自分がこんなに根に持つタイプだとは(>_<)
宮部みゆき著
小学館
「誰か」「名もなき毒」「ぺテロの葬列」に続く、杉村三郎シリーズの第4弾。
今回は、杉村三郎が離婚後探偵事務所を立ち上げ、4つの事件を解決する短編連作集となっている。
探偵が事件を解決する物語なら、別に杉村三郎じゃなくても新たなシリーズ立ち上げたらいいんじゃないの?
4作目まできてから探偵事務所を立ち上げるって、ご都合主義のような気がするけど?
確かに杉村は「事件を引き寄せる」力があると周りから言われている。
でも、ほとんどの人が生涯一度も遭遇しないような大事件に何度も巻き込まれるとは、ちょっと不自然過ぎやしませんか?
と、グチグチこぼしてしまったのには訳がある。
私は、前作「ぺテロの葬列」で杉村三郎が離婚したことに、納得していないのだ。
本書はいつものように、暗く陰湿でやりきれないような事件を、気弱で優しい杉村三郎が解決するという内容で、読みごたえがあった。
でも、大金持ちのお嬢様と結婚して相手方に取り込まれても変わらない自然体な態度、
しなっても丈夫な細い柳の枝のような、
気弱だけどやる時はやる男・杉村三郎のキャラクターが好きだったのだ。
今多コンツェルンの入り婿状態という設定が面白かったのだ。
それなのになぜ私に相談もなしに離婚してしまったのか?
こんな愛妻家のいい男がいるのに、なぜ浮気なんかするかなぁ。
もしかしたら、ヨリを戻すか?とちょっと期待していたが、本書を読んだ限り可能性は低いだろう。
あー!
自分がこんなにねちっこい、根に持つタイプだとは思わなかった(>_<)
それだけ杉村三郎に愛着が湧いていたんだな。
「事件は凄惨だが、杉村三郎や取り巻く人々があたたかく、やりきれない思いを癒してくれる」という、このシリーズ最大の魅力は、本書でも健在だった。
だから次回作も読むだろう、ほんのちょっと元サヤに戻ることを期待しながら。
2016年10月14日金曜日
2014年2月23日日曜日
ペテロの葬列
宮部みゆき著
集英社
納得いかない!どうしてこうなっちゃったの?こんな結末、悲しくてやりきれない!
本書は、「誰か Somebody」「名もなき毒」に次ぐ杉村三郎シリーズの第3弾である。
主人公の杉村三郎は、一大グループ・今多コンツェルンの会長の娘と結婚した。
その際出された条件通り、勤めていた出版社を退職し、今多コンツェルンの一員となりグループ広報室で社内報の編集をしている。
お嬢様育ちの妻に寄り添い続け、人畜無害で飄々としている杉村三郎だが、なぜかいつも事件に巻き込まれ解決していく、というシリーズである。
そして今回は・・・
取材先からの帰りに、杉村三郎はバスジャックに遭遇した。
犯人は本物の拳銃を持ってはいるが、弱々しいおじいさんだった。
しかも、7人の人質たちに多額の慰謝料を支払うというのだ。
発生から3時間余りで事件は呆気なく解決するのだが、慰謝料問題などで人質たちは事件後も翻弄されてしまう。
そして、犯人を調べていくうちに過去に起こった悪徳商法の事件が絡んでいることが明らかになっていく。
豊田商事など、ネズミ講まがいの詐欺事件は昔からあるが、その中で被害者と加害者の線引きは難しい。
その組織の幹部たちが一番悪いのは間違いないのだが、会員たちはどうだろうか。
口車に乗せられ虎の子の貯金を失ってしまった末端の会員は?
友人知人を誘いまくり、儲けようと必死になっていた会員は?
純粋にいい組織と信じ込み、親切心から知人に勧めていた場合は?
善意と悪意が入り乱れて、ハッキリしないグレーゾーンがあるのだと突きつけられ、悩んでしまった。
685ページという長編で、中盤辺りで中だるみというか、退屈する部分もあった。
強引すぎるなぁと思う箇所も多々あった。
しかし、犯人の老人はなぜこんな事件を起こしたのか知りたくて読んでいると、話が二転三転しどんどん予測のつかない方向へと進んでいく。
そして、納得いかないのである。
私が納得いかないのは、事件についてではなく、主役の杉村三郎の身辺についてである。
以下ネタバレ。
会長の娘である妻が今多コンツェルンの社員と不倫し、二人は離婚することになったのだ。
妻は浮気をするようなタイプじゃないと思っていたのに。
浮気相手だって、神のような存在である会長の大切な娘と不倫するとは!
そんな大胆なことするだろうか!
かわいい一人娘を傷つけることになるのに!
これじゃあ、妻に尽くし続けた杉村があまりに可哀想じゃないかっ!!
なんでこうなるの!とこのシリーズのファンとしては納得いかない。
もしかしたら「まぁまぁ、落ち着いて。この先を見届けてちょうだいな。」という戦略なのだろうか。
集英社
納得いかない!どうしてこうなっちゃったの?こんな結末、悲しくてやりきれない!
