ラベル 新書 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 新書 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2017年5月16日火曜日

キラーストレス 心と体をどう守るか

ストレスで死に至る⁉ストレスチェックを受けてみたら・・・まさかの結果に驚愕!


NHKスペシャル取材班
NHK出版



この世に生まれ落ちた瞬間から、私たちは生きている限り、ストレスから逃れることができない。
ある条件が重なると、ストレスは命を奪う病の原因へと形を変えていくのだという。
本書は、NHKスペシャル「キラーストレス~そのストレスは、ある日突然、死因に変わる」を書籍化したもので、「キラーストレス」(取材班の造語)を国内外の最新の研究から解明していく。

いいことであれ、悪いことであれ、大きな変化があったとき、 ~例え結婚や成功といった喜ばしいことでも~ 人はストレスとして受け止める。
つまりストレスとは「変化」であるという。

ストレスが遺伝子を操り、ガン細胞を増殖させる、
ストレスに強いか弱いかは生まれつきある程度決まっている、
子どもの頃に極度のストレスを体験すると、その影響が大人になってから「ストレスに弱い」という形で現れてくる・・・
など、ストレスに関する詳細なメカニズムが、最先端の研究から紹介され、ストレスを放っておくと命に関わるのだと怖くなってくる。

過去のことを悔やんだり、未来のことを心配したり、実際に起こっていない余計な妄想で頭がいっぱいになってしまう状態を「マインド・ワンダリング」と呼び、いま、世界中で関心が高まっているのだという。
あれこれ考えを巡らせている間、ストレス反応がずっと続いていて、どんどん脳をむしばみ、心の状態を悪くしてしまうというから恐ろしい。
「ストレスって怖い!ストレスで病気になっちゃうかも!」と読みながら思っている私は、まさにそのマインド・ワンダリングの状態なのだろう。

本書では、ストレスに対抗する方法として、以下の3つが紹介されている。

・運動------自律神経の興奮を抑え、ストレスの大元である脳の構造を変えることで、ストレスを解消する。

・コーピング------cope(=対処する)に由来。
自らのストレスを観察して対処する。
具体的には、ストレス解消法を事前に100個リストアップしておく。
実際にストレスに襲われたとき、その中からふさわしい対策を選択する。

・マインド・フルネス------瞑想の医学的な効果を研究する中から生まれたもので、宗教性を排除した心理療法。
過去や未来のことを考えず、「今」に心を向ける。

ストレスは次から次へと襲ってくるのだから、完全に逃れることはできない。
だったら上手く対処する方法を身につけ、やり過ごしていきたい。
紹介されている方法はどれもコツを掴めばできそうなものばかりだ。
さっそく生活に取り入れてみようと思う。


※冒頭にストレスチェックが掲載されていた。
ストレスを感じる毎日なので危険水域かもと思いながらやってみたのだが、ほとんど当てはまらなかった。(1年前なら高得点だったのに!)
「意外に高い点数が出たのではないか?」と言われたが、あまりの点数の低さに驚愕したのだ。
ストレスがないのに、ストレスに晒されている毎日だと感じていたとは!
そんな自分にストレスを感じてしまうではないか!
冷静に考えるとこのストレスチェックは、大都会の企業戦士向けではないだろうか。
私のように田舎でのんびり暮らしながらもストレスを感じているタイプには、当てはまらないのかもしれない。

※NHKスペシャル「シリーズ キラーストレス」のサイトで手軽にストレスチェックができます。ぜひやってみてください。「ライフイベントストレスチェック」

ルポ ネットリンチで人生を壊された人たち

平凡な人の人生が、ある日突然破壊される!ネットリンチの怖さに迫る。

ジョン・ロンソン著
夏目大訳
光文社



本書は、自らのコメントなどで炎上した結果、社会的地位・職を失った人たちや、吊し上げた側のインタビューを通し、ネットリンチとはどのように起き、そしてどのような被害をもたらすのか明らかにしていくドキュメントである。
(原題は「 So You've Been Publicly Shamed」 )

著者は、ロンドン在住のコラムニスト、ノンフィクション作家で、「サイコパスを探せ」などの著作がある。

ある日、著者は、Twitterで自分を騙るbotアカウントを発見した。
IT関係者や研究者ら3人が、著者になりすましていたのだ。
削除に応じない彼らとの対話を動画サイトで晒し、削除させることに成功する。
その出来事をきっかけとして「炎上」に興味を持ち、当事者たちにインタビューしていく。

ボブ・ディランの発言を捏造した人気作家と、それを暴いたジャーナリスト。
ジョークのつもりのつぶやきが人種差別とみなされ、世界最大の炎上事件となってしまったネット企業の広報部長。

また、隣に座った友人と内輪ウケのジョークを言い合っていたところ、その内容と顔写真を前の席に座っていた女性につぶやかれ炎上、双方とも失職した例もあげられている。

何か言動に問題のあった特定の個人を大勢の人が晒し者にし吊し上げた結果、彼らは一様に職を失い精神的に大きなダメージを受けている。

一方、SM乱交スキャンダルで致命傷を負ったかにみえた国際自動車連盟会長は、ほぼ無傷で復活を遂げた。
売春婦の顧客リストが流出し、牧師や弁護士などの名前が明らかになったが、炎上せずに収束した例もある。

炎上する・しないの違いはどこにあるのか?
巻き込まれた場合、どう対処したらいいのか?
炎上後、復活するにはどうしたらいいのか?
当事者たちへのインタビュー、「恥」を知るためのAV撮影現場の見学や女装体験・・・など、様々な観点から考察していく。

著者は終始冷静な口調で「これまで何人もの人を公開処刑にした」などと、なかなか言いづらいことを告白したり、素直に思ったままのことを言葉にし綴っている。
そこまであからさまにに言うのか!と驚くほどだ。

炎上の元となった不用意な発言で、直接傷ついたのは誰だろうか?
吊し上げる者たちは、「これを聞いたらあの人が傷つくだろう。」と推測し、代わりに感情的になる者が多いのではないだろうか?
しかも、悪いことをしているという自覚はなく、むしろ正義感から良かれと思い告発して自己満足しているように感じられる。
そしてしばらく経つと、忘れてしまう・・・
そう考えると、やはり一番傷つくのは発言し叩かれた本人だろう。
だからといって、ソーシャルな場で不用意な発言をする者を擁護しているわけではないが。

日本での炎上はもっと低俗だ。
政治家の問題発言や芸能人の炎上騒ぎ、一般人では迷惑行為の証拠を自ら投稿した「バカッター」、「バカチューバー」が世間を騒がせている。

ローマ時代にコロッセオで行われた公開処刑は、当時人気の娯楽だったという。
火炙り、ギロチン、市中引き回し・・・様々な手段で行われてきた公開処刑の歴史は古い。
これからも「炎上」という名の公開処刑、公開羞恥刑はなくならないだろう。
また、炎上までいかなくても、ネット上のやり取りで誤解を招くことは誰にでもあり得る。
良識ある発言、そして自分の身は自分で守る事が大切ではないだろうか。


