2012年7月7日土曜日

星と輝き花と咲き

星と輝き花と咲き
松井今朝子著
講談社

明治8年生まれの女義太夫・竹本綾之助を描いた小説。物語は浄瑠璃の中だけではないのだ。人はそれぞれ物語を持ち、自分もまた他人の物語の中に住んでいるのだ。




大阪で生まれ育った 綾之助 は、小さい頃から浄瑠璃の才能を発揮する。
士族の家柄を誇りに思う継母・お勝「芸人なんぞになったら、あんた地獄を見んならんで」と、将来入り婿をとり家を継いでくれることを願う。
しかし東京に移り住み、才能に恵まれた美少女であるため寄席に引っ張り出され、あれよあれよと人気絶頂になっていく。
この本は、そんな 綾之助 の人生を描いた小説である。

浄瑠璃の事もよく知らないのに、活字を読んでいるだけで、綾之助 の才能と美声に惚れぼれしてしまい、すぐ物語にのめり込んでしまった。
天賦の才を持って生まれた 綾之助 を、「お願い!つぶさないで、大事に育てて」と祈るように願う。
これではまるで孫を想うおばあちゃんのようではないかと気付き、苦笑してしまう。

その後、書生さんの追っかけまで出るほど人気が沸騰する 綾之助
現代のアイドルと同じなのである。

芸のために「自分でも恋の一つや二つした方がよろしい」と言われても、新聞記者があることない事スキャンダルを書き立てる中で、なかなか恋愛もできない。
アイドルは辛いなぁ、わかるわかると、アイドルでもないのだが同情する。

そして最後まで読んで、びっくりした。
なんと、実在の人物「初代・竹本綾之助」 をモデルに書かれた小説だったのだ。
まぁ、知らなくても楽しめたのだが。

私の好きな時代背景・題材で、コミックを読むように、軽く楽しめる本であった。
だがこの題材なら、もっと重厚感のある物語も似合うのではないかなぁ、宮尾登美子さんが書いたら、どうなるのだろうかと、ふと思った。

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