2011年9月30日金曜日

本朝金瓶梅

本朝金瓶梅
林 真理子著
文藝春秋



林真理子が書いた江戸の官能時代小説。男も女も誰もかれもが、まぐわってまぐわって、あんなことこんなことする本です。




そもそも「金瓶梅」とは、明代の長編官能小説。

タイトルの「金瓶梅」は主人公と関係をもった人たちの名前から一文字ずつ取ったものだが、それぞれ金(かね)、酒、色事、を意味するとも言われている。

それを、女の底意地悪さを書かせたら天下一品の林真理子が、時を江戸に移し、
書いたのがこの本。

主人公・西門屋 慶左衛門は、31歳、男ざかりの札差業。(幕府から旗本・御家人に支給される米の仲介をする)
生まれつき金はあるわ、顔はいいわで女が寄ってくるのは当たり前。
でも、「好き者」は、それだけでは満足できず、そこらの女にちょっかい出しまくり。
妻子がいて、囲い者もいて、吉原にも通う。
その上、いい女がいると聞くとどうにもたまらなくなってしまう根っからの「好き者」。
手をつけた人妻のおきんが、妻お月のいる家に乗り込んで妻妾同居。
そんな慶左衛門が繰り広げるめくるめくあれやこれやの世界。

すごい。
何がすごいって、女は、慶左衛門にひっかけられるだけじゃない。
したたかで、女だって「好き者」。

妾のおきんがいい。
相当の性悪女だけれど、意外と小心者で、笑わせてくれる。

「~ございます。」の語り言葉で書かれていて読みやすい。
殿方のおかずになるほどの官能ぶりではございませんが、思わず笑ってしまう好き者たちの
好きっぷり。
とても楽しめました。
著者の底力には敬服します。

慶左衛門の色の旅はまだまだ続くそうでございます。

私の手芸箱

アンティーク素材集
私の手芸箱
SE編集部編
翔泳社



かわいいもの大好き女子必見の素材集。ボタン・リボン・レース・刺繍・・・など、ツボを押さえたラインナップで私の一番のお気に入り。






かわいい物が好きで、素材集もいくつか持っている私。
その中でも、イチオシがこの本。

百聞は一見にしかずで、これはもう見ないとわからないけど、なんとか文章にするなら。

5つの章に分かれていて、

第1章
大切な小物たち
アンティークの手芸用品、はさみ・色とりどりのボタン・アクセサリー・パールなど
の写真。

第2章
レース、リボン
色々な形のレース、いろんな色のリボンが満載。

第3章
糸、刺繍
小物やお花の刺繍、色々な糸で縫った罫線など。

第4章
タイポグラフィー、ワンポイント
アルファベット、枠など。

第5章
ファブリック
花柄を中心とした布など。

中でも私のお気に入りは、第3章の刺繍。
大好きすぎて、友人との会食に、必要もないのにこれで招待状を作る始末。
ちょっとしたお手紙用に、これをあしらった便せんも作ってます。

かわいいもの好きの方はぜひ見てみてください。

ただ、難点は、重たい。
すごくきれいに、鮮やかに出てくるのですが、そのため、データが膨大らしく、
パソコンに落として使ったら、普通の漢字変換も時間かかりまくりで、
使うたびにCD使ってます。

額縁に入った花瓶

額縁の中にある花瓶です。

花瓶部分は、オアシスに葉っぱを貼っています。

2011年9月29日木曜日

贋作と共に去りぬ

贋作と共に去りぬ
ヘイリー・リンド著
岩田佳代子訳

世界的贋作師の祖父を持つ主人公アニー。明るく前向きなアニーとイケメンたちが(想像及び願望)繰り広げるエンターテイメントミステリー。





アニーは、幼い頃から絵画の才能を開花させていた。
10歳の時、モナリザを見事に模写するほど。
贋作師の祖父より手ほどきを受ける。
かつてはあこがれの修復師になるため、美術館勤務をしていたが、
暗い過去が暴露され、辞めさせられてしまった。
今は、お金に困っている忙しい画家兼疑似塗装師。
ある日、元カレから元の職場に呼び出され、鑑定を頼まれる。
そこから始まるノンストップミステリー。
次から次へと、めまぐるしく事件が起こる。

