2014年6月30日月曜日

いとみち 三の糸

越谷オサム著
新潮社

津軽弁のメイドさん・いとちゃんも高校3年生。旅立ちの時がやってきた!!




いとちゃん。
あなたが青森市にある「津軽メイド珈琲店」で、人見知りを直そうとメイドさんのアルバイトを始めたのは、高校1年生の時でしたね。
お祖母ちゃん譲りの津軽弁丸出しで、その上口下手ということもあって、当初は失敗の連続でした。
いとちゃんのぎこちない接客に、私もハラハラしながら心配していたんですよ。

そんないとちゃんも、もう高校3年生。
相変わらず人見知りで「おがえりなさいませ、ごスずん様」と訛ってしまうけど、少しずつ自分の思ったことを口に出せるようになってきました。

新しく入ってきた傍若無人な後輩に意見したときは、あのいとちゃんがここまで成長したんだと、本当にびっくりしました。
だけど、高1から見守ってきた私は感慨にふける一方、なんだかいとちゃんが遠くに行ってしまったようで寂しさを感じてしまったことも事実です。
ああ、旅立ちの時にこんな事言ってはいけませんね。

いとちゃんは本当に周りの人に恵まれました。
メイド喫茶で働くことに大反対だったけれど、今では応援してくれているお父さん。
動画サイトで有名になり検索ワードランキングの上位に食い込んでしまったお祖母ちゃん。

それに、家族になったばっかりとは思えないほど仲のいい店長一家や、メイド仲間たち。
すっかり親友になった写真部の仲間や先生。
そして、気は優しくて力持ちのあの後輩。

彼らは、いとちゃんのそのひたむきな情熱と優しい気持ちがあったからこそ、応援してくれるのだと思います。
いとちゃんが自分の力で呼び寄せた応援団なのです。

きっと新天地でもいとちゃんの理解者が自然と集まってくるでしょうから、心配せず一歩を踏み出してください。

ミニコンサートで、お祖母ちゃん譲りのアレンジ自在な津軽三味線が聞けなくなるのは残念ですが、いとちゃんの後継者も育ちつつあるので楽しみです。

私には見えます。
いとちゃんが、青森の地域活性のため、三味線片手に立ち上がる姿が。
そして、もじもじしながら笑いあう幸せな家庭が。

いとちゃん、優しい時間をありがとう。
またいつかどこかでお会いできるのを楽しみにしています。

いとちゃんを3年間見守ってきたファンのおばさんより。

2014年6月26日木曜日

太らない生活 2014 (Number PLUS)



小さい頃からポッチャリだった私は、何度ダイエットに挑戦し挫折したか数え切れません。
そんな私が、この1年で-5kgも痩せたのです!
きっかけは「太らない生活2013」を読んだことでした。(その時のレビュー
「痩せる」ではなく「太らない」、すなわち現状維持しましょうという奥ゆかしい題名に惹かれて手に取り、自分の認識を改めたのです。
すぐに効果を求めるのではなく、将来を考え1年で-3.5kg程度痩せるつもりで頑張ろうと。
するとちょっとずつ生活を変えただけで、気づいたら自然に痩せていたのです。

自分では、
・昨年から無農薬野菜を配達してもらっているので、野菜を食べる量が増えた。
・ドレッシングも手作りするようになり、亜麻仁油・エゴマ油を使うようになった。
・夕食時のみ、お米を控える。(パンや麺、フルーツは食べている。)
が理由かなと思っています。

今年も「太らない生活2014」が出版されたので、迷わず手に取りました。
基本的には雑誌「Number」の別冊ですから、アスリートが登場したり、運動系のことが多く掲載されていますが、普段運動されない方にも参考になることが多いと思います。

インタビューでは、前田美波里さん、アンジャッシュの渡部、スキージャンプの葛西選手たちが、それぞれの「太らない生活」を紹介しています。
やり方は様々ですが、みなさん試行錯誤しながら、自分の生活スタイルや体調にあった方法を発見しているようです。
とは言っても彼らはプロ意識の高い方々です。
私のような隙あらば楽しようと考える怠け者には、ブラマヨ小杉の「太ってしまった生活」、痩せたのにリバウンドしてしまったやしろ優さんの「元成功者の懺悔」などの方が反面教師として参考になったのでした。

