2012年6月20日水曜日

ピアニストの脳を科学する 超絶技巧のメカニズム

ピアニストの脳を科学する 超絶技巧のメカニズム
古屋晋一著
春秋社


著者は、「どう身体を使えば手を傷めずに幸せにピアノを弾けるのか」を科学的に研究している。

3歳から小6になるまでピアノを習っていた。
しかし、決して謙遜ではなく今は「ネコふんじゃった」しか弾けない。
そんな私は、大学でピアノを教えている友人によく疑問をぶつけている。
「コンクールに出場する人はみんな上手で素人には差がないように思えるけど、どう順位をつけるの?」
「どこをどう見たら初見(初めて目にする楽譜を見ながら演奏すること)であんなに上手に弾けるの?」
「どうして聞いたことあるだけの曲を楽譜なしで弾けるの?」
聞かれた友人は答えに窮していたが、別の友人に「脳が違うんだから、理解できるわけないよ」と一刀両断にされてしまった。

そんな私の疑問に答えてくれそうな題名に惹かれて読んでみた。

やはり、ピアニストとそうでない人の決定的な違いは「脳」にあるという。

私たちが話すために声を出す時、口の動きや舌の動きを詳細にイメージしなくても、「どんな言葉を話したいか」イメージするだけで口が自然と動き、声になる。
そして、環境によりボリュームを自然に調節する。
それと同じように、ピアニストはイメージした音を手指や腕の動きに自動的に変換する特殊な働きが、脳と身体に備わっているのだという。
つまり、「話すように弾いている」のだ。

ピアニストは
記憶力がいい。
外国語をマスターするのが早い。
声で感情の変化を聴きとる能力に優れている・・・。

痩せていて美しい、というのは私の個人的な見解だが、無芸大食なだけの私は、落ち込んでしまう。
いや、別にピアニストを必要以上に美化している本ではなく、私が勝手に卑屈になっているだけであるが。

プロの演奏家は1秒間に10回以上打鍵できるって、まさしく超人技ではないか。
高橋名人と連打対決をしていただきたい。

やはりそれには、幼少期からのたゆまぬ努力が必要なのである。
ピアニストといえども、演奏技術を維持するためには一日当たり平均3時間45分以上の練習が必要なのだという。
練習により彼らは手指だけでなく、脳をも鍛えているのだ。

この本は、目を引きがちな「超絶技巧」だけでなく、「感動」についても分析している。
人を感動させる演奏とはなんだろうか?
音楽のルールにのっとった範囲での表現の微細な彩「ゆらぎ」のみが、聴き手の心を揺さぶるのだ。
そして、音楽を深く知れば知るほど、音楽から得られる感動が増えるという。

演奏はできないけど、深く理解することもできないけど、私なりに聴くことはできる。
じっくり音楽を聴いてみたくなる本であった。

参考:「熊蜂の飛行」演奏動画
凄いなぁ度:★★★★★
読みやすい度:★★★
真似できない度:★★★★★

0 件のコメント:

コメントを投稿

閲覧ありがとうございます。コメントしてくださったらうれしいです。