とにかく読みやすい。
翻訳がいい。
海外物によくある不自然な「英文和訳」ではなく、自然な日本語でよかった。

主人公アニーは、お金はないが、前向きで明るくへこたれない。
彼氏はいないが、味方になってくれる仲間がいる。
ステイタスはないが、確かな絵画の腕がある。

そんな主人公の周りにイケメン二人。
しかもタイプが違う。
一人は、長身で高級スーツを身にまとう堅物お金持ち。
もう一人は、正体不明の遊び人風。

アニーは、食べ物に気を使い、運動も欠かさない、美しいスーパーウーマン
(アメリカの小説によく出てくる)ようなタイプじゃない。
日本人好みの、一生懸命だけどドジで憎めない、でも才能はピカイチというタイプ。
女の子の憧れ要素満載のこの作品。
それでいて、美術の豆雑学あり、事件多数あり、アクションシーンありあり。

私が好きなのは、都合が悪くなると、電話を切っちゃうおちゃめなおじいちゃん。
他にも、助手や、友人たちも魅力的な人がいっぱい。

読み始めると夢中で最後までいってしまう。
とくに、後半は、アクション映画を見ているように楽しめた。

シリーズの第1作で、第4作までできているという。
次も是非読みたいと思わせる本でした。

2011年9月26日月曜日

されど彼らが人生 新忘れられた日本人Ⅲ

されど彼らが人生
佐野 眞一著
毎日新聞社

40人以上の様々な人生を駆け足で描いた作品。鳩山一族・細木和子・元ヤクザのもずく養殖業者・・・有名無名な人たちの人間模様が50話。



沖縄にお金持ちの軍用地主がいるという。
反戦地主ではなく、土地を米軍に貸している。
賃料だけで、年20億は下らないって。
不労所得がそんな金額。
夢のようだけど、基地反対派の多い沖縄では暮らしにくいのだろう。

バブル期の大阪料亭の女将「尾上縫」IQ84しかなかったって。
算数は、引き算が少しできる程度。
そんなんで、証券マン・銀行マンをかしずかせていたなんて。
金融マンにいいように操られていたんだろう。

そのほか、ダイソーの創業者・代ゼミ創設者・鈴木俊一・・・など、
著者が今まで資料やインタビューで出会った人たちのちょっとした興味深い話が
50話もあってお得感あり。

特に、小泉純一郎の元義兄は、窃盗を繰り返しているという話は、よく調べたなと
思った。

ただ、もともと週刊誌に連載したものをまとめた本という性質上、1話1話が短いのは
仕方のないことか。

もっとこの人のこと知りたいと思うような、一癖も二癖もあるような、強烈な人ばかり。

内緒の話
著者の本は結構読んでいるからか、過去に読んだことのある話がたくさん。 あと、「桑田佳祐とサザンオールスターズの音楽は観客におもねっていて前々から嫌いだったので」とか、細木和子の章で、「あの女はなぜあんなにエラソーにふるまっていられたのか。」とか、私情丸出しの文章がたくさんあって、ちょっとなぁ、と思った。

2011年9月25日日曜日

拙者は食えん!サムライ洋食事始

拙者は食えん!サムライ洋食事始
熊田 忠雄著
新潮社



江戸時代末期・日本人がアメリカ・ヨーロッパに行ったとき、見慣れない洋食を見て・食べてどう思ったのか?そんな観点から書かれた「洋食事始」



江戸時代末期・一般の武士たちは、とても質素だった。
一汁一菜か一汁二菜。
ご飯も玄米か麦混じり。
魚も月に3回。
お侍さんたちでそうであったら、庶民は推して知るべし。

そんな彼らが、外国に行ったら?
そんな興味から生まれたこの本。

日本食食べられないだろうから、船に山と日本食を積もうとして、断られる日本人。
獣の肉や油・脂のニオイに閉口する彼ら。
初めて見るフォーク→熊手の小さいものと表現する。
汚したり、こぼしたり、マナーも悪い。

