2011年12月29日木曜日

エロティク・ジャポン

エロティック・ジャポン
アニエス・ジアール著
にむらじゅんこ訳
河出書房新社

フランス人女性ジャーナリストが見たヘンな日本。違うよ、そうじゃないんだよと言いたいけれど、これが彼女の分析なのだから仕方ない・・・のだろうか?



1969年生まれのフランス人女性ジャーナリストが、日本の様々な風俗について独自の視点から斬りまくった本の邦訳。
七夕・宝塚・やおい・メイドカフェ・ブルセラ・ラブドール・ハプニングバー・・・など、一般的なものからソフト、ハードなもの、超過激なものまで100以上の項目が図版と共に真面目に解説されている。引用文も、神話・紫式部から近松門左衛門、谷崎潤一郎・三島由紀夫・酒井順子など多岐にわたっている。

読み始めると、いきなり日本は「汚れたパンティを自動販売機で売る国」と定義づけられ面食らう。そして違和感と疑問でいっぱいになるが、「訳者あとがき」を先に読むと少しは納得できた。

著者は、日本のアニメ専門家として有名で、日本に心酔していたが、日本語は得意ではない。
それ故、参考・引用している文献は、英語・仏語の研究書に頼っているという。
そして、この本は、それらの研究書を読んだ著者自身の想像と自由な発想から生まれたものだと解説してある。
著者の友人だと言う日本人の訳者もこの日本社会の描写にしばしば戸惑いを覚えている。
そして、その戸惑いにこそ、本書が日本で翻訳出版される文化的意義があるという。
そう考えれば読み方も変わってくる。
「日本のエロ系サブカルチャーはフランス人からどう見られているのか」を知る本だということになる。
自分のことはなかなか客観的に見るのは難しく、欠点を指摘されると怒りを覚えるものだと思いながら読み進める。

確かに、「日本女性の美しさは、つつましさという美徳を前提にしている」という点は肯ける。現代の女性のことではなく、あくまで「ぐっと来るポイント」という話だが。
そのため、盗撮・パンチラ・恥じらいの方が、外国の挑戦的・直接的な映像等より日本人の好みに合っているのではないか。「Come on」と「やめて」の違いであろう。
キリスト教の原罪や、日本の土着信仰・八百万の神・死への考え方などと共に論じている部分は
なるほどと考えさせられた。

しかし、例えば七夕の項で「この日、女の子たちは織り姫に、機織りと裁縫が上手くなるようにと願う。一方、男の子たちは、書道の腕前があがるようにと願うのが習わしになっている」と定義づけられている。また、OLとは「1日に266回お辞儀をしなければいけない企業の飾りものであり、女中である」とされている。仲間由起恵を「最も胸の薄い女」と断定していたり、日本人ならこの文章に違和感を持つだろう。
こういった調子で様々な風俗を著者独自に考察していく本なのである。

書いてあることは、まるっきりの捏造ではなく、実際に少数とはいえ日本で行われていることなのだから認めることも必要なのかもしれない。
また、私自身も初めて知った項目もいくつかあり、新たな発見であった。

ただ、嘔吐ショー等一部の箇所では、不快感・嫌悪感でいっぱいになる。
声を大にして、これは日本でも極少数の人たちのことで、大部分はこんなこと見たり聞いたりもしたことない人たちだよ!と言いたくなる。

しかし、この本は約4000円という高額本にも関わらず、異例の売れ行きを見せ、
出版から5年たった現在でも順調に版を重ねているという。
ということは、アニメおたくやコスプレおたくの多いフランスで、日本に興味を持つフランス人たちがこの本を読み、日本について誤解する可能性が高いのではないか。
全てを信じ、日本人全員がこうであると思う人はいないだろうが。

私自身は興味深く読め、著者の努力に感服したが、一方で日本の明るいいい面もたくさん紹介してほしいと痛切に願った。

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