2016年12月6日火曜日

10分後にうんこが出ます: 排泄予知デバイス開発物語

MajiでBenする10分前?(注①)大便を相手にフン闘する男の挑戦。



「探偵ナイトスクープ」(注②)で、「男性は誰でもウンコをチビったことがある?」という依頼を調査していたことがあった。(2015年11月27日放送)
大阪の街で道行く大人に尋ねたところ、男性全員が便を漏らした経験ありと回答していて驚いた。
多くの女性は出なくて困っているというのに。
それにしても、テレビカメラの前で堂々と告白するとは、さすが大阪である。

本書は、漏らしてしまった体験をもとに、画期的な機器を開発する男性のフン闘記である。

著者は、起業家になりたいとアメリカに留学中、大便を漏らしてしまう。
それもチビるどころではない大惨事だった!
その後、いつまた漏らしてしまうのかと不安に思うのも当然だろう。
なんとかできないものかと考え、便が出るタイミングを知らせる機器の開発を思いつく。

その名は「DFree」(注③)。
・マッチ箱サイズ(注④)で、下腹部に装着し、超音波で便の動きを察知しBluetooth経由でスマホにデータを送る。
・スマホの専用アプリで何分後に排泄するかを予測し知らせる。
という仕組みである。

ところが思いついたはいいが、著者は高校時代に2回も物理の試験で0点をとったほどの根っからの文系男子であった。
その上、開発にかける資金も足りない。
そこから本書のメインである著者のフン闘が始まるのである。

SNSを駆使して人脈を広げ、資金調達に東奔西走する。
そして友人たちは、なんと長期間ボランティアで協力するのである。
機器を装着して排泄のデータをとり、ときにソーセージを突っ込むことも!

この人材集めこそ彼の能力、そして彼の周りに集まってきた仲間たちこそ彼の資産なのだろう。

大人のおもらしは辛い経験であり、精神的に大きな痛手を負うことが多い。
「DFree」は、漏らすのを恐れる方々だけでなく、脊椎損傷者や過敏性腸症候群などの患者、そしてなにより介護をしている多くの人にとって、大変役に立つだろう。
また、ビッグデータの活用などにより、無限の可能性を秘めた機器でもある。
開発の成功と機器の普及を祈りながら、著者を応援したい。


注①「MajiでBenする10分前?」・・・広末涼子のデビュー曲「MajiでKoiする5秒前」より。

注②「探偵ナイトスクープ」・・・朝日放送で1988年より放送されている関西の人気番組。大便のおもらし経験をスタジオで聞いたところ、西田敏行局長をはじめ、男性全員があると答えた。

注③「DFree」・・・「diaper」(おむつ)と「free」から。「おむつから自由になる世界」との意味をこめているという。

注④「マッチ箱サイズ」・・・大きさを表すのによく使われるが、最近はマッチ箱を見かけない。若い人はもしかしたら大きさを実感できないのではないか。

破婚: 18歳年下のトルコ人亭主と過ごした13年間

年下夫に貢いだ金額3億円以上⁉愛とはこうも「残酷」なものなのか?



「残酷な天使のテーゼ」や「淋しい熱帯魚」で知られる作詞家の及川眠子さんが、18歳年下のトルコ人元夫に3億円以上費やした顛末記である。

及川さんは、40歳の時訪れたトルコで、23歳の男と知り合った。
当初は、胡散臭い・面倒くさいと思っていたものの、つい欲情に負けてしまう。
その後、日本人の恋人と別れて、遠距離恋愛の末、遠距離結婚をするのである。

そこから著者の「むしりとられる」人生が始まった。
飛行機代や生活費だけでなく、親族の面倒までみる。
絨毯屋を買い取る。
旅行会社を設立する。
ホテルを建設……

元夫は、日本人にはできない過剰な愛情表現と巧みな話術で、どんどんお金を引き出していく。
純情そうな青年が、残酷な天使、残忍な悪党、非道な詐欺師と化して、著者を苦しめるのだ。

13年間の結婚生活が終焉を迎えた時、3億円以上がトルコに消えた上、7000万円の借金まで背負うことになったという。

魔が差したのか?
マインドコントロールだったのか?
どうしてお金を渡してしまうのか?
なぜ?
と誰もが疑問に思うことだろう。
本書で及川さんは、「彼の保護者のような立場になってしまった」「お金の無心があまりにしつこいので折れてしまった」などとおっしゃっているのだが。

