2012年11月6日火曜日

パーネ・アモーレ―イタリア語通訳奮闘記

パーネ・アモーレ―イタリア語通訳奮闘記
田丸公美子著
文藝春秋

下ネタを連発するから通称「シモネッタ」。そんなイタリア語通訳の第一人者である著者の楽しいエッセイ。



広島生まれの著者は、6歳のときに金髪碧眼の美青年からアイスをもらい、
「英語を勉強していつかあんな王子様と直接話したい」と思う。
ノートルダム清心学園に進学し、アメリカ人シスターから徹底的に英会話を叩き込まれる。
地中海文明に憧れ、東京外語大イタリア語科に進学。
1年生の時、36名のイタリア人を12日間引率するツアーガイドを引き受ける。
本書は、その後イタリア語通訳の第一人者となり、下ネタを連発することから「シモネッタ」(故米原万里さん命名)と名付けられた著者の楽しいエッセイである。

最近は男性があまり積極的に女性にアプローチをしなくなったというイタリア人男性や、大物イタリア人とのエピソードなど、陽気なイタリア人について楽しく描かれている。

また、通訳業界の裏話も興味深い。
英語ではMr./Ms.で済む敬称が、イタリア語では大学の卒業学部・資格や叙勲などで変わる複雑さ、男性名詞・女性名詞・・・ああ、こんな難しい言語をイタリアに住んだことがない著者が操るとはすごい。

一つの言葉でも、話し手・聞き手・状況によって、瞬時に尚且つ的確に訳さなくてはならない通訳の仕事に必要なのは
まず、一般常識を含めた日本語の知識。
そして、外国語能力。
その次に、即座に嘘をつく能力を含めた「想像力」だという。
そんな本音を言っちゃっていいのだろうか?(笑)

一番気になったのが、「嘘つきは通訳の始まり」「嘘ばかりついていると通訳くらいにしかなれない」と言って育てた息子さん。
家でステーキを「円高還元!」と言っていたら、保育園の給食で大きめの肉が出たとき「円高還元」と言ったり、転んだ際涙を堪えて「自業自得」とつぶやいたりと、先生方を楽しませたという。

中学1年の保護者会で他のお母さんに
「うちの息子がお宅の雄太君に巨乳のヌード写真集を見せていただいたとか・・・」と言われ、
「うちの子に限って・・・だって巨乳は嫌いだ、手に入る小ぶりサイズが好きだっていつも言っているんですのよ。」と返すシモネッタ。
そして帰宅して息子に
「ヌード写真集を友だちに見せるくらいなら、まずパパに見せてあげなさい。」
その話を聞いた米原万里さんは「まあ、ただでお見せしたんですの?と言うべきよ。」
他の通訳仲間は「あら、いつ私のヌード写真集を持ち出したのかしら、恥ずかしいわって言えばよかったのに。」
息子は「だから通訳の母親なんて欲しくないんだ。最低だ。」

そんな息子さんはどんな大人になるのだろうと思ったら、
東大在学中に最年少で旧司法試験に合格と、人並み以上に立派になられていた。

田丸公美子さんの本は初めて読んだのだが、この楽しさのはクセになりそうだ。

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