2011年10月16日日曜日

五感で学べ

五感で学べ ある農業学校の過酷で濃密な365日
川上 康介著
オレンジページ

「タネのタキイ」の全寮制の園芸専門学校。厳格な規律と過酷な実習。24時間一緒の生活。その中での青年たちの成長を描く



日本最大の種苗会社「タネのタキイ」で知られるタキイ種苗がもつ、
滋賀県の全寮制のタキイ研究農場付属園芸学校。
授業料・寮費・食費等全て無料。
その上、研究費として一人1万2千円程度もらえる。
農家の後継ぎ育成を主眼とした実践的教育を理念としている。
入寮資格は、年齢18~24歳の若者たち。
ここに来るまでの、背景は様々。
農家の後継ぎとして農業高校を卒業してすぐの人ばかりではない。
この年は、京大生もいた。
広大な敷地の移動は駆け足が基本。
実習だけでなく、講義・実習ノートを書くなど1日フルで農業と向き合う中、
規律・感謝・仲間とのコミュニケーションの取り方など学んでいく過程を著者の目から描いた本。

学校経営の経費は年間1億円もかかるという。
この不景気に見上げた心意気と思う。
「タキイ」によれば、今の実習生は、将来会社のお客様になるかららしい。
それにしても、まずは、タキイという会社に感銘をうけた。

そして青年たち。
高校時代、運動部経験のある人でも、まずは体力がついていかないらしい。
機械ではなく、手作業での整地・畝作り。
だらだら歩くのではなく、高校球児のように走って動く。
聞いただけでいかに過酷かわかる。
でも、志が高い人が多いからかドロップアウトもないという。

毎日体を思いっきり使って頭も使う。
食べても食べても痩せて精悍になっていく彼らを、著者は一緒に実習しながら見守っていく。
志が高いとは言ってもそこはちゃらい系もいれば、だらしない系もいる。
人間関係が苦手なタイプもいれば、衝突もある。
濃厚な時間を過ごすことによってそれが、相手を思いやる・お互い気配りしカバーしあう
といった関係に変化していく。

こんな学校があるなんて、知らなかった。
これだけを読むと、日本の将来は安心と思ってしまう。
でも、この年は在校生74名のみ。
こんな学校が日本中にあればいいのに。

でも、普段食べている農作物。
消費者の目は、安心・安全に限らず、味・規格等厳しい。
それを乗り越えて、また、天候・災害のリスクを負って農業の道に進んでいく青年たちは
とても眩しく・たくましく見える。

日本人にとって、いえいえ人間にとって、なくてはならない農業という職業を見直すいいきっかけにもなった本でした。

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