2012年8月8日水曜日

悦楽王

悦楽王
団鬼六著
講談社

団鬼六の抱腹絶倒自伝エッセイ。



26歳の時書いた相場小説が大当たりし、それを元手に新橋で大きな酒場を経営したが上手くいかず、穴を埋めようと小豆相場に手を出してさらに壊滅し、友人のコネで中学の英語教師となった著者。
やる気のない鬼六先生は、授業中に映画の脚本を書き、休み時間に生徒を使って郵便局から発送していた。
本書は、その後上京し「鬼プロ」を立ち上げ、雑誌を発刊していた3年間を中心に綴った自伝エッセイである。

著者が体験したエピソードは半端ないものばかりだ。

「鬼プロ社員第一号」のたこ八郎が幼稚園児の娘と動物園に行き、たこの方が迷子になってしまう。

雑誌「SMキング」を発行している著者のもとに、大学生が雑誌編集者として就職したいと電話してくる。
ならば、「女性と一緒に来て、僕の目の前で実践するという簡単な面接をする」と著者は奇想天外な就職試験を提案するのだ。
なぜ、編集者に実践が必要なのかはわからぬが。
まさか来るはずはないと思っていたその学生は、女性を連れて本当に来てしまう。
そして、なぜか「マサイ族の太鼓」のBGMをかけ、リズムに合わせて踊り、その後始める二人。
その周りをなぜか「ハイッオイッウイッ」と掛け声を浴びせながら廻る著者。
よくわからないが、大笑いしてしまった。

そんな「マサイ族」川田君、上司を色仕掛けでたぶらかし2回もクビになった「むささびのお銀」、団氏に「愛人はいりませんか」とポン引き行為をする学生らと新生「SMキング」を成功させていく。
著者はそのポン引きに自ら引っかかるのだが。

ある日、自称「きわめて正常な神経を持つ健康人間」である著者の自宅で、雑誌の写真撮影が行われた。
何日か前に特注して届いたばかりの高価な飛騨の机の上に、雁字搦めに縛り付けられたモデル。
団氏の意に反して、いちじくが登場したからさあ大変。
助手をしていた「マサイ族」川田君の顔面や、大切な机の上に大量に溢れてしまったのだ。

雑誌が発禁処分を受けショックを受けるも、自分が書いた小説は何のお咎めもない事にもっとショックを受ける団氏。

その後優雅なる倒産をして「鬼プロ」は、幕を閉じたのであった。

他にも女王様を敬愛する大学教授など、濃いキャラクターの方や面白エピソードが続々登場する。
著者の小説は敷居が高いと思われる方でも、自伝やエッセイは笑い度が高く、比較的読みやすいのでお勧めである。

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