2012年6月6日水曜日

双頭のバビロン

双頭のバビロン
皆川博子著
東京創元社

ウィーン・ハリウッド・上海を舞台にした双子の壮大な物語。やめられない、止まらない。睡眠不足にご用心!!!



1892年、ウィーン。
オーストリア貴族の血を引く双子は、体が癒着したままのいわゆるシャム双生児として誕生した。
4歳の時に分離手術を受ける。
ゲオルクは、名家の跡取りとなって陸軍学校へ進み、その後アメリカへ渡り、映画俳優兼監督となる。
存在を抹消されたもう一人の半身ユリアンは、少年ツヴェンゲルと共に、高度な教育を受けながらひっそりと暮らす。
ヨーロッパ・ハリウッド・上海を舞台に繰り広げられる壮大な物語。
二人の運命は・・・?
この分厚さ(538ページ)にも関わらず、もう読み始めたら止まらない。
睡眠不足になろうとも止まらない。
重たくてかさばり持ち運びには不便な大きさだが、ところ構わず持ち歩き読みふける。
予定をキャンセルしてまで読みふける。
一気に読み終えずにはいられない物語であった。

「開かせていただき光栄です」を読んだ時、その完成度の高さに驚いた。
設定が解剖という身近でない題材だからか、どこか離れたところから素晴らしい映画を鑑賞させていただいたような感動があった。
そして、読み終えた後、思わずブラボーと叫びたくなるような作品であった。
こんな作品にはなかなかお目にかかれないと思っていたら、こんなにも早く巡り合えるとは!!

この「双頭のバビロン」は、完成度が高いのはもちろんだが、「開かせて--」より感情・考えの描写が多い分、話の中に引き込まれ、その上ドキドキ感がプラスされた物語だった。

近づいたり離れたりする双子、それを取り巻く人々のドラマ、それぞれの人生が細やかに描かれている。
それに歴史的事実、雑多な人種が絡み、アヘンの煙を燻らせたこの物語が、作者の頭の中で考え出されたとは信じられない。
著者はどこまで進み続けるのだろう。

この本に出会えたことを感謝したくなる一冊であった。

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