2011年6月30日木曜日

カササギたちの四季

カササギたちの四季
道尾 秀介著
光文社



華沙々木と2年前にリサイクルショップを開いた日暮。
中学生の菜美が店に入り浸っている。
強欲和尚にいつも高値で買い取りさせられてなのか、赤字続き。そ
こにちょっとした事件が起こる。
いつも鮮やかに華沙々木が事件を解決し、菜美が感嘆する・・・とみせかけて、いつも日暮が徹夜で仕込み、解決したように見せかける。真相は?

気軽に読める本です。短編集なので、通勤電車のお伴などに最適かも。
続きも出そうな感じです。

2011年6月27日月曜日

手紙

手紙
東野圭吾著
文春文庫





二人暮らしの兄が、強盗殺人を犯し、服役する。
弟・直貴のもとに、兄から月に一回手紙が届く・・・。
懸命に生きていく直貴だが、進学・恋愛・就職と事あるごとに「強盗殺人犯の弟」というレッテルが邪魔をする。
直貴を支える白石由実子が献身的。

重いテーマです。
誰でも差別はいけない・みな平等ですと小学校の道徳の時間に繰り返し習ったはず。
差別が歴然とあるからこそ、何度も教え込まれたのだと思う。

でも、はたして、自分の恋人のお兄さんが服役していたら、娘の結婚相手のお兄さんが服役していたら、息子のお嫁さんのお兄さんが服役していたら、どうするだろうか?

自分が好きになってしまったら、愛は盲目でそんなの関係ないと結婚したかもしれない。
だけど、子供の結婚相手の身内が強盗殺人を犯していたら、きっと結婚に反対すると思う。
後ろめたい感じを持ちながら許さないと思う。
理由はこじつけて色々言うかもしれないけど、反対する。

この本は、加害者家族の立場からだが、被害者の立場から見たら、犯人のことは一生許せないと思う。
その家族は関係ないかもしれないが、一緒くたに憎むと思う。
加害者家族も一緒に罪を償わなければ。
でも、本人は悪いことしてないのに一生償い続けるの?
結論は出ない、考えさせられる本でした。

2011年6月23日木曜日

花の鎖

花の鎖
湊 かなえ著
文藝春秋




3人の女性の話が並行して順番に語られていく。
祖母と二人暮らしの梨花。
祖母は癌で入院、勤め先は破たん、手術費用に困り、お金を借りようとする。
伯父の建設会社で働いていて、お見合いで意中の相手和弥と結婚したが、なかなか子供ができない美雪。
公民館で水彩画を教えながら、和菓子やでアルバイトしているミスアカシアの紗月。
接点があるのか?


アカシア商店街を中心として最初は3人にどう接点があるのかわからなかった。
だんだんわかってくるけれど、えっとこの人はこの人のあれだから、ということは・・・とこんがらがってしまう。

でも、最後はきちんと収めてくれる。
少し重たいけれど、3人の「愛」が「青春」がぎゅっとつまってせつない。

2011年6月20日月曜日

裏のハローワーク「交渉・実践編」

裏のハローワーク「交渉・実践編」
草下 シンヤ著
彩図社



裏社会の交渉テクニックの数々を取材。
先物取引の営業・ホストの手口などを、実用的に紹介。

裏の世界の人だって、生活・時には命がかかっているから、それは必死になるんだろうな。
騙されないように注意しなくっちゃ。
関わらないのが一番だけど、そうもいかないかも。

相手をよく読んで、感情的にならずに、ゴールを見据えて・・・って私には無理かも。
裏の社会では生きていけないかも。
欲を言えば、一つのエピソードをもっと詳しく書いて欲しかった。

2011年6月17日金曜日

携帯のない青春

携帯のない青春
酒井 順子著
幻冬舎文庫




1966年生まれの著者が青春時代を振り返ったエッセイ。
ワンレン・ディスコ・学ラン・竹の子族と懐かしさのオンパレード。
著者の鋭い視点で解説してくれる。

私にとって、ほぼすべてがビンゴの本でした。
かつての私とその友達の青春時代の解説書を読んでいるようです。

自分ではわからなかったもしくは考えたこともなかった事柄を解説してもらって、今更ながら「そうだったんだ」「なるほど」と思わせてくれました。

ただ一つ著者と私の違う点は、TDLでした。
はじめて行ったとき、別に、ミッキーファンでもなかったくせに、ミッキーやキャラクターたちと出会うと、テンションあがって写真撮ったりしてました。
だからと言って、頻繁に行ってたわけではないけど。

竹の子族については、私も、「盆踊り」「パラパラ」に通ずる日本の心があるなぁと思ってました。
私が現役で踊っていたころはそんなこと一つも思いもせず、原色てかてかの衣装も、なぜかはみ出しまくる化粧も、いけてると勘違いしてました。
(あんな安っぽい衣装でも、当時で1万円してた!)