1週間のうち2日だけ普段の1/4のカロリーに抑える「5:2」ダイエット、
24時間のうち16時間何も食べず、残りの8時間は食べ放題飲み放題という「8時間ダイエット」
などの「ゆる断食」系のやり方や、角田光代さんの「ロッテルダムマラソン体験記」、基礎代謝の謎、遺伝子検査、と様々なダイエットに関する最前線が掲載されています。

一番参考になったのは「ごはんの300kcalとケーキの300kcalは本当に同じなのか?」という特集です。
キーワードは血糖値の上がり方。
糖質制限食が最近話題になっていますもんね。
低糖質を続けていくと体が慣れてしまい、肝臓が血糖を作り始める「糖新生」が活発になり減量効果が薄れることもあるそうです。

個人的には基本に立ち返って、運動と食事を少しずつ改善し継続していく正統派のやり方が一番のように思います。
また、痩せた人より太った人の方が長生きという説もありますから(参考:記事「太り過ぎは痩せよりも長生きする?」)、極端な方法に走らず、ダイエットもほどほど、食べ過ぎもほどほど、何事も「ほどほど」が一番なのではないでしょうか。

2014年6月23日月曜日

教場

長岡弘樹著
小学館

事件は会議室で起きているんじゃないっ!警察学校で起きてるんだっ!!



警察学校を舞台にした小説「教場」
「教場(きょうじょう)」とは、警視庁のHPによると警察学校におけるクラスのことらしいが、教室の事も指しているようである。

警察学校に入学した初任科第98期短期課程の学生たちが、厳しい訓練の中ストレスを溜めて、次々と事件を起こしていく。
そして、何でもお見通しの担任・風間教官が、いとも簡単に解決していく。
・・・という短編連作集である。

面白くて途中でやめられず、一気読みしてしまった。
しかし、事件が起こりすぎじゃないだろうか。
警察官の卵たちが、犯罪スレスレの事件や犯罪そのものを犯していくのだから、青島刑事が聞いたら怒りそうだ。

実際の警察学校もこうなのだろうかと興味がわいてきた。
こんなにもストレスがかかり、こんなにも事件が起こるのだろうか?
いや、事件はそうそう起こらないだろうけど(^^;

気になって検索してみると、あちこちの県警が採用案内でカリキュラムや一日のスケジュールを紹介していた。
法律、実務教養、柔道・剣道・逮捕術、拳銃・・・
これがまさに本書のような授業内容で、なかなか興味深い。
治安を守る仕事なのだから厳しいのは当たり前だろうが、ちょっと前まで学生だった身にはストレスがかかるのだろう、「警察学校4人に1人退職」という記事を見つけた。
神戸新聞の記事
県警採用HPには、クラブ活動や食堂で楽しそうにしている写真が多数掲載されているのだが。

本書に「警察学校は、優秀な警察官を育てるための機関ではなく、適性のない人間をふるい落とす場所である」というセリフがあった。
こうして個性を失くし「警察官」という型にはめられていくのだろうか。
正義感は人一倍あっても、要領の悪い人間はふるい落とされてしまうのだろうか。

いや、そうではないと信じたい。
それぞれ志を持って警察官を志望したのだから。

2014年6月20日金曜日

夏への扉[新訳版]

ロバート・A・ハインライン著
小尾芙佐訳
早川書房

ほ、欲しい!この機械が欲しい!煩わしい雑用を引き受けてくれるお手伝いさんのようなこの機械が欲しい!






