2013年6月19日水曜日

ソロモンの偽証 

第Ⅰ部 事件
第Ⅱ部 決意
第Ⅲ部 法廷

宮部みゆき著
新潮社

宮部みゆきさんが本気出したらやっぱりすごかった!!!



(第Ⅰ~Ⅲ部まであわせて)

1990年12月24日、クリスマスイブの夜からこの物語は始まる。
大雪が降ったその晩、中学校の屋上から男子生徒が転落し、全身を強く打って死亡したのだ。
当初は自殺と見られていたが、犯人を名指しする「告白状」が届いたことから状況が一変する。
マスコミに報道され、右往左往する学校関係者たちを尻目に中学生達が裁判をしようと立ち上がる。
自分たちの手で真相を明らかにするために・・・・

第Ⅰ部で事件が発生し、舞台である中学校は大騒ぎになる。
第Ⅱ部で、中学生達がすべてを白日のもとに曝すために裁判を行うことを決意し、その準備を始める。
第Ⅲ部で、裁判が開廷し、徐々に真相が明らかになっていく。

昨年の話題作であったこの「ソロモンの偽証」は、2002年10月から2011年11月まで9年にわたり「小説新潮」で連載された、合計で2100ページを超える大作である。
宮部みゆきさんの久しぶりの現代ミステリーであり前評判も高いため、期待度MAXで読み始めたのだが、期待を裏切らない傑作だった。

携帯電話がまだなく公衆電話がそこかしこにある
ワープロの全盛期
土地がみるみる上がっていく・・・
世の中がバブル景気に浮かれていた時代背景たっぷりに、自営業者や町工場の多い下町にある中学校という狭い範囲を舞台にした群像劇である。

登場人物が多く視点が頻繁に変わるのだが、それぞれの個性が際立ち、きちんと書き分けられている。
真面目で勝気な中学生、気弱な男子、劣等感に苛まれ卑屈になってしまった女子、過保護な親・・・
どこにでもいそうなというか、いるいるこういう人と思う人々が圧倒的なリアリティで描かれていく。

誰に肩入れしたわけではないが、彼らと共に驚き、憤り、慟哭し、中学生達の頼もしさに感動し、ページ数の割にはそんなに時間をかけずに読み終えることができた。

悲しい事件を題材に、次から次へと重いテーマが出てくるのだが、不思議と読後感は悪くない。
オロオロする大人たちと違い、現実を見つめ冷静に受け止めていく中学生達の未来への希望があるからだろうか。

先が気になって仕方がない、睡眠時間を削ってまで読みたくなる、物語の中にどっぷり浸かる・・・
そんな本に出会い、ここまで夢中になれるとはなんて幸せなことなのだろうか。

伏線が張り巡らされたこの長大な物語を、大人から子供まで感動するこの作品を、中だるみすることなく書き上げた宮部みゆきさんはやっぱり天才だ。
(時々違う意味でびっくりするような作品に出会うことがあるが)

宮部みゆきさん、本当にありがとうございました。

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