※日本でも最高裁判所が決定を下し話題になった「忘れられる権利」。
何か評判を落とすような自分に不利な検索結果が上位にこないように、「評判管理」を請け負う会社があるのだという。
例えば、顧客にとって都合のいい事が書かれているサイトを捏造し、それが検索結果の上位を占めるように操作する、などである。
調べると、日本にも同様の会社があると知り、驚いた。

※子どものなりたい職業ランキングでYouTuberが急上昇しているという。
(新1年生対象クラレ調べで25位、小1~6対象学研調べでも25位)
ネットリテラシー教育の充実が必要だと思う。

2017年1月23日月曜日

高齢者風俗嬢

60歳を超えた超熟女の風俗嬢が増えているという。なかには80歳超えも⁉しかも客は若者⁉



風俗嬢の人気は若さと美貌で決まる、というのは昔の話。
現在は、60歳を超えた超熟女たちも現役で頑張っているという。
本書は、そんな高齢風俗嬢たちの実態に迫るルポルタージュである。

著者は、「16歳だった~私の援助交際記」(幻冬舎)で100人近い男との援助交際やドラッグ体験を衝撃告白した女性である。
その後、22歳のとき未婚で子どもを出産し、アダルト系のライターとなり、現在は編集プロダクションを設立している。

医学部へ進学した子どもの学費を稼ぐために風俗で働く46歳の熟女。
60歳を過ぎてからAVデビューした昭和11年生まれの超熟女優。
60分15000円~のお店で働く自称82歳のデリヘル嬢。
AVの撮影現場に向かう途中、倒れて救急車で運ばれた67歳の現役女優。
と、年齢もさることながら想像の上をいくインタビューが続く。

1000人男がいたら1000通りもの好みがあるそうで、超熟女たちも需要があって意外と人気なのだという。
「昭和のおもてなし」で客の心を掴んだり、みだしなみに気を配ったりと、彼女たちも努力を惜しまないそうだ。
なかにはフィストまでOKの強者も‼

また、女性の外見や雰囲気により客層は異なるという。
ある方は年上のおじいさまが多くつき、ある方は30~40代の客が中心で、またある方は20代がほとんど、という具合に。
18~20歳の男の子に人気の60代の超熟女もいるというから驚きだ。
癒しを求めているのだろうか?

気になったのは、著者が「女性が風俗の仕事を楽しんでどこが悪いのか」というスタンスで書いている点だ。
シングルマザーで忙しく子どもの世話ができないなら、パートの安月給より短時間高収入の風俗の方がいい、元気な貧困老人なら福祉に頼らず風俗で働いた方がいい、そう勧めているように思えてならないのだ。

確かに本書に登場する超熟女たちは、イキイキとしている。
若い男の子と接して高収入を得られる、女性ホルモンも分泌されますます若返る…それは事実なのだろう。
ただ、その陰で風俗で働くことにより、心身ともに傷ついた女性も大勢いると思うのだ。
病気感染のリスクや、密室で見知らぬ男と接する危険性もある。
家族にバレて家庭が崩壊するかもしれない。
そういった危険性も併せ持つことをもう少し突っ込んで欲しかった。

2016年10月27日木曜日

正しい恨みの晴らし方

このうらみはらさでおくべきか!!



マレーシアに住んでいた時のこと。
シンガポール人の友人が、インドネシア人のお手伝いさんに「黒魔術」をかけられていると怯えていたことがあった。
そのお手伝いさんが、ケトルに得体の知れない何かを入れておまじないを唱えたり、部屋の片隅に草のようなものをお供えしたり、雇い主である友人に暗示をかけようとした、と言うのである。
にわかには信じられなかったが、今でも黒魔術は一部に残っているようだ。

日本でも藁人形に五寸釘は定番(?)だが、人に迷惑かけずに気がすむのならそれはそれで恨みを晴らす有効な方法かもしれない。

本書の題名は「恨みの晴らし方」だが、藁人形系の話ではなく、心理学と脳科学の観点から恨み・妬み・嫉み等のネガティブな感情を解き明かすという内容である。

人は能力や格が違う相手には憧れこそすれ妬むことはまれであり、自分と同等か僅差だと思われる人を羨んだり妬んだりするという箇所は妙に納得した。
確かにスーパーモデルの体型を妬むことはないが、仲間だと思っていた友人がダイエットに成功した時はショックが大きかった。

ネガティブ感情における男女の性差も興味深い。
男性の持つ不満は、相手が正直さ・誠実さを見せることで沈静化し、女性の場合はあなたを理解し受容したというメッセージを伝える事が重要であるという。
そうなのだ。
女性は愚痴を言ってストレスを発散しているのだ。
男性の皆さん、女性の愚痴は具体策や解決策を提示して無理に解決しようとせず、相づちを打って聞いてあげてほしい。

ネガティブな感情は、人間なら誰しもが持つ自然な感情であり、人間にとって重要な意味があるという。
だから妬みを感じたとしても恥ずかしがったり罪悪感を抱いたりせずに、なぜその感情が起きたのか、自分の本当の目的は何だったのかを冷静に分析すれば、コントロールすることができるのだという。

個人的に一番気に入ってる恨みの晴らし方は、北大路公子さんが著書「ぐうたら旅日記」でおっしゃっていた「呪い」である。
ネガティブな感情を抱いた相手に赤っ恥をかかせるような呪いをかけるのだ。
どんな呪いをかけようかと考えるだけで楽しくなって、ネガティブ感情が吹き飛んでしまうのでオススメである。

2014年6月12日木曜日

慶應幼稚舎の流儀

歌代幸子著
平凡社新書

お受験の最高峰・慶応幼稚舎とは、どんな学校なのだろうか。

高校時代、渋谷で幼稚舎の生徒をよく見かけた。
無邪気な彼らを見ながら、お金持ちなんだろうな、いいもの食べているんだろうな、と心の中で思っていた。

お受験の最高峰と言われる慶応幼稚舎とは、どんな学校なのだろうか?