本書は、「誰か Somebody」「名もなき毒」に次ぐ杉村三郎シリーズの第3弾である。
主人公の杉村三郎は、一大グループ・今多コンツェルンの会長の娘と結婚した。
その際出された条件通り、勤めていた出版社を退職し、今多コンツェルンの一員となりグループ広報室で社内報の編集をしている。
お嬢様育ちの妻に寄り添い続け、人畜無害で飄々としている杉村三郎だが、なぜかいつも事件に巻き込まれ解決していく、というシリーズである。
そして今回は・・・
取材先からの帰りに、杉村三郎はバスジャックに遭遇した。
犯人は本物の拳銃を持ってはいるが、弱々しいおじいさんだった。
しかも、7人の人質たちに多額の慰謝料を支払うというのだ。
発生から3時間余りで事件は呆気なく解決するのだが、慰謝料問題などで人質たちは事件後も翻弄されてしまう。
そして、犯人を調べていくうちに過去に起こった悪徳商法の事件が絡んでいることが明らかになっていく。
豊田商事など、ネズミ講まがいの詐欺事件は昔からあるが、その中で被害者と加害者の線引きは難しい。
その組織の幹部たちが一番悪いのは間違いないのだが、会員たちはどうだろうか。
口車に乗せられ虎の子の貯金を失ってしまった末端の会員は?
友人知人を誘いまくり、儲けようと必死になっていた会員は?
純粋にいい組織と信じ込み、親切心から知人に勧めていた場合は?
善意と悪意が入り乱れて、ハッキリしないグレーゾーンがあるのだと突きつけられ、悩んでしまった。
685ページという長編で、中盤辺りで中だるみというか、退屈する部分もあった。
強引すぎるなぁと思う箇所も多々あった。
しかし、犯人の老人はなぜこんな事件を起こしたのか知りたくて読んでいると、話が二転三転しどんどん予測のつかない方向へと進んでいく。
そして、納得いかないのである。
私が納得いかないのは、事件についてではなく、主役の杉村三郎の身辺についてである。
以下ネタバレ。
会長の娘である妻が今多コンツェルンの社員と不倫し、二人は離婚することになったのだ。
妻は浮気をするようなタイプじゃないと思っていたのに。
浮気相手だって、神のような存在である会長の大切な娘と不倫するとは!
そんな大胆なことするだろうか!
かわいい一人娘を傷つけることになるのに!
これじゃあ、妻に尽くし続けた杉村があまりに可哀想じゃないかっ!!
なんでこうなるの!とこのシリーズのファンとしては納得いかない。
もしかしたら「まぁまぁ、落ち着いて。この先を見届けてちょうだいな。」という戦略なのだろうか。
2013年9月3日火曜日
桜ほうさら
宮部みゆき著
PHP研究所
「書は人なり」。
綴る文字には人となりが表れるというが、字が汚い私はいつも人前で字を書くのが恥ずかしくてならない。
本書は、その書いた文字が重要なテーマとなっている宮部みゆきさんの時代小説だ。
主人公の古橋笙之介は、深川の長屋で貸本屋の写本作りの仕事を請け負いながら暮らしている。
実は彼、浪人とはいえ痩せても枯れてもお侍さんなのだ。
書いた覚えのない文書を証拠に、賄賂を受け取った責任を問われ切腹した父の汚名をそそぐため、江戸近郊の小藩からやってきたのだ。
父を陥れた、他人の筆跡をまねて字を書くことの出来る人物を探すために。
家族のように世話をやく長屋の住人たちに囲まれながら笙之介も成長し、淡い恋をしながら事件の真相が明らかになっていく・・・
題名の「桜ほうさら」とは、甲州弁の「ささらほうさら」(いろんなことがあって大変だ、大騒ぎだ)から来ている。
貧乏ながらも肩寄せあってたくましく生きる長屋の住人たち。
それぞれが胸に悲しみを抱え、懸命に前へ進む姿が胸をうつ。
あの暗号文は結局どんな規則で読むのだろう、あの人の身に何があったのだろうなど、疑問も残るがそんなことはどうでもいい。
この切なく温かい小説で、とても癒されたのだから。
いいことばかりではなく、辛いこともたくさんあるけれど、
「ささらほうさら」と呟いたからって解決するわけではないけれど、
その綺麗な語感に慰められ、落ち着いてくるような気がする。
やっぱり宮部みゆきさんの時代小説はいいなぁ。
挿画について
淡い桜色の表紙も可愛らしく、全ページ上部に桜の花びらが散らしてあり、素敵な装丁だと思う。
ただ、人物の漫画チックな挿絵は、個人的にはない方がいいと思う。
