与謝野晶子著
和泉書院
与謝野晶子の童話集。母の愛にあふれた21編。
書影 |
与謝野晶子が子育てをしていた当時の子供向けの話には
・仇討ちや金銭に関したことが混じっている
・言葉遣いが野卑
・あまりに教訓がかっている
ものばかりなため、自分の子供たちに自分で作って聞かせたのが童話創作の始まりだという。
その後「少女の友」などの雑誌に次々と子供向けの話を発表していく。
本書は、明治43年に出版された「おとぎばなし少年少女」に収録された話を中心に21編が収められた与謝野晶子の童話集である。
(現代かなづかいに改め、不適切な表現を修正しているとの注意書きがあった。)
金魚が電車に乗っておつかいに行く表題作の「金魚のお使い」、誰もが逃げ出す泣き声の女の子が登場する「女の大将」など、楽しい子供向けの話が掲載されている。
私が一番気に入ったのは、「黄色い土瓶」という物語。
土瓶に目を書くという「おいた」をすると、土瓶は「目が開いた」と大喜びする。
小躍りするたびにお湯をこぼしてしまう土瓶。
お父さんに足を描いてもらうと、お辞儀してお礼を言う。
下を向いてどぶどぶお湯をこぼす土瓶。
そんな土瓶がお使いを頼まれて・・・
と読みながらワクワクするような話だった。
「母さんも言って下すったものですから」など言葉遣いがとても丁寧で、竹久夢二始め当時の挿絵も掲載されていて、明治~大正の雰囲気をたっぷり味わえる。
教訓がかっているのが嫌だと言いつつも、時々教育的指導が透けて見えるところに、子沢山であった与謝野晶子の母心が伺える。
襦袢、帳面、天長節など今ではあまり使われない言葉が出てくるので子供が一人で読むには難しいかもしれない。
「巴旦杏」(はたんきゃう・スモモの一種)や「髷のてがら」(丸髷の根元に飾る布切れ)は私もわからなかった。
しかし、内容的には大人も楽しめる童話集である。
※先日「与謝野晶子が当時爆発的に流行っていたパラフィン注射式の隆鼻術を受けた」と週刊誌で読んだ。本当だろうか。
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