2012年8月4日土曜日

宇田川心中

宇田川心中
小林恭二著
中央公論新社

生まれてからずっとあなたを待っていた。逢ってもいないうちから、あなたの事を想っていた。



先日、男子高校生から恋愛相談を受けた。
「コクって付き合う事になったのに、部活が忙しくなかなか遊ぶ時間が取れなかったら、1週間でフラれた」というのだ。
そんな話はザラにある。3日で別れた、6時間で別れた・・・というのも聞く。
そういうのは付き合ったうちに入らないと思うのだが。

彼らの恋愛には、「障害」が少ない。
連絡を取ろうと思ったらいつでも取れる。
そして、ちょっとでもイヤな面が見えたら躊躇なく別れてしまう。

私が中高生の頃は、家電(いえでん)に掛けなければならなかった。
親が出たらどうしよう、遅くなったからもう掛けられない、などいつでも好きな時に連絡を取ることは難しかった。

もっと前は電話もなく、人目を気にしなくてはならないため、恋する二人の「障害」は今とは比べものにならないくらい大きかっただろう。

会えない間に、相手の事を考え身を焦がし、
「障害」があればあるほど、恋の炎は燃え上がるのだ。

本書は、江戸末期の恋愛模様を中心とした「出会ってしまった二人」の物語である。
女は、許婚のいるお嬢さん。
男は、恋愛禁止の僧。
「障害」MAXのシチュエーションである。
燃え上がらないわけないのだ。

そして、二人は純粋に惹かれあう。
お金や家柄、学歴につられたわけではない。
そのピュアさが今となっては新鮮ではないか。

近松チックな時代劇のようでもあり、SFファンタジーのようでもある恋愛物語。
読み終わり、身を焦がすような恋に今更ながら憧れてしまう。
そしてこれから街に出た時、会った瞬間にわかるという「運命の人」をキョロキョロ探してしまいそう。

今年の夏は、「障害のある恋」に身悶えしてみてはどうだろう?
妄想だけなら、どんなに燃え上がっても人に迷惑かけないのだから。
倦怠期の方はわざと「障害」を作ってみるのもいいかもしれない。

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