いや、はっきり言うと後ろ姿はいいが、顔は描かないで欲しかった。
読みながら自分の好きなように人物を想像したいからだ。
この顔はかわいすぎて、私の中のイメージとはだいぶ違っている。
この物語に限らず、小説には人物の顔の挿絵は必要ないと思う。
映像とは違う、絵本とも違う、活字の世界だから、自分の好きなように想像しながら読みたいから。
見ないようにすればいいだけの話なのだが。
PHP研究所
「書は人なり」。
綴る文字には人となりが表れるというが、字が汚い私はいつも人前で字を書くのが恥ずかしくてならない。
本書は、その書いた文字が重要なテーマとなっている宮部みゆきさんの時代小説だ。
主人公の古橋笙之介は、深川の長屋で貸本屋の写本作りの仕事を請け負いながら暮らしている。
実は彼、浪人とはいえ痩せても枯れてもお侍さんなのだ。
書いた覚えのない文書を証拠に、賄賂を受け取った責任を問われ切腹した父の汚名をそそぐため、江戸近郊の小藩からやってきたのだ。
父を陥れた、他人の筆跡をまねて字を書くことの出来る人物を探すために。
家族のように世話をやく長屋の住人たちに囲まれながら笙之介も成長し、淡い恋をしながら事件の真相が明らかになっていく・・・
題名の「桜ほうさら」とは、甲州弁の「ささらほうさら」(いろんなことがあって大変だ、大騒ぎだ)から来ている。
貧乏ながらも肩寄せあってたくましく生きる長屋の住人たち。
それぞれが胸に悲しみを抱え、懸命に前へ進む姿が胸をうつ。
あの暗号文は結局どんな規則で読むのだろう、あの人の身に何があったのだろうなど、疑問も残るがそんなことはどうでもいい。
この切なく温かい小説で、とても癒されたのだから。
いいことばかりではなく、辛いこともたくさんあるけれど、
「ささらほうさら」と呟いたからって解決するわけではないけれど、
その綺麗な語感に慰められ、落ち着いてくるような気がする。
やっぱり宮部みゆきさんの時代小説はいいなぁ。
挿画について
淡い桜色の表紙も可愛らしく、全ページ上部に桜の花びらが散らしてあり、素敵な装丁だと思う。
ただ、人物の漫画チックな挿絵は、個人的にはない方がいいと思う。
いや、はっきり言うと後ろ姿はいいが、顔は描かないで欲しかった。
読みながら自分の好きなように人物を想像したいからだ。
この顔はかわいすぎて、私の中のイメージとはだいぶ違っている。
この物語に限らず、小説には人物の顔の挿絵は必要ないと思う。
映像とは違う、絵本とも違う、活字の世界だから、自分の好きなように想像しながら読みたいから。
見ないようにすればいいだけの話なのだが。
2013年8月23日金曜日
泣き童子 三島屋変調百物語参之続
宮部みゆき著
文藝春秋
不思議な話を語って語り捨て、聞いて聞き捨て。怖くて悲しくて温かい物語。
江戸は神田三島町の袋物屋・三島屋では、「変わり百物語」が行われている。
主人の姪である おちか が、客人たちが持ち込む不思議な怪談話を聞くという趣向だ。
客は話を語って語り捨て、おちか は話を聞いて聞き捨て、あとは二度と云々しないのが決まりの百物語。
ただ聞くだけなんて簡単だと思うなかれ、苦しくなったり悲しくなったり怖くなったり大変難しい役目なのだ。
そして人々の話を聞きながら傷ついた おちか の心が少しづつ癒されていく・・・
「おそろし」「あんじゅう」に続く「三島屋百物語」シリーズの第3巻である。
マリッジブルー気味の嫁入り前の娘が語る、必ず男の気持ちが離れてしまうという池にまつわる言い伝えの話「魂取の池」
おちか が、「心の煤払い」と称して札差が主催する年末恒例の怪談語りへと出向き、皆で不思議な話を聞く「小雪舞う日の怪談語り」
など6編が収録されている。
前2作同様「怖くない怪談」と思って読み始めたのだが、どうしてどうして、ぞっと背筋が寒くなるではないか。
人間の「マグル」ではなくて怪物の「まぐる」が出没する話や、黒子の親分が語る重篤な病人を看病する話など、巧みな話術で引き込まれてしまう分、怖さが倍増する。
しかし、怖いだけでは終わらないのがこのシリーズ。
怖さの中にも物悲しさが見え隠れし、最後に心が温かくなる。
この3巻目が今までで一番感情が揺すぶられてしまった。
ぞぉーっとして、しんみりして、最後にほっこり・ホロリするこの物語。
好きだー!このシリーズが大好きだー!
