理系の子―高校生科学オリンピックの青春
ジュディ・ダットン著
横山啓明訳
文藝春秋
高校生たちによる「科学オリンピック」。その背後ににあるそれぞれのドラマを描いた感動のドキュメント。
アメリカでは子供たちが科学の自由研究の成果を競う「サイエンス・フェア」が盛んで、毎年数多く開催されているという。
その中でも最大なのが、本書で取り上げられている科学のオリンピック「インテル国際学生科学フェア」。
毎年50カ国以上の国々から1500人以上の高校生が集まり、研究成果を披露する賞金総額400万ドル超という規模もレベルも最上級のフェアである。
理系でも文系でもなく、しいて言えば体育会系の私の理解を完全に超えた、中高生の自由研究とはとても思えない高度な研究ばかりである。
登場する少年少女たちは、境遇も様々である。
小さい頃から天才的な頭脳を発揮している人たちもいる。
10歳で元素周期表の全てを覚え庭で爆弾を製造し、14歳で「核融合炉」を作った少年。
幼稚園児の頃からフェアに参戦し、FBIの捜査を受けた少女。
2歳のクリスマスに延長コードをねだり、4歳で増築した部屋の配線をし、8歳でロボットを作った少年。
親たちも彼らの才能に驚き、どうしていいか戸惑う様子が描かれている。
幼い頃から「科学オタク」のような子ばかりではない。
貧困のため必要に迫られて「太陽エネルギーによるヒーター」を発明した少数民族の少年。
女優として活躍しながらさらなる飛躍を夢見ていた、科学が苦手な少女。
勉強とはかけ離れた生活をしていた少年院の非行少年。
著者は丹念な取材から、そんな彼らの背後にあるドラマを生い立ちから丁寧に描いていく。
そして、彼らの周りには必ず理解を示す大人がいるのである。
それぞれの個性を生かした研究に、一生懸命邁進する彼らに何度も感動した。
最後に優勝者が発表されるのだが、勝っても負けても挑戦してきた若者たちは変わる。
苦境をバネに努力し、研究してきた過程が彼らを変えるのだ。
私が中高校生の頃、頭の中は遊ぶこと・食べること・男の子のことで占められていた。
そんな自分が恥ずかしくなるほど彼らは凄い。
才能も凄いが、努力が圧倒的に凄いのだ。
最後に日本人女子高生の手記が掲載されていた。
頼もしく感じ、そしてうれしくなる。
報道では若い世代の犯罪にばかり目が行きがちで暗い気持ちになるが、この本を読んだらそんなことはない、希望はたくさんあるよと言われた気がした。
この本に出会えてよかったと心から思える本だった。
0 件のコメント:
コメントを投稿
閲覧ありがとうございます。コメントしてくださったらうれしいです。