残ったものをなんでも紙に包み、懐にしまっちゃう。
国賓級で接待されて、一流料理を供されても、食べられないお侍続出。

そんな想像すると笑ってしまうマンガチックな話が満載の本でした。

そんな彼らも、果物は味付けもせずそのまま食べるからか、大好評だったようです。
ジュースにして氷を浮かべれば、のどが渇いた彼らは大満足。
帰国後も後々まで語り合ったという。

私も、東南アジアに住んでいた時、ドリアンに何度も挑戦した。
でも、胃が沸騰するようで、寝込む始末。
フィジー大使館に行ったとき、地面に穴を掘って色々蒸し焼きにしてくれた。
わくわくしたが、食べたら、いまいち。
タロイモは、アレルギーなのか、喉が腫れてしまった。

アフリカの奥地の料理や、ゲテモノ系は食べる自信がない。

笑って読んでいたけど、彼らのことを笑う資格ないかもしれない。

「~御座候」文がたくさん出てくるところを除けば、読みやすい本でした。

2011年9月24日土曜日

巨怪伝 正力松太郎と影武者たちの一世紀 下

巨怪伝 正力松太郎と影武者たちの一世紀 下
佐野 眞一著
文春文庫

正力松太郎(1885-1969)とその「影武者たち」の壮大なお話。横暴・暴君・傍若無人・・・そんな正力を緻密な取材で丁寧に描いた著者の大作。




正直、正力松太郎なんて知らなかった。
「巨人の正力オーナー」は聞いたことあったけど、それは息子だった。

自分の手柄は誇張して言いふらす。
人の手柄は、横取りして、自分の手柄とする男・正力松太郎。

猜疑心と嫉妬心の塊の正力。
でも、飛行機が怖く、生涯外国へ出かけなかった。

朝晩、両親のために、経を読み、月命日には肉断ちをしたそれもまた、正力。

「プロ野球の父」と言われた正力。
野球のルールすら死ぬまで理解しなかったのに。
でも、自分以外の者が始めたそれ以前の職業野球は歴史から消した。

「テレビの父」と言われた正力。
アメリカ通の柴田の奔走のお陰で実現したテレビ放送だが、すべて自分の功績。

「原子力の父」と言われた正力。
原子力のげの字も知らないけれど、総理大臣になるための切り札として、
急いで導入した。

晩年は、狂気の暴君と化し、誰もを困らせた哀しき正力。

この分厚い本を上巻から読み始めて、私は、正力で頭がいっぱいになってしまった。

こんな嫌なオヤジ、そばにいたら許せない。上司だったら、すぐ会社辞める。
政治家としてテレビに出てたら茶の間で文句言う。

だけど、読み終わった今でも、なぜか魅かれてしまう。
近くにいない、歴史に埋もれた過去の人だから。
自分とは接点もなにもない赤の他人だから。

正力の影で泣いた「影武者たち」の苦労と悔しさに、一緒になって悔しんだ。
「家族の面倒も後々までみるから」と、大学進学をあきらめさせて、巨人に入団させた沢村栄治。その後の辛苦を思うと私まで哀しくなる。

そのほか、怒鳴り散らされた部下たち。その家族たち。

インタビューに応じた人たちは、一様に、悪口を言いまくり、最後には、「正力と一緒に仕事をやり遂げることができたことに今は誇りを感じる」という。


膨大な量の資料にあたり、たくさんの人々にインタビューをし、
長い年月をかけて、鬼気迫るこの本を書いた著者。
著者に送る称賛の言葉を私の語彙の中からは見つけられない。

福島の原発問題を今、正力は天国でどう思っているのだろうか。
孫娘のことは、かわいがっていたのだろうか。

2011年9月20日火曜日

巨怪伝 正力松太郎と影武者たちの一世紀 上

巨怪伝 正力松太郎と影武者たちの一世紀 上
佐野 眞一著
文春文庫

正力松太郎(1885年・明治18年生まれ)の84年の生涯を描いた著者渾身の大作。(前編)膨大な資料を緻密に解説している迫力の伝記。





富山県の土木請負業の家の二男として生まれ、子供の頃からやんちゃだった正力松太郎。
四校・東大を優秀な成績で卒業ではなく、優秀でない成績で卒業後、内閣統計局を経て、警視庁へ。
そこで、「大衆」の操作・鎮圧を学ぶ。
また、たくさんの知己を得る。
その後警視庁を責任をとって辞めた後、大正13年読売新聞へ。