と世界の中心がどこかはわからぬが、大声で叫びたいくらい好きになってしまった。
ヘンな本ばかり読んで、汚れちまったこの私の心を癒してくれるのである。
これで17話まで進んだ百物語。
著者の宮部みゆきさんは、99話まで目指すというから先が楽しみだ。
各地で猛暑日が続く今夏、こんな「温かい怪談話」を読んでみてはいかがでしょう。
文藝春秋
不思議な話を語って語り捨て、聞いて聞き捨て。怖くて悲しくて温かい物語。
江戸は神田三島町の袋物屋・三島屋では、「変わり百物語」が行われている。
主人の姪である おちか が、客人たちが持ち込む不思議な怪談話を聞くという趣向だ。
客は話を語って語り捨て、おちか は話を聞いて聞き捨て、あとは二度と云々しないのが決まりの百物語。
ただ聞くだけなんて簡単だと思うなかれ、苦しくなったり悲しくなったり怖くなったり大変難しい役目なのだ。
そして人々の話を聞きながら傷ついた おちか の心が少しづつ癒されていく・・・
「おそろし」「あんじゅう」に続く「三島屋百物語」シリーズの第3巻である。
マリッジブルー気味の嫁入り前の娘が語る、必ず男の気持ちが離れてしまうという池にまつわる言い伝えの話「魂取の池」
おちか が、「心の煤払い」と称して札差が主催する年末恒例の怪談語りへと出向き、皆で不思議な話を聞く「小雪舞う日の怪談語り」
など6編が収録されている。
前2作同様「怖くない怪談」と思って読み始めたのだが、どうしてどうして、ぞっと背筋が寒くなるではないか。
人間の「マグル」ではなくて怪物の「まぐる」が出没する話や、黒子の親分が語る重篤な病人を看病する話など、巧みな話術で引き込まれてしまう分、怖さが倍増する。
しかし、怖いだけでは終わらないのがこのシリーズ。
怖さの中にも物悲しさが見え隠れし、最後に心が温かくなる。
この3巻目が今までで一番感情が揺すぶられてしまった。
ぞぉーっとして、しんみりして、最後にほっこり・ホロリするこの物語。
好きだー!このシリーズが大好きだー!
と世界の中心がどこかはわからぬが、大声で叫びたいくらい好きになってしまった。
ヘンな本ばかり読んで、汚れちまったこの私の心を癒してくれるのである。
これで17話まで進んだ百物語。
著者の宮部みゆきさんは、99話まで目指すというから先が楽しみだ。
各地で猛暑日が続く今夏、こんな「温かい怪談話」を読んでみてはいかがでしょう。
2013年6月19日水曜日
ソロモンの偽証
第Ⅰ部 事件
第Ⅱ部 決意
第Ⅲ部 法廷
宮部みゆき著
新潮社
宮部みゆきさんが本気出したらやっぱりすごかった!!!
(第Ⅰ~Ⅲ部まであわせて)
1990年12月24日、クリスマスイブの夜からこの物語は始まる。
大雪が降ったその晩、中学校の屋上から男子生徒が転落し、全身を強く打って死亡したのだ。
当初は自殺と見られていたが、犯人を名指しする「告白状」が届いたことから状況が一変する。
マスコミに報道され、右往左往する学校関係者たちを尻目に中学生達が裁判をしようと立ち上がる。
自分たちの手で真相を明らかにするために・・・・
第Ⅰ部で事件が発生し、舞台である中学校は大騒ぎになる。
第Ⅱ部で、中学生達がすべてを白日のもとに曝すために裁判を行うことを決意し、その準備を始める。
第Ⅲ部で、裁判が開廷し、徐々に真相が明らかになっていく。
昨年の話題作であったこの「ソロモンの偽証」は、2002年10月から2011年11月まで9年にわたり「小説新潮」で連載された、合計で2100ページを超える大作である。
宮部みゆきさんの久しぶりの現代ミステリーであり前評判も高いため、期待度MAXで読み始めたのだが、期待を裏切らない傑作だった。
携帯電話がまだなく公衆電話がそこかしこにある
ワープロの全盛期
土地がみるみる上がっていく・・・
世の中がバブル景気に浮かれていた時代背景たっぷりに、自営業者や町工場の多い下町にある中学校という狭い範囲を舞台にした群像劇である。
登場人物が多く視点が頻繁に変わるのだが、それぞれの個性が際立ち、きちんと書き分けられている。
真面目で勝気な中学生、気弱な男子、劣等感に苛まれ卑屈になってしまった女子、過保護な親・・・
どこにでもいそうなというか、いるいるこういう人と思う人々が圧倒的なリアリティで描かれていく。
誰に肩入れしたわけではないが、彼らと共に驚き、憤り、慟哭し、中学生達の頼もしさに感動し、ページ数の割にはそんなに時間をかけずに読み終えることができた。
悲しい事件を題材に、次から次へと重いテーマが出てくるのだが、不思議と読後感は悪くない。
オロオロする大人たちと違い、現実を見つめ冷静に受け止めていく中学生達の未来への希望があるからだろうか。
先が気になって仕方がない、睡眠時間を削ってまで読みたくなる、物語の中にどっぷり浸かる・・・
そんな本に出会い、ここまで夢中になれるとはなんて幸せなことなのだろうか。
伏線が張り巡らされたこの長大な物語を、大人から子供まで感動するこの作品を、中だるみすることなく書き上げた宮部みゆきさんはやっぱり天才だ。
(時々違う意味でびっくりするような作品に出会うことがあるが)
宮部みゆきさん、本当にありがとうございました。
第Ⅱ部 決意
第Ⅲ部 法廷
宮部みゆき著
新潮社
宮部みゆきさんが本気出したらやっぱりすごかった!!!
