2012年8月28日火曜日

僕はいかにして指揮者になったのか

 僕はいかにして指揮者になったのか
佐渡裕著
新潮社

「大人になったらベルリン・フィルの指揮者になる」小学校の卒業文集に書いた夢を実現させた指揮者・佐渡裕さんの自叙伝。豪快な性格の著者のコンサートに行ってみたくなる一冊。





本書は、京都・太秦で生まれ育ち、「題名のない音楽会」の司会をされている世界的指揮者・佐渡裕さんが関西弁で語った楽しい自叙伝である。

声楽を勉強していた母親の膝の上で音感教育を受け、2歳頃からピアノを習い、クラシックレコードを聴きながら育った著者は「耳の良さ」を自然と身につけることができたという。
小学6年生で始めたフルートでも才能を発揮し、京都市立芸術大学音楽学部フルート科に入学する。
大学時代に指揮者になりたいと思うが、そのままフルート科を卒業する。

そして、大学を卒業し関西二期会の裏方やアマチュアの指揮等を掛け持ちしていた著者に転機が訪れる。
ボストン郊外で行われている「タングルウッド音楽祭」に志願し、バーンスタインと小澤征爾に「面白いヤツがいる」と見出されたのだ。
そこから著者の指揮者としての快進撃が続く。
それにしても、バーンスタインと小澤征爾の懐の深さ・優しさには驚き感動する。

著者は指揮科を卒業せず、独学で指揮を勉強したことから自らを「音楽の雑草」と謙遜するのだが、一般人の私から見たら音楽エリートである。
才能があったからこそ、見出され今の地位を築いたのだと思う。

音楽家にとって、音楽の知識よりも人の心に訴える者を持っているかどうかが大事なのだと著者は言う。
そして、聴く側も知識よりもまずは音楽を好きになる事が重要であるという。
「佐渡流演奏会の楽しみ方」で、退屈になったら出番のないシンバル奏者に注目したり、ソロの前で緊張している奏者を見れば楽しめると肩ひじ張らない調子で教えてくれる。

クラシック音楽は敷居が高い、退屈だと思う人でも楽しめる本である。
そして、読み終わると身長187cmという大柄な著者がどういう風に指揮をし、どんな音楽を聞かせてくれるのか興味を持ち、コンサートに足を運んでみたくなる一冊であった。

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