2014年1月8日水曜日

西荻窪の古本屋さん 音羽館の日々と仕事

広瀬洋一著
本の雑誌社



「古本屋」というと、昔は暗くホコリっぽい店内の奥に気難しそうなおじさんが座っている・・・そんなイメージでしたが、ブックオフ以降そういった店舗は少なくなっているようです。
でもそんなブックオフだって、遠い昔に行ったことがある1号店2号店は、狭くて暗いホコリっぽいお店だったのです。
ブックオフが今のようになる前、三浦しをんさんが働いていたことでも有名な 高原書店 がPOPビルに移転したときは、広くて明るい店内に驚き、よく通っていたものでした。

そんな高原書店で働き、その後独立したのが、この本の著者・広瀬洋一さんです。
本書で「ブックオフのやり方は高原書店がモデルになったのかな?」とおっしゃっていますが、私もそうだと思っています。

広瀬さんは、大学時代高原書店にアルバイトとして入り、その後正社員になって10年間勤務します。
そこで古本を商うことの面白さ、接客の楽しさに目覚め、一緒に働いていた奥様と共に、2000年に西荻窪で古本屋「音羽館」をオープンしました。

新刊書店でも個人経営のお店はなかなか厳しい時代なのに、古本屋さんで人を雇いながら14年も続いているのはすごいことではないでしょうか。
しかも、古本屋を始める多くの若者が、この「音羽館」をモデルにしているというのですから。

万引きや嫌な客の対応に疲れ、ネット通販専門の古本屋さんになる方も増えているそうですが、この広瀬さんは「お客さんと対面することが販売の醍醐味」だと言い切って、店売りにこだわりながら頑張っているのです。

本書は、広瀬さんが高校時代に出会った恩師との思い出、高原書店時代の仕事ぶり、独立してからの苦労、古本屋さんの業界事情などが綴られています。
なので、本好きの方が楽しめるのはもちろんのこと、古本屋開業を目指す方にも参考になるのではないでしょうか。

また、三浦しをんさんから「由佳子ねえさん」と呼ばれている奥様は、女子美の絵画科のご出身だそうで、音羽館のキャラクター「おとわちゃん」や本書の可愛らしい挿絵を担当されています。
御夫婦二人三脚で楽しそうに働いている様子がこちらにまで伝わって来て、なんだか温かい気持ちにもなりました。

「音羽館を語る」というコラムでは、「女子の古本屋」 などを執筆されている古本ライター・岡崎武志さん、歌人の穂村弘さんらが音羽館の魅力について語ってらっしゃいます。
読んでいるうちに、行ったことがない私でもすっかりファンになってしまいました。

すぐにでも行ってみたいけど、我が家から西荻窪は、とてもとても遠いのです。
現在近所に古本屋さんはないのですが、近くにこんな古本屋さんができたら通い詰めちゃうだろうなぁと夢をみるしかなさそうです。

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