(第Ⅰ~Ⅲ部まであわせて)
1990年12月24日、クリスマスイブの夜からこの物語は始まる。
大雪が降ったその晩、中学校の屋上から男子生徒が転落し、全身を強く打って死亡したのだ。
当初は自殺と見られていたが、犯人を名指しする「告白状」が届いたことから状況が一変する。
マスコミに報道され、右往左往する学校関係者たちを尻目に中学生達が裁判をしようと立ち上がる。
自分たちの手で真相を明らかにするために・・・・
第Ⅰ部で事件が発生し、舞台である中学校は大騒ぎになる。
第Ⅱ部で、中学生達がすべてを白日のもとに曝すために裁判を行うことを決意し、その準備を始める。
第Ⅲ部で、裁判が開廷し、徐々に真相が明らかになっていく。
昨年の話題作であったこの「ソロモンの偽証」は、2002年10月から2011年11月まで9年にわたり「小説新潮」で連載された、合計で2100ページを超える大作である。
宮部みゆきさんの久しぶりの現代ミステリーであり前評判も高いため、期待度MAXで読み始めたのだが、期待を裏切らない傑作だった。
携帯電話がまだなく公衆電話がそこかしこにある
ワープロの全盛期
土地がみるみる上がっていく・・・
世の中がバブル景気に浮かれていた時代背景たっぷりに、自営業者や町工場の多い下町にある中学校という狭い範囲を舞台にした群像劇である。
登場人物が多く視点が頻繁に変わるのだが、それぞれの個性が際立ち、きちんと書き分けられている。
真面目で勝気な中学生、気弱な男子、劣等感に苛まれ卑屈になってしまった女子、過保護な親・・・
どこにでもいそうなというか、いるいるこういう人と思う人々が圧倒的なリアリティで描かれていく。
誰に肩入れしたわけではないが、彼らと共に驚き、憤り、慟哭し、中学生達の頼もしさに感動し、ページ数の割にはそんなに時間をかけずに読み終えることができた。
悲しい事件を題材に、次から次へと重いテーマが出てくるのだが、不思議と読後感は悪くない。
オロオロする大人たちと違い、現実を見つめ冷静に受け止めていく中学生達の未来への希望があるからだろうか。
先が気になって仕方がない、睡眠時間を削ってまで読みたくなる、物語の中にどっぷり浸かる・・・
そんな本に出会い、ここまで夢中になれるとはなんて幸せなことなのだろうか。
伏線が張り巡らされたこの長大な物語を、大人から子供まで感動するこの作品を、中だるみすることなく書き上げた宮部みゆきさんはやっぱり天才だ。
(時々違う意味でびっくりするような作品に出会うことがあるが)
宮部みゆきさん、本当にありがとうございました。
2012年6月1日金曜日
ここはボツコニアン
ここはボツコニアン
宮部みゆき著
集英社
RPGを本にした一冊。ゲーム好きの宮部みゆき氏が楽しみながら書いたのだろうと想像できる。
ここはボツコニアン。
本物の世界から日々吐き出される「ボツネタ」が集まり、積み重なって成り立っている。
双子のピノとピピは、12歳の誕生日の朝、長靴の戦士に選ばれた。
そして、この世界を本物の世界にするために冒険の旅に出たのである-----。
宮部みゆきさんの新刊が出たと知り、とりあえず図書館に予約入れた。
いつもなら宮部さんの本はだいぶ待つのに、今回はすぐに順番が回ってきた。
なんと、ゲーム好きの宮部さん、自分でRPGをそのまま物語にしてしまったのだ。
(そういう本だと全く知らずに手に取った私も私だが)
【RPG】各自に割り当てられたキャラクターを操作し、お互いに協力しあい、架空の状況下にて与えられる試練(冒険、難題、探索、戦闘など)を乗り越えて目的の達成を目指すゲームの一種。(Wikipediaより抜粋)
恥ずかしいのでここだけの話にして欲しいのだが、私はRPGが好きであった。
ただ、オンライン・通信となると途端に冷めてきて、「ドラクエIX 」以降は一切していない。
そんな元RPG好きの私にぴったりの本ではないか。
とニヤニヤしながら読み始めたのだが、
これが辛いのであった。
なにがって、読み続けるのが辛いのである。
RPGならそのままゲームの筋書きに徹していれば、それなりに面白いと思うのだが、
随所に「作家のひとりごと」が挿入され、物語に入り込めない。
宮部さんのゲームに対する愛情は、ひしひしと感じるのだが。
と思っていたら、説明を兼ねた前置きが終わり、冒険らしきものが始まる中盤あたりから面白くなってきた。
キーマンである双子の名前が「ハンゾウ」と「モンゾウ」合わせて「モンハン」など、随所にゲーム系のネタが出てくる。
きっと、宮部さん個人のファンの方は面白く読めるのだろう。
「二人の旅はまだ始まったばかり。第二巻もお楽しみに」
ってどこまで続くんだろう。
第二巻を読むかどうかは微妙だなぁ。
宮部みゆき著
集英社
RPGを本にした一冊。ゲーム好きの宮部みゆき氏が楽しみながら書いたのだろうと想像できる。
