2012年9月19日水曜日

学校制服の文化史:日本近代における女子生徒服装の変遷

学校制服の文化史:日本近代における女子生徒服装の変遷
難波知子著
創元社

明治から昭和初期までの女子制服の移り変わりを丁寧に解説した本。



本書は、日本服飾史・服飾文化論を研究している著者が、博士学位論文を加筆修正して研修者向けに出版したものである。
今まで服飾史では、服装の変遷の過程を述べるため、なぜ制服が必要になり成立したのか指摘していない。
また、教育史では制服が及ぼす統制・管理について研究がされてきたが、制服をめぐる生徒や保護者の受容の問題についてはあまり検討されなかった。
そこで著者はそれらを踏まえ、歴史的観点から制服の成り立ち・普及・背景を、具体的な事例に基づいて検証していく。

と、研究者らしく大変真面目に制服についての歴史を語ってくれているのだが、ぶっちゃけて言えば次のとおりである。

鹿鳴館時代の和装⇒洋装⇒和装の混迷期を経て、1900年頃から・・・

女学生:
皇室や華族の方がはく憧れの袴を、私なんかが履いていいのかなって初めは戸惑ったけど、履いてみるとめっちゃ楽チン♪
動くとき、裾の乱れや生足チラリに気をつけなくてもいいから動きやすいし。
帯も結ばなくていいなんて忙しい朝には助かるぅ~。
ついでに髪型も袴に合わせて変えちゃえ。
鬢付け油ベトベトで横に張り出した結髪って乱れたら直してもらうの大変なのよね。
だから体育の時間なんて、手を上げると髪の乱れに気を遣いあまり動けなかったけど、袴に束髪や下ろし髪ならダンスだってテニスだってしたくなっちゃう♡

学校:
金持ちの生徒はどんどん派手になるし、貧乏な生徒は劣等感に苛まれるしって、困っていたところに全員同じ袴を履かせるようになってよかった。
子供をたくさん産める健康な女にするには体育の授業も必要だが、着物じゃ動けないって悩みもこれで解決だ。
でも、最近学生ではないのに「なんちゃって制服」を着て「堕落女学生」とスキャンダル記事が世間を騒がせたな。
うちの学校の評判まで落とされたらたまらない。
そうだ、バックルに校章をつけたバンドをさせて、差別化を図ればいいんだ。
それに袴の長さを勝手に変えておしゃれしているつもりの奴もいるが、見苦しい。
長さや着こなしの規定も作っちゃおう。
リーゼントのように庇髪を大きくしすぎている奴もいる。
これも取り締まらなきゃ。
西洋人にもこれで野蛮とは言わせないぞ。代替テキスト

↓庇髪がエスカレートしてしまった

















その後政府も、女学生には和服と洋服のどちらがいいのか、または折衝案の改良服かと右往左往する。
そして第一次世界大戦での欧米女性の活躍、関東大震災の際着物のため避難に支障をきたした、などから時流は一気に洋服へと向かっていく。

教育関係者:
やっぱり動きやすさから見たら洋服が一番だろう。
パンツは必ずはかせなきゃならないな。
でも、いきなり洋服着なさいっていってもコーディネートすら知らない彼女たちはトンでもない格好するから、こっちでこれ着なさいって決めたほうが楽だな。
だけど、そんなことしたら服装を自分で決める能力が養われないんじゃないか?
じゃあ、セーラー服、ジャンパースカートなどいくつか提案して、この中から選びなさいっていう方法がいいかもしれない。

生徒:
ジャンパースカートになったのは嬉しいけど、やっぱりセーラー服が着たい♡
襞も増やして上着の丈を短くして、スカートは長くして、自分で改造しちゃおうっと♪

という感じで、大人の女性の私服も混迷期なため、政府も学校側も試行錯誤していく様子がよくわかる。
興味深くいい本なのだが、もっと読みやすい例えばコミック「制服はじめて物語」のようなものがあるといいなと思う。

私個人としてはずっとブレザーの制服だったため、セーラー服に今でも憧れを抱いている。

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