本書は、幼稚舎の歴史、なかなか表に出ない教育内容などについて、出身者・教員のインタビューを交えながら解説したものである。

幼稚舎は1874年(明治7年)に創設され、140年もの歴史がある。
しかし、1学年3~4クラス・各36~44名と少人数のため、幼稚舎出身者は合計しても約1万5000人ほどだという。

最大の特徴は、受験なしで大学まで進学できることだろう。
そのため時間的な余裕があり、学校行事として様々な課外授業が設けられ、伸び伸びとした子供時代を過ごすことができる。
卒業生のインタビューで、「勉強した記憶がない」という方もいたくらいである。
本人のやる気次第だが、なかには基礎的な知識を身につけないまま大学を卒業する者もいるという弊害もあるのではないだろうか。

他にも大きな特徴として、6年間担任持ち上がり制が挙げられる。
やむを得ない事情がない限り、担任もクラスメイトも変わらない。
学級運営は担任によって様々で、学習進度も教材も「ゲームを持って来てもいい」などクラスのルールも、それぞれ異なるのだという。
担任と相性が悪かったり、友人に恵まれなかったら辛いと思うが、それも経験のうちなのだろうか。

他にも、
教室でも土足のため下駄箱がない。
保護者から学校のことに口出しを受けるのを危惧したため、PTAがない。
などが挙げられているが、それらは幼稚舎に限らず中学高校と慶応全般にも当てはまることである。

音大に進学せずにバイオリニストになった千住真理子さん、
幼稚舎始まって以来の「悪童」と言われ、高校で退学になった後、受験して慶応の法学部を卒業した木村太郎キャスター、
など幼稚舎出身者たちのインタビューでは、「生粋の慶応」というプライドと、「世間知らずの坊ちゃん育ち」と見られてしまうコンプレックスが垣間見られる。

また本書では、「お受験」についても言及しているが、親の見栄やエゴで子供が犠牲になるのはやりきれない。
子供の特性を考慮し、無理のない範囲で受験を考えるべきだろう。

幼稚舎出身の友人たちは、「軽井沢の別荘で近所」、「親同士が慶應で同級生だった」、など幼い頃から家族ぐるみの付き合いをしていて、とても団結力が強い。
その培った人脈が、幼稚舎出身者たちの一番の財産ではないだろうか。

2014年6月5日木曜日

妻の化粧品はなぜ効果がないのか 細胞アンチエイジングと再生医療

北條元治著
KADOKAWA



図書館でドキッとするタイトルを見かけ、思わず借りてきてしまいました。
なぜなら、私にとって今まさに〝旬〟の話題なのです。
いつも使っている化粧水をうっかりきらしてしまい、仕方なく娘の安い化粧水をつけたところ、これがしっとりしてつけ心地がとてもいいのです。
値段はいつもつけている化粧水の1/10以下。
だったらわざわざ高いの買わなくても、これでいいんじゃないか?
いやいや、年齢的にシミやシワにも効くものじゃないと・・・
悩めるお年頃なのです。

本書は、ショッキングな題名から想像した内容とは違い、再生医療の専門家である著者が、アンチエイジングについてわかりやすく解説しているものです。

見た目が老けている人は、血管の老化現象も進んでいて、「肌が若く、体の中の老化が進んでいる」とか「肌は老化が進んでいるが、内蔵や血管は若々しい」というケースはほとんどないそうです。

・老化の大きな原因は「紫外線」「酸化」「糖化」である。
・皮膚組織がコラーゲン・ヒアルロン酸を直接吸収することなどありえない。
(ただし、保湿には効果あり。)
・化粧品が浸透するのは、表皮の一部「角質層」までであり、薬事法でも化粧品の作用が及ぶ範囲は角質層までと決められているため、スキンケア化粧品に期待はできない。

もっと若く、もっと美しくと願う乙女たちに、辛い現実が突きつけられます。

そして、肌の老化防止法は、保湿と紫外線対策だけだと、わかりやすく説明してくれるのです。
だから、安くていいからシンプルな保湿効果のあるものを使いましょうと。

じゃあ、やっぱりこのまま娘の安い化粧水を使い続けていいということ?
でも、化粧品会社だって多額の資金を使って研究しているわけだし、少しぐらい効果があるのでは?
乙女心は複雑でもあるのです。

他にも、iPS細胞について、「酸化」「糖化」についてなど、アンチエイジングの最前線をわかりやすく説明してくれます。
目新しい話題はないけれど、極端な考えに走ったり、過激な方法を推奨するということもないので、かえって信用できる気がします。

でも結局は、地道な努力で老化を食い止めるしかないのでしょうか。

2014年2月12日水曜日

官能教育 私たちは愛とセックスをいかに教えられてきたか

植島啓司著
幻冬舎新書

ヒトはなぜ浮気をするのか?同時に複数の愛を確かめられるのか?一夫一婦制は崩壊してしまうのか?男と女のこれからを考える。



本書「官能教育」は刺激的なタイトルだが、内容は過去の歴史や文学作品を紐解きながら、これからの男女の関係について考える真面目な考察本である。

・イヌイットには、相手を交換して長く暗い冬を楽しむ「明かりを消して」というゲームがある。
・ウリシ島に住むミクロネシアの漁民は、祭りの際、男女が連れ立って森に出かけ関係を持つ。その際、夫婦や恋人同士で一緒に行ってはならない。

など、地上に存在した多くの社会の中には、「愛人」「不倫」「複数交際」が上手く社会に組み込まれていたのだと、多数の例が挙げられている。
平凡な人生を歩んできた私は、男女の関係はここまで多様なのかと驚くばかりだ。

また、
・ビクトリア朝の時代に乱脈な性関係を楽しんでいたメイベル・ルーミス・トッドという女性。
・フローベルの「ボヴァリー夫人」など文学作品や映画に出てくる奔放な女性。
など、過去の肉食系女子たちについても多数解説されている。

・「一人の異性を選んだら他の相手を拒絶しなければいけない」という方が、むしろ不自然だったのではないか。
・いまや3組に1組が離婚する世の中なのだ。結婚そのものについて考え直さなければならない。
・一夫一妻や貞節という義務を課すと、不寛容・嫉妬・羨望・疑念といった弊害が生まれてくる。
と、著者は一貫して「ヒトは異性に目移りするものだ。」という前提のもと、未来の男女関係について考えていく。

本書を読んでいると、どうして不倫はいけないのか?という問いになかなか上手く答えられないことに気づかされた。
「家族はじめみんなが不幸になるから、ゴニョゴニョ・・・」となってしまう。

でもやっぱり私は、著者のそういった考えに違和感を持ってしまうのだ。
奔放な恋愛をしてきた有名な女たちの影に、一人の男を穏やかな愛で一生愛し続けた女がそれ以上の数いたのではないだろうか。
男や性に興味がない女性もたくさんいたのではないだろうか。
平凡すぎて表に出ていないだけで。
また、男たちの中にも、目移りすることなく一人の女を想い続ける者が多数いると思うのだ。

そう考えてしまうのは、私が既婚者であるという立場だからだろうか。
そういう考えを持つように教育されてきたからだろうか。
それともやっぱり男たちは日々目移りし、隙あらば複数の女性と関係を持とうとしているのだろうか。