ここはボツコニアン。
本物の世界から日々吐き出される「ボツネタ」が集まり、積み重なって成り立っている。
双子のピノとピピは、12歳の誕生日の朝、長靴の戦士に選ばれた。
そして、この世界を本物の世界にするために冒険の旅に出たのである-----。
宮部みゆきさんの新刊が出たと知り、とりあえず図書館に予約入れた。
いつもなら宮部さんの本はだいぶ待つのに、今回はすぐに順番が回ってきた。
なんと、ゲーム好きの宮部さん、自分でRPGをそのまま物語にしてしまったのだ。
(そういう本だと全く知らずに手に取った私も私だが)
【RPG】各自に割り当てられたキャラクターを操作し、お互いに協力しあい、架空の状況下にて与えられる試練(冒険、難題、探索、戦闘など)を乗り越えて目的の達成を目指すゲームの一種。(Wikipediaより抜粋)
恥ずかしいのでここだけの話にして欲しいのだが、私はRPGが好きであった。
ただ、オンライン・通信となると途端に冷めてきて、「ドラクエIX 」以降は一切していない。
そんな元RPG好きの私にぴったりの本ではないか。
とニヤニヤしながら読み始めたのだが、
これが辛いのであった。
なにがって、読み続けるのが辛いのである。
RPGならそのままゲームの筋書きに徹していれば、それなりに面白いと思うのだが、
随所に「作家のひとりごと」が挿入され、物語に入り込めない。
宮部さんのゲームに対する愛情は、ひしひしと感じるのだが。
と思っていたら、説明を兼ねた前置きが終わり、冒険らしきものが始まる中盤あたりから面白くなってきた。
キーマンである双子の名前が「ハンゾウ」と「モンゾウ」合わせて「モンハン」など、随所にゲーム系のネタが出てくる。
きっと、宮部さん個人のファンの方は面白く読めるのだろう。
「二人の旅はまだ始まったばかり。第二巻もお楽しみに」
ってどこまで続くんだろう。
第二巻を読むかどうかは微妙だなぁ。
2012年1月31日火曜日
ばんば憑き
ばんば憑き
宮部みゆき著
角川書店
宮部みゆきさんの本領発揮!!江戸怪談小説。怪談といっても怖くない。私にとっては心に染みいる人情物語だった。
小間物屋「伊勢屋」の入り婿・佐一郎とお志津は、戸塚宿に泊まった。雨で足止めを食らっていたところ、宿のおかみさんに相部屋を頼まれた。わがままなお嬢様のお志津は嫌がったが、佐一郎は押し切り、品のいい老女を部屋に迎える。そして、その夜老女から、昔の哀しい記憶を聞くことになる。
それは、村に伝わる秘術「ばんば憑き」の話だった。 (表題作『ばんば憑き』)
計6編が収録されている宮部みゆきさんの江戸怪談短編集。
中には、他の作品の登場人物が出てくるお話もあるが、続き物ではないので、
他が未読でも十分楽しめる本。
確かに「もののけ」や死んだ人の話などが出てくるから「怪談」の部類になるのかもしれない。
でも、「夜、おしっこに行けない」ような怖さはない。
子供を虐待したり、人を騙したり、生身の人間の方がよっぽどゾッとする怖さがある。
それでも後味の悪さは感じなかった。
なぜなら、少数の悪い人の周りにたくさんの江戸人情が取り巻いているからである。
私にとっては「怪談」というより、むしろ心にすぅーと沁み込んでくる「人情話」だった。
最近、精神的に落ち着かない日々を送り、新聞や本を読んでいても頭に入ってこないことが度々あった。
不安やストレスがたまっているのだと自覚している。
でも、この本は違った。
読み始めると、分厚い本にも拘らず本の中にどっぷり浸ることができた。
その間不安なことを忘れていられる。
そして、ホロリとくるのであった。
初めて宮部作品を読んだのが「蒲生邸事件」。
それ以来たくさん読んできたが、正直全てが好きなわけではなかった。
私が好きなのは「江戸もの」と「大人が主人公の長編」である。
中でもこの本は宮部さんの真骨頂を発揮した傑作だと思う。
タイミングがよかったのかもしれないが、
いい本に出会えてよかった、本に助けられたと思える本だった。
そうだ。これからは、心が疲れたら、お薬として宮部さんの江戸物を読もう。
宮部みゆき著
角川書店
宮部みゆきさんの本領発揮!!江戸怪談小説。怪談といっても怖くない。私にとっては心に染みいる人情物語だった。
小間物屋「伊勢屋」の入り婿・佐一郎とお志津は、戸塚宿に泊まった。雨で足止めを食らっていたところ、宿のおかみさんに相部屋を頼まれた。わがままなお嬢様のお志津は嫌がったが、佐一郎は押し切り、品のいい老女を部屋に迎える。そして、その夜老女から、昔の哀しい記憶を聞くことになる。
それは、村に伝わる秘術「ばんば憑き」の話だった。 (表題作『ばんば憑き』)
計6編が収録されている宮部みゆきさんの江戸怪談短編集。
中には、他の作品の登場人物が出てくるお話もあるが、続き物ではないので、
他が未読でも十分楽しめる本。
