2012年10月6日土曜日

世にも奇妙な人体実験の歴史

世にも奇妙な人体実験の歴史
トレヴァー・ノートン著
赤根洋子訳
文藝春秋

人間は誰でも好奇心旺盛だが、中でも科学者の好奇心の強さといったら・・・偉大なる科学者たち、万歳!



本書は、科学者たちが過去に行なってきた数々の人体実験を集めた、科学者たちの血と汗と涙の物語である。
病気の治療だけでなく、麻酔や薬、食べ物、寄生虫、病原菌、電磁波とX線、ビタミン、爆弾、毒ガス、潜水艦、サメ、深海、成層圏と超音速・・・と様々な分野の実験が多数掲載されている。

人類や科学の発展のために実験は不可欠である。
それはわかる。
わかるのだが、なにもそこまで自分の体を痛めつけなくてもと、科学者たちの好奇心の強さに驚く。

孤児院の孤児や囚人、また「人類の苦しみを救うための実験なのだから自分たちも苦しむべき」というボランティアを実験台にした事例も多数紹介されているが、自分自身の体を実験台にする科学者たちもたくさんいたのだ。

放射線学者ジョージ・ストーヴァーは、自分の体を使い6年にわたってラジウムの人体への影響を調べ、数度の切断手術と100回以上の皮膚移植手術を余儀なくされたが、「有用な事実が明らかになるなら、それと引き換えに科学者が死んだり手足を失ったりすることなど大したことではない。」と語る。

他にも
・アルファベット順に薬を試してみようとして、トリカブト(aconitum)とヒ素(arsenic)でつまずきハズ油(croton oil)という下剤でギブアップした薬剤師。
・動物園の死骸を片っ端から試食する。
・マラリア原虫を持った蚊がいるかごに自分の腕をくくりつけ、3000回も刺されて予防接種の有効性を調べる。
・黄熱病の患者の唾液、血液、黒い吐瀉物を飲んだアメリカの医学生。
などなど、次から次へと強者科学者が登場する。

高所恐怖症の私は、飛行実験や潜水実験の部分を読んでいるだけで、絶叫マシーンに乗っているような恐怖を感じた。

よくやるなぁと思いながら読んでいると、自然に眉間に皺が寄ってくる。
しかし、勇気を出して動物やキノコを最初に食べた人がいてくれたからこそ、今私たちは美味しく食べ物を食べることができるのだし、誰かが過去に薬や医療行為を試してくれたからこそ、医学が発展してきたのだ。
そう思うと彼らに感謝すべきなのだろう。
(人道的な問題はあるのだが)

登場する科学者一人ひとりに深い人生があるのだろうが本書はそこにはあまり触れず、次から次へと実験が紹介される。
私の頭の中も、
すごい!
でも、怖い!
でも、偉い!
でも、なぜそこまでやるのか理解できない!
と、どう捉えていいのかよくわからなくなってきた。

最後に、大阪大学医学部教授の解説があり、それを読んで何とか少し落ち着いた。
はぁ、科学者の好奇心ってすごい!


※本書に、「食品加工のプロセスから昆虫を完全に締め出すことは不可能だから、我々はみんな年に
約1㌔もの昆虫を食べている」との記述があった。著者はイギリス在住なのだが、日本でもそうなのだろうか?

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