2012年5月9日水曜日

昆虫標本商万国数奇譚

昆虫標本商万国数奇譚
川村俊一著
河出書房新社

蝶に魅せられ、追い求めて世界各地を訪ね歩く。著者の熱い想いが伝わってくる一冊。



1960年生まれの著者は、幼い頃から蝶の魅力に取りつかれて育つ。
その後、世界各国の「珍蝶」求めて駆け巡る昆虫商となった著者が、半生を振り返りながら蝶の魅力を熱く語った本。

フィリピンで、世界の蝶マニアなら誰でも名前を知っているというヌイダ一家の息子と親友になり、
笑いあり涙ありの関係を築く。
パプアニューギニアでは、「黒魔術」を仕掛けられ「呪い返し」でやり返す。
メキシコで結婚を考えたり、キューバで大型ハリケーンに遭遇したりと、ときに危険な目に遭い、
ときに自業自得の目に遭いながら、著者は蝶を求めて奥地まで果敢に攻め入る。
虫の採集には体力のみならず、昆虫の生態、気候、地理・地形、植物、海外なら政情、語学など様々な知識が必要だということがよくわかる。


男の子はなぜ虫が好きなのだろうか?
いや、たまに女の子でも虫好きがいるが、圧倒的に男の子が多い。
逃げる物体を追うという習性があるのだろうか?
そんな虫好きな男の子がそのまま大人になったような「虫マニア」がたくさん出てくる。

私は、蝶に興味が持てない。
たくさんの種類が出てきたので画像を検索しながら読み、「きれいだな」とは思ったのだが。
図鑑を眺めるのは楽しいのだが。
申し訳ないが、やっぱり蝶には興味が持てなかった。
でも、著者を始めとする、蝶に懸ける男たちの熱い思いには大変興味を持った。
何がそこまで彼らを魅了するのかは理解出来ないが、情熱を傾ける彼らには魅了された。

著者の知り合いの平岡さんは、「世界の昆虫展」で自分がコレクションしている3000匹の昆虫を披露する。
それが、仕事の合間のボランティアで、準備も全て自分でするというから驚く。
昆虫屋といっても、蝶屋、甲虫屋と細分化され、人それぞれ想いを寄せる虫は違うのだという。
そして、虫の趣味は「人生そのもの」というコレクターたちがたくさん出てきて、こういう世界もあるのだと感心する。

極めつけがこの本の著者、川村俊一氏。
ちょっとお姉さんにだらしがないが、憎めない、蝶に情熱をささげる男。
恥ずかしいことも、辛かったこともさらりと打ち明ける。
離婚、母の病気について語る最終章では、著者の純粋さが垣間見られウルッとくる。
なんて魅力的な方なんでしょう。
一つの事に一生懸命になっている姿は、やっぱり素敵に感じてしまうのである。


南米に生息している「ヘレナモルフォ」という種類だそうです。
価格は31,500円!!

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