フィクションであって欲しい。そう願わずにはいられない警察とジャーナリズムの崩壊。
元北海道新聞の記者が体験した信じがたい真実とは?
北海道警の裏金疑惑を追及した一連の報道で、北海道新聞(以下道新)の警察・司法担当デスクであった著者は、2004年、新聞協会賞・JCJ大賞・菊池寛賞をトリプル受賞した。この本は、その後の信じられない出来事を綴ったノンフィクションである。
裏金報道後から、道警の道新への嫌がらせが始まる。
取材拒否、記者への恫喝、警察署での道新不買運動・・・
そして、道警OBによる執拗な「枝葉末節揚げ足取り」の抗議と謝罪要求が繰り返される。
裏金とは関係のない小さい問題を無理やり大きく広げた難癖が続く。
最終的に、著者は名誉棄損で訴えられるのである。
そんな中、05年3月に道新は「道警と函館税関『泳がせ捜査』失敗で、覚せい剤130キロ、大麻2トンの薬物が国内に流入した」という記事を掲載する。
これに怒った道警は事実無根として徹底抗戦するのだ。
同時期に道新内部で起こった横領と重なり、名誉を回復したい道警と、嫌がらせをやめてもらい、横領事件の静かな収束を願う道新とで秘密裏に取引がされる。
「出来レース裁判」をしよう。
人身御供として著者らを差し出そう。
道警は新聞社に密告した「組織の裏切り者」を執拗に捜す。
社内では賞をとった妬みと裏切りが渦巻き、著者は同僚から「地獄に落ちろ」「裁判でぶっ飛ばしてほしい」と言われる。
警察と報道機関のねじれた関係。
社内の様子は警察に筒抜け。
報道機関が警察権力にひれ伏し、ひたすら許しを請うかのような交渉。
驚くばかりの事実が並ぶ。
そして最後に明かされる「泳がせ捜査」の真相とは?
まるで警察小説、いやそれ以上の驚愕の事実が待っていた。
呆れる、憤るという感情を超越して、哀しくなった。
誰しも、警察官・新聞記者を目指した頃は、世の中をより良くしようと大志を抱いていたのだと思う。
巨大組織に組み込まれて変わってしまったのだろうか。
いや、やっぱり一人一人は今でも胸に大志を抱いているのだと信じたい。
魑魅魍魎が跋扈する巨大な組織に呑み込まれ、歯車となり揉まれていくうちに、そして仕事第一・組織第一と懸命に働くうちに、流れに引っ張られていったのではないか。
それならどこの企業・団体でもあり得そうなことだ。
そして、組織の一員である事を誇りに思って組織のために働いたからこそ、結果的にこうなってしまったのだと思いたい。
そうでないと、救いようがないのだから。
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