えっ!
芸能人に憧れたり、イケメンと出会ってときめいてしまうことも目移りの一種?
そう言われると、返す言葉もありませんが。
ゴニョゴニョ・・・

2013年8月29日木曜日

AV女優のお仕事場

溜池ゴロー著
ベスト新書



AV監督として1000本以上の作品を世に送り出してきた溜池ゴロー氏が、その豊富な経験からAV女優、カメラマン・メイクさんなど、AVに関わる人々や撮影の裏側を語っているのが、
この「AV女優のお仕事場」である。
「SEX会話力」 を読んで、すっかり溜池さんの優しさに魅了されてしまったが、本書でも女性に対する愛が溢れていた。

人前で肌をさらし、会ったばかりの男優とからむ。
そんな仕事をしているAV女優は、約2000名いるという。
女優たちは熾烈な生存競争に晒されて、8割が1年もたずに引退し、同じ数の女優が補充されていく。
そのうち、AV出演だけで生計の成り立つ女優は100人にも満たない・・・
それなのに、なぜ彼女たちは出演することを決意するのだろうか。
私には理解できないことだ。

最近は溜池ゴロー氏の撮影する熟女AVが売上を伸ばしているというが、まだまだ主流は童顔だが巨乳の美少女ものだという。
溜池さんは「供給する側のAV業界がきちんと軌道修正し、ロリコン作品を一切廃止すべきだと思っている。」というが、全くその通りだと思う。

女優は転落した不幸な女、精神を病んでいる・・・
私生活が乱れた高校中退の若い女・・・
というのは昔のイメージで、最近は不幸を背負った女優たちは少数派だという。
男優も昔は破天荒なタイプが多かったが、今は仕事と割り切っている若い人が増えているらしい。
どこの世界も世代交代は同じなのかもしれない。

ただ、「この業界は特殊に見られがちだが、そこで働く者はごく普通の社会人である」と強調しておられるが、それは溜池さんが売れっ子監督であり優しいからであって、周りに自然とそういう人が集まってくるのからだろうと思う。
小さな会社や筋の悪い人たちに、騙されたりひどい待遇を受ける人もいるだろう。
安いギャラで身も心も酷使される女優は、やはり弱者ではないだろうか。

また、著者は言う。
「妻が家庭外で他の男と関係を持つことが許せないというなら、妻を『自分のオンナ』としてもっと大切にすべきではないか」
いいこと言うなぁ。
やっぱり、溜池ゴローさん優しいなぁ。

2013年2月19日火曜日

デパ-トを発明した夫婦

デパ-トを発明した夫婦
鹿島茂著
講談社現代新書

女性の贅沢願望に火をつけろ!買わずにはいられない店。 デパートを発明した夫婦の戦略。



デパートの思い出を綴ったエッセイ「あのころのデパート」 の中で本書「デパートを発明した夫婦」を知り、伝記ものが大好きなので手にとってみた。
残念ながら夫婦の生い立ちや私生活にはほとんど触れておらず、夫婦の伝記というより「初のデパートと言われる『ボン・マルシェ』の歴史」とでもいうような内容だった。
しかし嬉しい誤算で、これがとても面白かったのである。

アリスティド・ブシコー(1810-1877)は地方の貧しい帽子屋の息子として生まれ、パリの革新的な店の店員となる。
当初、食事と住居が支給されるだけの無給の住み込み店員だったが、知識を貪欲に吸収しながらやがて独立し、世界で初めてのデパートといわれる ボン・マルシェ を世界的チェーンに発展させる。

入出店自由、定価明示、現金販売、直接仕入れ、返品可能・・・
当時としては斬新なシステムを構築し、薄利多売で消費者の心を掴み、またたく間に巨大デパートへと成長させていく。

バーゲンセールの発明、効果的な宣伝、無料のドリンクサービス、カタログによる通信販売・・・
次々と新たな戦略を打ち出し、客たちは商品の饗宴を前にして平常心を失い、購買欲の奴隷となってしまうのだ。

一代で巨大な富を築き上げたというと「利益のみを追求する強欲夫婦」を想像してしまうが、彼らはそうではない。
客の信頼を得るために「誠実」をモットーにし、高品質の品を廉価で販売する。

従業員に対しても、
高賃金、定期昇給、無料の社員食堂、無料の独身寮、教養講座、退職金制度の設立、養老年金制度・・・と、当時では考えられないほど高待遇の福利厚生制度を確立していくのだ。

極めつけはブシコーの亡き後、未亡人が莫大な遺産を元店員を含む店員全員に配分し、残りをパリ市民生委員会に寄付した事実だ。

19世紀のフランスに、こんなすごい夫婦がいたのだと感動する一冊だった。

最近は消費者の購買行動が変わり、デパートを始め店舗で実物を見て、ネットショッピングで安いものを購入することが多くなっているという。
思い出と夢がいっぱい詰まったデパートも、いつかなくなってしまう日が来るのだろうか。

※参考:ボン・マルシェ百貨店( Wikipedia

※ボン・マルシェ/BON MARCHEとは乏しいフランス語の知識から「いい市場」と思っていたが、「安い」という意味が正解らしい。

2013年1月29日火曜日

オタクの息子に悩んでます 朝日新聞「悩みのるつぼ」より

オタクの息子に悩んでます 朝日新聞「悩みのるつぼ」より
岡田斗司夫著
幻冬舎新書

人生相談はどのようなプロセスで回答するのだろうか?



新聞の人生相談は欠かさず読んでしまう。
回答に、「いいこと言うな」と感心したり、「うんうん、その通り」と頷くこともあれば、「それはキツすぎる」「それじゃあ回答になってない」と思うこともある。
他人事だからって好き勝手言ってごめんなさい。
でも、回答者は大変だろうなと思う。
字数制限もあり、大勢の読者が注目するのだから。

本書は、朝日新聞の土曜別刷り版に掲載されている「悩みのるつぼ」という人生相談の回答者である著者が「人生相談の回答の仕方」を解説したものである。

部下がツイッターで上司の悪口をつぶやいている。注意すべきか?(39歳管理職)
クラス内の位置が気になります(中学生)
といった相談内容を深く深く掘り下げ、相談者の文章の中から本音を探り出し、冷静にそして論理的に分析していく。

思考の過程や下書き、推敲の様子まで隠さず公開してくれるのだから、なんと出血大サービスなんだろうか。

そつなく回答して終わりにすることもできるのに、一つの相談に対して関係ないことまで膨大に考えてから回答する。
そして、相談者の味方という立場を崩さず、愛を込めて回答する。
どんな悩みでも、相談者の心を楽にしてあげるように心がけているという。
だからこそ心に響く回答ができるのだ。

いやぁ、まいった。
こんなに論理的ですごい方とは失礼ながら知らなかった。
「女優と結婚したい」という高校生に「作家に向いている」とは岡田氏以外言えない回答だ。
(理由は本書できちんと説明されている。)
もう岡田斗司夫氏は、お悩み相談の超一流回答者だろう。

私もちっぽけな悩みならたくさんあるが、たいてい友人とのおしゃべりで発散し、憂さを晴らしている。
ただ、長年抱えている悩みがあるのだが、岡田氏に回答してもらえないだろうか。

【相談】匿名希望・女・年齢非公開
長年痩せたいと思っているのですがなかなか痩せません。
「いつまでもデブと思うなよ」も読みましたが痩せません。
運動もして食事にも気をつけているのですが、お菓子がやめられません。
このまま一生痩せないのでしょうか。
最近、岡田先生もリバウンドされたそうですが、体質と諦めるしかないのでしょうか?

