2012年8月23日木曜日

下町ロケット

下町ロケット
池井戸潤著
小学館

直木賞を受賞したのも、これだけ人気が出たのも納得の一冊。



主人公・佃航平は宇宙工学を専攻し、ロケットのエンジンを開発したが、失敗に終わる。
父の死により研究職を辞し、町工場・佃製作所を継いだ。
特許侵害で訴えられたり、運転資金が足りなかったりと、中小企業経営者となった佃は窮地に立たされる。
この危機をどうやって乗り越えるのか。

人気のある作品なので、軽いタッチの勧善懲悪の話だろうと思いながら読み始めた。
確かに読みやすい文章なのだが、内容は骨太で極上のエンターテイメント小説だった。

「大企業に翻弄される町工場が、日本のものづくりを担ってきた意地を見せる物語」
一言でいえばそうなのだが、外からの危機だけでなく社内も真っ二つに分かれてしまうなど、様々な困難や主人公の夢が絡み、奥行きの深い話になっている。

見学に来た上から目線の男が、下町の町工場とは思えないほどハイレベルな設備、機械ではできない職人技などを見て驚き、町工場を見直すシーンには溜飲が下がる。

憎らしい奴と思っていた人が、町工場とバカにしていた佃の工場で社員たちの仕事ぶりに感動し、考えを改め、いい奴に変わっていく。
ストーリー的には予定調和なのかもしれない、机上の空論なのかもしれない。
でも私には、それでもいいじゃないかと思えるのだ。

実際はイヤなオヤジがオーナーの町工場もたくさんあるだろうし、理想に燃え真摯に働く大企業の社員もたくさんいるだろう。
それはわかっているのだが、安心して読め、そして感動を与えてくれた痛快な小説だった。

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