今まであまりSFの小説を読んできませんでした。
別に嫌いだったわけではありません。
手に取る機会がなかっただけなのです。

先日、池澤春菜さんの書評集「乙女の読書道」を読んで、楽しそうにSFについて語る春菜さんに影響され、無性にSFの小説を読みたくなりました。
でも初心者なので、何から手をつけていいのかわかりません。
そこで、池澤春菜さんがインタビューで「初心者におすすめ」とおっしゃっていたこの「夏への扉」から読み始めることにしました。

有名な作品ですから、私も家事をやってくれる女中さんのようなロボットや、タイムトラベルが出てくる話だということはなんとなく知っていましたが、未読だったのです。

(本書は、2009年に出版された新訳版です。)

舞台は1970年のロサンゼルス。
友人のマイルズと会社を設立した主人公のエンジニア・ダンは、床を掃除する「おそうじガール」(原文では「Hired Girl」、旧訳では「女中文化器」)を発明し、順調に業績を伸ばしていました。
秘書のベルと婚約し仕事も絶好調だったダンは、突然ベルとマイルズに裏切られ全てを失ってしまいます。
失意のダンは、様々な準備を整えた上コールドスリープ(旧訳では「冷凍睡眠」)を選択し、30年間の眠りにつきました。
2000年に目覚めたダンは、周到な準備の甲斐無く窮地に陥り、落胆します。
そしてタイムトラベルの存在を知り、元の1970年へと戻っていくのです。

本書は、1956年に発表されたというから驚きです。
今読んでも古臭くありません。
確かにPCやスマホは出てこないけれど、全く違和感を持たないのです。

タイムトラベルや、雑用をしてくれるロボットのような機械が出てくるため、SFというジャンルに区切られるけれども、普通に小説として面白い、というのが読んだ直後の率直な感想です。
いい者・悪者の役割がハッキリしていて、最後はまぁるく収まる。
そして何より夢があります。
面倒くさい家事を引き受けてくれるお手伝いさんのような機械、仕事の雑用をこなしてくれる秘書のような機械、誰もがあったらいいなと考える理想の機械が出てくるのです。

読みながら、
こんな機械があったら時間的にも肉体的にも楽になるだろうから、その分こんな事しちゃおう♪
30年後に目覚めたら、友人や知人はいなくなっているかもしれない、それに新たに人間関係を築かなきゃならないし、文明の進歩についていけないだろうから、コールドスリープはしたくないなぁ。
なんて、想像がどんどん膨らんでいくのです。

こういうところがSFの魅力なのかな?と初心者ながら思いました。

さあ、次は何を読もうかな?

2014年6月16日月曜日

まほろ駅前狂騒曲

三浦しをん著
文藝春秋

このコンビはやっぱり最強だっ!まほろ駅前で便利屋を営む多田と行天の物語。




まほろ駅前で便利屋を営む多田のもとに、高校の同級生だった行天が転がり込み、ドタバタ騒ぎが巻き起こる人気シリーズの3作目である。

かつて「まほろ市民」だった私としては、このシリーズは外せない。
しかし、脇役たちにスポットを当てた前作「まほろ駅前番外地」を読んでちょっとがっかりしたことも事実である。
言い方は悪いが、エピソードの羅列のように感じられ、小説としては面白みがなかったのだ。(あっ、言っちゃった!)

だから、本書「まほろ駅前狂騒曲」はあまり期待せずに読み始めたのだが、やっぱり多田と行天のコンビは最強だった。

今回は、多田と行天が小さな女の子を預かることになって「狂騒曲」が始まっていく。
しかもその女の子とは、子供嫌いな行天の遺伝上の娘なのだ。
無農薬野菜を販売している胡散臭い団体や、老人たちのバスジャック事件なども絡み、相変わらずまほろ駅前は、騒がしい。
そしてなんと多田の恋愛に進展が!!

あらすじだけ読むと大騒ぎしているだけのような物語だが、多田と行天二人の悲しい過去や心の闇が絡んでいるため、単なるドタバタコメディでは終わらない。
あちこちで起こる騒動を上手くまとめ上げ、感動のエッセンスを振りまいてくれるのだから、このシリーズはやめられないのである。

表面的には、
行天のことを「いつまで居座る気だろうか」と鬱陶しく思う多田。
足手まといのような存在の行天。
掛け合い漫才のような二人だが、お互いにかけがえのない存在だと気づき始めているのではないだろうか。

ああ、早く続きが読みたい。
またまほろ駅前で二人に会いたい。
と読んだ直後なのに思ってしまうのである。

  。.:♦♥♦:.。。.:♦♥♦:.。。.:♦♥♦:.。。.:♦♥♦:.。。.:♦♥♦:.。。.:♦♥♦:.。。.