『「君の今日あるは、一体誰のおかげか」といわれなかった人間は皆無といってよかった。』
この一文だけでも、正力の性格が窺えよう。
「この社にあるものは、輪転機から鉛筆一本にいたるまで、すべておれの物である」
という、超ワンマンで、並はずれた猜疑心と嫉妬心・名誉欲の権化のような正力でも、
不思議と金銭に関してだけは、無欲だったという。


読売新聞は、正力が作ったものではなく、金により「乗っ取り同然」によって
獲得したものであるため、「創業者」ではないというコンプレックスから、
他の事業において、「造物主」としてこだわった。

また、著者は、正力襲撃事件(昭和10年 犯人はその場で逮捕されたが、
背後関係はうやむやのまま終結)の真相も、数多くのインタビューから引き出した。


すごい本です。
分厚い。
会話文ほとんどなしの、漢字多め・ひらがな少なめ。
登場人物がこれでもかと出てくる。
一人一人の背景も丹念に説明してくれる。
引用文が、漢字・カタカナのコラボレーションのオールドスタイル。
歴史上の人物・事件が次から次へと。
高校時代の歴史・漢文・古典の嫌な出来事を思い出させてくれました。

警視庁を辞め、読売に入ったくらいから(大正13年)だいぶ現代風になり、
読みやすくなりました。

こんな読むのに困難な本でも、夢中になってしまうのは、著者の迫力が感じられるから。
また、正力本人の、今ではあり得ないくらいの横暴ぶりと、振り回される人々が、
興味深く描かれているから。

私の興味の対象である「鈴木商店」「星岡茶寮」も同じ時代を彩る脇役として出てきて
花をそえていた。

読むのに、知力と、体力の必要な本です。
でも、書いた著者はもっとすごい。

でも、ここまでで前半戦。
頑張って後半戦突入します。

2011年9月18日日曜日

マリアビートル

マリアビートル
伊坂 幸太郎著
角川書店


「グラスホッパー」のその後。「グラスホッパー」読んでからの方が楽しめる。でも、読んでない人も楽しめる。




盛岡行きの新幹線に、それぞれ事情を持つ人たちが乗り込む。
小賢しく、恐ろしい中学生・王子。
王子を狙う木村。
峰岸の息子を助け出し、盛岡に連れていく檸檬と蜜柑。
トランクを運び出せと命令された不運な七尾。
個性豊かな登場人物たちが、各自の使命を果たすため繰り広げる騒動。
果たして、盛岡までたどり着けるのか。

最初から、最後まで、軽妙なやり取りが続き、飽きさせずに最後まで突っ走るのはさすが。

危ない仕事をしてる人たちが、偶然(偶然すぎる!)同じ列車に乗り合わせる。
死体やけが人続出。
となれば、ハードボイルド風にも、暗い重い話にもなりそうだが、伊坂作品のため、
そうはいかない。

とにかく、会話が面白い。
「トーマス」大好きで、何でもトーマスに結びつけてしまう檸檬と、相棒の蜜柑の会話が
特に面白かった。
七尾の不運さも、度を越していて笑える。

でも、一番スカッとするのは、木村父。
やはり、経験を重ねた人は重みが違う。

読み終わって、すっきりするのもよかった。


内緒の話
なんか、職人の技という感じがする。
物をつくるのに、こうすれば売れるだろうというような感じで作っているような。
作家はみんなそうなのかな?
でも、伊坂作品はそれが強いような気がする。

2011年9月16日金曜日

仕事の話 日本のスペシャリスト32人が語る「やり直し、繰り返し」

仕事の話 日本のスペシャリスト32人が語る「やり直し、繰り返し」
木村 俊介著




自動車開発者・陶芸家・心臓外科医・グラフィックデザイナー・脚本家・・・
多種多様な職業の、スペシャリスト32人。
世間的には、有名な人・無名な人様々だが、その世界では有名な方たちばかり。
一人称の口語体で、読みやすい。

