2012年4月21日土曜日

カエルの声はなぜ青いのか?共感覚が教えてくれること

カエルの声はなぜ青いのか?共感覚が教えてくれること
ジェイミー・ウォード著
長尾力訳
青土社
一冊で共感覚がわかる、お得な入門書。共感覚のことがわかりやすく書いてあるのだが、やっぱり体験してみないとわからない!



著者は共感覚の世界的研究者の一人。
共感覚とは、一つの感覚が別の感覚を、本人の意思に関係なく喚起することをいう。
例えば、ニオイを嗅ぐと形が見える・音を聴くと色が見えるなどである。『共感覚者の驚くべき日常―形を味わう人、色を聴く人』を読んで、そんな不思議な共感覚に興味をもった。

「一冊で共感覚がわかる、お得な入門書」(訳者あとがき)と謳ってあるように、共感覚の研究史から、現在わかっている事柄まで、専門的分野に踏み込みながらもわかりやすく書かれていた。

共感覚とは少数の人に見られる生物学的基盤を持ったリアルな現象である。しかし、共感覚は、治療が必要な病気でもなければ、人の同情を必要とする境遇でもない。記憶力がよいという特性を持ち、多くの芸術家たちは、共感覚を生み出そうと必死になっているほどである。

この本にもいくつか事例が載っていた。
例えば、文字や数字を見ると同時に色を読みこんでしまうタイプの共感覚者ザンナ。
Ⅳという数字を見ると、4は緑に見え、Iは黒でVは茶に見えるため、複数の色が同時に見えてしまう。

言葉を考えたり聞いたりすると、味を感じる共感覚者のジェイムズ。
イチゴを食べると同時に、コンデンスミルクの味を強烈に感じるという「quiet」という言葉を使うという実験をした。すると、「イチゴとクリームが絶妙にミックスした最高の味になった」という。

この本は共感覚の本質に迫るべく、科学的データ、共感覚者の肉声と共に解説してくれている良書である。
しかし、味やにおいを言葉だけで説明するのが難しいように、本を読んでも共感覚の世界は体験しないとわからない。
残念ながら共感覚者ではない私にはカエルの声はケロケロとしか聞こえないのである。

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