小説に人物の挿絵は必要ない、いや、余計なものだと考えていた。
読者それぞれが、頭の中で好きなようにイメージできるのが読書の楽しみだと思うからだ。

このシリーズも瑛太と松田龍平のコンビで映画化・ドラマ化されているのは知っていたが、観ていないので、自分なりに登場人物たちをイメージしていた。

前2作は文庫本で読んでいたためイラストはなかったのだが、今回初めて単行本で読んだところ、多田や行天はじめ登場人物のイラストがいくつか掲載されていた。
しかし、こ、これは反則だぁ。
カッコ良すぎるではないかっ!特に行天!
私はどちらかというと影がある文化系男子より、明るく逞しい肉体派の体育会系男子が好みなのに。
物語が好きで読んでいたのに。
これでは惚れてまうやないか!
一旦惚れてしまったら、冷静に読めなくなってしまうのになぁ。
(´-ω-`)

結論
登場人物のイラストは、自分好みのイケメンに限りOKである。
(→なんてワガママな!)

2014年6月12日木曜日

慶應幼稚舎の流儀

歌代幸子著
平凡社新書

お受験の最高峰・慶応幼稚舎とは、どんな学校なのだろうか。

高校時代、渋谷で幼稚舎の生徒をよく見かけた。
無邪気な彼らを見ながら、お金持ちなんだろうな、いいもの食べているんだろうな、と心の中で思っていた。

お受験の最高峰と言われる慶応幼稚舎とは、どんな学校なのだろうか?

本書は、幼稚舎の歴史、なかなか表に出ない教育内容などについて、出身者・教員のインタビューを交えながら解説したものである。

幼稚舎は1874年(明治7年)に創設され、140年もの歴史がある。
しかし、1学年3~4クラス・各36~44名と少人数のため、幼稚舎出身者は合計しても約1万5000人ほどだという。

最大の特徴は、受験なしで大学まで進学できることだろう。
そのため時間的な余裕があり、学校行事として様々な課外授業が設けられ、伸び伸びとした子供時代を過ごすことができる。
卒業生のインタビューで、「勉強した記憶がない」という方もいたくらいである。
本人のやる気次第だが、なかには基礎的な知識を身につけないまま大学を卒業する者もいるという弊害もあるのではないだろうか。

他にも大きな特徴として、6年間担任持ち上がり制が挙げられる。
やむを得ない事情がない限り、担任もクラスメイトも変わらない。
学級運営は担任によって様々で、学習進度も教材も「ゲームを持って来てもいい」などクラスのルールも、それぞれ異なるのだという。
担任と相性が悪かったり、友人に恵まれなかったら辛いと思うが、それも経験のうちなのだろうか。

他にも、
教室でも土足のため下駄箱がない。
保護者から学校のことに口出しを受けるのを危惧したため、PTAがない。
などが挙げられているが、それらは幼稚舎に限らず中学高校と慶応全般にも当てはまることである。

音大に進学せずにバイオリニストになった千住真理子さん、
幼稚舎始まって以来の「悪童」と言われ、高校で退学になった後、受験して慶応の法学部を卒業した木村太郎キャスター、
など幼稚舎出身者たちのインタビューでは、「生粋の慶応」というプライドと、「世間知らずの坊ちゃん育ち」と見られてしまうコンプレックスが垣間見られる。

また本書では、「お受験」についても言及しているが、親の見栄やエゴで子供が犠牲になるのはやりきれない。
子供の特性を考慮し、無理のない範囲で受験を考えるべきだろう。

幼稚舎出身の友人たちは、「軽井沢の別荘で近所」、「親同士が慶應で同級生だった」、など幼い頃から家族ぐるみの付き合いをしていて、とても団結力が強い。
その培った人脈が、幼稚舎出身者たちの一番の財産ではないだろうか。

2014年6月9日月曜日

ことり

小川洋子著
朝日新聞出版

小川洋子さんの醸し出すこの雰囲気大好き!!社会の片隅でひっそりと生きる「小鳥の小父さん」の一生。なんて静かな、なんてせつない物語なのだろう。



ストーリーに夢中になり、先が知りたいと読書に没頭するような物語。
その小説の世界観や醸し出す雰囲気が好きで、いつまでもこの世界に浸っていたいと思う物語。
その両方を満たす素敵な小説を見つけた。
それがこの「ことり」である。

