皆川 博子著
早川書房
舞台は18世紀のロンドン。
外科医で解剖学教室を主宰するダニエルは、墓あばきから買った貴族令嬢の死体を解剖していた。
そこに警察が踏み込んだため死体を隠したが、なぜか違う死体が次々と現れてくる。
一方、田舎で暮らしていた薄幸の少年詩人・ミカエルは、古い書物を携えロンドンに上京した。
解剖学に熱中するあまり周りが見えなくなる教授。
緻密画が得意などバラエティに富んだ弟子たち。
素朴で自尊心の強い才能あふれる若き詩人。
盲目の判事。
判事の姪であり目となる優秀な助手。
など、個性豊かな登場人物たちが織りなす極上のミステリー。
著者は1930年生まれ。
鍵屋さんのお話と勝手に思って読み始め、面食らってはいけません
登場人物の名前がカタカナだ、翻訳ものか?と思うでしょうが、違います。
妊婦の死体の解剖から始まるのでグロテスク過ぎて読めないかもと思っても大丈夫です。
冒頭、登場人物がたくさん出てきて頭がこんがらがり、
この本面白いのか?と不安に思っても心配ありません。(以上、全て経験談)
コミカルな場面でクスッと笑えると思ったら、シリアスな場面にせつなくなる。
応援したくなったり、理不尽な出来事に腹を立てたりする。
いつの間にか本の世界に引きずり込まれていた。
貴族の令嬢が出てきたり、食事・道行く七面鳥・女性たちの化粧や風俗、
羊皮紙を革装した書物など、18世紀にタイムスリップしたかのように感じられる。
そして二転三転する高度な謎解きに、最後には納得する。
とにかく盛りだくさんのサービス満点の本であった。
読み終わってふと、これは後世に残る傑作なのではないかと気付いた。
私も十分堪能したが、教養があり尚且つ英語に造詣の深い方ならもっと楽しめるのではないか。
それほど奥深く、言葉遊び、シニカルな笑いなどがちりばめられていた。
きっと私が気付かない面白さがまだまだあるのだろうと思い、いつか必ず再読すると誓う。
しかし、なぜこの作品が今年の3位なのか解せない。
「1位じゃダメなんですか?」と仕分けしたくなる。
そして「読ませていただき光栄です。」と心から言いたい。
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