小さい頃から憧れてた仕事に就いた人もいるが、そんな人ばかりではない。
世間と同じように、スペシャリストたちの中にも、嫌だけれどなってしまったという人も
いた。
親の職業(会社)を継いだ人もいた。

スペシャリストたちの共通点を挙げるとしたら・・・

若い時の体験---遊びであれ、苦労であれ、失敗・成功であれ、重要なんだなということ。
みなさん、寝る暇を惜しんでとか、才能だけではない努力がうかがえる。

あと、自分の頭でよく考えて、自分なりの工夫をするということ。
当たり前のようでいて、なかなかできることじゃないと思う。

また、研究者やデザイナーが、人に伝えるというプレゼンテーション能力が重要ということを
言っていたのが、印象的だった。

一人一人一冊の本にできるくらいの人生をギュッと凝縮した、お得な本なのでは?
まとめあげた著者(インタビュアー)もすごいと思った。

今度は一人一人の半生記をじっくり読んでみたい。
 

2011年9月13日火曜日

ふくらはぎ「もみ押し」健康法

ふくらはぎ「もみ押し」健康法
小池弘人著
静山社文庫




ふくらはぎは、第二の心臓と言われているが、辛い症状(むくみ・冷え・こむらがえりなど)は、
血流の悪さが原因である。
ふくらはぎを、さすって、もんで、ツボを押して・・・
血流を良くしたら、症状がおさまり、未病対策、免疫力アップにもつながる。

そういう内容を、図をまじえながら医師の立場から、わかりやすく解説した本。

むくみやすく、こむら返りをしやすい私は、ふくらはぎの重要性を認識していて、
著者が監修した『「ふくらはぎをもむ」と超健康になる』も読んだ。

「超健康」の本は、ゾーンセラピー(フットマッサージ)をしている人が書いた本だが、
ふくらはぎのどこが固いかで、性格がわかる、子供の頃の育てられ方がわかる・・・
というところが胡散臭く、いまいちはまれなかった。

この本は、そういったところは書かれていない。
きちんと、西洋医学と東洋医学を融合した「統合医療」の観点から、わかりやすく
解説していて、なるほどと納得できる。

実際に、ふくらはぎをもんでいるだけでは、健康になるとは思えないが、
むくみ、こむらがえりの症状に悩んでいる私には、重要なことのように思えた。

いままでも、自己流&「超健康」の本を参考に、ふくらはぎをもんでいたが、
これからも続けていこうとその重要性を再認識させてくれた本だった。

2011年9月12日月曜日

チヨ子

チヨ子
宮部みゆき著
光文社文庫




小学校時代仲良かった5人のうち、4人で久しぶりに出会う「雪娘」
商店街の寂れた玩具屋に、変なうわさがたつ「オモチャ」
ウサギの着ぐるみを着たら、周りの人が違って見えた表題作の「チヨ子」
中学生の麻子が汚名を着せられた被害者の名誉を挽回しようとする「いしまくら」
調査事務所を構えるわたしのところに少年犯罪を犯した息子の父親が依頼しにくる「聖痕」

以上の短編、中編が収められて476円+税の文庫本。

いい人たちが出てきて、温かく、ホッとする話かと思うと、そうはいかない。
優しいような表現で書かれていても、うすら寒かったり、ぞっとさせられたり。

宮部作品が凝縮されたような短編集。

読みやすく、漢字が読めれば、子供にもよめるかな?と思ったが、
ちょっと「自転車でラブホテル」「親の性的虐待」などが含まれるから、
お子様向けってわけでもない。

「聖痕」は、中編でまとめてしまうのはもったいない作品と思った。
もう少し、引っ張ってもらった方がわかりやすいのではないかな?

