2011年12月23日金曜日

水晶玉は嘘をつく?

水晶玉は嘘をつく?
アラン・ブラッドリー
東京創元社

化学大好き少女が探偵役となるミステリーの第3弾。もうちょっと落ち着いてと言いたくなる小生意気な女の子が魅力的に描かれている。



舞台は1950年代の英国。
片田舎にある広大な敷地の古いお屋敷に住んでいるあたし、フレーヴィア11歳。
我が家の財政が逼迫していると悩む父と、
いじわるな姉二人に囲まれてたくましく生きている。
姉たちにいつもいじめられているから、
いつかぎゃふんと言わせてやると機会をうかがっているの。
あたしの好きなことは、家の実験室で化学の実験をすること。
事件に遭遇して、大量の血を見たけど大丈夫。
だって化学の実験をしたことがあるから覚えているんだけど、赤血球というのは実は水分とナトリウムとカリウムと塩化物と燐の楽しい混合液が大半を占めているって知っているから。

そんな女の子が探偵役となる楽しいミステリーの第3弾。

原題は「A RED HERRING WITHOUT MUSTARD~マスタード抜きの燻製ニシン」
何の知識も持たずに読んだのだが、後で著者が70歳過ぎた男性と知ってびっくりした。
しかも、専攻は電子工学だったという。
執筆に専念するため早期退職したらしい。
そんな方が、 11歳の女の子を主人公に、3姉妹のバトルを描くってすごい!

読み始めて、なんと生意気な女の子だろう。
これなら姉2人に意地悪されても仕方ないのでは? と思った。
だって、姉の持ち物を勝手に持ち出したりした上、壊したり捨てたりするなんてひどい。

だけど、読み進めるうちに、「姉たちに負けるな!がんばれ!」といつの間にか応援していた。
賢く知識も豊富なませた女の子フレーヴィア。
勇気も人並み以上にあるけれど、やっぱり11歳。
「あたしのように科学的な考え方をする人間にとって、そういう話を鵜呑みにするのは難しかった」なんて言いながらも、水晶占いに出てきた亡き母の話に動揺したり、
子供らしいところがあちこちに垣間見られる。

「もうちょっと落ち着いて」って言いたくなる小生意気な女の子が魅力的に描かれているミステリーであった。

そして、舞台となる古いお屋敷。
地下室や家具の描写から、挿絵はないものの勝手に想像し、一人でうっとりしてしまった。

このシリーズは6作まで刊行されているので、次の翻訳が楽しみである

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