冷静に分析できる著者の才能に脱帽です。

2011年6月15日水曜日

長男の出家 新版

長男の出家 新版
三浦 清宏著
芸文社





1987年下半期芥川賞受賞作品に「長男の出家・その後」を加筆。

10歳のやんちゃな男の子。
毎週日曜日に座禅に通う父親になぜかついていく。
そのうち将来お坊さんになりたいと言い出す。
中学生になり、悪くなりかけたころ、出家する。
息子の出家ということに戸惑う父の視点から書かれた作品。

考えさせられます。
息子がもしいたら、出家したいと言ったら、戸籍を抜き、私とは縁を切り、なかなか会えないと言われたら・・・息子って母親にとって、恋人以上の愛おしい存在でしょ?(→想像)

私は坊さんでもなく、煩悩まみれの俗世のちっぽけな人間だから、苦しくて耐えられないのでは?

この父親は、苦悩しながらも、たんたんとしていて、もし・たらの想像が面白い。
まだ出家する前から、未来に想いを馳せ、一喜一憂する。

和尚のキャラも面白い。

2011年6月13日月曜日

よみがえれ!老朽家屋

よみがえれ!老朽家屋
井形 慶子著
新潮社




イギリスやインテリアに造詣が深い著者。
前作「老朽マンションの奇跡」に続いて、吉祥寺の小さい一軒家を350万円で素敵にリフォーム。

リフォームってホント大変。
でも癖になる・・・何度もできることじゃないんだけどね。

私も2年前に中古マンションをリフォームしました。
6か月かけて設計士さんと相談し、あちこちショールームへ行きました。
キッチン、トイレ、洗面台、壁紙、床材、etc.

膨大な中から選ぶのは大変な作業。
途中でもう何でもいいって言いたくなる。
確固とした自分の意見を持っている人はいいんだろうけど、流されやすい人だとこれもいい、あれもいいでなかなか決められない。
私は、アジアンテイストにすると決めていたけれど、それだってインテリアの知識ゼロだったから、専門家(結局はショールームの人)にアドバイスしてもらって決めました。

自分で決めた?から、今のところ文句は特になく、満足しています。
でも将来家族に変化が起きたらまたリフォームするかも。
今思えば、大変だったけど、楽しかった。

著者は、もともとイギリスのインテリアに詳しく、いろいろな情報も持っているだろうから、流されず、自分の理想の家に近付けたんだろうな。
でも、やっぱり、家は「縁」とつくづく思う。
自分が欲しい!と思った時が買い時だし、そこで、不動産やさん、設計士さん、大工さんなども「縁」だし、ショールームで出会った物たちも「縁」だし。
そう考えると、今私がこの家に住んでるのも「縁」から生まれた「奇跡」なのかもしれない。

2011年6月11日土曜日

月と陽炎

月と陽炎
三咲 光郎著  
早川書房




二人を切り刻み、魔王にささげた13歳の少年康平。
彼を更生させるためチーム康平が立ち上がる。
十数年後、更生の最終段階にある康平は、街で静かに暮らしていた。
しかし、康平の意志とは関係なく、事件が起き、犯罪に巻き込まれていく。


最初、残虐事件の犯人と更生という重い社会派小説かと思ったが、どうやらちょっと違う。
民営軍とか現実離れしたのが出てくると、戦闘マニアっぽくなってしまう。

ただ、真の更生ってあるのだろうか?
また、真に更生したとして、被害者家族は癒されるのだろうか?
難しく重いテーマですね。

2011年6月5日日曜日

佳代のキッチン


佳代のキッチン
原 宏一著
祥伝社




理由もわからず突然いなくなった両親の行方を追い、お客さんが持ってくる食材で料理を作る、移動調理屋を始めた佳代。

軽のワンボックスで両親ゆかりの地を巡りながらのいろいろな人と関わっていく。
最後は両親に会えるのか?


こんなお店が近くにあったらいいなぁ、出てくる料理ぜひ食べてみたいと思わせるお話。
賄いカレー・ラスタ麺・魚介めし。
食べてみたい!作ってみたい!

でも、どんな理由があるにせよ、子供たちを置いて両親が出て行ってはいけません。

2011年6月1日水曜日

隻眼の少女


隻眼の少女
麻耶雄嵩著
文藝春秋




傷ついた大学生の静馬は、自殺するつもりで温泉宿を訪れて、、首切り殺人事件に遭遇する。犯人と疑われた静馬を、居合わせた水干姿の隻眼の少女探偵みかげが見事な推理で救う。しかし、その後も次々と事件が起きる。
みかげのお陰で解決したと思われた事件が、18年の時を経て再び動き出す。


ひなびた村の旧家の一族、古文書の存在、ふらりと現れた探偵といえば横溝正史。現代の横溝作品のよう。
最後は、びっくりの結末。素直に面白かった。
高校は通ってないの?とか疑問はあったけど。

横溝度:★★★★
どんでん返し度:★★★★
残酷度:★★