2011年11月15日火曜日

シューメーカーの足音

シューメーカーの足音
本城 雅人著
幻冬舎


うっとりするような注文靴の世界を舞台にしたミステリー。靴マニアにはたまらない一冊。靴マニアではない人も靴フェチにしてしまう一冊。



20歳の時、靴作りを学ぶためロンドンに渡り20年。
ロンドンの繁華街・紳士靴の名店が軒を連ねる通りに高級店を構えている、靴職人の斎藤。
超一流の腕を持ち、ビジネスにも野心を抱き仕事に邁進している。
一方、皇居近くの雑居ビルの狭いスペースで修理店を営みながら、
靴の注文を細々と受けている25歳の智哉。
亡き父の靴を解体しながら、独学で靴について学んだ。
ロンドンと日本。遠く離れた地にいる靴職人二人のロマンと嫉妬が交差する極上のミステリー。

物を誂えることをビスポーク(Be spoke)と呼ぶ。らしい。
この本で初めて知った。
靴のオーダーなんてしたことない私。まして、紳士靴についての知識はゼロ。
でも、この本はのっけから引きつけられた。
若い日本人が斎藤に靴を注文し、サイズを測る場面から始まるのだが、その描写が細かく専門的。
一足約42万円。まるで自分がセレブになって注文しているかのよう。

詳細な描写が続く。
専門的な道具を駆使し、最高級の素材を使って靴を作る。
昔のビスポークの靴をを解体して研究する。
「極上の靴磨き」の仕方。

ああ、なんて甘美で耽美な紳士靴の世界なんでしょう、とうっとりしてしまう。
超一流の職人たちが、ぴったりなサイズに靴を仕上げていく様は官能的ですらある。
自分が男ではなく、お金持ちでもないことが悔しい。
男でお金があればすぐにでもロンドンに飛んで靴を注文するのに。

大事な仕事に行き詰まったらまず靴を磨くべきだ。
そうすれば、心の迷いが吹っ切れ、曇った鏡から湯気が取れるように困難が取り除かれていく

なんだかすぐに靴を磨きたくなってしまう。

そんな魅力的な靴の世界に、男たちの野心と嫉妬と靴への飽くなき愛情が絡んだミステリーだから、
面白いに決まっている。

読み終わった後に改めて表紙を見ると、なんて美しいんだろうとため息が出る。
今度生まれ変わったら、絶対セレブ男になる!と決意させられた本でした。

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