2012年11月9日金曜日

盗まれた顔

盗まれた顔
羽田圭介著
幻冬舎

「一度覚えた顔は、忘れられない」デジタル時代にアナログ的手法は通用するのか?見当たり捜査にスポットを当てた警察小説。



見当たり捜査---指名手配犯の顔写真を見て記憶にとどめ、街中で見つける捜査。
警視庁捜査共助課の班長である 白戸 ・39歳は、そんな見当たり捜査を専門に行っている。
新宿で見つけた男は捕まえたとき「はめられたんだ」と叫ぶが、捕まえて引き渡すまでが 白戸 の仕事である。
ある日、人の顔を見るのが仕事のはずが、いつの間にか自分が見張られる立場になっていることに気づいた。
それには、中国マフィアや公安も関係しているのか・・・?
見当たり捜査にスポットを当てた警察小説。

顔のパーツの配置・目玉・耳。
その3つは歳をとっても整形しても変えられないため、見当たり捜査ではそこをポイントとして見るのだという。

主人公の 白戸 は、3000人もの顔を記憶している。
暇さえあれば手配写真を見て、脳に焼き付けているのだ。
Nシステムや防犯カメラが世の中を見張るデジタルの時代に、アナログ的手法を用いて犯人を追い詰める。
ある意味単純な仕事であるが、集中力や精神力が必要な職人のような専門性があり興味深い。

一日中街中を歩き回り、いつ現れるかわからない手配犯を探す。
ひと月に1人捕まえられればいい方だ。
無逮捕期間が長くなり、精神的にまいってしまう様子が丁寧に描かれている。

見当たり捜査という設定、アナログとデジタルの対比、先が読めない意外な展開はとても面白いと思ったのだが、前半部分に起伏のないストーリーが続き飽きてしまった。
わざわざここまで長くする必然性がわからなかった。(原稿用紙643枚分)

また、私の読解力のなさから、一読しただけでは理解できず、何度も読み直した箇所がいくつもあった。
特に最後は、どういう意図でこういった終わり方をしたのか、何回読んでも理解できなかった。

警察小説は勧善懲悪の、最後はスッキリ落とし前をつけてくれる方が好みである。
あれもこれも意欲的に盛り込むのではなく、単純でいて奥深い物語が読みたい。
しかしこの設定は面白いので、佐々木譲氏や今野敏氏に見当たり捜査を題材にした警察小説を書いてほしいなと思った。

自分の読解力不足を痛感した一冊だったので、ぜひ他の方の感想をお聞きしたいと思う。

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