2012年9月24日月曜日

AKB48白熱論争

AKB48白熱論争
小林よしのり
中森明夫
宇野常寛
濱野智史著
幻冬舎新書

単に可愛いから好き♥なのではなく、応援したくなるアイドル。このシステムを作り上げた秋元康氏が一番すごい。



小林よしのり・・・1953年生まれ。漫画家。
中森明夫・・・1960年生まれ。ライター。
宇野常寛・・・1978年生まれ。文化評論家。
濱野智史・・・1980年生まれ。社会学者・批評家。
以上4人の「大の大人」がAKBに「マジ」で「ガチ」ではまり、今年の総選挙と「さしこHKT島流し問題」について熱く語りあった対談集。

いやぁ、熱い。
これだけの論客たちが、社会・マルクス・カント・世界平和などを引き合いに出しながら熱く語り合うテーマが「女の子集団」なのだからすごい。

彼らが「公開処刑」と呼ぶ総選挙は、単に「推しメン」に投票するのではないらしい。
○○は選抜入りするだろうから、頑張っているけどなかなか報われない××に入れよう・・・
など、同情や作戦で投票するのだという。

また、「AKBを離れたら独り立ちするのは難しい」などと冷静に分析もしている。

そして、AKBは既存のアイドルとは次元が違い、Jリーグ・プロ野球と並ぶ娯楽に匹敵するのだという。
言い得て妙だな、さすがだなと思う。

一方で
「CDを買うのはお布施だと思えばいい。」
「『Beginner』を聞いたときは、感動で震えた。」
「みおりんは妖精なんだよ。」
あれだけ冷静に分析しつつも、推しメンについては熱くなってしまう姿が笑ってしまう。


この本を読んで、私なりに「人はなぜAKBを推すのか」を考えてみた。

・テレビや雑誌などのマスメディア情報だけでは本当のAKBを理解できない。
・これだけ売れていても彼女たちは基本的に、「体験型アイドル」「ファン参加型アイドル」である。
舞台と観客との距離が異常に近い劇場に足を運びその場の空気を体験したり、握手会で実際に目を合わせ触れ合うなど直に接触して初めて彼女たちの面白さが味わえる。
・昔のアイドルと違い、ブログ始め様々な媒体によって丸裸にされ、等身大の女の子の姿を見る。(とファンは信じている)、
・懸命に踊る姿、選挙やじゃんけん大会で競い合う姿を見て、好きという感情だけでなく「応援」したくなる、支えてあげたくなる。
・自分で育てているという思いを持てる。

でも、結局は「男はかわいいお姉ちゃんが好き」で、「秋元康は類まれなる才能で巨大集金システムを作り上げたんだ、すごいなぁ」と思うのだが。

2012年9月18日火曜日

65歳。職業AV男優

65歳。職業AV男優
山田裕二著
宝島社新書

1947年生まれ、65歳の著者が語った男優生活




毛皮屋を営んでいた著者は、売れ行きが鈍ったことから52歳で廃業する。
ローンもなく子供も手を離れたため生活の心配がない著者が、次に選んだ職業は、エキストラの仕事だった。
当初は通行人や再現ドラマのおじいちゃん役をしていたが、その後AVのエキストラの仕事が増えていった。
そして、「やっぱり女優さんと絡みたい」と思い、関係者に頼んで出演させてもらう。
そこから著者の男優としての歴史が始まったのだ。

本書は、そんな著者の体験談、女優さんの紹介、健康の秘訣、藤元ジョージ監督による現場の舞台裏などが書かれている。

作品の設定は定番の他、要介護者とケアワーカー、嫁と舅、老人好きのJKに逆ナンされる・・・などだという。
読みながら、『珍日本超老伝』 の中にも80歳過ぎて頑張っていた方が出てきたことを思い出した。
溜池ゴロー氏の本 でも熟女が人気と書かれていたが、現在この業界は中高年市場に活気があるため、出演者の年齢層も幅広くなり、高齢の男優も増え、50代の女性でも女優としてのニーズがあるのだという。

10代の頃は、男はみんな男優に憧れているのだろうと考えていた。
画面に映ってない場所にはスタッフがたくさんいて、皆が見守る中あられもない姿を晒す、販売・レンタルされたら大勢に見られてしまう・・・少し大人になれば、そんな大変な仕事なんだなと気づいた。
著者も「度胸と開き直りができないと務まりません。」と言っている。

ギャラは、女優が10万~200万円位/本もらえるのに対して、汁男優は2000~5000円/発、
男優は3~5万円/日の肉体労働。
女優さんが大柄な方、月経中の方、腋臭の方の場合は、大変。
など、知らなくても困らないトリビアがたくさん書かれていた。

そして、無類の女好きだと公言し、出会い系サイトで相手を見つけ、今も4、5人の彼女がいるという著者は、意外にも「家庭第一」なのだという。
う~ん、奥様すごい。

中高年の男性がこの本を読んで、「よし、俺も見習って頑張ろう」と元気になるのか、それとも「やっぱり俺はダメだな」と劣等感に苛まれ自信喪失してしまうのか、どちらにしろ危険をはらんでいるので気をつけたほうが良さそうな一冊である。

2012年9月11日火曜日

ハーバード白熱日本史教室

ハーバード白熱日本史教室
北川智子著
新潮新書

ハーバード大学で日本史を教え、学生から高評価を受けている著者。彼女はどのようにして今の地位を築いたのだろうか。



1980年生まれの著者は、九州の高校を卒業後、カナダの大学で数学と生命科学を専攻した。
そこで、日本史の教授のアシスタントをしたことから、ハーバードの短期講座「ザ・サムライ」を受講し、サムライのかっこよさを強調する講義に違和感を覚える。
そして「日本はサムライが全てなのか、なぜ女が出てこないのか」と疑問に思い、プリンストン大学の博士課程で日本史を専攻する。
歴史の博士号は通常取得に5年以上かかるところ、3年で取得したという。
その後、この若さでハーバード大学で教えることとなった。

本書には、著者が日本史を教えるまでの経緯や、ハーバードの「先生の通知表」、実際の授業内容などが書かれている。

履修者1年目16人、2年目104人、3年目251人という驚異的な伸びを示す著者の日本史講座。
学生のように見られる小柄な若い女性が、周到な準備をし、絵を描かせたり、盆踊りを踊ったり、ラジオ番組や映像を作らせweb上に公開するといった授業で、学生たちから圧倒的な支持を受ける。
そして、「先生の通知表」で高評価を受け、「ベストドレッサー賞」や「思い出に残る教授賞」も受賞するのだ。

