2013年10月17日木曜日

江戸の色道: 古川柳から覗く男色の世界

渡辺信一郎著
新潮社

ようこそ!ディープな男色の世界へ!



長年江戸の古川柳を研究してきた著者が、その中でも男色に関する部分を取り上げてまとめたものがこの「江戸の色道」である。

女色も深く嗜み、男色をも究めることが、色道としての正道なのだ。
弘法大師が帰朝して広めたとされる男色は(実際は古代から受け継がれてきたようだが)、江戸時代には女色/男色、二本立ての色道だったらしい。
平賀源内先生も著書「男色細見三の朝」で、未経験者に対して「此道の味ひを知らざる愚痴の衆生」とまで書いているそうだ。
それほど一般的だったため、様々な文献・川柳が残されている。
本書は、それを背景とともに丁寧に解説してくれる、いわば「男色の解説書(江戸編)」といった内容である。

潤滑油・通和散のこと、陰間の修行のこと、陰間茶屋のこと・・・
様々な男色のあれこれについて、それはそれはご丁寧に解説してくれるのである。

読み通すのに大変苦労する本でもある。
春画が満載で人前で読めない。
古文や古川柳がたくさん引用されている。
例えば「唐辛子」「提灯」などの隠語が多用されている(解説はついているが)。
具体的すぎる。
そういった理由もあるが、それだけではない。
ずっと、違和感というか根本的な疑問が頭から離れなくなってしまったのだ。

・男色は、する側は悦楽が伴うがされる側は苦痛に耐えなければならない。そのため、「一人だけが悦楽に耽る」の意味で「一人」の字を合体させて別名「大」悦と言う。
・陰間は商売道具である菊をいかに傷つけないようにするかの訓練を小さい時から行う。
菊の訓練、手早く終わらせる方法、傷の手当て・・・
・受ける方はどんなに経験を積んでも快楽を伴うことはない・・・
本書では、いかに受ける側が大変な苦痛を伴うかということが繰り返し書かれているのだ。

そうなのだろうか?
私はずっと、両方に悦楽が伴う対等の立場だとばかり思ってきたのだが。
もし、いつまでも片方は苦痛に耐えなけらばならないとしたら、金銭を伴わない関係は成立しないのではないか?
交代するのか?
誰にも聞けず、いや聞いても答えてくれそうな人が周りにいないため、一人でずっと考え込んでしまったから、なかなか読み進めなかったのだ。

まえがきで著者は「読者の肝を冷やすことになる筈である」と述べている。
肝を冷やすというより、・・・以下自粛。
私には全く必要がない、ディープな男色の世界の知識を与えてくれたと同時に、大きな疑問も残してくれた1冊だった。

※ちなみに、傷にはネギの白い部分を蒸してその部分に押し当てるといいらしい。

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