2016年10月10日月曜日

コンビニ人間

コンビニ行く度に店員の働きぶりをチェックしちゃいそう

コンビニ人間
村田沙耶香著
文藝春秋




主人公は、幼い頃から変わっていると言われ続けてきた私。
小鳥が死んで皆が泣いている中持ち帰って食べようと言った時も、ヒステリーな先生を黙らせるためにスカートとパンツを勢いよく下ろした時も、なぜか周りから注意を受けたが、私には納得できなかった。
両親は「どうすれば治るのか」と言いながらもそんな私に優しく、愛情たっぷりに育ててくれた。
私はトラブルを避けるため、極力しゃべらないように、自分から行動しないようになっていく。
大学生になり、私はコンビニでアルバイトを始める。
マニュアル通りに動き、周りの話し方や服装を真似してみた。
怒りに同調すると相手は喜んでくれ、連帯感が生まれることを覚えた。
コンビニ店員となった私は、初めて普通の人間になれたような気がした。

周りから異質扱いされ、生きづらさを感じる女性が主人公の芥川賞受賞作である。

著者の村田沙耶香さんは、現在5軒目のコンビニに勤務されていて、その全てがオープニングスタッフなんだそう。
内気で、人に溶け込めるか不安だからという理由らしい。
そんな繊細な村田さんのコンビニ愛に溢れた小説である。

「普通って何だろう」と問題提起している小説と考える人がいるかもしれない。
発達障害、貧困問題に絡め、現代を映した社会派小説と捉える方もいるかもしれない。
でも、私は単純にストーリーを楽しみながら読んだ。
主人公の人間観察の鋭さ、自分の価値観を押し付けてくる周りの人との平行線、そのズレ感が面白いのだ。

店長のことを社畜、私のことは社会の底辺と罵るサイテーなクズ男も、他の小説だと最後までイラッとくる嫌な人で終わりそうだが、ここではだんだん笑ってしまう可哀想な奴に思えてくる。

読んでいて「この方の文章好きだな」と思う。
合理的な主人公の一人称で語られているからか、情景描写が少なくすっきりした印象が心地よく感じたのだ。

時にクスッと笑ってしまうこの小説、文学賞とか関係なく本当に楽しく読了した。

村田沙耶香さんの他の小説はどうなのだろうか?
気になるので、また手に取るだろうなと思う。

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