2014年6月12日木曜日

慶應幼稚舎の流儀

歌代幸子著
平凡社新書

お受験の最高峰・慶応幼稚舎とは、どんな学校なのだろうか。

高校時代、渋谷で幼稚舎の生徒をよく見かけた。
無邪気な彼らを見ながら、お金持ちなんだろうな、いいもの食べているんだろうな、と心の中で思っていた。

お受験の最高峰と言われる慶応幼稚舎とは、どんな学校なのだろうか?

本書は、幼稚舎の歴史、なかなか表に出ない教育内容などについて、出身者・教員のインタビューを交えながら解説したものである。

幼稚舎は1874年(明治7年)に創設され、140年もの歴史がある。
しかし、1学年3~4クラス・各36~44名と少人数のため、幼稚舎出身者は合計しても約1万5000人ほどだという。

最大の特徴は、受験なしで大学まで進学できることだろう。
そのため時間的な余裕があり、学校行事として様々な課外授業が設けられ、伸び伸びとした子供時代を過ごすことができる。
卒業生のインタビューで、「勉強した記憶がない」という方もいたくらいである。
本人のやる気次第だが、なかには基礎的な知識を身につけないまま大学を卒業する者もいるという弊害もあるのではないだろうか。

他にも大きな特徴として、6年間担任持ち上がり制が挙げられる。
やむを得ない事情がない限り、担任もクラスメイトも変わらない。
学級運営は担任によって様々で、学習進度も教材も「ゲームを持って来てもいい」などクラスのルールも、それぞれ異なるのだという。
担任と相性が悪かったり、友人に恵まれなかったら辛いと思うが、それも経験のうちなのだろうか。

他にも、
教室でも土足のため下駄箱がない。
保護者から学校のことに口出しを受けるのを危惧したため、PTAがない。
などが挙げられているが、それらは幼稚舎に限らず中学高校と慶応全般にも当てはまることである。

音大に進学せずにバイオリニストになった千住真理子さん、
幼稚舎始まって以来の「悪童」と言われ、高校で退学になった後、受験して慶応の法学部を卒業した木村太郎キャスター、
など幼稚舎出身者たちのインタビューでは、「生粋の慶応」というプライドと、「世間知らずの坊ちゃん育ち」と見られてしまうコンプレックスが垣間見られる。

また本書では、「お受験」についても言及しているが、親の見栄やエゴで子供が犠牲になるのはやりきれない。
子供の特性を考慮し、無理のない範囲で受験を考えるべきだろう。

幼稚舎出身の友人たちは、「軽井沢の別荘で近所」、「親同士が慶應で同級生だった」、など幼い頃から家族ぐるみの付き合いをしていて、とても団結力が強い。
その培った人脈が、幼稚舎出身者たちの一番の財産ではないだろうか。

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