「小鳥の小父さんが死んだ」という場面から始まるこの小説。
小父さんは両腕で竹製の鳥篭を抱きながら、亡くなっていた。
そして、その鳥籠の中では小鳥が一羽、止まり木の真ん中におとなしくとまっていた。

小父さんは二人兄弟だった。
兄は自分で編み出した〝ポーポー語〟という不思議な言葉を喋り、その言葉を理解できるのは弟である小鳥の小父さんだけだった。
変化を好まない彼らは、社会の片隅でひっそりと暮らしていた。
その後両親も兄も亡くなり、保養施設の管理人をしながら、近所の幼稚園にある鳥小屋の世話を誰に頼まれたわけでもないのに、懸命にこなしていく。
そんな小鳥と共に生きた小父さんの、波瀾万丈ではない、静かな一生の物語である。

冒頭から文章がビンビンと琴線に触れる、琴線ビンビン物語でもある。

小川洋子さんの小説では、奇抜な設定がよくみられる。
例えば「博士の愛した数式」で、博士が大切なことを記したメモを忘れないように体中に貼り付けていたような。
「ミーナの行進」で、ミーナがカバに乗って通学するような。
「猫を抱いて象と泳ぐ」で、唇が癒着していた少年に脛の皮膚を移植したため、唇から脛毛が生えてきたような。

その部分だけ抜き出すと奇抜で滑稽な設定だが、それぞれの小説に浸りながら読んでいると、不思議とすんなりその設定を受け入れ、滑稽さはあまり感じない。

この「ことり」でも、1泊2日の旅行に、靴墨や砂時計などを詰め込みトランク3つにもなってしまったり、成人男性が棒付きキャンディーを買うのを楽しみにしていたり、といった独特の描写がいくつも見られる。
現実離れした設定のような、それでいてありふれた日常のような、独特の世界が広がっているのだ。
相手を傷つけない思いやりや優しさが溢れている、読み終えるのがもったいない、そんな物語だった。

2014年6月5日木曜日

妻の化粧品はなぜ効果がないのか 細胞アンチエイジングと再生医療

北條元治著
KADOKAWA



図書館でドキッとするタイトルを見かけ、思わず借りてきてしまいました。
なぜなら、私にとって今まさに〝旬〟の話題なのです。
いつも使っている化粧水をうっかりきらしてしまい、仕方なく娘の安い化粧水をつけたところ、これがしっとりしてつけ心地がとてもいいのです。
値段はいつもつけている化粧水の1/10以下。
だったらわざわざ高いの買わなくても、これでいいんじゃないか?
いやいや、年齢的にシミやシワにも効くものじゃないと・・・
悩めるお年頃なのです。

本書は、ショッキングな題名から想像した内容とは違い、再生医療の専門家である著者が、アンチエイジングについてわかりやすく解説しているものです。

見た目が老けている人は、血管の老化現象も進んでいて、「肌が若く、体の中の老化が進んでいる」とか「肌は老化が進んでいるが、内蔵や血管は若々しい」というケースはほとんどないそうです。

・老化の大きな原因は「紫外線」「酸化」「糖化」である。
・皮膚組織がコラーゲン・ヒアルロン酸を直接吸収することなどありえない。
(ただし、保湿には効果あり。)
・化粧品が浸透するのは、表皮の一部「角質層」までであり、薬事法でも化粧品の作用が及ぶ範囲は角質層までと決められているため、スキンケア化粧品に期待はできない。

もっと若く、もっと美しくと願う乙女たちに、辛い現実が突きつけられます。

そして、肌の老化防止法は、保湿と紫外線対策だけだと、わかりやすく説明してくれるのです。
だから、安くていいからシンプルな保湿効果のあるものを使いましょうと。

じゃあ、やっぱりこのまま娘の安い化粧水を使い続けていいということ?
でも、化粧品会社だって多額の資金を使って研究しているわけだし、少しぐらい効果があるのでは?
乙女心は複雑でもあるのです。