内緒の話
いい人ばかり出てくるのが気になる。特に、子供。
こんなかわいい、聞きわけのいい子ばかりじゃない。
かわいこぶってる感じがする。
もっと、人間の汚さ、いじわるさを出したらいいのに。

あと、短編はやっぱり、終わり方が中途半端になってしまって、余韻を残す感じになるのが好きになれない。
いいと思う作品もたくさんあるから、読むのはやめられないけど。

2011年9月11日日曜日

化合

化合
今野 敏著
講談社

今野敏お得意の警察内部小説。STシリーズの主人公・菊川の若かりし頃のお話。シリーズ未読でも全く問題なく楽しめます。




バブルがはじけた直後、板橋の公園で、刺殺体が発見された。
警視庁捜査一課の菊川は、所轄のベテラン刑事と組んで捜査にあたる。
被害者は、イベントサークルの主催者。
第一発見者が見た「黒っぽいスーツの男」

捜査本部には、珍しく検察官がはりついていた。
ベテラン刑事のやる気のなさにいらつきながらも、我慢する菊川。

エリート検事が、起訴を急ぐ。
果たして、犯人は?

特異なキャラが出てくるわけでも、事件が次から次へと起こるわけでもなく、
話は静かに進んでいくが、なぜかどんどん引き込まれていく。

まるで、自分も捜査本部の一員でなったかのように、菊川と一緒に、
理不尽な上司にいらだったり、あきれたり、感心したり・・・
臨場感たっぷりの警察内部。

そこが、著者の魅力なんだと思う。
当たり外れのない安定感。
一文一文が短く、会話文が多く、読みやすい文章。
読後感もすっきりしている。
また、次回作も読みたくなるような作品だった。


本当の警察もこんななのかな?と想像する。

著者は、元警察官かと思いきやレコード会社勤務だったという。
(今、レコードって死語だけど、レコード会社のことはCD会社とは言わない気がする。)

どうやって、考えるんだろ?
すごい。

内緒の話

面白かったけど、突っ込みながら読んでしまうひねくれ者の私。
著者はパターンがいつも一緒。
主人公と、理不尽な上司 表現力が乏しい。
「菊川は、そう思っていた。」 「菊川は、そう感じていた。」 って文が何回出てきたか 。
でも、結局この著者の本をまた読むんだろうなと思う

2011年9月10日土曜日

ホルモー六景

ホルモー六景
万城目 学著
角川書店

衝撃の「鴨川ホルモー」の裏話。
先に読んでからこの本を読んだ方が楽しめます。





最初、ホルモーって、焼き肉のことだと思っていた私。
よくわからぬまま「鴨川ホルモー」を読み始めて、この著者に夢中になってしまった。

友情か男か、二人の女が対決する「鴨川(小)ホルモー」
凡ちゃんの初デート「ローマ風の休日」
もっちゃんの恋と恋文「もっちゃん」
同志社にもホルモーあった?「同志社大学黄竜陣」
東京にもホルモーあった?「丸の内サミット」
第五百代立命館大学白虎隊会長・細川珠美の恋「長持の恋」

以上の六編が収録されている短編集。

いつもながら、著者に感嘆する。
真面目で不器用な若者たち(この言葉を使うと、自分が年寄りみたい)の様子が生き生きと
かかれている。

まず、表現力がすごい。
くすっと笑ってしまうような言い回し。

ストーリーがすごい。
ミステリーではないのに、先が想像できない展開の仕方。

どうしたら、こんなお話が作れるの?
想像力がすごいのかな?

男の子の前で、おっさんが嘔吐くような声を出さなくてはならない定子。

恋文を間違えて渡してしまうもっちゃん。

そんな、青臭い、恥ずかしい、哀しい、そして、おかしいエピソードが満載。

まだまだ謎だらけのまま終わっているので、是非、続編でも番外編でも
出してほしい。

でも、やっぱりホルモーに参加してみたい。
私の地元でもやってないかな?

