2013年10月9日水曜日

昆布と日本人

奥井隆著
日本経済新聞出版社

昆布のソムリエ、「コブリエ」が案内する昆布の世界。 


昆布と鰹節で出汁をとっている。
その前は鰹節や煮干の粉が入った「だしパック」を使っていたのだが、出汁とり鍋を使い始めたら簡単においしい出汁がとれる点が気に入り、今では毎日のように使っている。
出汁とり鍋は、鍋とざるがセットになっていて、ざるは細かいメッシュ状なので布で漉さなくても簡単においしい出汁がとれるのでおすすめだ。

本書は、1871年創業の昆布商「奥井海生堂」(福井県敦賀市)の4代目である著者が、昆布の歴史や使い方などについて語っているいわば「昆布の解説書」である。

昆布が歴史上の文献に初めて登場するのは奈良時代、また「出汁」として活躍するのは鎌倉時代、それ以降、昆布と日本人は切っても切れない関係にある。
そんな昆布について、近江商人の北前船によりポピュラーになり、日本全国へ普及していった歴史が綴られている。

また、曹洞宗大本山永平寺御用達の「御昆布司」(おこぶし)となり出入りを許されたり、北大路魯山人から特注を受けたりと栄華を極めながらも、第二次世界大戦の空襲により全てを失い、再び立ち上がった昆布商としての140年の歩みを振り返る。
とりわけ「関西のような昆布文化は関東では浸透しない」「昆布の使い方がわかりません」と言われながらも、東京進出を果たしていく様子は、一代記ものの小説を読んでいるようだ。

その他、
限られた収穫期に、手間ひまかけて誕生する昆布の製造過程。
ワインのように収穫される場所やヴィンテージ(収穫年)によっても品質が違うという話。
永平寺の「心」が最も大切だという食の教え。
母乳と同じ旨味成分「グルタミン酸」。
フランス料理のシェフも注目する出汁の美味しさ。
旨味成分が一番抽出しやすいのは60度。
など1冊まるごと興味深い話が満載だった。

私がとりわけ惹かれたのは熟成させた「蔵囲昆布」(くらがこいこんぶ)である。
昆布を蔵で寝かせて熟成させると雑味のない、旨味だけが凝縮した出汁がとれるのだという。
出汁をとる一瞬のために、海で育つこと2年、手間ひまかけて製品になり、蔵囲いして熟成させる・・・なんという贅沢さだろうか。

奥深い昆布の世界をわかりやすく解説してくれる極上の一冊だった。

※気になって調べてみたら「蔵囲利尻昆布 80g」が1,365円だった。(私が普段使っているのは65g398円)
ちょっとお高めだが、本書を読み手間暇かかっていることを知った今ではそれでも安く感じる。
頼りない私の腕前で極上昆布を使いこなせるのか?、繊細な舌を持ち合わせていない家族たちに違いがわかるのか?と不安を抱きながらも、お取り寄せしてみた。
素人の私でも濃く上品な味のだしを取ることができた。
残念ながら家族は誰も気づいてくれなかったのだが。

 
昆布を水に浸してから60度を目安に加熱する。
 

 
澄んだ昆布だしができました。
 

 
その後、鰹節を入れ取り出したところ。

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