この本を読んだ知人が、「自慢ばかりで鼻に付く」と言っていたのだが、私はそうは思わない。
自己主張しなければ生きていけない海外で、日本人がここまで高評価を受けるのは、オリンピックで金メダルを取ったように喜ばしいことに思えるのだ。
女性・若い・アジア人種・英語が母国語ではないといったハンデがあるにもかかわらず、日本人が天下のハーバードで高評価を受けるのは、手放しで嬉しい。

そして、やがて世界を背負って立つ若者たちが日本史を勉強することによって、日本や日本人に少しでも興味を持つことは、将来の日本にとっても良い影響があると思う。

こんな誇れる日本人がもっと増えたらいいなと願いながら、著者のさらなるご活躍をお祈りしたい。

※余談だが、ハーバード大学の、講座ごとに学部生18人あたり1人のアシスタントがつくなど、優秀な学生をより優秀に育て上げるシステムにも驚く。
「これは新しい!面白そうだ!その挑戦受けてたとう!」という彼らの好奇心をくすぐるようなカリキュラムが人気だという。
楽勝科目ばかりを選んで履修していた自分がとても恥ずかしい。

2012年9月4日火曜日

イラン人は面白すぎる!

イラン人は面白すぎる!
エマミ・シュン・サラミ著
光文社新書

イラン生まれの著者が、悪いイメージを払拭すべく、イスラム教やイランとイラン人について楽しく語った一冊。



アジアで暮らし始めた当初、イスラム教徒との付き合いは難しいと感じていた。
子供にぬいぐるみをプレゼントしようとして、これは偶像崇拝禁止に抵触するのだろうかと悩んだ。
豚肉を調理したことのある調理器具で調理したものは、たとえ豚肉が入っていなくても食べられないと言われ、家に招待しても飲み物だけにとどめた。
ただ、もっと仲良くなればプレゼントは何がいい?と聞けばいいのだし、食事はお言葉に甘えて相手の家でご馳走になったり、イスラム教徒用のレストランに行けばいいと気楽に考えられるようになった。

付き合いのあったイスラム教徒は皆さんとてもいい人だったのだが、イスラムというとどうしても「原理主義者」「過激派」といった悪いイメージ浮かんでしまう。
日本人イコールオウム真理教と思われてしまうのと同じなのだが。

本書は、吉本興業所属の漫才コンビ「デスペラード」として活躍するイラン生まれの著者が、そんな悪いイメージを払拭すべく、イスラム教やイランとイラン人について、楽しく語った本である。

わかりやすい説明の中に、時折ネタなのかと思えるような話が出てくる。

・月収30万円以上のカリスマ物乞いがいる。
・「勉強したから100点取れると思ったのに、半分アラーが持ち去ったから50点になった」という子供のように、アラーを言い訳に使いまくる。
・断食中はイランで放送されていた「アンパンマン」の顔にモザイクがかかっていた。
・王族のクラスメイトが登校するとき、フタコブラクダに乗ってやってきたらみんな羨ましがった。
・「中国人は白黒のサッカーボールを見るとパンダを思い出すから、蹴るなんて行為はできないはず」という様な毒のある記事が毎日のように新聞に載っている。

などなど、芸人だけあって「ほんまかいな」と思うのだが、読み進めるうちにイランに対するイメージが変わってくる。

楽しい話ばかりではなく、イランの抱えているマイナス面も書かれている。
階級社会で貧富の差が激しい、レイプの被害女性が姦通罪で死刑判決を受けた・・・
厳しい現実も、祖国を離れ日本で暮らしている著者は冷静に分析している。

特にカダフィについてや「なぜ中東に他国の意思が介在しなくてはいけないのか?」という意見は、日本の報道ばかり耳に入れていた身にとって、目を覚ましてくれるような話だった。

イランとイラクを混同したり、スンニ派とシーア派の違いがよくわからないような方でも(私のことだ!)入門書として楽しく読める本である。

2012年8月25日土曜日

崖っぷち「自己啓発修行」突撃記 - ビジネス書、ぜんぶ私が試します!

崖っぷち「自己啓発修行」突撃記 - ビジネス書、ぜんぶ私が試します!
多田文明著
中央公論新社


自己啓発書を読みながら、著者自身の自己啓発も同時進行する体験ルポ。果たして著者は、本を読んで変わり、仕事を獲得することができるのか?
 
 


「自らを成長・変革させる糧として自己啓発書・ビジネス書を体験取材するルポルタージュを執筆してみませんか?」
悪徳商法の潜入ルポ『ついていったらこうなった』が2003年にベストセラーになってから、仕事が減ってきた著者の元に、そんな依頼が舞い込んだ。

本書はそんな著者が、『7つの習慣』(スティーブン・R・コヴィー)からなぜか『成りあがり』(矢沢永吉)まで、古今東西50冊の自己啓発書・ビジネス書を読んで実践し、新しい仕事を獲得するというドキュメントである。

「崖っぷちに立つダメ中年から抜け出したいあなたに、これらの古典を読破して、身も心も新しく生まれ変わっていただきたい。」とひどい事を編集者に言われた著者は、50冊もの本を前にどこから手をつけていいのか戸惑う。
普段あまり本を読まないため、読み進めるのも苦労してしまうのだ。

多読のすすめやペンで印や書き込みを薦める「読書論」に関する本をペンで線を引きながら読んでいると、ある本に「線を引くなどと愚かな行為をする人はいないと信じたい」と書いてあり、赤線を引くのをためらう。

これだけの本を短期間に読むには速読が必要と「速読法」に関する本を読むが、本により様々な方法があり迷う。
書き手として読者には飛ばし読みをして欲しくないと思う著者は、「本は一字一句落とさず読むべきで、飛ばし読みはしてはならない」という本に出会い、自分にあった速読法を発見していく。

子供の頃から整理が苦手で母親から「ゴミ男」と呼ばれた著者は「空間と時間の整理法」に関する本を読み、ゴミ男からの脱却を目指す。

秋元康著『企画脳』などを読み、今まで自分から積極的に企画を考えて来なかった著者は、ヒット企画を生み出すため「発想法」を身につけようと努力する。

「会話術」に関する本を読み、成果が上がらなかった売り込み電話に再度挑戦し、プレゼン能力を向上させる。

こうして著者は様々な本を読みながら、いいと思った方法を試していく。
そして取捨選択しながら、自分のスタイルを構築していくのだ。

あの人にはベストの方法でも、自分にとってベストとは限らない。
ベストの方法であっても自分の頭で考え微調整を繰り返して、初めて実になるのだと教えてくれる。
著者は自分のダメっぷりや落ち込んだ様子もそのまま書いているので(実際は才能ある方だと思うが)、ビジネス書を書いている方々のようなスーパーマン・スーパーウーマンではないところに好感が持て、自分も努力すればできるのではと思わせてくれる。

そういう意味で、楽しく読める本なのだが本書自体がいいビジネス本になっている。

2012年8月14日火曜日

人種とスポーツ - 黒人は本当に「速く」「強い」のか

人種とスポーツ - 黒人は本当に「速く」「強い」のか
川島浩平著
中央公論新社

「黒人は身体能力に優れている」というのは思い込みや先入観なのだろうか?



