2011年11月24日木曜日

麒麟の翼

麒麟の翼
東野 圭吾著
講談社

2012年1月公開の映画「麒麟の翼」の原作。東野圭吾氏本人も認める自己最高傑作・・・らしい。




日本橋の中ほど、二体の麒麟像が置かれた装飾柱の下で建築部品メーカの製造部長・青柳武明55歳の死体が見つかった。刃物で胸を刺されていた。現場近くで交通事故にあい意識不明の重体になっている無職の八島冬樹が、青柳の財布を持っていた。八島は派遣社員として青柳の会社で働いていたことがあった。果たして犯人は青柳なのか?

冒頭、物語は主人公の加賀と同じように淡々と進む。
殺人事件が起き・登場人物が出そろい・状況がわかってきた中盤あたりから、
あとは一気に最後まで進み、目が離せなくなる。
最後はきちんとまとめてくれていて、読者の立場として欲求不満にならずありがたい。

今回のテーマは「父と息子の絆」。
加賀と亡父、殺された青柳と高校生の息子、それぞれに「絆」ある。

舞台は東京・日本橋周辺。
実際にある麒麟の像があることは気がつかなかった。
翼を広げて空を見上げる麒麟の像――読み終わった後に表紙を見るとまた違った印象を受ける。

ってここまで書いたけれど、やっぱり私らしくない。
だから、本音でいこう。
「自身最高傑作」との呼び名の高い作品だし、東野圭吾だしということで、こちらの期待も高まるばかり。
最近の長編大作は考えさせられる重たいテーマが多く、さすがと思って今回もそのつもりで読んでいた。
でも、肩すかしを喰らったようだった。
「上手い」というのが今の率直な感想である。
最後も上手くまとめてあるし、「絆」というテーマもいい。
でも、期待度が高かっただけにいまひとつ胸をうつものがないような気がする。

なぜだろうと考えてふと、登場人物の内面がよくわからないからだと思い当たった。
それぞれの心理描写があまりなく、細かい心の変化は読者それぞれが想像するしかないのだが、
殺された青柳の妻・娘キャラクター設定もよくわからず、誰にも感情移入ができない、
大げさに言うと長いあらすじを読んでいる印象すらある。

「最高傑作」とかの謳い文句を頭から消して、過度の期待をせずに素直に読んだら楽しめた作品だったと思う。
 

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