旅屋おかえり
原田マハ著
集英社
旅をしたくてもできない人の依頼を受けて代わりに旅をする・・・そんな旅代理業を始める事になった元アイドルの奮闘記。ほっこりできる一冊。
礼文島出身で、小さい頃から海鳥やアザラシを眺めては「海のあっち」の世界に憧れていた主人公の 丘えりか、通称「おかえり」。
修学旅行で東京に行った時にスカウトされ、アイドルデビューするが泣かず飛ばずであった。
売れない元アイドル・おかえり 唯一のレギュラー番組「ちょびっ旅」のレポーター役も、自身の失敗から打ち切りになってしまう。
そんな32歳・崖っぷちタレント・ おかえり は、ひょんなことから旅をしたくてもできない人の依頼を受けて代わりに旅をする旅代理業を始める事になった。
本書は、そんな おかえり の奮闘を描いた物語である。
本書の最大の魅力は、明るく真っ直ぐな おかえり である。
おかえり の番組「ちょびっ旅」なんか見たことないくせに、すぐにファンになってしまった。
「こんな旅番組あったらいいなぁ」と思わせる内容なのだ。
そして、旅行は自分で行くから楽しいのであって、人に代わりに行ってもらうなんて・・・と最初は思うのだが、人それぞれ理由があり、突飛に思えた「旅代理業」という仕事にも納得する。
行く先々で土地の人と交流し人情に触れる・・・まるで女・寅さんのような話でもある。
後ろで支える事務所の人や番組スタッフたちも温かく おかえり を見守る。
旅に出る度に、「行ってらっしゃい」「おかえりなさい」と笑顔で声を掛けながら。
現実にはこううまくは行かないだろう。
しかし、だからこそ物語の中で感動できるのかもしれない。
読んでいてこんな触れ合いの旅してみたいなぁと憧れてしまう。
おかえり にはいつまでも旅をしていて欲しい、寅さんシリーズのように。
前作「楽園のキャンバス」とはガラッと変わって、笑いあり涙ありのほっこりした一冊であった。
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