2012年6月19日火曜日

てんてん 日本語究極の謎に迫る

てんてん 日本語究極の謎に迫る
山口謡司著
角川選書

ひらがな・カタカナを濁音にする時につける「てんてん」は、明治以降に一般化されたものだという。そんな文字の歴史を解説した一冊。


江戸時代は蕎麦をすする時、「するする」と書いて「ずるずる」と読んでいたという。
前後の文脈・状況によって、濁る・濁らないを読み手が判断していたのだ。
これは、そんな「てんてん」を始め、日本の文字の歴史について解説した本である。

平安時代前期頃まで使われていた 万葉仮名 は、日本語の音に漢字を当てる表記方法のため、濁音と清音を書き分けることができた。
また、古代の日本語には、濁音で始まる言葉はほとんどなかったのである。

万葉仮名は、草仮名(万葉仮名の草書)へと形を変えながら、ゆっくり姿を消していった。
文字は漢字から、ひらがな・カタカナへと自然な流れとして生まれてきたのだ。
万葉仮名は、清濁を書きわけていたにも関わらず、なぜひらがな・カタカナは「てんてん」という補助記号を使って書き表さなければならないのだろうか?

その疑問に日本の歴史はもとより、中国の歴史・サンスクリット語、和歌などを交えて「てんてん」の謎に迫っていく。

中国語のアクセントを表す「声点」「てんてん」の源である。
字の下に点や棒線で表していた記号が、少しずつ変化していき、外来語の浸透により、濁点や半濁点がなくてはならないものとなっていくのある。
今では「あ゛・え゛・ん゛・・・」なども、どう読むのかは定かでないが、一般的になっている。

天皇家では「穢れ」を避けるためにニラ等を口にしないのと同様に、「濁音」を避けていたため現在でも和歌には「濁点」がない、など興味深い内容もたくさん掲載されていた。

一番気になったのは、奈良時代の日本語の発音は、現代の発音とかなり大きな違いがあったということである。(中国の書物によってほぼ完ぺきに発音を知ることができるらしい。)
例えば、
「母様、蝶々が飛んでいます」 という言葉が、
「パパつぁま、ディェップ・ディェップ んが ちょんでぃぇまつぅ」 と発音されていたという。
もし、タイムマシンが発明されて奈良時代以前に行ったら、意思の疎通が難しいのではないか。
ほんやくコンニャク
を持って行った方がよさそうだ。

読みやすいけど、論理的・順番的におかしいなと思うところがあった。

なるほど度:★★★★
興味深い度:★★★★
知らないこといっぱい度:★★★★

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