2013年10月29日火曜日

政と源

三浦しをん著
集英社

国政73歳。源二郎73歳。政と源、合わせて146歳。只今参上!





荒川と隅田川に挟まれた墨田区Y町。
そこで生まれ育った幼馴染の国政と源二郎は、正反対の性格ながら、なぜか昔から仲がいい。

源二郎は、「世界一の」つまみ簪(かんざし)職人である。
大恋愛の末結婚した妻は40代で亡くなったため、今は一人暮らしをしている。
しかし、73歳の今でも仕事に精を出し、若い弟子の徹平とその彼女で美容師のマミが家に出入りしてるため、楽しく充実した毎日を送っているように見える。
耳のあたりにちょぼちょぼと残っている髪の毛を、マミが赤やピンクや青など奇抜な色に染めているので見た目は怪しいのだが。

一方、国政は銀行員として定年まで働き、今は悠々自適の暮らしをしている。
妻は数年前に家を出ていき、長女一家と暮らしていて国政と連絡を取りたがらない。

お互い一人暮らしの真面目な元銀行員と、破天荒だが情に厚い職人という二人が、徹平を昔の不良仲間から助けたり、マミと徹平の結婚に一役買ったりと活躍していく楽しい物語である。

堅物とやんちゃ。
そんな二人のじいさんが、愛らしくて可笑しくていい味出していて、何とも言えない関係を築いているところが魅力的である。
老いて一人になってしまった寂しさも漂うのだが、それ以上にお互い口は悪いが認め合い固い友情で結ばれている。
いいなぁ、こんな関係。
自分もこの下町のY町で暮らす住人だったら楽しいだろうなと想像しながら読んでいた。

破天荒な源と生真面目な国政のやりとりや日常が面白くて面白くて、思わず笑ってしまう場面が何度もあった。
特に、生真面目な政が離れて暮らす妻に毎日手紙を出すところは可笑しくて可笑しくて笑いが止まらなかった。
そうかと思うと一転してホロリとさせられる。
しをんさん絶好調といった感じの物語である。
このコンビで続編出して欲しいなぁ。
またこのじいさんコンビと再会して癒されたいから。

※政と源の挿絵が載っていたのだが、二人共顔が西洋風で王子様のようなイケメンだった。
下町のおじいさんという設定なのだから、いい男に描くのはともかく、西洋風はないだろうと思う。
もっとも、この物語の面白さには全く影響がなかったが。

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