他にも、iPS細胞について、「酸化」「糖化」についてなど、アンチエイジングの最前線をわかりやすく説明してくれます。
目新しい話題はないけれど、極端な考えに走ったり、過激な方法を推奨するということもないので、かえって信用できる気がします。

でも結局は、地道な努力で老化を食い止めるしかないのでしょうか。

2014年6月1日日曜日

乙女の読書道

池澤春菜著
本の雑誌社

乙女をなめたらあかんぜよ!超のつく読書狂の乙女でもあり、「文筆界のサラブレッド」でもある著者の書評集。



子供の頃から読書好きで、自他共に認める重度の活字中毒。
寝なさいと部屋の電気を消されても、お布団の中に懐中電灯を持ちこんで本を読んでいた。
母が先生に「本を読みすぎて困る」と相談し、読書を推奨している立場の先生を困惑させた。
学校の図書館の本は全部読んだ。

そんな「本好きあるある」のようなエピソードをお持ちの著者・池澤春菜さん。
同じ本好きとしてとても親近感が湧いてきます。

学校の行き帰りの道も歩きながら読み、授業中も、食事中も読む。
小学3年生の時に、本屋でシリーズものを読み始め、続きが読みたくて数軒ハシゴしながら夢中で読みふけっていたら、夜の9時を過ぎていた!
慌てて帰宅すると、家の前にパトカーが停まっていて大騒ぎになっていた。
ここまで来ると、ご本人がおっしゃる通り筋金入りの「読書狂」です。

池澤春菜さんは、声優・歌手・エッセイストとして活躍しながら、今でも年間300冊以上の本を読まれているそうです。
そして、お父様が作家の池澤夏樹さん、お祖父様が作家の福永武彦さん、お祖母様が詩人の原條あき子さんだというのですから、文筆界のサラブレッドとも言えるのではないでしょうか。

表紙の可愛らしい女性はご本人で、まさに「乙女」といった雰囲気が漂っています。
後ろの整頓された本棚はご自宅のものだそうで、どんな本があるのか、どんな並べ方をしているのか、まじまじと見てしまいました。

本書は、そんな「読書狂乙女」の池澤春菜さんが、「本の雑誌」等に連載したものをまとめた書評集です。
池澤夏樹さんとの親子対談や、紙の本禁止令が出されiPodと過ごした1週間の体験記も掲載されていて、とても読み応えがあります。

掲載されている書評は、児童文学やハーレクイン、お父様・お祖父様の作品もありますが、お好きだという翻訳もの、それもSF・ファンタジーに偏っています。
SF愛に満ち溢れた書評なのです。
ほとんどSFを読んでこなかった私が、本書に取り上げられた中で読んだことあるのは、「開かせていただき光栄です」と「ビブリア古書堂シリーズ」ぐらいでした。

この書評集の最大の特徴は、文章から ☆キラキラ☆ や ♪音符♪ が飛び出してくるような印象を受けることなのです。
といっても乙女チックな可愛らしい輝きももちろんあるのですが、それだけではなく、なんというか、子供が好きなことに夢中になっているような、ウキウキやワクワクが伝わってくるのです。
ご本人が、面白くてたまらないと夢中なっている様子が目に浮かんできます。
だから、読んでいてとても楽しくなってくるのです。
そして、池澤春菜さんがそんなにも面白いとおっしゃっているなら読んでみたい!と思ってしまいます。

おかげで読みたい本リストがまたまた伸びてしまいました。
迂闊に手を出したら火傷しそうな魔性の本なので、どうかご注意ください!

♦♫♦・*:..。♦♫♦*゚¨゚゚・*:..。♦♫♦・*:..。♦♫♦*゚¨゚゚・♦♫♦・*:..。♦♫♦*

著者のインタビューより
国語のテストで、父の小説から問題が出たことがあって。「このとき作者は何を考えていたのか答えよ」という問題。その日家に帰って、父に「何を考えてたの?」と訊いたら、「〆切のことしか考えてなかった」(笑)。それで翌日先生のところへ行って、「父は〆切のことしか考えてなかったそうなんですけど、その場合何番を選べばいいんでしょう?」と訊いたら「もういいです」って(笑)。きっとやりにくかったと思います。