ロンドンオリンピックの陸上100m決勝出場者は全員黒人だった。
ここ30年、100m決勝はずっと黒人のみだという。
それに対して、水泳選手には黒人が少ない。
やはり生まれつきの身体能力によって得手不得手があるのだろう、日本人とは足の長さからして違うからなぁ、と思っていた。
本書は題名から、そんな黒人の身体能力を、骨格・筋肉・遺伝子レベルまで最新の科学から解き明かす本だろうと思い読み始めた。

しかし、黒人の悲しい人種差別の話から始まる本書は、野球・バスケットボール・アメリカンフットボールを中心としたアメリカのスポーツを、19世紀から丹念に追ったスポーツ史ともいえる本だった。

そもそもスポーツとは余暇に楽しむもので、奴隷として過酷な肉体労働に従事していたアメリカ黒人たちにとっては身近なものではなかった。
一部の黒人アスリートが優秀な成績を残しても、黙殺される「不可視」の時代が長かったのだ。

・黒人は「意志が弱く筋肉の制御ができない」「呼吸も血液の循環も不完全」である。
・プロ野球選手がホテルの滞在を拒否され「黒い肌、どうしたらこいつを白くできるのか」と声を震わせる。

そんな記述を読むと、改めて人種差別の恐ろしさを感じると共に、胸が痛む。

1930年代頃から徐々に黒人アスリートのパイオニアが道筋を作り始め、白人たちも無視できない状況になっていく。
また、一部のスター選手を夢見て、黒人がアメリカンドリームを実現させる数少ない道が、芸能界とスポーツ界だったため、たくさんの少年がスポーツに夢を抱く。

その後、報道で「黒豹」「ジャングル」とタイトルをつけられ、研究者にも「生まれつきの」「天性の」と評され、負けた白人に「やつらは努力しなくても勝てるんだ」と屈辱感を紛らわす言葉をかけらる。
こうして「黒人は原始的で、先天的に身体能力がある」というステレオタイプが出来上がっていったのだ。

長い長い黒人差別の歴史が書かれた後に、長距離選手が多いケニア・エチオピアの考察へと移る。
それらの国の中でも、トップレベルが排出されるのは一部の限られた地域だという。
その一部の地域の文化・歴史・地形が長距離に適していたのだと著者は言う。
つまり黒人だから身体能力が優れているというのは先入観だと著者は結論付けているのだ。

確かに日本人だから全員相撲がとれる、柔道ができる、着物が着られる、大和撫子だ、と決めつけられても困惑するよなと思う。
黒人の中でも運動音痴はたくさんいるだろうし。
そして「黒人は速い」と思うようなことが人種差別につながるのだと言われたように感じた。

本書は「アメリカのスポーツ界における人種差別の歴史」ともいうべき読み応えのあるとてもいい本だった。

しかし、最後まで読んで納得したのだが、無理やり納得させられた感もある。
やっぱり脚は長いし、お尻はプリッと上がっているし、顔は小さいし。
いや、こう思う事が人種差別なら、すみませんと謝るしかない。
そういう人ばかりではなく、太っている人もいっぱいいるのだから。
そもそも黒人の定義が広すぎるので、一部の人のイメージで全体を決めつけてはいけないというのも理解できる。

でも、陸上競技にはやっぱり黒人が圧倒的だし、日本人が最先端科学を用いてトレーニングしても太刀打ちできなさそう・・・
だから、著者は「黒人であること」が強さの要因ではなく、環境的な要因だと言っている・・・とループに迷い込んでしまう。

やはり科学的に肉体構造の違い(違わないかもしれないが)を解析した本も読んでみたいと思った。

2012年5月31日木曜日

アホ大学のバカ学生 グローバル人材と就活迷子のあいだ

アホ大学のバカ学生  グローバル人材と就活迷子のあいだ
石渡嶺司・山内太地著
光文社新書

今の大学生、大学のカリキュラム、システムについて斬り込んだ一冊。



はじめ、過激なタイトルに少し不快感を覚えた。
それはきっと私が、「楽勝科目」を選んで履修し、試験前には必死でコピーをかき集めていた「バカ学生」だったからだろう。
「法学部です」と言うと、「一番前に『あ』が抜けてない?」と言われるような学生だった。
申し訳ない。
まえがきに、「大学や学生、就活を巡るドタバタぶりを知っていただき、くすりと笑っていただければ幸いである」と書かれているので、じゃあこちらもいちいち目くじらをたてずに、そういうスタンスで気軽にいこう、と読み始めた。
この本は、「バカ学生」のエピソードが延々と載っているわけではない。
確かに、ツイッターやFacebookにキセル乗車したことを書きこんだり、難関私立大学生が「5001-501」の引き算で悩んでいるなどいくつかの事例が載っている。
しかしそれだけではなく、少子化問題に悩む定員割れ大学の問題、就活事情、大学のカリキュラムなどなど、データと共に書かれていて読み応えがある。
少しずつ変わってきている大学教育のキーワードは、「初年次教育」、「定員割れ脱出」、「グローバル人材」、「特進クラス」、であると著者は言う。
なるほど、大学も改革されつつあるのだなと少し安心する。

著者はときに過激な表現を使うが、基本的には学生を応援し、教育改革に取り組んでいる大学の地道な努力を、評価している。
少人数制、ゼミ形式の講義、英語での講義など、これはいいなぁと思える制度は、他大学にもどんどん広まってほしい。
個人的には、大学とは教養を深め、専門分野を学ぶ場所だと思っている。
ただ、就職難ということもあり、「サラリーマン養成所」となってしまうのも仕方のないことだろう。
義務教育程度の学力が身についてない学生は、大学ではなく「基礎学力・常識養成所」のようなところで学んだ方が、本人や社会のためになるのではないか。
本当は、小・中学校や家庭において、必要最低限の学力・常識が身につけば一番いいのだが。

おっと、「バカ学生」だった私には、大学教育について意見を述べる資格がないんだった。
墓穴を掘る前に、これにて失礼。

2012年5月8日火曜日

尼さんはつらいよ

尼さんはつらいよ
勝本華蓮著
新潮新書

清く正しく美しいというイメージの尼さんの世界。なるほど、どこの世界も色々あるのだなぁ。



1955年生まれの尼僧である著者は、大阪の仏門とは関係ない家庭で生まれ育ち、専門学校を経てデザイン事務所へ就職する。
その後独立し十分な収入を得るが、あるきっかけから仏門に入る。
そんな著者が、修行・尼の世界について語った本。

