2012年8月17日金曜日

城の中のイギリス人

城の中のイギリス人
アンドレ・ピエール・ドマンディアルグ著
澁澤龍彦訳
白水社


可哀想な男の物語。読了した方々と慰労会を開きたい、取扱注意の一冊。



「ページを繰る手が時折とまる。頭痛がするし、吐き気を催す。」
「全裸で闘牛!!」
「ザ・鬼畜」「愛情が1㎜も感じられず」

最初この本の書評を読んだ時、そんな本読みたくない!と思っていたのだが、いくつか書評を読んでいくうちに麻痺してきたのか、それとも城に招待されてしまったのか、なぜか気になり読んでみることにしたのだ。

ふとしたことから知り合ったイギリス人に城へ招待され、短期間滞在し、驚くような体験をする---筋書きは単純だ。
しかし、城がある土地「ガムユーシュGamehuche」は「舌で刺激する行為」という意味だし、城の主人「モンキュMontcul」は「尻の山」という意味だしと、まあ推して知るべしの話なのだ。

モンキュは古い城を買い取り、自分の好みに改造し、そこに引きこもって、興味のある研究を続けている。
城に招待された男が見聞きし体験した事は、舞台が現代日本の小説ではとても表現できない、私のような凡人の想像を超えたスケールだった。
「狩猟家の攻撃精神」で、ありとあらゆる残虐な方法で肉欲を極めていくのだ。
そんな方法しかとれないなんて、なんと憐れな男なのだろう。

作者は「できるだけ残虐で破廉恥で」という物語を書きたかったそうだ。
その通り、ある種の嗜好をお持ちの方にはぴったりの本なのかもしれない。
が、私は眉間にしわを寄せながら読んだ。
きっと人からは「難しい本を考えながら読んでいるんだな」と思われた事だろう。

「洗練された苦痛」を描いたと著者は言うのだが、これが洗練されているのか、「想像を超えた苦痛」ではないかと思う。
しかし、確かに残虐の極みであり、気持ち悪さや怖さを感じながら読んだのだが、なぜか格調の高さを感じた。
「城」「ヨーロッパ」「貴族」などのキーワードから勝手に先入観を持ったのか。
澁澤龍彦の訳だからなのか。

ただし、やはり多感な年ごろの少年少女には決して読んで欲しくない、取扱注意の本である事は確かである。

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