2012年7月4日水曜日

毒婦 木嶋佳苗100日裁判傍聴記


毒婦 木島佳苗100日裁判傍聴記
北原みのり著
朝日新聞出版


(本書に倣い、被告の事を佳苗と呼ばせて頂きます。)

この事件を最初に知った時は、「あんな顔で男を騙せるの?」という論調の報道に「人の好みは色々だから」とそれほど興味は持たなかった。
その後過熱気味の報道で、
「シミ一つない、絹のような滑らかな美肌」「落ち着いたかわいい美声と上品な口調」
「ゆったりした優雅な動作」「ナマ佳苗十分イケる」
「高校の卒業文集に書いた『嫌いなタイプ:不潔、貧乏、バカ』」・・・
そんな記事を読んで、だんだん興味がわいてきた。
佳苗の上から目線はどこからきているのか、そして何が彼女をそうさせたのか、それらを知りたくてこの本を手に取った。

「男から金を引き出す」と聞けば、同情や憐みをを誘うのかと思ってしまう。
ところが佳苗は援助を頼む立場でありながら、あくまでも上から目線で「働くと私と会えなくなりますがそれでもいいのですか?」と卑屈になることなく、攻撃的に強引に催促する。

裁判中の佳苗は、堂々として皆の視線を釘付けにした。
証人の他、検事や裁判官、弁護士までが感情を露わにする中で、被告人席にいる佳苗が一番冷静で、他人事のように座っていたという。
そしてクライマックスの「女性性」自慢。
売春や、ベッドの上での事を語ることで裁判が有利になるとは思えないのに、ドヤ顔で自慢する佳苗。
理解しようと傍聴していながら、佳苗の事が掴めない著者の戸惑いがよくわかり、私も同じように戸惑ってしまう。

佳苗被告の他にも、驚いたことがいくつかあった。
初めてメールでやり取りしてから10日程で470万円を渡す男性。
初めて会った次の日に245万円を振り込む男性。
佳苗の逮捕直前に、警察に忠告されても聞く耳を持たず、さらに200万円渡す男性。・・・
そんなにも簡単に大金を渡せることにびっくりする。
佳苗がそれだけ上手いのだろうか。

婚活サイトで、ガラスの靴を持たないのに、シンデレラに出会う事を夢見る男性たちにも戸惑いを覚えた。
白馬の王子様を夢見るのは女性だけではないのだ。

この事件の動機や、佳苗の事を知りたいと思って読んだのだが、余計にわからなくなってしまう。
貧困、虐待といった悲惨な成育歴があるわけではない。
ただ、田舎の町でセレブ感を味わっていた佳苗が、東京に出たら単なる庶民であった事にショックを受けて変貌したのだろうか。
それとも、小学生のうちから通帳を盗む等の行為をしていた佳苗は、生まれつきの毒婦なのであろうか。
佳苗の事をこんなにも考えてしまう私も、佳苗の毒にやられてしまったのかもしれない。

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