2011年11月29日火曜日

鷹匠の技とこころ

鷹匠の技とこころ 鷹狩文化と諏訪流放鷹術
大塚紀子著
白水社


大学の卒業論文で鷹匠を取り上げたことがきっかけでその道に進んだ著者が、数百年間門外不出とされてきたその伝統の技とこころを後世に残すべく書いた本。



1971年生まれの著者は、早稲田大学人間科学部の卒業論文「鷹狩と日本文化」を書いたことをきっかけに、鷹の魅力に魅せられてその道に進むことを決意した。徳川将軍家・天皇家に仕えてきた諏訪流の女性鷹匠となった著者がその伝統を詳細に語った。

まず、鷹狩の鷹とは、猛禽類のワシ・タカ・ハヤブサの中で、生きた獲物を捕食する習性のあるものをいう。
一度だけ見たことがあるが、翼を広げて飛ぶ鷹(ワシだかタカだかハヤブサだか定かでないが)のあまりの大きさと威厳のある飛び方に慄いたことがある。
その獰猛というイメージの鷹を女性が操るのだから、興味を持ってこの本を手にとった。

・放鷹の歴史・発展
およそ6000年前から鷹を調教してきたという説もあるらしく、鷹狩は現在でも70カ国以上で積極的に行われているという。
日本でも「日本書紀」に仁徳天皇の鷹狩の話が載っているらしい。

・鷹の飼育・道具など
ふんだんな写真と図を用い、微に入り細に入り鷹の習性から、餌や小屋などの飼育方法、
伝統的な道具などを説明している。
覚悟があればすぐにでも鷹を飼えそうなほどである。

・狩りの現場・調教の仕方
具体的な調教の仕方と実践を事細かに説明している。
昔から口頭で受け継がれてきた秘伝の技を、惜しげもなく披露してくれている。

・これからの鷹狩
アラブでの鷹狩の研修の様子や文化の継承にかける著者の思いなどが綴られている。

獰猛だと思っていた鷹は知能が高く、繊細で気位の高い生きものであることにまず驚きを感じた。
そして、「神の化身であったとされる鷹を敬うこころ」「鷹に仕えさせていただく」という鷹匠の鷹への尊敬の念に感動させられた。それがあるからこそ、鷹とこころを通わせ初めて「人鷹一体」の素晴らしい感覚を得られるのだろう。

全体的に専門家から、これから鷹を飼いたい人、また、私のような素人まで興味深く読める貴重な本であった。

「まだまだ鷹匠としては未熟ながら、日本だけでなく世界の鷹狩文化の保存と伝承のため、何ができるのか、どのような貢献ができるのかを考え続けている。」という著者の思いは揺るぎなく、心をうつ。
鷹匠という職業を選択した著者の生き方にも興味を覚え、その半生を本にして欲しいと願う。

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