2011年9月20日火曜日

巨怪伝 正力松太郎と影武者たちの一世紀 上

巨怪伝 正力松太郎と影武者たちの一世紀 上
佐野 眞一著
文春文庫

正力松太郎(1885年・明治18年生まれ)の84年の生涯を描いた著者渾身の大作。(前編)膨大な資料を緻密に解説している迫力の伝記。





富山県の土木請負業の家の二男として生まれ、子供の頃からやんちゃだった正力松太郎。
四校・東大を優秀な成績で卒業ではなく、優秀でない成績で卒業後、内閣統計局を経て、警視庁へ。
そこで、「大衆」の操作・鎮圧を学ぶ。
また、たくさんの知己を得る。
その後警視庁を責任をとって辞めた後、大正13年読売新聞へ。

『「君の今日あるは、一体誰のおかげか」といわれなかった人間は皆無といってよかった。』
この一文だけでも、正力の性格が窺えよう。
「この社にあるものは、輪転機から鉛筆一本にいたるまで、すべておれの物である」
という、超ワンマンで、並はずれた猜疑心と嫉妬心・名誉欲の権化のような正力でも、
不思議と金銭に関してだけは、無欲だったという。


読売新聞は、正力が作ったものではなく、金により「乗っ取り同然」によって
獲得したものであるため、「創業者」ではないというコンプレックスから、
他の事業において、「造物主」としてこだわった。

また、著者は、正力襲撃事件(昭和10年 犯人はその場で逮捕されたが、
背後関係はうやむやのまま終結)の真相も、数多くのインタビューから引き出した。


すごい本です。
分厚い。
会話文ほとんどなしの、漢字多め・ひらがな少なめ。
登場人物がこれでもかと出てくる。
一人一人の背景も丹念に説明してくれる。
引用文が、漢字・カタカナのコラボレーションのオールドスタイル。
歴史上の人物・事件が次から次へと。
高校時代の歴史・漢文・古典の嫌な出来事を思い出させてくれました。

警視庁を辞め、読売に入ったくらいから(大正13年)だいぶ現代風になり、
読みやすくなりました。

こんな読むのに困難な本でも、夢中になってしまうのは、著者の迫力が感じられるから。
また、正力本人の、今ではあり得ないくらいの横暴ぶりと、振り回される人々が、
興味深く描かれているから。

私の興味の対象である「鈴木商店」「星岡茶寮」も同じ時代を彩る脇役として出てきて
花をそえていた。

読むのに、知力と、体力の必要な本です。
でも、書いた著者はもっとすごい。

でも、ここまでで前半戦。
頑張って後半戦突入します。

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