2011年9月7日水曜日

婚活したらすごかった

婚活したらすごかった
石神 賢介著
新潮新書


ネット婚活、お見合いパーティーに参加した著者の体験記。





バツイチの著者は、ある日突然結婚がしたくなり、婚活開始。

まずは、ネット婚活。
月数千円の会費で登録し、プロフィールを掲載して、
交際を申し込んだり、申し込まれたり。
初対面で、CAにいきなりSMプレイを要求された。

お見合いパーティー。
一回ごとに申し込む。「医者限定」など色々ある。
値段も色々。人も色々。
ナンパ男もいれば、たかり女もいる。

結婚相談所。著者は申し込まず、経験者の談話。
あまりに消極的な男たち。

日本の男に見切りをつけ、NYの相談所に登録し、アメリカ人・もしくは大手企業駐在員に
狙いを定める女。

等など、面白エピソード満載。
&、著者の経験と反省に基づいた婚活マニュアル。


面白かった。
婚活パーティーに申し込んで、恥ずかしく思う著者。
なぜ恥ずかしいのかと考えてみれば、こういうシステムに頼らなければ、
相手を見つけられないという状況にプライドが削られたから。
知り合いに会っちゃたら恥ずかしいから。

気持ちは凄くわかる。
私だって初めは恥ずかしいだろう。
だけど、就職難・そして結婚難の世の中だもん。
こういう手段を利用してみんなで幸せになりましょう。

また、著者は、パーティーには中毒性があるという。
思い返して、反省して、次はもっとうまくやれるんじゃないか。
今度はこういう風に攻めてみようって思うんだろうな。

婚活中の人には是非読んでほしい。
異性としゃべるのが苦手という人には、ぜひ婚活パーティーに参加してみてほしい。
そこで異性としゃべる練習、異性の習性を知るいい機会と思ってほしい。

相手にされなくても、場数を踏めば、心に余裕ができるはず。

やっぱり、余裕がある人の方が持てると思う。

がんばれ、婚活者たち。

少子高齢化の解消のためにも!!

やせる食べ方

やせる食べ方
江部 康二著
東洋経済新報社

女性の永遠の憧れ・ダイエット。(私だけ?)





色々な方法があるけれど、器具も使わず、飢えも感じず、
「おいしいものをたくさん食べてキレイにやせる!」
ってホント?

半信半疑で購入してみた。
でも、読んだらきちんと理論にのっとった本でした。

著者は京都大学医学部卒業で、現在、京都の高雄病院理事長。
糖尿病・アトピー性皮膚炎に実績のある病院らしい(自称)

内容は、肥満ホルモンであるインスリンをなるべく出さないような食べ方を推奨している。
要は、糖尿病の治療方法と一緒なんだから、きちんとやれば、効果が出るのは当たり前。

前に、アメリカで流行ったアトキンス式とほぼ一緒。
その時は、アメリカの本だったので、肉・肉・肉でOKって逆に脂が怖くてトライもしなかった。

でも、こちらは日本人に合っている食材が書かれているから安心。

ただ、きちんとできるかが問題。
これをきちんとできる人は、どんなやり方でも真面目にこなして痩せていくんだろうな。
っていうか、そもそも、そういう人は太ってないでしょう(笑)

だって、ご飯・パン・パスタ・果物etc.炭水化物を生まれた時から、がばがば食べてきた
私にとって、それを抜くなんて!!

お菓子もケーキもでしょう?

まぁ、とりあえず、夕飯のご飯を夕べぬかしてみた。おかずのみ。
寝る前におなかすいた。
梨を食べた。

こんなんじゃ駄目だろうけど、少しずつがんばっていきます。
だって、私の永遠のテーマだもん。

お酒飲む男の人にはいいかも。
おかずとお酒で夕飯なんて普通でしょうから。

2011年9月6日火曜日

分身

分身
東野圭吾著
集英社文庫




北海道に住んでいる鞠子。幼い頃から母の愛に違和感を感じていた。
東京に住んでいる双葉。生まれた時から母と二人暮らし。
性格は全く違うが、なぜかそっくりな二人。
双葉のテレビ出演を機に、様々な渦に巻き込まれていく・・・

だいぶ前の医療サスペンスといえば、普通、医療の進歩に伴って古臭く感じてしまうもの。
でも、この本はそんなこと感じさせず、面白かった。
(専門家にはどうかわからないが)

最初から、暗く、薄気味悪いベールが一枚かかっているような気持ち悪さが最後まで続いていた。
自分と双子以上にそっくりな人がいたら?
まずは親の浮気を疑うかな?
でも、そんな話ではなかった。

