感じた。
その他、なかなか聞けない性ににまつわる話や、お風呂に入らないで耐える「不潔実験」、
宇宙食のみを食べる実験、リサイクルした尿を飲むなど、もともと知識のない私が疑問にすら思わなかったことが載っていて楽しめた。
ときには、高所恐怖症なので絶叫しそうになったり、うえぇと声を出してしまったり、眉をひそめた
り、といった箇所もあった。
メアリー・ローチ著
池田真紀子著
アメリカ人女性サイエンスライターが好奇心の赴くまま「地球に居ながら宇宙を体験」した本。普段の報道では触れないような内容が盛り沢山で楽しく読める。
口が堅いことで有名な宇宙開発研究機関の扉をこじ開けて、なかなか知ることができない宇宙研究や訓練について楽しく突撃取材している本。
著者は、アメリカ人女性ジャーナリストで、本書を含め何冊も全米ベストセラー入りしている。
最初の章で、JAXAの宇宙飛行士選抜試験に密着取材していた。
これは前に読んだ『宇宙飛行士選抜試験』 を違う方向から見たものだと思い、興味深く読んだ。
今まで、宇宙酔い・排泄などマイナスイメージにつながるようなことはあまり報道されてこなかった。
NASA等もそういったことは隠ぺいしている。
なぜなら、ただでさえ不足がちな予算をさらに削られることへの恐怖からだ。
NASAの「宇宙飛行士責任規定」には、「不品行との印象を与えないよう努力すること」と書いてあるという。
暴露本を出したり、「オムツ事件」を起こした人もいたなぁと思いながら読み進める。
また、向井万起男さんの著書で、宇宙飛行士の訓練の細かさ・マニュアルの分厚さなどが載っていて
命にかかわるから大変なんだなぁと思っていた。
なぜそこまで細かくこだわるのかということがこの本を読むとよくわかる。
塵一つでも命取りになる宇宙。宇宙酔いになり吐いてしまったら、空気がないため吐瀉物が流れず呼吸を止めてしまうこともあるという。
それだけではない。尿や便だって、排泄に失敗して部屋を漂いはじめたら・・・笑いごとではない。
私が一番面白いと感じたのは、「寝たきり実験」---ベッドで寝てるだけでNASAから給料をもらう方法---であった。
1日24時間3か月間、シャワーを浴びるときも、食事・トイレも上半身を起こすことは許されない、
過酷なんだか、楽ちんなんだかわからない実験。
報酬は、3食付きで3カ月17000ドル!
無重力空間に長く滞在し、骨や筋肉が衰えるのと同じような環境を作り、その身体的変化を理解し、防ぐ最良の方法を探ることを目的としているという。
また、日本女子大学が開発した光触媒を使った「宇宙下着」を若田光一さんが28日間穿き続けても不快感はなかった、という話も誇らしく感じた。
その他、なかなか聞けない性ににまつわる話や、お風呂に入らないで耐える「不潔実験」、
宇宙食のみを食べる実験、リサイクルした尿を飲むなど、もともと知識のない私が疑問にすら思わなかったことが載っていて楽しめた。
ときには、高所恐怖症なので絶叫しそうになったり、うえぇと声を出してしまったり、眉をひそめた
り、といった箇所もあった。
2012年1月19日木曜日
共感覚者の驚くべき日常 形を味わう人、色を聴く人
共感覚者の驚くべき日常 形を味わう人、色を聴く人
リチャード・E・シトーウィック著
山下篤子訳
物を食べると味を感じるのと同時に指先に形を感じる。音を聴くと色が見える。10万人に1人という共感覚者について神経科学者が迫る探求の書。
味にさわる、音を見る・・・。
音楽関係の本で、音楽を聴くと色が見える人がいると読んだことがあって気になっていた。
私自身も音楽を聴いて情景が浮かんでくることがあるが、そんな事とは全く違う共感覚者。
その不思議な彼らに迫った本。
著者は米国の神経科医師。
原著は少し古く、共感覚者は10万人に1人と書いてあるが、現在はもっと多いと考えられているらしい。
