2012年6月4日月曜日

望遠ニッポン見聞録

望遠ニッポン見聞録
ヤマザキマリ著
幻冬舎

「テルマエ・ロマエ」の作者・ヤマザキマリさんのエッセイ。外から見たニッポンが描かれていて、楽しみながら読める一冊。



1967年生まれの著者は、「日本だけが世界ではない」と親から言われて育つ。
17歳の時、絵の勉強のためにフィレンツェに渡る。
ブラジル・キューバ・エジプトなど、世界中を回り、現在シカゴ在住。

映画化もされた漫画「テルマエ・ロマエ」に掲載されていたエッセイを読んで、文章も上手い方だなぁと思っていた。
このエッセイを読んで上手さだけでなく、考察力も鋭い事に気がつき、溢れる才能に改めて感心する。

「息子命」のパワフルなお姑さんが、シカゴの家に遊びに来た。
締め切り迫る漫画の原稿と格闘する著者の横で、鼾をかいて寝ていたり、牛乳たっぷりのコーンフレークをぶちまけたりと大騒ぎをする。
シリアに住んでいた時、下着屋さんで驚愕の下着たちを発見する。
スケスケやら、やたらと穴の開いているものやら、Tバックの三角部分にウサギのぬいぐるみやひまわりの造花がついていたり・・・
おもちゃの携帯電話が貼り付けられていたものまであったという。
イスラム教徒で普段は顔しか出さない格好の下には、そんなものが隠されているのだろうか。
邪魔なような気がするのだが。

など、笑えるエピソードもたくさんあったのだが、海外を転々とし外から日本を見た著者ならではの鋭い観点も面白かった。

日本で進化し続けているトイレ。
西洋では昔から、バスルーム--お風呂の横に便器--が一般的である。
それに対して、かつて日本の「便所」と言えば長い渡り廊下の突き当たりや離れにあり、世の中から見捨てられたような排他的で悲しい空気が醸し出されていた。
「人間の暮らしにとって最も大切な場所なのに、それが同時に一番恐ろしい場所だったからこそ、これだけ力と熱意のこもった画期的進化が可能になったのかもしれない。」と考察している。

その他、日本と海外のCMの違い、イタリアには日本人が考えているような「伊達男」はいない、など
興味深く面白い話がたくさんあり、楽しく読めた。
肩の力を抜いて読める文化論でもある。
是非これからも、海外から見た日本についての話をお聞きしたいと願う。

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