2012年5月4日金曜日

アジアにこぼれた涙

アジアにこぼれた涙
石井光太著
旅行人

石井光太氏が海外で体験した10の物語。写真を見て考える。私に何かできることはあるのだろうか。



この本は、2000年から2008年までに著者石井光太氏が、アジアで体験したことをまとめたものである。

パキスタンで出会った、トラックに故郷アフガニスタンの風景を書いている絵師の父。
パキスタンで育ったため、故郷を知らない息子は父がダサく思えて仕方がない。

コタキナバルで出会ったスーダンから来た兄妹。
妹は、十代半ばで兵士に拉致され、尿道と膣がつながるほど乱暴を受け続け、精神的に破たんする。
傷ついた妹を慣れないドラッグ売りをしながら懸命に看る兄。

そんな10の話と多くの写真が掲載されている。

写真の中には、崩壊寸前に見えるバラック、たくさんのゴミ、衛生とは程遠い環境の中で、埃まみれのいい笑顔を見せる人々がいる。

スリランカの孤児院で、生まれたての孤児を欧米の子供のいない夫婦のもとへ送って育ててもらう支援事業をしている、里親探しのNGO職員は言う。
「不衛生だし、貧しいし、将来もない。それなら欧米に送られて養子として暮らした方がずっと幸せになれるでしょ。」
しかし、「幸せ」の正解は、いくら考えても出てこない。

インドネシアで、若い頃日本人と交際していたおねぇ系の方々。
彼氏のために性転換の手術を受けたのに、交際していた日本人駐在員が帰国してしまう。
待ち続けても彼は戻ってこない。そのまま歳をとり「女」としての価値が下がるが、
故郷にも帰れず、みんなで寄り添って暮らす。
日本で幸せに暮らしているであろうマツダさんたちやユウスケさんたちは彼女たちの現状をを御存じだろうか。

これは、彼らの「運命」だから、仕方がないのだろうか。
彼らに「可哀想」という言葉はとても使えない。

本を閉じたら、私には恵まれた日常が待っている。
家族とテレビを見て笑い、友人たちと美味しいものを食べながらおしゃべりをする幸せが待っている。

私には何ができるだろうか。
こういう世界があると頭に入れておくことだけだろうか。
それとも、彼らは彼らなりに幸せを見つけているのだろうか。
石井光太氏の本を読むといつも考え込んでしまう。
出口のない迷路をうろうろするように。

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