2012年12月9日日曜日

絵画の住人

絵画の住人
秋目人著
アスキーメディアワークス

絵の中の人が喋るとしたら何を語るのだろうか?絵の中に描かれた食べ物は美味しいのだろうか?




 


主人公の 諫早佑真 はある事情から高校を中退して上京し、「職なし、彼女なし、住処なし」となってしまった。
そんな時、絵の中の人物が動き回る様子を見ることができるばかりか、会話までできるという「素質」を見込まれて、画廊で働かないかとスカウトされた。
絵の知識なんか全くないにもかかわらず。
そこは画廊といっても、有名絵画の複製ばかりを展示してある不思議な画廊だった・・・


セザンヌの「リンゴとオレンジ」に描かれたリンゴは最高においしい、
ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」に描かれている白身魚も美味、だという。
名画に書かれた食べ物にも、味の美味い不味いがあるらしい。

「真珠の首飾りの少女」は几帳面でソファが壁に対して平行になっていないと気になってしまう。
「最後の晩餐」のユダは最後まで迷っていた。

「ひまわり」は気分によって色を変える。

名画の複製版画の中でも、命を吹き込まれている絵ばかり展示してある画廊。
本書は、そんな画廊で働き始めた主人公と、「絵画の住人」たちが織り成すファンタジーチックなミステリーである。

絵を見ながら「中に描かれている人や物がこちらの世界に出てきたら?」、または「絵の世界に入り込んだら?」と考えたことある方は多いだろう。
そんな「もし」が、この物語の中で繰り広げられる。

絵画が意思表示し、時には強硬な主張をして主人公を困らす。
楽しいことばかりではないけれど、最後はうまくまとまってホッとする。

あまり話題になっていないようだが、読みやすくなかなか面白かった。
続編も出して欲しいなと願う。

私の前にも「絵画の住人」が出てきたら歓迎するんだけどな。

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