確かに「もののけ」や死んだ人の話などが出てくるから「怪談」の部類になるのかもしれない。
でも、「夜、おしっこに行けない」ような怖さはない。
子供を虐待したり、人を騙したり、生身の人間の方がよっぽどゾッとする怖さがある。
それでも後味の悪さは感じなかった。
なぜなら、少数の悪い人の周りにたくさんの江戸人情が取り巻いているからである。
私にとっては「怪談」というより、むしろ心にすぅーと沁み込んでくる「人情話」だった。
最近、精神的に落ち着かない日々を送り、新聞や本を読んでいても頭に入ってこないことが度々あった。
不安やストレスがたまっているのだと自覚している。
でも、この本は違った。
読み始めると、分厚い本にも拘らず本の中にどっぷり浸ることができた。
その間不安なことを忘れていられる。
そして、ホロリとくるのであった。
初めて宮部作品を読んだのが「蒲生邸事件」。
それ以来たくさん読んできたが、正直全てが好きなわけではなかった。
私が好きなのは「江戸もの」と「大人が主人公の長編」である。
中でもこの本は宮部さんの真骨頂を発揮した傑作だと思う。
タイミングがよかったのかもしれないが、
いい本に出会えてよかった、本に助けられたと思える本だった。
そうだ。これからは、心が疲れたら、お薬として宮部さんの江戸物を読もう。
2012年1月7日土曜日
おまえさん 上下
おまえさん 上下
宮部 みゆき著
講談社文庫
宮部みゆき氏の『ぼんくら』『日暮らし』に続く第三弾。上下巻合わせて1200ページ超の大作ながら、人情味たっぷりの安心して夢中になれる本。さすがとしか言いようのない傑作。
(上下巻合わせて)
舞台は花のお江戸。
南辻橋たもとで、辻斬りが出た。亡骸を番屋に移した後、掃除したにもかかわらず人像(ひとがた)が地面に染みとなって消えない。土を掻いて均して塩をまいてもまだ消えない。
そしてまた他の事件が…。
下町情緒たっぷりの人情味溢れる人々が登場する時代ミステリー。
「ぼんくら」同心・平四郎
世話好きで気のいいお菜屋のお徳
岡っ引き・政五郎
などおなじみの登場人物に加え、
今回活躍する、熱意にあふれた新任の定町廻り同心で、ちょっと残念なお顔の間島信之輔。
その大叔父上で、たびたび物忘れはするがまだまだ健在の源右衛門。
河合屋の三男坊で遊び人の淳三郎。
そして忘れてはならない14歳になったという弓乃助とおでこのコンビ。
弓乃助は、平四郎の細君によれば、「彼に近づく者の人生を変えてしまうほど」の罪作りな美形である。万事遺漏のないように見える弓乃助ではあるが、ここだけの話、おねしょという子供らしい弱みがある。
そして、驚異的な記憶力を持っているおでこ。
この子の頭の中には長い巻紙があって、体験したこと・見聞きしたことを、何から何までそこに書き付けるのだ。で、思い出すときにはぐるぐるとそれをほどいて探す。特技は見事のなものだが、覚えた話を諳んじているだけなので、途中で遮られると、最初からやり直さねばならなくなるという弱点があった。
そんな登場人物が、いきいきとお江戸の町を動き回る。
この「いきいきと」が、さすが宮部みゆき氏だなぁと思う。
威勢のいい江戸っ子の言葉。
魚の棒手振りの天秤棒が肩から外れかけ、よろよろ回ってしまう様子。
頭の中で、活気あふれるお江戸の映像が浮かんでくる。
前半はどんどん話が広がって、頭があちこちに飛んでしまうが、
最後はやっぱりきちんと収めてくれる。
だから、このシリーズは安心して夢中になれるのである。
そして、弓乃助とおでこのコンビも立派に成長して、少年から青年になりつつある。
この二人のファンである私としては、目を細めて二人を見守っている。
近い将来この二人が立派にお江戸の治安を守るであろうことを想像しながら・・・
ただ、成長を喜ぶべきなのだろうが、一方で二人が遠くへ行ってしまうようで、
さびしい気持ちも湧いてくる。
いつまでもかわいく幼い二人のままでいて欲しいと思うのはわがまますぎるだろうか。
冷静に考えると江戸で14歳と言えば、立派な青年で子供扱いされる対象ではないのでは?と思うが。
なんにせよ、読み終えてすぐ、次作が楽しみになる傑作であった。
※前半で出てきた汚い字の恋文、誰が書いたかわかった時には噴き出してしまいました。
宮部 みゆき著
講談社文庫
宮部みゆき氏の『ぼんくら』『日暮らし』に続く第三弾。上下巻合わせて1200ページ超の大作ながら、人情味たっぷりの安心して夢中になれる本。さすがとしか言いようのない傑作。
(上下巻合わせて)
舞台は花のお江戸。
南辻橋たもとで、辻斬りが出た。亡骸を番屋に移した後、掃除したにもかかわらず人像(ひとがた)が地面に染みとなって消えない。土を掻いて均して塩をまいてもまだ消えない。
そしてまた他の事件が…。
下町情緒たっぷりの人情味溢れる人々が登場する時代ミステリー。