尼さんといえば、瀬戸内寂聴さんのイメージが強い。というかそれくらいしか思いつかない。
漠然と、剃髪で年輩で「人生酸いも甘いも噛み分けた人生の達人」というイメージを持っていた。

この本によると統計上、仏教の「教師」という資格を持つ女性は約16万4千人もいるという。
(うち立正佼成会6万4千人、真如苑4万8千人)
ただ、そのほとんどは「なんちゃって尼さん」で、尼寺でお経を唱えながら静かに生きるというような方は数少ないらしい。

尼さんの定義も難しい。
寺に住んで僧籍を持つ人、修行した人、衣を着て剃髪している人、法要でお経を唱える人・・・門外漢の私は考えたこともなかった。
著者自身も「お寺に所属はしています。普段は、学校で教えたり、研究とか原稿とか書いたり。で、マンションに住んでます」という。
どこからどこまでが尼さんというのか、「自称尼さん」もたくさんいそうに思える。

著者が経験した修行も軍隊なみの厳しさで、体罰も当たり前の世界、そして、強烈な男尊女卑の世界であったという。
人の道を説くはずの僧らしくもない。

尼寺に入り、精進料理を作ろうと野菜のありかを尋ねたら、冷凍庫にあるミックスベジタブルだけだったというのも、ちょっと驚く。

また、尼僧の場合大きな法要に出られないことが多いという。
男僧とは声の高さが違うため、導師の声の高さに合わせて唱えるときに、男女で音程を合わせるのが難しいのだ。
混声合唱団だっていいと思うのだが。

辛いことがあって「いっそ尼にでもなるか」という現実逃避はしない方が無難である。
やる気があればあったで、日本仏教界では空回りしてしまう。

知られざる尼さんの世界の暴露本としては面白く読めた。
俗物の私は、一生俗世で暮らそうと思う。

2012年2月29日水曜日

子供の名前が危ない

子供の名前が危ない
牧野 恭仁雄著
ベスト新書


虹空(にっく)、葉萌似(はーもにー)・・・「珍奇」な名前が増えている子供の名前。 名づけの第一人者である著者が警鐘を鳴らす。これから名づけを経験される方に是非読んでもらいたい一冊。



著者は命名研究家。
早稲田大学理工学部卒、一級建築士。建築の研究のかたわら、ライフワークとして易学、占い、漢字、名づけの研究をスタート。以来、30年以上の研究を続け、日本の名づけの第一人者。

私自身は、ありふれた名字で、名前には「子」が付いている。
だから、子供の頃は変わった名字で、「子」が付かない、かわいい名前(と自分が思っている)に憧れていた。
しかし、この本を読むと変わった名前で苦労した人がたくさんいることがわかる。

円丸(まとまる) 勇敢(かりぶ)・・・
最近、驚くような名前が増えてきたなぁと感じている方も多いと思う。
この本には、「珍奇」な名前で苦労する例がいくつか載っている。
著者は、単に変わった名前がいけないと言っているのではない。
ケント・アンナ等の漢字にしやすい名前のことではなく、
読めない字、繭・邇など電話で説明できない字、からかわれやすい等、
本人や他人にとって難点がある名前はやめた方がいいとアドバイスしているのである。

「名前で親がバカとわかって便利」と見下されたり、結婚・就職に不利であったりするという。
「人事担当者は誰にも読めない名前のものを遠ざけたくなるというのが本音」という個所は
あり得るなぁと思った。

名づけには世相が反映されるというのはよく言われることだが、
著者は「その時代に手に入り難いもの」が反映されているという。
戦時中は勇・武・進、バブルの頃は愛、そして平成では空・樹等の大自然に関する字と優が圧倒的だという。

そして著者は、名づけに関して「無意識」や親の無力感、日本社会全体の問題を絡めてわかりやすく解説してくれる。
最後の第8章では、「正しい名づけの方法」を具体的に示している。
これから名づけを経験される方には大変役に立つと思う。

不幸にもすでに珍奇ネームをつけてしまった親、つけられてしまった子供たちにも著者はエールを送る。
「嘆く必要はありません。天から与えられた試練です。」と。

わかりやすく、著者の真面目な姿勢が伝わってくる大変いい本であった。

最近私が一番びっくりした名前は、「光宙」(ぴかちゅう)だった。
幼稚園や小学校の先生方は苦労されてるのではと思う。

光宙くんが、大きくなって「進化したから」と言って「雷宙」(らいちゅう)くんに改名しない事を願う。

2012年1月20日金曜日

死刑と無期懲役

死刑と無期懲役
坂本敏夫著
ちくま新書


元刑務官だった著者が、刑務所内や死刑問題について語った本。色々と考えるべき問題が多いとあらためて気づく。



1947年生まれの著者は、刑務官として全国各地の刑務所などに勤務し94年に定年退職となる。
現在はTVドラマの監修や講演活動を行っている。

本書は、拘置所や刑務所の内部の様子、受刑者の処遇、冤罪、矯正教育、死刑・無期懲役・終身刑等処罰に対する著者の考えなどについて「報道されない塀の中の真実と様々なメッセージを」語っている。

2002年の「名古屋刑務所保護房死傷事件」いわゆる消防ホース事件と革手錠死傷事件について、その後どうなったか知らなかったが、本書によると懲役刑が言い渡され、現在最高裁の判断待ちだという。その事件について、著者は、十分な証拠調べをせず、特捜部の仮説通りに裁判が行われたという。真偽は私には判断できないが、驚いた。

そして、この本ではたくさんの問題提起をしている。取り調べの可視化、アメリカのような司法取引やおとり捜査、終身刑についてなど、考えるべき問題はたくさんあるのだと再認識する。

著者は、死刑制度は凶悪犯罪への抑止力はないと言っている。長年死刑囚に接している人の言葉ゆえに重みを感じる。そして、「人間は変われる」という。

罪を本気で悔いて償う人もたくさんいるだろうが、高い再犯率や、更生プログラムがあまり機能していないことを考えると早急に改善を願いたい。
ただ、刑務官たちは大変な仕事で人数も十分ではないにもかかわらず懸命に働いているのだと感じた。

一つ、被害者の立場は出てこないのが残念だった。
何の落ち度もなく被害に遭われた方と家族はどう考えるのだろうか。
最愛の肉親を失って深い喪失感を一生負うことになる家族は、税金で衣食住を賄ってもらっている囚人をどう思うのだろうか。

膨れ上がる受刑者たちを減らすために、将来の被害者たちを減らすために、子供の教育に力を入れるべきだと痛切に思う。

余談だが、懲役囚の立場から書いた本「人を殺すとはどういうことか」  「死刑絶対肯定論―無期懲役囚の主張」(美達大和氏著)は大変興味深く、併せてお薦めしたい。