2012年7月21日土曜日

我が家の問題

我が家の問題
奥田英朗著
集英社

人から見たら小さい我が家の問題。でも、本人にとっては大きな問題なのだ。





新婚なのに、世話好きで思い出作りの好きな妻が待つ家に帰りたくない夫の話「甘い生活?」
夫が会社で蔑まれているのではと心配する妻の話「ハズバンド」
両親が離婚するのではと不安に苛まれる女子高生の話「絵里のエイプリル」
突然UFOと交信していると言い出した夫を心配する妻の話「夫とUFO」
新婚夫婦がお互いの実家に帰省するストレスの話「里帰り」
妻がマラソンにはまってしまった夫の話「妻とマラソン」

人から見たら羨ましいような、そんなの苦労じゃないよと言いたくなるような、しかし当人にしたら深刻な悩み、そんな話が6編収録されている短編集である。

家族なんだから、疑問があるならどうして本音でぶつかっていかないのか?ともどかしい気もするが、なかなか難しいのだろう。
特に、親の離婚問題を疑う女子高生なら、面と向かってはなかなか聞けないのもわかる。

一番良かったのは「妻とマラソン」
夫が売れっ子作家になった。
「どうせお宅はお金持ちだから」と言われてしまうので、主婦友達の節約の話にも入れず、
有名人の夫と知り合いになりたいがために近寄ってくる面々とも付き合いたくない妻は孤立していく。
働きに出ることもできず、目標を失い悶々とするのである。
夫婦一緒に歩んできたのにいつの間にか夫に先に行かれてしまった妻の気持ちが、夫の視点から細やかに描かれていた。

平凡な家庭のどこにでもあるような問題---そんなちょっとした日常を、退屈させずに読ませるのはさすがと思う。
これが林真理子さん・桐野夏生さんといった方が同じストーリーを書いたなら、まぁ修羅場の連続で、人間の汚さ・愚かさが全開のドロドロ話になるのだろう。(そういうのも好きなのだが)
しかし、この本は全話共通して明るい未来を予感させる終わり方なのだ。

隣の芝生は青く見えてしまうけれど、どこの家庭にも悩みはある。
家族の数だけドラマはあるのだ。
そんな事を再認識した本であった。

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