「残酷な天使のテーゼ」はカラオケランキングで6年以上ベストテンに入っている異例の大ヒット曲である。
カラオケで1回歌われると作詞家には1円入るというから、相当な収入があることが伺える。
しかし、私やあなたが歌った事による印税が、トルコに流れていたとは……

実際、及川さんは年収が1億円を越えたこともあったという。
そんな資産家の及川さんだからこその出来事ともいえるだろう。
庶民は、ない袖は振れないのだから。

終盤は無関係の私でさえ、もうやめて‼勘弁して‼と心の中で何度も叫んだほどだったので、及川さんの苦しみは相当だっただろう。
しかし全てが終わった現在、吹っ切って新しい道を歩み始め、「話のネタにできる」と笑い飛ばせるくらいになったようで、なんとか安堵して本を閉じた。

元夫は、出会った当初からこういうことを計画していたのだろうか?
いや、結果的に大変なことになってしまったが、当初は二人に真実の愛があったのだと信じたい。

黄昏古書店の家政婦さん ~下町純情恋模様~

或る一家の団欒。「昭和レトロ浪漫」恋愛小説編。


M1:なにこの本?3人とも読んだんだ。
「古書店」ってことは「ビブリア古書堂」の二番煎じ?

M2:ビブリアみたいな謎解きは出てこなかったよ。普通の恋愛小説だった。

D:俺は設定が納得いかなかったなぁ。
高校卒業してすぐ家政婦さんになりたいなんて女の子いる?
えっ、昔は一般的だったの?
でも、男1人暮らしの家に住み込みで働くんだぜ。おかしいよ。
それから、怪我してる迷子の男の子を警察に届けず家に連れて帰ったり、納得いかないことばかりだった。

H:まぁまぁ。それじゃあ「うる星やつら」はどうなるの?
ラムちゃんみたいなかわいい宇宙人いるかって話になっちゃうでしょ?
設定は受け入れなくちゃ。

M1:「懐かしく少し切ない、本屋さんとお世話係の昭和レトロ浪漫」って書いてあるけど、昔の話なの?

M2:私は現代と思ったけど。

D:お見合いの話とか、古いなぁって感じるところはあったけど、年代を特定できるようなところはなかった気がする。

H:「飲み屋の女給」「汽車」とか、「春画」「カストリ雑誌」なんて言葉まで使われているから、時代は古いのかな?
でも、会話や女の子の行動は現代そのもので違和感を覚えたなぁ。

M1:古書店が舞台なんだから、本にまつわる話が中心なの?

M2:だからぁ、普通の恋愛話なんだってば。人の話聞いてた?
古書店じゃなく、リサイクルショップでも、古着屋さんでも、小説家の家でもどこでも成立する話だよ。

M1:ふーん。じゃあ、昔の少女漫画のような甘いラブストーリーって感じ?

M2:お姉ちゃん、昔の少女漫画知ってるの?(笑)
簡単に言えば、若い素朴な家政婦さんが39歳のご主人様に惚れて迫るけど、拒否されるっていう話だよ。
男の願望に溢れた物語って感じかな?
少女漫画っていうより、青年漫画だね。
「いかがわしい方の風呂やさん」とか出てくるし(笑)
男目線ってところは、ビブリアと同じかも。

H:確かに、男が好きそうな、ドジでウブな女の子そのものだったね。

M1:何それ!ウブな女の子なのに、自分から迫るの?

D:なっ!だから設定がおかしいっていうんだよ。
ひとつ屋根の下に暮らす若いお姉ちゃんから迫られて、拒める男なんているかっつうの!
そんなのよっぽどの……
あっ、いやいや、お、俺は拒むけどね、そうなっても……

M1:読む前にそんな否定的なことばかり言わなくても……。
で、結局、この本は面白いの?

M2:面白かったよー。予想通り最後は丸く収まるしね。
分厚いけど内容が軽くてすぐ読み終わるから、読んでみたら?

H:私もそれなりに面白く読めたよ。
設定やみえみえの展開はともかく、この作家さんの文章、読みやすかった。
昭和レトロとかラノベとかの縛りを取っ払って、自由に書いた小説を読んでみたいな。

M2:それより、もうお腹すいた~!

D:おっ、今日は俺の当番だった。早く作らなきゃ。
あ~あ、こんな家政婦さん欲しいな。
違うよ!べ、別に若いお姉ちゃんが欲しいってわけじゃないよ!
料理上手な人がいたらなぁって思っただけで…
いてっ。違うって!はにぃの料理が下手なんて言ってないって!

※この会話はフィクションです。
実在の人物とは一切関係がありません。