東野作品の初期のいくつかは、終わり方が中途半端で納得できないものがあったが、
この作品は、余韻を残しつつも、とりあえずうまくまとまっていた。

考えさせられる点も多々あり、読み終わった後も、本能的な嫌悪感は尾をひいていた。

あと、一貫して「親の愛情」がテーマとして流れていた。
それが、気持ち悪さの中、救いだった。

改めて、昔の作品を読んでみたくなった。

2011年9月4日日曜日

モルフェウスの領域

モルフェウスの領域
海堂 尊著
角川書店





アツシ君は、網膜芽腫で右眼摘出術を受けるが、9歳の時に再発。
左眼も摘出しなければならなくなるが、新薬が開発され、日本で認可されるのを期待して、5年間コールドスリープ「凍眠」することになった。
それを見守る未来医学探求センターの非常勤の専任施設担当官・涼子。
おなじみの曾根崎伸一郎教授が考えた「凍眠8原則」にほころびはないのか?
スリーパーは無事に目覚めるのか?
もし目覚めたら、そのあとどう生きるのか?

まずは、Aiについて書かれていないのでホッとしました。(Aiセンターの名前は出てきましたが)
前半は、読みにくかった。
どうにも、杓子定規の官僚像・作者の意見の押し付け・・・等気になってしまって。
もう、海堂作品は卒業かなとも思ってしまった。

でも、中盤からは、ストーリー的におもしろくなり、夢中になって一気に読みました。
こういうこともあるから、やめられない。

「凍眠」している間、その人の基本的人権はどうなるのか?
その間、体は少しずつ成長するが、年齢はどうするのか?
色々考えさせられます。

いくつか気になる点も。

おなじみの愚痴外来の田口先生って、こういう普通のキャラだった?
今までと印象が違うのだけれど。

ロジック、論理のほころび、などの言葉が頻繁に出てくる。
世の中には、そんなに頭のいい人ばかりじゃないし、
論理的にばかりこだわる人ばかりでもない。
もっと感情的な人もいっぱいいるはず。
みんながみんな、「論理的なほころびはあるかないか」なんて考えない。
一人二人はそういう考えの登場人物がいてもいいけど、揃いも揃ってっていうのは考えもの。

でも、「凍眠学習」は興味ある。
誰しも一度は睡眠中に自然に学習できたらと憧れたのでは?
特に試験前。
音声を流すだけで暗記・理解できたらいいな。

著者は、お願いだから、押し付けがましく書かないでほしい。

2011年9月1日木曜日

心星ひとつ  みをつくし料理帖

心星ひとつ  みをつくし料理帖
高田 郁著
角川春樹事務所




シリーズの第6弾。

幼い頃両親を失い、大坂の料理屋で奉公していた澪。
今は、江戸の「つる家」の料理人。
店主・大坂時代のご寮さん・隣人など、みんないい人ばかりが出てくる物語。

正直、読みやすいし、文庫本で安いし、と軽い気持ちでこのシリーズを読み始めた私。
料理を作る過程や、食べてる人の描写が好きで読んでいた。食いしん坊だから?

ストーリー的には、いつもいい人多すぎっと、ちょっと斜に構えて読んでいたかも。

それが、今回は違った。

夢中で読んでしまった。

静かな、ほっこり系のお話と思っていたのに、大きく動いた。

坂村堂の意外な出自が明らかになったり、失敗作があったり(個人的には、失敗もなくちゃと
大歓迎)・・・

それから、大きな選択を迫られる場面が二つも!!

これからどうなるのだろうと、初めて次回作を早く読みたいと思ってしまった。

今回から瓦版が付いていたが、それによると1年に2冊執筆するのが限度って。
それはそうだろうとうなづけた。
時代考証も必要だろうし、レシピを考え、作ってみないと書けないでしょう。

澪がていねいに作る料理をいつも食べてみたい、近くに「つる家」があったらいいな。と思う。

自分で作ろうとも思うのだけれど、レシピを見ていつも挫折してしまう。

でも、今回の豆腐丼と大根の油焼きなら、私でも作れるかも。