2013年8月23日金曜日

泣き童子 三島屋変調百物語参之続

宮部みゆき著
文藝春秋

不思議な話を語って語り捨て、聞いて聞き捨て。怖くて悲しくて温かい物語。



江戸は神田三島町の袋物屋・三島屋では、「変わり百物語」が行われている。
主人の姪である おちか が、客人たちが持ち込む不思議な怪談話を聞くという趣向だ。
客は話を語って語り捨て、おちか は話を聞いて聞き捨て、あとは二度と云々しないのが決まりの百物語。
ただ聞くだけなんて簡単だと思うなかれ、苦しくなったり悲しくなったり怖くなったり大変難しい役目なのだ。
そして人々の話を聞きながら傷ついた おちか の心が少しづつ癒されていく・・・
「おそろし」「あんじゅう」に続く「三島屋百物語」シリーズの第3巻である。

マリッジブルー気味の嫁入り前の娘が語る、必ず男の気持ちが離れてしまうという池にまつわる言い伝えの話「魂取の池」

おちか が、「心の煤払い」と称して札差が主催する年末恒例の怪談語りへと出向き、皆で不思議な話を聞く「小雪舞う日の怪談語り」

など6編が収録されている。

前2作同様「怖くない怪談」と思って読み始めたのだが、どうしてどうして、ぞっと背筋が寒くなるではないか。
人間の「マグル」ではなくて怪物の「まぐる」が出没する話や、黒子の親分が語る重篤な病人を看病する話など、巧みな話術で引き込まれてしまう分、怖さが倍増する。

しかし、怖いだけでは終わらないのがこのシリーズ。
怖さの中にも物悲しさが見え隠れし、最後に心が温かくなる。
この3巻目が今までで一番感情が揺すぶられてしまった。

ぞぉーっとして、しんみりして、最後にほっこり・ホロリするこの物語。
好きだー!このシリーズが大好きだー!
と世界の中心がどこかはわからぬが、大声で叫びたいくらい好きになってしまった。
ヘンな本ばかり読んで、汚れちまったこの私の心を癒してくれるのである。

これで17話まで進んだ百物語。
著者の宮部みゆきさんは、99話まで目指すというから先が楽しみだ。

各地で猛暑日が続く今夏、こんな「温かい怪談話」を読んでみてはいかがでしょう。

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