題名から「共感覚者の日常」の症例が並ぶ本と思っていたらそうではなかった。
著者がどうして共感覚について興味を持ち、彼らに出会い、どういう過程を経て研究していったか
といったことを生い立ちから語っている。
そして、クライマックスの脳血流検査へ・・・。
共感覚とは、一つの感覚が別の感覚を(本人の意思に関係なく)喚起することをいう。
例えば、ニオイを嗅ぐと色が見える・音を聴くとそれに従って決まった動作をする…などである。
もっと具体的には、物を食べた時に味と共に
ニオイを嗅いだ事のない人にニオイのことを口で説明するのが困難なように、共感覚のこともなかなか理解できない。それを専門用語で説明するので、読み進めるのに時間がかかった。
視覚、聴覚、味覚、触覚、臭覚に加え運動。
それらが2つ(まれに3つ以上)混じり合う感覚。
うーん。興味深く面白かったがやはり理解しがたい。
共感覚は、実際は私たちが誰でも持っている正常な脳機能なのだが、その働きが意識にのぼる人が一握りしかいないらしいので、私にも全く関係のない話ではないのだが。
後半に脳に関するエッセイ(意識・AIなど)がついていて、内容は違うが『単純な脳、複雑な「私」』(池谷裕二著)のようで興味深かった。
願わくば、私のような素人にももっと面白くすらすら読めるような「共感覚者」についての本があればと思った。
リチャード・E・シトーウィック著
山下篤子訳
物を食べると味を感じるのと同時に指先に形を感じる。音を聴くと色が見える。10万人に1人という共感覚者について神経科学者が迫る探求の書。
味にさわる、音を見る・・・。
音楽関係の本で、音楽を聴くと色が見える人がいると読んだことがあって気になっていた。
私自身も音楽を聴いて情景が浮かんでくることがあるが、そんな事とは全く違う共感覚者。
その不思議な彼らに迫った本。
著者は米国の神経科医師。
原著は少し古く、共感覚者は10万人に1人と書いてあるが、現在はもっと多いと考えられているらしい。
題名から「共感覚者の日常」の症例が並ぶ本と思っていたらそうではなかった。
著者がどうして共感覚について興味を持ち、彼らに出会い、どういう過程を経て研究していったか
といったことを生い立ちから語っている。
そして、クライマックスの脳血流検査へ・・・。
共感覚とは、一つの感覚が別の感覚を(本人の意思に関係なく)喚起することをいう。
例えば、ニオイを嗅ぐと色が見える・音を聴くとそれに従って決まった動作をする…などである。
もっと具体的には、物を食べた時に味と共に
10あまりの円柱が自分の前にあるのを感じる。目には見えないが、触覚では実在する。フォークを入れると円柱の冷たくて滑らかな表面に手をあてた上下させている感じがする。ミント味を口の中で転がすときは円柱の一つに手をのばして、裏側の局面をこすっている。略表面は冷たくてすがすがしく、一種セクシーである。というような感じを持つことである。
ニオイを嗅いだ事のない人にニオイのことを口で説明するのが困難なように、共感覚のこともなかなか理解できない。それを専門用語で説明するので、読み進めるのに時間がかかった。
視覚、聴覚、味覚、触覚、臭覚に加え運動。
それらが2つ(まれに3つ以上)混じり合う感覚。
うーん。興味深く面白かったがやはり理解しがたい。
共感覚は、実際は私たちが誰でも持っている正常な脳機能なのだが、その働きが意識にのぼる人が一握りしかいないらしいので、私にも全く関係のない話ではないのだが。
後半に脳に関するエッセイ(意識・AIなど)がついていて、内容は違うが『単純な脳、複雑な「私」』(池谷裕二著)のようで興味深かった。
願わくば、私のような素人にももっと面白くすらすら読めるような「共感覚者」についての本があればと思った。
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