「ぼんくら」同心・平四郎
世話好きで気のいいお菜屋のお徳
岡っ引き・政五郎
などおなじみの登場人物に加え、
今回活躍する、熱意にあふれた新任の定町廻り同心で、ちょっと残念なお顔の間島信之輔。
その大叔父上で、たびたび物忘れはするがまだまだ健在の源右衛門。
河合屋の三男坊で遊び人の淳三郎。
そして忘れてはならない14歳になったという弓乃助とおでこのコンビ。
弓乃助は、平四郎の細君によれば、「彼に近づく者の人生を変えてしまうほど」の罪作りな美形である。万事遺漏のないように見える弓乃助ではあるが、ここだけの話、おねしょという子供らしい弱みがある。
そして、驚異的な記憶力を持っているおでこ。
この子の頭の中には長い巻紙があって、体験したこと・見聞きしたことを、何から何までそこに書き付けるのだ。で、思い出すときにはぐるぐるとそれをほどいて探す。特技は見事のなものだが、覚えた話を諳んじているだけなので、途中で遮られると、最初からやり直さねばならなくなるという弱点があった。
そんな登場人物が、いきいきとお江戸の町を動き回る。
この「いきいきと」が、さすが宮部みゆき氏だなぁと思う。
威勢のいい江戸っ子の言葉。
魚の棒手振りの天秤棒が肩から外れかけ、よろよろ回ってしまう様子。
頭の中で、活気あふれるお江戸の映像が浮かんでくる。
前半はどんどん話が広がって、頭があちこちに飛んでしまうが、
最後はやっぱりきちんと収めてくれる。
だから、このシリーズは安心して夢中になれるのである。
そして、弓乃助とおでこのコンビも立派に成長して、少年から青年になりつつある。
この二人のファンである私としては、目を細めて二人を見守っている。
近い将来この二人が立派にお江戸の治安を守るであろうことを想像しながら・・・
ただ、成長を喜ぶべきなのだろうが、一方で二人が遠くへ行ってしまうようで、
さびしい気持ちも湧いてくる。
いつまでもかわいく幼い二人のままでいて欲しいと思うのはわがまますぎるだろうか。
冷静に考えると江戸で14歳と言えば、立派な青年で子供扱いされる対象ではないのでは?と思うが。
なんにせよ、読み終えてすぐ、次作が楽しみになる傑作であった。
※前半で出てきた汚い字の恋文、誰が書いたかわかった時には噴き出してしまいました。
2011年9月12日月曜日
チヨ子
宮部みゆき著
光文社文庫
小学校時代仲良かった5人のうち、4人で久しぶりに出会う「雪娘」
商店街の寂れた玩具屋に、変なうわさがたつ「オモチャ」
ウサギの着ぐるみを着たら、周りの人が違って見えた表題作の「チヨ子」
中学生の麻子が汚名を着せられた被害者の名誉を挽回しようとする「いしまくら」
調査事務所を構えるわたしのところに少年犯罪を犯した息子の父親が依頼しにくる「聖痕」
以上の短編、中編が収められて476円+税の文庫本。
いい人たちが出てきて、温かく、ホッとする話かと思うと、そうはいかない。
優しいような表現で書かれていても、うすら寒かったり、ぞっとさせられたり。
宮部作品が凝縮されたような短編集。
読みやすく、漢字が読めれば、子供にもよめるかな?と思ったが、
ちょっと「自転車でラブホテル」「親の性的虐待」などが含まれるから、
お子様向けってわけでもない。
「聖痕」は、中編でまとめてしまうのはもったいない作品と思った。
もう少し、引っ張ってもらった方がわかりやすいのではないかな?
内緒の話
いい人ばかり出てくるのが気になる。特に、子供。
こんなかわいい、聞きわけのいい子ばかりじゃない。
かわいこぶってる感じがする。
もっと、人間の汚さ、いじわるさを出したらいいのに。
あと、短編はやっぱり、終わり方が中途半端になってしまって、余韻を残す感じになるのが好きになれない。
いいと思う作品もたくさんあるから、読むのはやめられないけど。
2011年7月29日金曜日
あんじゅう
宮部みゆき著
中央公論新社
江戸の神田。ある事件によって心に傷をおった少女おちか。
袋物屋を営む叔父夫婦の家に身を寄せて、女中のように働いている。
ひょんなことから不思議な話を集める百物語の聞き集めをすることになった。
その場で、語り捨て・聞き捨てがルールの百物語。おちかの心も少しずつ変わっていく。
「おそろし」の続編。
4話からなる、不思議の話。
やっぱりこの人の本は、安心して読める。
みんなかわいらしくて、いい人ばかりっていうのはどうかと思うが、結局話に引き込まれてしまう。人間のどろどろとか、奥底の汚さとか描くの得意な作家は他にいるから、そちらに任せて、描いてもらいましょう。
こちらは、ホッとできる話ばかりでした。
特に、くろすけの話は、かわいくて、かわいそうで、好きでした。きっと続編も描いてくれるでしょう。期待。
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