2011年12月2日金曜日

おさがしの本は

おさがしの本は
門井慶喜著

図書館で働いている主人公が、本にまつわる無理難題を解決していくストーリー。ライトノベルのようにさらっと読める。



連作短編集。
主人公の和久山隆彦は、図書館で働き始めて7年、
今は相談を受け付けるレファレンス・カウンターで働いている。
そこに、女子大生が課題についてわからないと途方に暮れて泣きついてきたり、
50年近く前に忘れていったうろ覚えの本を探してほしい、といった問題を解決していく。
そんな中、財政難から図書館の存続が危ぶまれるという問題が起きる。
果たして、結果は・・・。

問題を解決していく過程が、回り道ながらおもしろい。
こういう思考でこう調べるのかという過程は参考になる。

大きな図書館ならいざ知らず、普通の財政難の市立図書館にレファレンス・カウンター(しかも暇そうな)なんてあるのだろうか?質問あるなら、貸出カウンターの人に聞くけどな、
などと考えてはいけない。
突っ込みどころは満載ながら、軽く最後までさらっと読める本であった。
ミステリー、恋の予感、ちょっとした知識、等が少しずつミックスされたライトノベルのようだった。

主人公は「図書館など、単なる貸本屋か、コーヒーを出さない喫茶店にすぎないのだ。」と、
役人に徹した態度で市民に対応している。
それが、図書館廃止論者の新館長と接する頃から少しずつ変わっていく。
私にとって図書館は大切な頼りになる場所だが、確かにお昼寝されている方もみかけるし、
本を返さない困った人もいるかもしれない。
もし自分の家庭の家計がひっ迫していたら、本を買うことなど考える余裕はないだろう。
その上本にも書いてあるように、市民全員が利用するわけではないのだし、
そう考えると図書館の存続や経費削減が問題になるのは仕方のないことなのかもしれない。

でも、わくわくしながら本を選んだ子供時代、
古典と言われるものを読み漁っていた中高生時代、
課題の調べ物をしていた大学時代
数少ない日本語の本を片っ端から借りていた海外在住時代と
図書館とは切っても切れない関係にあった私は、
やはり図書館はなくさないでほしいと願う。

図書館と本について考えるいいきっかけにもなる本だった。

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